EC更改の選定ポイント/選び方/種類

EC更改の選定は、期限を先に確定し、残りの時間に合う選択肢だけを比べるところから始まります。候補は契約延長、パッケージ移行、クラウドEC移行の3つです。

そのうえで、セキュリティや決済、移行性を確認し、PoCと移行リハーサルを経て最終判断します。

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EC更改選定前に整理すべき自社の課題

EC更改の期限につながる4つのトリガーをカードで示した図解。
期限を並べると、最初に対応すべき項目が見つかります。

製品資料を集める前に、何が期限を生んでいるのかを整理しておきます。契約満了、サポート終了、決済仕様の変更など、トリガーの種類によって残された時間と優先すべき条件が変わるためです。

自社に迫る期限とトリガーの特定

保守契約の満了日とECパッケージのサポート終了時期、決済代行のAPI仕様変更、SSL/TLS証明書の対応方式を一覧にします。期限が複数あるときは、最も早いものを基準に全体計画を逆算して立てます。PCI DSSなどの基準改定は決済の継続に直結するため、特に優先して確認します。

確認先は、社内の一部署とは限りません。契約書は法務や情報システム部門が、決済条件は経理や事業部門が管理していることがあります。そのため、原本やベンダーとのやり取りを探す時間も見込み、初動の段階で関係部署を集めておきます。

現行システムの構成と依存関係の洗い出し

カート本体に加えて、決済や会員、在庫の機能が、どこに実装されているかを整理します。受発注やポイント、会員ランクも対象になります。

ブラックボックスがある場合は、解読にかかる期間も計画に入れます。そのうえで、標準機能へ寄せる部分と独自要件として残す部分を仮置きします。

会員数、注文件数、商品点数といったデータ量も確認しておきます。退会済み会員や廃番商品の履歴を含めて移行対象を先に決めておくと、PoCと移行リハーサルの規模を抑えられます。

ポイント

期限の一覧と現行システムの範囲をそろえると、残りの時間で実行できる進め方が見えてきます。期限を管理する部署が分かれている場合は、初動で誰を集めるかを先に決めておきます。

EC更改で選べる3つの進め方

期限までの猶予とリスク許容度を踏まえ、契約延長、パッケージ更改移行、クラウドEC移行を比べます。候補を残す基準は、次の3点です。

  • 契約延長:本格更改までの時間を確保できるか。
  • パッケージ移行:既存の業務フローや独自機能をどこまで引き継ぐか。
  • クラウドEC移行:標準機能へ合わせ、運用負担を抑えられるか。

契約延長という選択肢とその限界

特別延長保守や第三者保守で期限を先送りし、その間に本格更改を準備する方法です。初期費用を抑えやすい一方で、保守費用が高くなることがあります。そのため、恒久策ではなく、時間を買う手段として扱います。

PCI DSSなどの基準改定では、延長が認められない場合や、リスクが残る場合があります。このため、延長できる期間、脆弱性への対応範囲、更改支援の有無を、ベンダーに書面で確認しておきます。

パッケージ更改移行とクラウドEC移行

パッケージ更改移行は、業務フローや独自機能を引き継ぎやすい一方で、移行作業が新規構築に近くなることがあります。クラウドEC移行は、サーバーの調達を不要にし、法改正やセキュリティ更新への追随を任せやすい方法です。

独自ロジックが多い企業では、クラウドECの標準機能に合わせる作業を見込みます。候補製品を比べるときは、EC更改のパッケージ・クラウド製品一覧も参考になります。

ポイント

期限までの猶予で方式を絞り込み、契約延長は時間を買う手段として、恒久策とは分けて考えます。パッケージ移行とクラウドEC移行は、移行負担と運用負担の差で比べると判断しやすくなります。

製品・ベンダー選定で比較すべき評価軸

EC更改時に製品・ベンダーを比べる4つの評価軸をパネルで示した図解。
同じ観点で質問すると、候補ごとの回答差を確かめやすくなります。

製品は、更改で問題になりやすい条件を同じ質問票でそろえて比べます。特に大切なのは、業務範囲、セキュリティ、決済継続性です。移行性やTCO、サポートも同じ条件で確かめ、機能数や知名度の印象だけで選ばないようにします。

業務範囲・セキュリティ・決済継続性の確認

現行システムの業務範囲について、標準機能でどこまで置き換えられるかを確認します。PCI DSS、決済代行との連携、EMV 3Dセキュア2.0などについては、「対応済み」という回答だけで済ませず、対応バージョンと今後の追随方針を尋ねます。

利用中の決済手段を一つずつ挙げ、希望する決済代行や後払いサービスとの組み合わせを確認します。一般的な連携実績があっても、自社の利用条件まで対応しているとは限らないからです。

移行性・TCO・サポート体制の確認

データをどこまで取り込めるかを確認します。初期・月額費用だけでなく、移行・教育・問い合わせ対応を含む3〜5年のTCOも比べます。将来の乗り換えに備えて、契約や取引データを一般的な形式で出力できるかも確かめます。

更改中と稼働後で担当窓口が変わるかを尋ね、障害時の連絡方法や対応時間帯、復旧目標時間も確認します。実際の対応事例を聞いておくと、導入後の運用を具体的に想定しやすくなります。

ポイント

評価軸は同じ質問票で比べ、回答に差が出た項目を重点的に詰めます。回答があいまいなまま残る項目は、評価を保留にするか、条件付きで扱うかを決めておきます。

SaaS・個別開発・ハイブリッドの選び分け

期限への適合を優先するならSaaSが候補になりやすく、競争力に直結する独自機能があるなら、個別開発やハイブリッドを検討します。方式を決めるのは、機能の多さよりも、期限と事業上の必要性です。

SaaSと個別開発の判断基準

SaaSは短期間で始めやすい一方、セキュリティ基準や決済関連の更新はベンダーに任せやすい方法です。個別開発は独自の受発注ロジックや基幹連携に対応できますが、要件定義からテストまでの期間を確保する必要があります。そのうえで、独自機能に投資する事業上の理由を明確にして選びます。

ハイブリッドの責任分界

決済やカートはクラウドサービスに任せ、独自の在庫連携や基幹連携だけを個別開発する構成もあります。その場合、正のデータをどちらに置くか、決済エラーや在庫不整合を誰が処理するかを先に決めておきます。さらに、連携費用は、仕様や例外処理を示して個別に見積もります。

ポイント

期限への適合を優先するならSaaS、競争力に直結する独自機能があるなら個別開発やハイブリッドを候補にします。ハイブリッドでは、正のデータの置き場所と、例外時の処理担当を先に決めます。

RFI・RFPの進め方と期限逆算スケジュール

完了期限を起点に、RFIとRFP、PoC、移行準備に使える期間を割り振ります。RFIで候補をそろえ、同じ条件でRFPを比べておくと、限られた時間でも判断の根拠を残せます。

RFIによる1〜2週間での候補の絞り込み

まず、複数のベンダーへRFIを送り、1〜2週間程度で対応可否、提供形態、料金の目安を確認します。必須要件を満たさない候補を外し、詳細比較に進む数社へ絞ります。期限が半年を切る場合は、PoCの時間を残すことを優先します。

同じ質問を全社に示し、回答を横並びで比べられる形式にそろえます。営業説明の印象に頼らないため、回答の内容と期限への対応を記録して、体制を見極めます。

RFPに明記する期限と非機能要件

RFPには、対象範囲と現行業務を書きます。解決したい課題と完了期限も、あわせて記します。

非機能要件には、セキュリティ方針と決済連携を入れます。加えて、データ移行支援、障害時のサポート、契約終了時のデータ返却も含めます。要件は「必須」「望ましい」「将来」に分け、期限に間に合わない要求で候補を失わないようにします。

PoC・データ移行リハーサルの進め方

RFIで絞った候補のPoCから、本番条件での移行検証とロールバック手順の明文化までを矢印で示した図解。
候補比較から本番移行の備えまでを段階ごとに確認できます。

PoCでは、機能のデモに加えて、データ移行も検証します。本番に近い条件でリハーサルを行い、移行時間と想定停止時間の関係を確かめることが、合否判断の根拠になります。

3〜6週間のタイムボックス型PoCでの検証

RFIで絞った2〜3社を対象に、3〜6週間程度の期間を区切ってPoCを行い、商品登録から注文までの流れを業務シナリオに沿って試します。決済や在庫連携を含め、正常系と、決済エラーや在庫不整合などの例外系を確認します。あわせて、処理時間や手作業、標準機能で対応できない項目を記録します。

複数回のリハーサルとロールバック計画

製品決定後は、本番と同じデータ量と条件で、移行を複数回試します。次に、失敗時に旧システムへ戻すロールバック手順を明文化します。一括移行、段階移行、並行稼働のうち、どれが現実的かは、リハーサルの結果から決めます。

ポイント

PoCでは機能のデモに加え、本番に近い条件で移行時間と想定停止時間の関係を見ておくと、合否の判断材料がそろいます。

EC更改選定にあたって確認しておきたいポイント

期限が迫るほど、延長の可否、将来の乗り換えやすさ、社内の推進体制を同時に確認する必要があります。判断が分かれやすい論点を、順に取り上げます。

期限まで半年を切った場合の進め方

特別延長保守の可否を確認しながら、SaaS型クラウドECを中心に候補を絞ります。一方で、個別開発は期限との適合を慎重に確認し、標準機能で業務を回せるかとデータ移行の難易度を早期に見ます。

次の更改でのベンダーロックインの回避

データのエクスポート形式、API仕様の公開範囲、独自機能の実装方法を契約前に確認します。そのうえで、契約・取引データの所有権が自社にあることと、将来の返却条件を契約書に明記します。

社内体制が薄い場合の進め方

専任の情報システム担当者がいない場合は、導入支援の範囲と、RFP作成やPoC運営への伴走の可否を比べます。また、社内は期限管理と意思決定に集中し、技術的な精査は外部に分担する方法もあります。

まとめ

EC更改では、期限とトリガーを起点に、実行可能な進め方へ候補を絞ります。業務範囲、セキュリティ、決済継続性を比べます。移行性やTCOも確認したうえで、RFI・RFPとPoC、移行リハーサルを通じて判断します。

期限逆算による選択肢の絞り込みとPoCでの確定

期限までに完了できる方式だけを残し、セキュリティ、決済継続性、移行性で比べます。そのうえで、実データに近いPoCとリハーサルを、判断の区切りにします。

標準機能で足りない部分と個別開発の選択肢

標準機能で独自の受発注や基幹連携を吸収しきれない場合、無理に業務を変えると、手作業が残ります。

riplaはフルスクラッチ開発の立場から、要件整理、既製サービスと基幹システムの連携、独自業務に合わせた個別開発を支援します。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。