通販サイト/システムのリニューアルの選定ポイント/選び方/種類

通販サイトのリニューアルでは、料金や機能で選ぶ前に、顧客体験、データ移行、外部連携の課題と、自社固有の業務をどこまで標準機能で扱えるかを確かめます。

方式は、ASP乗り換え型、SaaS・ヘッドレス型、パッケージ・フルスクラッチ型に分かれます。定期購入やカタログ通販の要件も、評価軸に落として比べます。

▼全体ガイドの記事
・通販サイト/システムのリニューアルの完全ガイド

通販サイト/システムのリニューアル選定前に整理すべき自社の課題

製品カタログを集める前に、顧客体験、データ移行、外部連携のどこで問題が起きているかを切り分けておきます。課題を一文で言い表せると、比べるべき方式と不要な機能を整理できます。

通販や定期購入では、解約の導線やコールセンターとの連携も確認の対象になります。一般的なECの課題表だけに頼ると、こうした業態固有の点を見落とすおそれがあります。

顧客体験・購入導線の課題の確認

スマートフォンで離脱が起きる、表示が遅い、定期便の問い合わせが電話に集中する、といった場合は、顧客体験の課題を疑います。そのうえで、実機で購入から解約までを一通り操作し、迷いや負担が生じる画面を洗い出します。

カタログ通販やテレビ通販では、電話やFAXによる注文の比率と、コールセンターに寄せられる操作関連の問い合わせも見ておきます。特に、画面と複数の受注窓口をあわせて診断することが欠かせません。

データ移行・外部連携の課題の確認

会員データ、注文履歴、ポイント残高の移行仕様が決まっていないと、開発を始めてから作業が止まりやすくなります。さらに、基幹システムや物流との連携についても、対象データと受け渡し方法を早い段階で一覧にします。

ポイント残高の換算ルールなどは、部署によって認識がずれることがあります。そこで、要件定義の初期に関係者の合意を取っておくと、後から仕様を戻すリスクを抑えられます。

ポイント

顧客体験、データ移行、外部連携のどこに課題があるかを一文で言えるまで、製品の比較には進まないのが目安です。課題の所在が曖昧なままでは、比較表の評価がぶれやすくなります。

リニューアル手法の3つの種類

リニューアル手法をASP乗り換え型、クラウド型SaaS・ヘッドレス型、パッケージ・フルスクラッチ型に分けた図。
方式ごとの位置づけを並べて見渡せます。

手法は、ASP乗り換え型、クラウド型SaaS・ヘッドレス型、パッケージ・フルスクラッチ型の3つに分けられます。製品名より先に、優先要件を標準機能で扱えるかを見ます。

この分類は、候補を探すための入口です。そのうえで、事業規模、業務の独自性、社内の開発・運用体制と照らし合わせて、無理なく維持できる方式を選びます。

ASP乗り換え型

ASP乗り換え型は、今使っているASPから、機能や外部連携が充実した別のASP・カートへ移る方式です。短期間で着手しやすい一方で、独自のUI・UXやフロント側の自由度には制約が残ります。

定期購入の基本機能があっても、マイページの細かな挙動まで合うとは限りません。加えて、会員データや注文履歴の移行手順が整っているかも、候補ごとに確かめます。

クラウド型SaaS・ヘッドレスコマース型

クラウド型SaaSは、ベンダー側の更新を受けながら、決済手段の追加や制度変更に対応しやすい方式です。初期費用の目安はサービスごとに異なるため、料金表だけでなく、必要な追加開発も確認します。

ヘッドレスコマースなら、カートや在庫管理はSaaSに任せながら、フロント側のUI・UXを柔軟に設計できます。特に、UX刷新を重視する通販事業では、標準機能と作り込みの境界が比較の焦点になります。

パッケージ・フルスクラッチ型

パッケージ・フルスクラッチ型は、基幹や複数倉庫との高度な連携、独自の受注プロセスなどに対応しやすい方式です。その分、開発だけでなく、刷新費用や保守を継続して負担できる体制も必要になります。

フロントエンドだけを自由に構築し、カートや在庫管理はクラウドに任せる構成もあります。全面的な独自開発を決める前に、標準化できる範囲を切り分けておきます。

ポイント

方式は、優先要件を標準機能で扱えるかを基準に、事業規模や業務の独自性、社内の開発・運用体制と照らして選びます。分類は候補を探す入口にすぎません。

構築方式・製品を比較すべき7つの評価軸

評価項目を業務適合・固有機能、連携・UX/UI、費用・安全性・移行性に整理した図。
候補ごとの回答を同じ観点でそろえる構成です。

候補を比べるときは、同じ質問を各候補に示し、回答とデモ結果をそろえます。評価項目は、業務、連携、費用の観点に分けておくと、機能の印象だけで判断しにくくなります。

  • 業務適合・固有機能:業務と通販・定期購入に必要な機能が、標準機能で足りるかどうか
  • 連携・UX/UI:外部連携の方法と、画面設計の自由度
  • 費用・安全性・移行性:TCO、セキュリティ、データ移行の中身

業務適合と通販・定期購入特有機能の確認

受注から配送、マイページ、評価の仕組みまで、どの業務を標準機能で扱えるかを確かめます。通販・カタログ通販では、定期便のスキップや周期変更、解約も評価の対象に含めます。

同梱物からのQRログインや、電話・FAX受注のクイックオーダーについても、標準機能か追加開発かを分けて記録します。

外部連携とUX/UIの自由度の確認

基幹システムや物流・WMS、決済との連携では、早い段階で連携の中身を確かめます。CRMやコールセンターとの連携も、同じ早さで洗い出しておきます。また、APIとCSVの使い分けや復旧方法も見ておきます。

  • 連携範囲:対象データと同期方向
  • 更新頻度:連携のタイミングと、失敗時の扱い
  • 画面の制約:テンプレートが購入導線に与える影響

フロントエンドについては、デザインやUI・UXをどこまで自由に作れるかを、管理画面とデモで確かめます。テンプレートの制約が、優先する購入導線に影響しないかを見極めます。

比較表は、担当者ごとの自由な採点にせず、確認の方法までそろえます。「基幹連携に対応」という回答では、手動のCSVなのか自動同期なのかが分かりません。

デモ、仕様書、契約条項など、回答の根拠を残しておきます。確認できていない項目には点数を付けず、保留として扱うと、評価の偏りを抑えられます。

料金体系・TCO・セキュリティ・移行性の確認

料金は、初期費用と月額費用に加えて、注文件数やSKU数による従量課金、決済手数料、保守・運用費まで含めて比べます。総保有コストで見ると、導入時の安さだけでは分からない差が見えてきます。

セキュリティでは、会員・決済情報の保護と権限管理を確かめます。また、ログやバックアップの扱いも見ておきます。移行性では、現行データの移し方と、将来ほかの基盤へ移るときのデータの取り出しを見ます。

ポイント

機能の印象よりも、デモや仕様書で裏付けられた回答を重く見ます。裏付けの取れない項目は、点数を付けずに保留とします。

通販・カタログ通販・定期購入特有の要件を評価軸に落とし込む方法

通販、カタログ通販、定期購入の要件は、一般的なECの比較表では抜けやすい論点です。自社の受注チャネルと継続利用の流れに合わせて、確認項目を具体化します。

まずマイページ、次にオムニチャネル対応という2つの観点で整理すると、業態に必要な機能を候補に質問しやすくなります。

マイページ機能の評価軸への落とし込み

定期便のスキップ、周期変更、解約が何タップで完了するかを、実機で確かめます。申込みと解約の表示が分かりやすく、利用者が意図しない操作へ誘導されない設計になっているかも見ます。

会員ランクやポイントの進捗、配送時期に合わせたレコメンドなどは、標準機能か追加開発かを切り分けます。そのうえで、継続利用に必要な機能を、画面操作と仕様の両面から比べます。

オムニチャネル対応の評価軸への落とし込み

コールセンターの担当者が、Webのカート状況や注文履歴を同じ画面で確認できるかを見ます。電話・FAX受注では、商品コードを使ったクイックオーダーに対応できるかも確かめます。

カタログ通販やテレビ通販では、自社の受注チャネルをデモで再現します。さらに、同梱物やDMのQRコードからマイページへ誘導し、リピーター向けの提案へつなげられるかも評価します。

構築方式の選び分け

構築方式は、標準化できる業務と独自業務の境界を見て選びます。開発期間も判断材料になります。ECパッケージをカスタマイズする場合は、早くても3ヶ月以上を見込む必要があります。

標準業務が中心の場合のSaaS・ヘッドレス

決済手段の追加や制度変更への対応など、共通業務が中心であれば、クラウド型SaaSやヘッドレスコマースが候補になります。

在庫や決済の裏側を任せながら、購入画面のUXを刷新したい場合は、両者の役割分担を確かめます。

独自業務が事業競争力に直結する場合のフルスクラッチ

複雑な組み合わせ販売や独自の会員ランクが競争力に直結する場合は、フルスクラッチを検討します。その前提として、標準機能で代替できない理由と投資効果を整理しておく必要があります。

開発期間が長くなり、保守・運用の負荷も自社で担うことになります。実装後まで維持できる体制があるかを、方式の選定と同時に確かめます。

ポイント

標準化できる業務が中心なら、SaaS・ヘッドレスを候補の中心に置きます。独自業務が競争力に直結する場合にだけ、フルスクラッチを検討します。

PoC・プロトタイプ検証の進め方

ワイヤーフレーム、デザインモック、スマートフォン実機での操作確認を経て、1案件のフルパス検証へ進む流れ図。
画面の確認から例外処理の検証へ段階的に進みます。

候補を絞った後は、資料の機能比較で決めてしまわず、PoCやプロトタイプで使用感を確かめます。デモには、自社の商品や会員データに近い条件を持ち込みます。

ワイヤーフレームとデザインモックによる購入導線の検証

本格開発の前にワイヤーフレームを作り、購入導線に不要な手順がないかを確かめます。デザインモックでは、スマートフォンの実機で、ボタンの押しやすさや画像操作、入力項目の数を見ます。

利用者に近いモニターにタスクを試してもらうと、資料だけでは見えない迷いが分かります。早い段階で問題を見つけておくと、手戻りを抑えられます。

PoCでの1案件を通したフルパス検証

PoCでは、実在に近い商品・会員データを使い、注文から決済、定期便の管理、コールセンター照会までを一つのシナリオで通します。

正常系の操作に加えて、解約、周期変更、返品も試すと、運用時の負荷を比べられます。

候補製品を同じ評価軸で確かめたい場合は、通販サイト/システムのリニューアルのパッケージ/クラウド製品一覧も参照してください。

ポイント

資料で同等に見える候補も、実データに近い条件で一案件を最後まで通せるかで比べられます。購入導線と例外処理の確かめ方が、手戻りの少なさを左右します。

通販サイト/システムのリニューアル導入前に確認しておきたいポイント

候補を絞り込んだら、規模に加えて、セキュリティ、例外処理、実案件に近い操作性を確かめます。機能欄だけでは分からない条件を事前に試すと、導入後の運用停止リスクを抑えられます。

小規模な通販での選定プロセスの必要性

小規模な事業でも、定期購入や複数チャネルの受注があるなら、評価軸を絞りながら同じ流れで比べます。一方で、単品の都度購入だけなら、業務に関係する項目へ範囲を絞れます。

SaaSでのセキュリティ確認の必要性

SaaSでも、セキュリティの確認は必要です。決済情報や会員情報を扱うため、権限管理やログ、バックアップに加えて、解約時のデータ返却・削除も契約前に確かめます。

自社の基準とベンダーの責任範囲を照らし合わせて、どこまでを誰が受け持つかを明確にしておきます。

PoCでの検証範囲

実在に近い商品・会員データを使い、注文、決済、定期便の操作を試します。コールセンターでの照会まで含めて、一通り検証します。

管理画面に加えて、購入者の視点でも操作し、例外処理とエラー時の挙動まで確かめます。

まとめ

通販サイトの選定では、顧客体験、データ移行、外部連携の課題を先に特定します。そのうえで、ASP、SaaS・ヘッドレス、パッケージ・フルスクラッチを、自社の業務と体制に照らして比べます。

7つの評価軸で候補をそろえ、実案件に近いPoCで例外処理まで確かめます。解約の導線やコールセンター連携は業態に固有のため、評価項目から漏らさないことが大切です。

最優先課題からの評価軸の組み立て

すべての評価軸を同じ重みで扱うと、判断に時間がかかります。まず、顧客体験、データ移行、外部連携のどれを最優先にするかを決め、そのあとで評価軸の順位を付けます。

標準化できる業務と独自業務の切り分け

既製のクラウドECやSaaSでは、独自の販売プロセスや複雑な基幹連携に合わない場合があります。業務を無理に標準機能へ寄せると、現場の手作業が残ります。

riplaは、選定前の要件整理、既製SaaSと基幹システムの連携、独自業務に合わせた個別開発まで支援しています。

▼全体ガイドの記事
・通販サイト/システムのリニューアルの完全ガイド

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>

執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。