ECリニューアルの選定ポイント/選び方/種類

ECリニューアルの選定は、まず自社サイトの課題を特定し、そのうえで開発手法とパートナーを選ぶ順で進めるのが基本です。

候補は、テンプレート活用型、パッケージ・OSSカスタマイズ型、フルスクラッチ型の3つです。自社に必要な自由度と、公開後の運用負荷を見比べながら絞り込みます。

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ECリニューアル着手前に整理すべき自社の課題

他社事例や流行のデザインを集める前に、まず現状の問題を分けて整理しておくことが大切です。主な課題を一文で言えると、必要な機能と比較対象がはっきりします。課題は、購入導線や離脱の問題と、ブランドや運用の問題に大きく分かれます。

離脱率の悪化と購入導線の分かりにくさ

アクセス解析で特定のページからの離脱が続けて確認される場合や、カート投入後に購入完了まで進まない顧客が多い場合は、購入導線そのものが主な課題です。

どのページで離脱が多いか、入力項目のどこで顧客が迷っているかを事前に洗い出しておくと、比較する開発手法や制作会社を絞り込みやすくなります。

  • モバイル経由の離脱が多い場合:パソコン画面を基準にしたデザインのまま、モバイル表示だけを後から調整してきた経緯がないかも、あわせて見ておきます。
  • 購入完了率とページごとの離脱率:数値を把握できていなければ、一定期間分そろえておきます。リニューアル後も同じ条件で効果を比べられます。

ブランドイメージの陳腐化と運用負荷の切り分け

見た目の問題と運用の問題は、どちらもサイトの課題として挙がりやすいものです。当てはまる状態を、次の2つで確認します。

  • 見た目とブランドイメージのずれ:店舗やSNSで発信しているブランドイメージと、サイトの見た目がずれている場合は、デザイン刷新が課題です。
  • 外部依頼が続く運用:商品登録やキャンペーンページの更新を社内担当者では対応できず、都度制作会社へ依頼している場合は、運用のしやすさが課題になります。

この2つは似ているようで解決策が異なるため、どちらを優先するかを最初に決めておく必要があります。

両方が同時に課題となっている企業も多く、その場合は、デザインの刷新範囲と、公開後に社内で更新できる範囲をあわせて要件に含めます。

季節ごとのキャンペーンが多い事業者では、担当者だけでバナーや特集ページを差し替えられる仕組みが必要です。反対に、更新頻度が低い事業者なら、外部依頼が発生しても大きな支障にならない場合があります。

ポイント

主な課題が購入導線の問題か、ブランドや運用の問題かを先に決めておくと、必要な機能と比較対象が絞れます。デザインの刷新を優先するか、運用のしやすさを優先するかで、候補の選び方も変わります。

ECリニューアルの3つのアプローチ

ECリニューアルのテンプレート活用型、パッケージ・OSSカスタマイズ型、フルスクラッチ型を並べた図。
標準機能と独自要件のどこまでを求めるかが、型選びの分かれ目です。

ECリニューアルの主な選択肢は、大きく3つに分かれます。型の名前だけで選ばず、最優先の要件を標準機能で満たせるか、追加開発が必要かを確認します。

  • テンプレート活用型:短期間で始めやすく、標準機能を中心に使う方法
  • パッケージ・OSSカスタマイズ型:既存基盤を活用しながら独自要件を加える方法
  • フルスクラッチ型:購入体験や連携を自社向けに設計する方法

テンプレート活用型(ASP・クラウドEC)

ASP・クラウドECのテンプレートを使い、デザインや購入導線を一定の範囲で調整する方法です。開発期間が短く、初期費用も抑えやすいのが特徴です。

テンプレートの制約を超える独自の購入体験は作りにくい場合があります。また、将来の乗り換えに備えて、商品データや会員情報をどの形式で書き出せるかも確認します。

パッケージ・OSSカスタマイズ型

パッケージ製品やオープンソースのECシステムをベースに、独自のUIやワークフローを組み込むタイプで、開発期間は2〜5ヶ月程度が目安です。

テンプレート型より自由度は高い一方、カスタマイズが広いほど保守の負担も増えます。

  • 機能追加の計画:将来どこまで機能を追加したいかを見据えて、カスタマイズの範囲を決めることが重要です。
  • オープンソースの場合:セキュリティ更新への追随が欠かせず、脆弱性対応を誰が担うのかも、契約時に明確にしておきます。

フルスクラッチ(オーダーメイド)型

購入導線からブランド表現まで、完全に独自の体験を作り込むタイプです。

  • 開発期間:4〜8ヶ月以上となることが多いです。
  • 向いている事業者:年商50億円以上の大規模事業者や、購入体験そのものが競争優位性に直結する事業者に向いています。
  • 初期費用:3,000万円以上を見込むケースもあります。
  • 判断の分かれ目:投資に見合う独自性があるかどうかです。

開発期間が長くなる分、社内でも要件定義やデザイン確認に継続してかかわる担当者を確保しておく必要があります。片手間で進めると、意思決定が滞りやすくなります。

ポイント

最優先の要件を標準機能で満たせるかどうかが、型を選ぶ分かれ目になります。満たせない部分を追加開発で補えるかも、あわせて見ておくと判断しやすくなります。

製品・開発手法を比較するときの評価軸

候補を比べる観点として、デザイン力と改善実績、モバイル対応と外部連携、データ移行支援、運用のしやすさを配置した図。
4つの観点を横並びで確認すると、候補ごとの違いを捉えやすくなります。

候補は、同じ条件で比べられるように整えておきます。見る観点は、デザインと改善実績、モバイル対応です。ほかに、外部連携、データ移行、公開後の運用も見ていきます。

デザイン力と購入導線の改善実績

過去に手がけたECサイトの事例を見るだけでなく、どのような課題にどう改善したのか、その考え方まで確認します。

離脱率や購入導線の改善を専門にしている制作会社であれば、アクセス解析の見方やA/Bテストの進め方についても具体的な提案が期待できます。

事例の見た目だけで判断しないよう、自社に近い規模や業種の実績も確認します。テンプレートに近い提案と、一から設計する提案では、費用や期間が変わります。どちらを前提にしているかは、早めに確認します。

モバイル対応と外部システム連携の範囲

スマートフォンでの表示速度や操作性を、どこまで作り込めるかを確認します。

在庫管理、物流、決済代行会社との連携も、APIとCSVのどちらで、どの頻度で同期されるかを見ておきます。

連携できる項目が限られていると、リニューアル後も一部の作業が手作業のまま残ることがあります。連携の範囲を必要最小限に抑えたい場合は、SaaS型のサービスを活用する選択肢も検討します。

データ移行支援と運用のしやすさ

商品データや会員情報の移行を、制作会社がどこまで支援してくれるかを確認します。画像サイズやファイル名のルールの違いを、どう吸収するかも合わせて聞いておきます。

公開後に社内担当者がどこまで自分たちで更新できるかも比べておくと、運用開始後の負担を見誤りにくくなります。

会員のパスワードやクレジットカード情報は、新システムへそのまま移行できないことが多いです。そのため、再設定の案内の設計まで支援範囲に含まれるかも確認しておくと安心です。

ポイント

比べる観点を同じ条件でそろえ、どの項目で候補の差が出るかを見ることが、判断の出発点になります。公開後の運用負荷と自由度の釣り合いが、特に大事です。

開発パートナー・実施体制の選び方

ECリニューアルには、社内のマーケティング部門や情報システム部門のほか、制作会社や開発会社も関わります。

誰が要件を決め、誰が公開後の運用を担うかも、候補を比べる条件に含めます。

内製・外部委託・ハイブリッドの判断基準

標準的なデザインや購入導線の改善を重視するなら、実績豊富な制作会社への委託が現実的です。

独自の購入体験や基幹システムとの深い連携が事業の競争力に直結するなら、開発会社と自社が要件を詰めながら進めるハイブリッドの体制が適しています。

委託か内製かは、機能を細かく作れるかよりも、その独自性に投資する事業上の理由があるかで判断します。

業務範囲をそろえた開発パートナーの比較

「ECリニューアル対応可能」とうたう会社でも、デザインだけを担う会社から、開発や保守まで担う会社まで、担う範囲は異なります。そのため、見積もりでは、デザインや開発だけでなく、データ移行と公開後サポートまで含むかを会社ごとにそろえて確認します。

製品や開発事例を確認する場合は、ECリニューアルのパッケージ・クラウド製品一覧も参照できます。

ポイント

委託か内製かは、独自性に投資する事業上の理由があるかで決めます。要件を決める人と運用を担う人が、候補の会社と同じ範囲を見ているかを確かめると、食い違いを減らせます。

比較表・RFPとデザインカンプ・PoCの進め方

RFPに記載する対象範囲と現状、ブランドと計画、非機能要件、要件の優先度を示すチェックリスト図。
要件をそろえておくと、提案内容を同じ土台で見比べられます。

比較表やRFP(提案依頼書)には、機能名だけでなく業務シナリオと確認条件を記載します。

提案を聞くだけで終わらせず、デザインカンプやプロトタイプで実際の購入導線を確かめることが大切です。

RFPに記載する現状の課題と非機能要件

RFPには、現状の課題と要件を次の内容で書き込みます。

  • 対象範囲と現状:対象範囲、現状のアクセス解析データ、離脱の多いページ
  • ブランドと計画:ブランドとして大切にしたい世界観、想定予算とスケジュール
  • 非機能要件:モバイル対応の基準と外部システム連携の範囲に加え、データ移行の対象、公開後のサポート体制も含めます。
  • 要件の優先度:「必須」「望ましい」「将来」の3段階に分けると、条件を絞りすぎて候補を失う事態を避けられます。

RFPは、マーケティング部門や現場の運用担当者にも確認してもらいます。業務上の表現や優先度のずれを減らせます。

デザインカンプとプロトタイプによる方向性の検証

本格的な開発に入る前に、デザインカンプでモックアップを検証し、結合テストでプロトタイプを検証しておくと、方向性のずれを早い段階で直せます。

可能であれば、公開前にA/Bテストで購入導線の効果を確かめ、その結果を本番環境に反映します。

モックアップ検証は1ページあたり1.5万〜2.5万円程度です。UI設計全体は20万〜150万円程度、プロトタイプの結合テストは5万〜15万円程度が目安です。

ポイント

RFPに課題と非機能要件を書き、デザインカンプやプロトタイプで購入導線を確かめておくと、提案の差が見えやすくなります。提案を聞くだけで選ぶと、公開後のずれが残りやすくなります。

ECリニューアル選定の失敗を避ける方法

見た目や実績だけで決めると、データ移行や公開後の運用で想定外の負担が生じます。そのため、目的と責任者を先に定め、マーケティングや情報システム、カスタマーサポートの視点を選定に反映します。

見た目だけで決める失敗

デザインが優れていても、自社の商品構成や購入導線に合わなければ、公開後に追加のカスタマイズが発生することがあります。

評価点を単純に足し合わせる前に、必須要件を満たさない候補を除外します。そのうえで、残った候補を実績とTCOで比べることが有効です。

運用体制と責任者の決め方

公開後の更新作業を誰が担うか、連携に不具合が起きた際の窓口をどこに置くかが曖昧なままだと、リニューアル後も運用が定着しません。導入前の基準値として、離脱率、購入完了率、更新にかかる時間などを記録しておくと、公開後の効果検証がしやすくなります。

導入範囲を最初から全ページに広げず、影響の大きいページから段階的に切り替える方法も、失敗を避けるうえで有効です。

ECリニューアル導入前に確認しておきたいポイント

候補を絞ったあとは、費用や実績に加えて、データ移行とモバイル対応も確認します。公開後の運用体制も含め、比較表からは見えない条件を、導入前の検証で確かめます。

小規模なECサイトでのリニューアル

ページ数や商品数が少なくても、離脱率の悪化やブランドイメージのずれが顧客に伝わっている場合は、検討の価値があります。一方、既存のテンプレートで大きな不満がないなら、無理に開発手法を変える必要はありません。

フルスクラッチの要否とテンプレートの限界

テンプレートやパッケージのカスタマイズ範囲で購入導線の課題を解決できるなら、フルスクラッチを急ぐ必要はありません。

テンプレートの制約が原因で改善したい体験が実現できない場合や、事業の成長に合わせて独自の機能を継続的に追加したい場合に、フルスクラッチが選択肢になります。

PoCの検証範囲

実際の商品データと、離脱が多かったページを使ってデザインカンプやプロトタイプを検証すると、公開後の体験に近い形で判断できます。

管理画面からの更新のしやすさも、担当者に実際に操作してもらったうえで確認しておくと安心です。

デザイン会社と開発会社への分割発注

分けて発注すること自体は、珍しくありません。ただし、両社の間で仕様や修正内容が漏れないよう、自社側で仕様の窓口を明確にしておく必要があります。

デザインの意図が実装段階で崩れてしまう事態を避けるため、ワイヤーフレームやデザインカンプの確認に、開発を担当する会社にも同席してもらう進め方が有効です。

まとめ

選定は、課題の特定から始めます。離脱、ブランド表現、運用負荷のうち、何を優先するかを決めます。

次に、3つの開発手法と候補を同じ条件で比べます。実績と連携の範囲、移行支援と運用体制を見ると、違いがはっきりします。

RFPに対象範囲と検証条件をまとめると、提案の差を確認しやすくなります。

課題診断から2〜3の候補への絞り込み

離脱率の悪化、ブランドイメージのずれ、運用負荷のうち、最優先の課題を決めます。そのうえで評価軸に沿って比較すれば、実績の華やかさに左右されず候補を絞れます。

デザインカンプとプロトタイプによる最終確認

資料上の実績だけでなく、自社の商品と購入導線に合わせた検証を経て判断することが重要です。テンプレートやパッケージでは独自の購入体験や基幹システム連携を吸収できない場合、フルスクラッチ開発も選択肢になります。

riplaはフルスクラッチ開発の立場から、要件整理から購入導線の設計、既存システムとの連携まで支援しています。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。