通販サイト/システムのリアーキテクチャの選定ポイント/選び方/種類

通販サイト/システムのリアーキテクチャは、自社業務の境界を基準に選びます。まず、契約と受注の結び付き、頒布会や同梱物の扱い、運用体制を確かめ、進め方と開発範囲を絞ることが出発点になります。

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リアーキテクチャ選定前に整理すべき自社の課題

選定の最初は、既存業務のどこで詰まっているかを確認します。深夜バッチの条件分岐と、契約(サブスクリプション)・受注(オーダー)の結合箇所を一覧にしておくと、着手する範囲を決めやすくなります。

深夜バッチの複雑度とライフサイクルの結合度

周期変更、同梱物の出し分け、特売時の例外処理が一つの深夜バッチに集まっていないかを確認します。業務領域ごとにロジックを分けて見ると、複雑さがどこにあるかが分かります。

契約の休止・解約と個別受注の生成が同じテーブルやコード経路にあると、一つの変更が別の処理に広がるおそれがあります。そこで、結合度を数値や具体例で記録しておくと、選定の基準になります。

コールセンター連携と負荷集中の実態

コールセンターの受注がシステムから分断されていると、オペレーターが見る在庫と、システム上の在庫がずれます。月末やセール時だけ不安定になる場合は、負荷が集中する処理を分ける候補になります。

影響範囲と発生頻度は、情報システム部門だけでなく、頒布会の企画担当者やコールセンター責任者にも確認します。ログと現場の手戻りを照らし合わせると、着手するドメインの優先順位を決められます。

また、部門ごとの認識の差も、課題として記録します。企画側の切り替え頻度や現場の在庫確認の手戻りは、システムログだけでは見えにくいからです。

リアーキテクチャの進め方の3つの種類

モジュラーモノリス、段階移行、フルマイクロサービス化を3枚のパネルで示す図。
分割と運用の独立度が、方式ごとに段階的に高まります。

進め方は、組織の運用力と課題の範囲を照らして選びます。候補を並べて見比べると、判断の違いがつかみやすくなります。

  • モジュラーモノリス:責務を分けつつ、デプロイ単位は一つに保つ構成
  • 段階移行:API Gatewayを介して、対象の領域から順に移す方式
  • フルマイクロサービス化:複数の領域を分離し、独立した運用を目指す形

モジュラーモノリスに留める選択肢

モジュラーモノリスは、契約管理・受注管理・同梱物選定の責務をコード上で分けつつ、デプロイ単位は一つに保つ方法です。サービス間の通信や監視の負荷を抑えながら、将来の分割に向けた境界を整えられます。

チームが小さい場合や、まず内部の責務を整理したい場合に適しています。そのため、独立運用の準備が整うまで、構成を急に複雑化させずに済みます。

段階移行とフルマイクロサービス化の選択肢

段階移行では、API Gatewayを既存モノリスの前段に置き、コールセンター連携APIなどの処理を新しいサービスへ振り分けます。既存システムを動かしたまま検証できるため、移行の範囲を区切って管理できます。

フルマイクロサービス化は、同梱物選定や定期便のスキップ制御など、複数のコアドメインを分けて扱う方法です。独立したスケーリングを狙える一方で、分散トランザクションの検証範囲も広がるため、SRE体制が前提になります。

ポイント

迷ったときは、運用を担える人数と、一度に移す範囲の二つを基準にします。範囲が狭いほど、チームの負担を抑えて始めやすくなります。

組織体制で変わる選び方

リアーキテクチャは、技術的に分割できるかだけでなく、その構成を維持できる体制があるかで選びます。運用の担当範囲まで含めて判断することが欠かせません。

エンジニアチームの人数の目安

エンジニアチームが10〜15名に満たない場合は、運用・監視・デプロイ管理の負荷を先に見積もります。独立したスケーリングの利点より管理の負荷が大きくなるなら、構成を分ける時期を見直します。

人数が少ない組織では、モジュラーモノリスか、影響範囲を絞った段階移行から始める方が現実的です。方式は、チームが担える運用の範囲を基準に選びます。

SRE体制とFinOpsの運用力

Sagaパターンの補償トランザクションは、決済成功後に在庫確保が失敗するなどの例外にも、継続して対応しなければなりません。そのため、SRE人材の確保・育成と、機能分割後の運用負荷の見積もりが必要です。

さらに、機能が増えるほど、「Cost per order」のように注文1件あたりで費用を追うFinOpsも求められます。運用力が足りないままフルマイクロサービス化すると、技術構成を維持できなくなります。

準備状況は、障害対応の自動化と24時間365日の監視体制で確かめます。補償処理は深夜や休日にも起こり得るため、対応時間と復旧手順を事前に決めておく必要があります。

ポイント

迷ったら、分割後の運用を誰が受け持つかを先に決めます。受け持ち手がそろわないときは、分割の大きさを一段小さくして考えます。

コアドメインと汎用サブドメインの切り分け方

自社開発と外部SaaSへの委譲を左右で比べ、自社開発側に同梱物選定や頒布会、外部SaaS側に決済と定期便請求を配置した図。
独自の業務ルールと業種共通の機能で、担当範囲が分かれます。

方式を決めたら、自社で作り込む領域と、外部SaaSに委ねる領域を分けます。境界を誤ると、不要な開発の負荷が増えたり、独自の業務を製品の仕様に合わせることになったりします。

同梱物・頒布会・スキップ制御の自社開発

同梱物選定や頒布会・定期便のスキップ、休止、再開は、自社の商品構成と顧客対応を反映するコアドメインです。既製品では細かな業務ルールを表しにくい場合は、自社の業務フローに合わせて設計します。

Sagaパターンの補償トランザクションも、業務ルールと合わせて確かめます。自社開発の範囲は、独自性と運用の責任をセットで決めることが大切です。

決済・定期課金の外部SaaSへの委譲

決済と定期便請求(サブスクリプション課金)は、業種を問わず共通する汎用サブドメインです。PCI-DSSなどの要件もあるため、外部SaaSに委ねると、監査の範囲と自社の負荷を抑えられます。

同梱物や頒布会は自社で設計し、決済や定期課金は外部に委ねる構成が、コスト・納期・運用保守のバランスを取りやすい形です。

ポイント

自社で作る範囲は、商品構成と顧客対応に直結する業務ルールかどうかで判断します。決済や定期課金のように業種を問わず共通する機能は、外部SaaSに任せる候補になります。

比較検討で押さえておきたい評価軸

方式とドメインの境界が決まったら、体制・パートナー・製品を同じ基準で比べます。分散トランザクションや障害分離、コストなどを評価軸にそろえると、候補の違いが見えやすくなります。

分散トランザクション設計と障害分離

定期便のスキップ・休止・再開では、Sagaパターンの補償トランザクションをどの単位で戻せるかを確かめます。冪等性をどこで担保するかも、候補ごとにそろえて記録します。

同梱物選定エンジンが停止したときに、チェックアウトや決済まで巻き込まれないことが大切です。デフォルト処理へ切り替えられるかを、障害分離の観点で確認します。

コスト最適化と運用体制

高負荷の機能をPush型で即時に処理するか、遅延を許容してPull型のバッチ同期にするかで、運用コストは変わります。同梱物や頒布会の処理で即時性が不要なら、Pull型も候補になります。

  • 処理方式:即時性と遅延許容の条件との照合
  • 費用計測:注文単位での継続的な計測の可否
  • 運用スキル:Sagaを支えるSREの担当範囲

「Cost per order」のような単位で費用を継続して計測できるかも、候補ごとに同じ形式で見ておきます。Sagaを運用するSREの有無も、比較軸に含めます。

比較では、評価結果と確認方法をそろえて記録します。「Sagaパターンに対応できる」という説明だけで判断せず、補償トランザクションの自動化の範囲と、手作業が残る例外を分けて書き留めます。

デモで再現できたことと、仕様書の記載だけで確認したことは分けておきます。未確認の項目に評価点を付けないようにすると、後から運用の負荷が膨らむ事態を防げます。

ポイント

評価が割れたときは、デモで再現できた項目かどうかで整理します。仕様書の説明だけで判断すると、運用負荷の見落としにつながります。

PoCと検証の進め方

垂直スライスの検証項目として、補償処理、重複対策、順序制御を3枚のチェックカードで示す図。
3項目をそろえると、パイロットで見る範囲が明確になります。

候補を絞った後も、いきなり全面移行へは進みません。まず、3〜6か月程度のパイロットフェーズで、通販・定期購入に特有の分散システムの課題を確かめます。

垂直スライスに絞ったSagaパターンの検証

定期便のスキップ・休止・再開は、分散トランザクション、非同期通信、他システム連携が重なる領域です。そのため、全ドメインを一度に検証せず、スキップ処理とコールセンター連携の一部に絞ります。

  • 補償処理:失敗後に戻す処理の連鎖
  • 重複対策:冪等性キーの扱い
  • 順序制御:イベントの順番による差異の検証

この3点に集中して検証すると、パイロットの判断材料が得られます。

垂直スライスの対象は、影響範囲が狭く、分散トランザクションの複雑さを含む処理にします。限られた期間でも、本番移行時の問題を洗い出しやすくなります。

一方で、影響範囲が広すぎる処理を選ぶと、例外パターンが増えて検証が長期化します。最初の対象は、複雑さと扱いやすさのバランスで決めます。

カオスエンジニアリングとコントラクトテスト

同梱物選定エンジンを止めたときに、チェックアウトや決済が巻き込まれず、デフォルト同梱で注文を完了できるかを確かめます。

コールセンター連携APIは、Prism・Mockoonなどのモックサーバーで契約を検証します。さらに、在庫確保とWeb購入が競合する状態も確認します。

具体的な製品・サービスの候補は、通販サイト/システムのリアーキテクチャのパッケージ/クラウド製品一覧で比べられます。

ポイント

PoCの対象は、影響範囲が狭く、分散トランザクションの複雑さを含むものに絞ります。範囲を広げるのは、補償処理と障害分離を確かめてからにします。

通販サイト/システムのリアーキテクチャ選定前に確認しておきたいポイント

方式とドメインの境界を検討したら、着手前の条件を確かめます。運用・契約・データの3点を先にそろえておくと、PoCから本番へ移りやすくなります。

少人数チームでの部分的な段階移行

チームが10〜15名に満たなくても、モジュラーモノリスで責務を整理したうえで、コールセンター連携APIなど一部の機能から切り出せます。全ドメインを一度に分けず、優先度の高い領域から広げる方法です。

契約前に明文化するSaaS委譲の範囲

決済や定期課金を外部SaaSに委ねるなら、正本データをどちらが持つかを、契約前に文書で明らかにします。返金や解約時の補償トランザクションの責務も、同じ文書で定めます。

役割分担があいまいなまま連携すると、障害が起きたときに復旧を担当する人が決まりません。そのため、契約と運用手順は一体で確かめておく必要があります。

本番相当のデータで検証するPoCの対象範囲

PoCでは、頒布会・同梱物のパターンと契約条件に、本番データの複雑さを反映します。件数を絞る場合でも、実在する契約の形態と同梱のパターンで検証することが大切です。

まとめ

選定では、まず深夜バッチの複雑度と契約・受注の結合度を診断します。次に、組織の人数やSRE体制に合う方式を選びます。

あわせて、同梱物・頒布会は自社開発、決済・定期課金は外部SaaSに委ねる境界も検討します。分散トランザクションや障害分離、コストなどを同じ軸で比べます。

垂直スライスのPoCから始める段階的な拡大

全ドメインを一斉に検証せず、定期便のスキップ処理とコールセンター連携の一部に絞ります。そのうえで、PoCで補償トランザクションと障害分離を確かめた後、対象範囲を段階的に広げます。

フルスクラッチの視点によるコアドメインの境界設計

既製のパッケージやSaaSでは、同梱物選定や頒布会・スキップ制御といった自社独自の業務ルールを、十分に表現しきれないことがあります。

  • 方式選定:運用できる分割の大きさの整理
  • 境界設計:独自業務と汎用機能の責任の切り分け
  • システム連携:既存環境との接続条件

riplaは、フルスクラッチ開発の立場から方式の選定と境界設計を支えます。既存の基幹システムやコールセンターシステムとの連携を含め、構築まで支援しています。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。