基幹システム/ERP改修の選定ポイント/選び方/種類

基幹システム/ERP改修には、法改正や制度改定への対応を優先するもの、帳票や画面の使い勝手を改善するもの、複数モジュールをまたいで作り直すものまで、対象範囲も進め方も異なるアプローチが存在します。依頼先や製品の知名度だけで選ぶと、影響範囲調査が不十分なまま着手し、想定外の手戻りやスポット費用の積み重ねにつながることも少なくありません。選定の出発点は、自社のどこに改修の必要性が集中しているかを整理することです。

本記事では、基幹システム/ERP改修の選定前に整理すべき自社課題、部分改修の3つのアプローチ、依頼先や製品を比較する評価軸、内製・外部委託・SaaS切り出しの選び分け、RFPや見積もり比較の進め方、PoCとモックアップ検証の使い分けを解説します。これから改修の依頼先を探す担当者の方が、比較の軸をそろえ、自社に合う進め方まで具体化できる内容です。

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・基幹システム/ERP改修の完全ガイド

基幹システム/ERP改修選定前に整理すべき自社の課題

基幹システム/ERP改修選定前の課題診断

基幹システム/ERP改修の選定は、ベンダーや製品を比較する前に、自社のどこに課題が集中しているかを特定することから始まります。課題を一文で言い切れるかどうかで、依頼する改修の範囲や必要な体制が変わります。全面刷新の選定であれば要件定義に時間をかけて総合力を比較できますが、改修は着手までの期間が短いため、最初の課題整理をどれだけ具体的にできるかが選定全体の精度を左右します。

消費税率の変更やインボイス制度対応のように、施行日が固定されている法改正対応が課題の中心であれば、優先度の高さと早期着手が可能な体制を最優先で確認します。修正費用が20万円未満、または取得価額の10%以下かつ60万円未満であれば税務上の修繕費として処理できる例もありますが、金額の多寡よりも、期日に間に合わせられる体制かどうかを見極めることが重要です。

過去に同様の法改正対応をどの程度の期間で完了させた実績があるか、要件定義から施行日までの逆算スケジュールを提示できるかも、選定段階で具体的に質問しておくべき項目です。実績が曖昧なまま契約すると、テスト工程が圧縮され、施行直前に慌てて対応する事態につながりかねません。

スポット改修費用が積み重なっている場合

テーブル項目の追加で8万円、表示順序の変更で10万円、印刷レイアウトの微調整で12万円といった、最低作業料金を伴うスポット改修が積み重なり、年間の保守費用が開発費の15〜20%を超えて膨らんでいる場合は、都度対応のベンダーではなく、改修計画を中長期でまとめて提案できる相手を選定の中心に据えます。

スポット対応の履歴を1年分さかのぼって件数と金額を集計すると、都度の相見積もりにかかる社内工数まで含めた実質コストが見えてきます。年間契約や優先対応枠を用意しているベンダーであれば、個別の見積もり待ちで着手が遅れる事態を避けやすくなります。

ブラックボックス化が疑われる場合

担当者の退職や設計書の未更新によって、既存の基幹システムやERPの仕様が誰にも分からなくなっている場合は、改修そのものよりも先に、現行仕様を可視化できる調査力を持つ相手を選ぶ必要があります。影響範囲を正しく洗い出せないまま着手すると、手戻り工数が膨らみやすくなります。

可視化の実績を確認する際は、構造図の作成手法やAIによる仕様解析の活用有無だけでなく、可視化した内容を発注側の担当者が理解できる形式で納品してもらえるかも確認します。ベンダー側にしか読めない資料では、次の改修時に再びブラックボックス化するリスクが残ります。

部分改修の3つのアプローチ

部分改修の3つのアプローチ

部分改修には、大きく分けて法改正・制度対応特化型、帳票・画面UI改善型、モジュール単位再構築型の3つのアプローチがあります。実際の改修は複数の要素が混在しますが、自社が最優先する目的に応じて力点を変えます。

消費税率の変更、インボイス制度対応、元号変更に伴う日付表示の修正、給与計算ルールの変更などを対象にした改修です。期日が法令で決まっているため、要件定義から改修、テストまでのスケジュールを逆算して組み立てられる進行力が重視されます。

このタイプを選ぶ企業は、対象範囲を法改正の影響が及ぶマスタや計算ロジックに限定できているかを事前に確認しておくと、見積もり比較がしやすくなります。関連する画面の表示変更まで含めるかどうかで、依頼範囲と費用感が変わってきます。

帳票・画面UI改善型

印刷帳票のレイアウト、画面の表示項目、入力フォームの操作性など、現場の使い勝手に関わる部分を対象にした改修です。1画面あたりの工数は、一覧・検索画面で0.5〜1人月、入力フォームで1〜2人月、複雑な帳票やダッシュボードで2〜4人月程度が目安になります。小規模な変更を繰り返す前提で、迅速な見積もりと着手ができる体制を評価します。

モジュール単位再構築型

会計モジュールのみ、特定の受発注機能のみといったように、複数部門をまたぐ業務見直しを伴う中規模改修です。開発期間はおおむね4〜8ヶ月、費用は2,000万〜8,000万円程度が目安とされ、要件定義や設計にも一定の工数を要します。この規模になると、モジュール単位の切り分け提案力や、Must・Wantの整理を支援できる体制が重要になります。

複数部門が関わる改修では、要件が膨らみやすく、当初は部分改修のつもりが中規模更改の上限に近づくこともあります。選定時には、要件を段階的にリリースする提案ができるか、途中で対象範囲を見直す際の追加費用の考え方まで確認しておくと、後々の認識違いを防げます。

改修を比較する評価軸

基幹システム/ERP改修の評価軸を整理する会議

改修を依頼するベンダーや製品を比較する際は、機能や価格の見た目だけでなく、影響範囲調査力、法改正への追随力、費用の透明性、拡張性という軸で評価します。同じ質問を各社に投げかけ、回答の具体性で判断します。

影響範囲調査力とモジュール切り分け提案力を確認します

事前調査、変更箇所調査、影響調査という3段階の調査プロセスを具体的に説明できるか、構造図の作成やAIによる仕様の可視化といった手法を持っているかを確認します。派生開発の不具合分析では、影響範囲の洗い出し不足による手戻りが最大の要因とされているため、この調査力の差が改修の成否を分けます。

調査工程の見積もりが極端に短い場合は、既存資料をそのまま流用するだけで独自の調査を行っていない可能性もあるため、実際にどのような手順でヒアリングや解析を進めるのかを、過去の改修事例に沿って説明してもらうと判断しやすくなります。

消費税率の変更やインボイス制度のような法改正に、過去どのくらいの期間で対応してきた実績があるかを確認します。また、テーブル項目の追加で8万円、表示順序の変更で10万円といったスポット改修の最低作業料金の有無や、保守費用が開発費の年間何%を目安にしているかを事前に開示してもらうことで、契約後の想定外の費用を防ぎやすくなります。

将来の拡張性と契約形態を確認します

経費精算や勤怠管理のような標準業務を既存のSaaSへ切り出し、独自性の高いコアモジュールだけを改修対象として残すといった将来の拡張方針に対応できるかも比較ポイントです。準委任契約と請負契約のどちらで進めるか、追加改修が発生した際の見積もり方法もあわせて確認します。

契約形態は改修の性質によって適否が分かれます。仕様が明確に固まっている法改正対応は請負契約で進めやすい一方、影響範囲調査の結果次第で対象が変わりうる改修は準委任契約の方が実態に合う場合があります。契約前にどちらの形態を想定しているかを確認しておきます。

内製改修・外部委託・SaaS切り出しの選び分け

内製改修・外部委託・SaaS切り出しの比較

改修の実行主体は、自社内製、外部ベンダーへの委託、標準業務のSaaS切り出しの3つに大別できます。改修対象の独自性と、社内に維持できる体制によって選び分けます。

自社内製が向くケース

自社に開発・保守の体制があり、改修対象が事業の競争力に直結する独自業務である場合は、内製での改修が選択肢になります。ただし、担当者の退職や異動によって仕様がブラックボックス化しやすいため、設計書やドキュメントの更新を継続する体制もあわせて整える必要があります。

内製を選ぶ場合でも、影響範囲調査の手法だけは外部の知見を取り入れる、法改正対応部分だけは専門ベンダーの監修を受けるなど、部分的に外部の力を借りる進め方も現実的です。すべてを自社だけで完結させることにこだわりすぎないことが、手戻りを防ぐ工夫になります。

外部ベンダーへの委託が向くケース

法改正対応のように専門知識と期日遵守が求められる改修や、影響範囲調査から仕様の可視化までを含む中規模改修は、外部ベンダーに委託する方が体制を整えやすい場合があります。委託する際は、調査工程を含めた見積もりになっているか、影響範囲の説明を受けられるかを確認します。

標準業務のSaaS切り出しが向くケース

経費精算や勤怠管理のように他社と共通化しやすい業務は、既存の基幹システムから切り離し、専用のSaaSへ移行する方法もあります。切り出した分だけ独自改修の対象が小さくなり、残ったコアモジュールに改修の予算と工数を集中させやすくなります。切り出し後のデータ連携方法も選定時に確認しておきます。

RFP・見積もり比較の進め方

基幹システム/ERP改修のRFPと見積もり比較

改修のRFPや見積もり比較では、対象範囲の広さだけでなく、影響範囲調査の進め方や法改正対応の実績まで明記してもらうことが重要です。複数社から同じ条件で回答を得ることで、費用と期間の妥当性を判断しやすくなります。

RFPには対象モジュールと現状の課題を明記します

RFPには、改修の対象となるモジュールや機能、現在発生している課題、想定する開発期間と予算感、法改正対応であれば施行日を明記します。あわせて、影響範囲調査をどの程度の工数で実施するか、見積もりに調査工程が含まれているかを各社に確認します。

現行システムの構成図やマニュアルが整備されていない場合は、その旨もRFPに記載しておきます。資料が乏しい状態からの調査を前提にした見積もりと、資料が整っている前提の見積もりでは、必要な工数が大きく変わるためです。

見積もりは工程別の内訳をそろえて比較します

要件定義、設計、開発・実装、テスト、リリース準備という工程ごとの工数配分を各社にそろえて提示してもらうと、極端に安い、または高い見積もりの背景を確認しやすくなります。中規模改修であれば、要件定義や設計に全体の35〜45%程度、開発・実装に30〜50%程度、テストに20〜30%程度を割り当てる配分が一つの目安になります。

PoC・モックアップ検証の進め方

基幹システム/ERP改修のPoCとモックアップ検証

改修の規模によっては、正式なPoCを行わずモックアップやプロトタイプの確認にとどめる判断も可能です。技術的な不確実性の高さに応じて、検証の重さを調整します。

技術的な不確実性が低ければPoCを省略できます

既存ルールの範囲内での業務フロー変更や、レイアウト変更にとどまる小規模改修であれば、正式なPoCを省略し、静的なモックアップで見た目を、動的なプロトタイプで画面遷移や操作性を確認する検証で十分な場合があります。中小企業のPoC費用の目安は30万〜300万円、期間は2〜8週間、本開発予算の10〜20%程度とされています。

新しい技術要素を含む改修はPoCを省略しません

AI-OCRの導入や、これまで連携したことのない外部APIとの接続を含む改修は、規模が小さくてもPoCを省略しない方が安全です。検証対象を1つに絞り込み、Go・No-Goの判断基準を発注前に合意しておくことで、検証にばかり予算を使う「PoC貧乏」を避けられます。具体的な製品・ツールの候補は、基幹システム/ERP改修のパッケージ・クラウド製品一覧で紹介しています。

基幹システム/ERP改修導入前に確認しておきたいポイント

基幹システム/ERP改修選定に関する質問を確認する担当者

改修の選定では、対象範囲の大小だけでなく、法改正対応の実績、調査工程の有無、将来の拡張性まで含めて確認することが、着手後の認識違いを防ぎます。ここでは、選定時に判断が分かれやすい点を整理します。

小規模な改修でも比較検討する価値はあります

実作業が数十分で終わる修正であっても、依頼先によって最低作業料金や対応スピードが異なります。頻度の高い小口改修が見込まれる場合は、都度の相見積もりよりも、年間契約や優先対応の枠を確認しておくと選びやすくなります。

内製とベンダー委託は改修対象の独自性で判断します

事業の競争力に直結する独自業務は内製、法改正対応や専門的な影響範囲調査を要する改修は外部ベンダーというように、対象ごとに使い分けることも可能です。すべてを一つの体制でまかなおうとせず、対象領域ごとの体制を整理してから選定を進めます。

PoCの要否は技術的な不確実性で判断します

既存ルールの範囲内の変更であればモックアップ・プロトタイプ検証で十分な場合が多く、新しい技術要素や未知の外部連携を含む場合はPoCを省略しない方が安全です。判断に迷う場合は、対象範囲を小さく区切ったうえで、まず影響範囲調査だけを依頼する進め方もあります。

まとめ

基幹システム/ERP改修の選定方針をまとめる担当者

基幹システム/ERP改修の選定では、法改正対応の緊急度、スポット改修費用の累積、ブラックボックス化の疑いといった自社課題を特定し、法改正・制度対応特化型、帳票・画面UI改善型、モジュール単位再構築型のどのアプローチが必要かを見極めることが出発点になります。そのうえで、影響範囲調査力、法改正への追随力、費用の透明性、拡張性という評価軸で候補を比較し、規模に応じてPoCの要否を判断することが重要です。

実行主体は内製・外部委託・SaaS切り出しから選び分けます

事業の独自性が高い改修は内製、専門性や期日遵守が求められる改修は外部委託、標準業務はSaaSへの切り出しというように、対象ごとに実行主体を選び分けると、限られた予算と体制を独自性の高い部分に集中させやすくなります。

対象範囲の合意形成から選定を始めます

まずは改修の対象範囲と優先課題を社内で言語化し、RFPや見積もり依頼に反映してください。既製のSaaSやノーコードツールで対応できる範囲と、独自の業務要件のために個別開発が必要な範囲を切り分けられれば、無理のない選定を進められます。riplaはフルスクラッチ開発の立場から、改修対象の影響範囲調査や、既存の基幹システム/ERPとの連携を含む個別改修を支援しています。

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・基幹システム/ERP改修の完全ガイド

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。