通販サイト/システムのモダナイゼーションの選定ポイント/選び方/種類

通販システムの刷新先は、会員・注文データの移行可否、複数チャネルの業務継続、EDI・基幹連携の条件を照らし合わせて選びます。

候補はクラウドサービスから個別開発まで幅広いため、要件を整理し、比較表やRFP、PoCの順に確認して、2〜3の手法・製品に絞り込みます。

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通販サイト/システムのモダナイゼーション選定前に整理すべき自社の課題

商品マスタや会員情報、注文履歴、複数チャネルの注文、外部接続先を刷新前の確認項目として並べた図。
データの状態と接続先を並べると、候補選定前の確認範囲が見渡せます。

候補を探す前に、データの散在と外部連携の切替条件を洗い出します。

刷新で解決したい課題が明確になると、必要な機能と、比較対象に含める手法を整理できます。

マスタデータの散在と表記揺れの実態

商品マスタや会員情報、注文履歴が複数のシステムやExcelに分かれていると、重複・欠損・表記揺れの整理に時間がかかります。そのため、まずデータの状態を確認し、移行前に必要なクレンジング作業を見積もりに含めておきます。

自社開発のOMSでは、担当者ごとに入力ルールが異なるケースもあります。このため、データ整備の前提となる業務とルールを、概算の段階で洗い出しておかないと、着手後に予定が崩れるおそれがあります。

複数チャネル運用とコールセンター体制の継続要件

電話・FAX・実店舗の注文を一つの基盤で扱うなら、受注入力画面と電話注文の与信確認が刷新後も続くかを確かめます。

EDI・基幹(ERP)・WMSの接続先と切替時期も、取引先の予定を踏まえて整理します。

コールセンターの画面や例外対応は、製品カタログを見るだけでは適合性を判断しにくい要件です。そこで、実際の対応スクリプトを使って候補製品のデモを見れば、日々の運用に合うかを見極めやすくなります。

ポイント

候補を探す前に、データの散在と外部連携の切替条件を洗い出せているかが判断の目安です。洗い出しが足りないと、着手後に候補選びをやり直すおそれがあります。

通販システム刷新の3つの手法グループ(種類)

既存の仕組みの活用、内部構造の段階的な整理、独自ロジックを含む再構築という3つの刷新手法を並べた図。
左から右へ、既存活用から再構築へと改善の深さが広がります。

刷新の手法は、既存の仕組みを活用する方法、内部構造を段階的に整える方法、独自ロジックを含めて再構築する方法の3つに大別できます。

選ぶときの軸は、手法の名称よりも、残したい業務資産と必要な改善の範囲です。

リプレース・リホスト・リプラットフォームの特徴と目安

リプレースは、ShopifyなどのクラウドECや、ネクストエンジンなどのSaaS型受注管理へ置き換える方法です。初期費用は数百万〜数千万円で、短期間・低コストを狙える一方、標準機能に業務を合わせる必要があります。

リホストは、アプリケーションを変えずにインフラをクラウドへ移すため、数ヶ月・低コストで進められますが、オートスケールなどの効果は得にくい方法です。また、リプラットフォームは、データベースのマネージドサービス化やコンテナ化を伴い、目安は約4〜10ヶ月・1,000万〜4,000万円です。

リプレースの追加費用は、複数チャネルの注文を標準機能でどこまで扱えるかで変わります。そのため、料金表より先に、自社の受注パターンを候補に示して見積もりを依頼します。

独自ロジックの温存度合いで選ぶリファクタリングとリビルド

リファクタリングは、外部から見た動作を保ちながら、在庫引当や連携をAPI化したり、バッチ処理をサーバーレス化したりして内部を段階的に整える方法で、目安は約3〜9ヶ月・500万〜2,500万円です。

リビルドは、既存システムを廃止してクラウドネイティブな構成で再構築する方法で、約12〜30ヶ月・3,000万〜2億円がかかります。独自のポイント付与や複数チャネルをまたぐOMSなど、競争力に関わる業務を強化したい場合に検討します。

いずれの方法も、対象をシステム全体にするか、特定機能に限定するかで期間と費用が変わります。たとえば、フロントをリプレースし、基幹連携をリファクタリングするように、領域別に手法を組み合わせる選択肢もあります。

ポイント

残したい業務資産と必要な改善の範囲を先に決めると、既存の仕組みを活用する方法、段階的に整える方法、再構築する方法のどれが合うかを判断できます。

製品/手法選定で比較すべき評価軸

候補ごとの回答を同じ条件で比べるため、データ移行、外部連携とTCO、複数チャネル対応を共通の評価軸にします。各社から得た回答や資料を並べて適合度を確かめ、口頭の印象は判断の補助にとどめます。

データ移行適合性と会員情報の扱い

パスワードやクレジットカード情報は暗号化方式が異なるため、原則として移行できません。そのため、稼働後の再登録を候補がどう支援するかを確かめます。

注文履歴も全件の移行が難しい場合があります。そこで、対象期間を限定する方法、ヘッダーと明細を分けた分割インポート、旧データベースへのAPI参照など、対応可能な方法を比べます。

移行方式を契約後に変更すると手戻りにつながるため、RFPには対象データの件数と期間を記します。各社の対応可否は、口頭だけでなく文書でも確認しておきます。

EDI/基幹/WMS連携の維持方法とTCO

EDI・基幹(ERP)・WMSとの接続を維持できるか、APIとCSVのどちらに対応するかを確かめます。また、TCOには初期費用や月額費用に加えて、接続先の更新時に発生する追加開発費も含めます。

「連携できる」という回答があっても、それだけで終えず、データ項目や同期頻度、エラー時の復旧方法をデモや仕様書で確かめます。

EDIの接続先が複数あると、各社のテスト日程はそろいません。そこで、すべての連携先を切り替えるまでを見越し、候補側がどの範囲で支援するかも比較項目に含めます。

ポイント

比較の前提は、データ移行、外部連携とTCO、複数チャネル対応の3点を、各社に同じ条件で示して回答を得ているかです。回答が口頭だけになっていないかも見ておきます。

SaaS移行・個別開発・ハイブリッドの選び分け

標準的な受注・在庫管理と法改正への対応を重視するなら、SaaSやクラウド移行が候補になります。

独自の引当ロジックや複数チャネルの例外処理が競争力に直結する場合は個別開発を、標準業務と独自業務を切り分けられる場合はハイブリッドを検討します。

標準機能で吸収できる業務と、できない業務の切り分け

SaaSは利用開始までの期間を短くしやすく、共通する受注・在庫管理や法改正への対応をサービス側に任せられます。ただし、アカウント管理や仕様変更への対応には、社内の工数がかかります。

個別開発なら、独自の在庫引当やチャネルごとの例外処理、基幹連携に合わせて作り込めますが、要件定義・テスト・保守を担う範囲も広がります。選ぶ基準は、機能を作れるかではなく、独自性に投資する理由があるかです。

すべてを一方に寄せなくてもよく、たとえば、受注や請求など共通業務はSaaSで扱い、チャネル固有の例外や独自の在庫引当だけを個別開発する組み合わせも選べます。

コア・サテライト型での担当範囲

コア・サテライト型では、共通業務をSaaSに任せ、独自の引当ロジックや基幹連携を個別開発できます。ただし、SaaSと基幹のどちらを正とするか、連携エラーの再送や取消を誰が担うかは、先に決めておく必要があります。

API連携の工数は仕様によって変わるため、入出力項目と例外処理を示して見積もりを依頼します。

ポイント

共通業務を標準で扱えるか、独自の在庫引当や例外処理が競争力に直結するかで、SaaS・個別開発・ハイブリッドのどれに寄せるかを判断できます。

比較表・RFPの作り方

比較表とRFPには、機能の有無に加えて、移行するデータと連携要件を具体的な業務シナリオとして記載します。

RFPに記す移行対象データと連携要件

RFPには、移行する会員数・商品点数・注文履歴の期間と、EDI・基幹・WMSの仕様を記します。加えて、対象部署や現行のチャネル数、解決したい課題も書き添えます。

要件を「必須」「望ましい」「将来」に分けておくと、すべてを必須にして候補を狭めてしまう事態を避けられます。

選定基準に反映する現行システムの洗い出し結果

マスタの重複・表記揺れの件数、チャネル別の受注比率、EDI接続先の数を、評価条件に反映します。現状の洗い出しが足りないと、着手後に連携要件が見つかり、候補選びをやり直すことになります。

現状の洗い出しには、情報システム部門だけでなく、受注やコールセンターの担当者も加わります。現場の協力があれば、画面や仕様書に表れない例外処理や、担当者の判断に依存するルールも把握できます。

PoC(移行リハーサル)の進め方

カットオーバーの2〜3ヶ月前から最低2回のリハーサルを行い、受注件数や出荷数量などを日次照合し、30日間の不整合とシナリオテスト完了率を確認する流れ図。
照合結果と例外業務のテストが、切替判断を支える材料になります。

PoCは、機能が動くかを見るだけの場ではなく、旧システムの業務を新しい環境で代替できるかを確かめる移行リハーサルとして設計します。

データ件数の完全照合と例外業務のテスト

カットオーバーの2〜3ヶ月前から、最低2回のリハーサルを行います。そのうえで、受注件数・出荷数量・売上請求金額を日次で照合し、30日間連続で不整合がないかを確かめます。

返品、分割出荷、クーポンの端数処理などの例外業務も、シナリオのテスト完了率100%を評価基準にします。

照合には、自動化できる作業と人が確認する作業があります。さらに、PoCで使える自動化ツールの範囲も、稼働後の運用負荷を見積もる材料になります。

ロールバック条件の事前合意

受注取込の停止、WMSへの出荷指示の文字化け、在庫同期の競合による二重販売など、切替を中断する条件を具体的に合意しておきます。

基準が決まっていれば、障害時に現場が場当たりの対応を続けず、旧システムへ戻す判断を速やかに下せます。

候補製品は、通販サイト/システムのパッケージ・クラウド製品一覧でも確認できます。

ポイント

実データで、旧システムの業務を新しい環境で代替できるかを確かめられているかが目安です。切替を中断する条件まで決めておくと、移行の可否を根拠に基づいて判断できます。

通販サイト/システムのモダナイゼーション選定で確認しておきたいポイント

候補の最終判断では、取引規模に加えて、移行の複雑さとベンダーの移行経験も見ます。運用条件に合う相手を選ぶことは、導入後の停止リスクを抑える助けになります。

少人数運用でも見るべき移行の複雑さ

候補の規模感を比べる前に、自社の運用と移行条件を、チャネルと連携先・会員データ・移行経験の3点で照合します。

  • チャネルと連携先:電話・FAX・実店舗の併用や、複数のEDI接続の有無。
  • 会員データ:パスワードやカード情報の再登録の案内方法。
  • 移行経験:通販システムやEDI・基幹・WMSの移行実績。

単一チャネルの小規模な運用であれば、クラウドECへの置き換えで足りる場合もあります。一方、複数チャネルや外部接続が多い場合は、移行条件を慎重に確認します。

契約前に確認する会員データの移行可否

パスワードやカード情報は、原則として移行できません。そのため、契約前に、新システムが会員の再登録導線や通知機能をどこまで備えているかを確かめます。

ベンダー選定の基準:移行実績とEDI/WMS連携経験

ベンダーを選ぶときは、新規構築の件数よりも、既存の通販システムからの移行経験と、EDI・基幹・WMS連携の実装経験を確認します。発注側は、旧システムの仕様を説明できる担当者を確保し、ベンダーと移行計画をすり合わせます。

ヒアリングでは、過去の移行で起きた問題と、その対応方法も尋ねます。提案書からは見えにくい、実際のトラブルへの向き合い方も判断できます。

まとめ

刷新先は、データの状態、継続すべき受注業務、外部連携の条件を把握してから選びます。手法と製品は共通の評価軸で比べ、PoCではデータの照合と例外業務を検証します。

切替条件まで合意しておけば、移行の可否を根拠に基づいて判断できます。

課題診断から2〜3候補への絞り込み

まず自社の課題を明確にし、必須要件を満たさない候補を除外します。そのうえで比較条件をそろえれば、訴求表現に左右されず、候補を2〜3件に絞り込めます。

実データを使ったPoCでの最終確認

製品資料に載った機能数だけでなく、会員データ・商品マスタ・注文履歴や独自ロジックを実際に移せるかを、PoCで確かめます。標準製品で複数チャネルの業務を扱えない場合は、個別開発やハイブリッドも候補になります。

riplaは、要件整理や既製クラウドと基幹の連携、独自業務に合わせた開発を支援しています。選定の段階から移行手順も検討し、着手後の手戻りを抑えます。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。