Epicor導入のPoC・プロトタイプ・モックアップ開発について

Epicor KineticのPoCでは、業種テンプレートへの適合、現場の操作性、拡張が必要な要件を実データで確かめ、本格導入の範囲を決めます。

PoCの目的、進め方と費用、失敗対策を押さえておくと、社内計画やパートナー選びの判断軸にも役立ちます。全体像は、Epicor導入の完全ガイドもご覧ください。

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Epicor導入におけるPoC・プロトタイプ検証の全体像

Epicor Kinetic導入前のPoC・プロトタイプ検証は、契約の前に現場が受け入れられるかを確かめる取り組みです。機能の多さよりも、日々の業務でオペレーターが使いこなせるかを見ます。

パンフレットやデモ画面を見れば、標準機能が揃っているかは確認できます。ただし、自社の業務ルールや既存設備との連携は、実データで試さないと分かりません。さらに、現場のオペレーターがどの程度スムーズに操作できるかも、実データを使った検証で確かめます。

Epicor Kineticには、業種別テンプレート「Kinetic Industry Solutions」があります。自社に近いテンプレートから始めれば、検証項目を効率よく確認できる可能性があります。

ただし、テンプレートがあっても、PoCを省略できるとは限りません。自社の業務プロセスに本当に合うかを確かめることが、検証の中心になります。

この確認が、契約後の想定外のカスタマイズやトラブルを防ぎます。また、この検証は本格導入を円滑に進める土台にもなります。

PoC・プロトタイプ検証の目的

Epicor Kinetic導入前のPoCで実データを使って確かめるのは、主に2点です。

  • 現場受容性:UIや操作フローに馴染めるか、業務ルールと整合するかを見ます。
  • 不要なカスタマイズの削減:「譲れない要件」を標準機能で満たせるかを見極めます。

フィット&ギャップ分析では、業種テンプレートを含む標準機能との差を洗い出します。その結果、契約後に分かる高額な追加カスタマイズを防げます。

標準機能で不足する要件へのカスタマイズは、初期導入費用の3〜4割程度を占める最大のコスト増要因とされています。このため、PoCでの見極めは後工程のコストとスケジュールに大きく響き、投資対効果を左右する意思決定の工程として扱います。

クラウドネイティブだからこそ可能なスピーディーなPoC環境構築

Epicor Kineticはクラウドネイティブ(マルチテナントSaaS)のため、環境構築が速く、PoCの進め方にも影響します。

環境構築の違いは、検証準備の進み方に表れます。

  • オンプレミス型:検証用サーバーの準備に時間がかかることがあります。
  • Epicor Kinetic:ベンダーやパートナーが検証用のクラウド環境を短期間で用意するため、PoCを早く始められます。
  • 比較検討:複数の業種テンプレートやApplication Studioの案を比べる時間を確保できる可能性があります。

ただし、環境構築が速いことと、検証時間を確保できることは別です。検証項目を絞りすぎると、現場受容性やフィット&ギャップを十分に見極めないまま契約するおそれがあります。

環境構築で生まれた余裕は、検証項目を十分に確かめ、検証の質を高めるために使います。

ポイント

PoCで見るのは、標準機能が揃っているかだけでなく、自社の業務と現場の操作に合うかです。判断に迷うときは、実データで試した結果を基準にしてください。

PoCの進め方・期間・費用

PoCの標準的な進め方を、検証スコープの設定から分析結果の整理まで4段階で示した図。
対象を定めてから実データで試し、分析へ進む順序を示しています。

Epicor KineticのPoCは、対象範囲を限定して段階的に進めます。全業務を一度に対象にすると、検証項目が膨大になり、現場受容性の確認も曖昧になるからです。

対象を「1工程」または「1製品ライン」に絞り、実データで試します。その範囲で、テンプレートが自社業務に合うか、現場が違和感なく操作できるかを確かめます。

並行して、標準機能で対応できない要件は、Application Studioで簡易モックアップにします。これにより、実現可能性とおおよその開発規模を把握できます。

検証が終わったら、フィット&ギャップ分析をレポートにまとめます。発注側と開発会社は、そのレポートをもとに、本格導入の範囲やカスタマイズ、概算の期間と費用を決めます。

PoCの進め方(標準的なステップ)

Epicor Kinetic導入前のPoCは、4つのステップで進めるのが一般的です。

  1. 検証スコープを設定する:対象の業務・工程・製品ラインを限定し、確認項目を挙げます。
  2. 検証環境を準備する:クラウド環境に、実データか、それに近いサンプルデータを投入します。
  3. 実データでテスト運用する:現場で操作し、業務の進み方や標準機能の不足を確かめます。
  4. 分析結果をまとめる:標準機能、Application Studio、運用で対応する範囲を整理します。

検証項目には、現場受容性、業種テンプレートとの適合度、既存システムとの連携可否などを含めます。その結果は、本格導入計画に反映します。

この手順を丁寧に踏めば、契約後の手戻りを防ぎやすくなります。

期間・費用の目安

PoCにかかる負担は、検証範囲、トライアル制度の利用、自社で担う作業の量によって変わります。

  • 限定スコープ:無料貸出などを使い、1工程・1製品ラインを実データで検証する場合は、2〜4週間程度です。
  • 本格検証:MES(製造実行システム)などと連携すると、数ヶ月単位を要することもあります。
  • 無料トライアル:ベンダーやパートナーの制度を使ってPoCを実施できるケースもあります。
  • 自社メンバー主体:外部コンサルタントに頼らず自社で担うと、30万〜80万円程度の削減が可能とされています。

検証項目や範囲をすべて外部に任せると、現場の当事者意識も育ちにくくなります。そのため、費用対効果の面からも、現場のキーパーソンを検証に巻き込みます。

ポイント

PoCは、対象を1工程か1製品ラインに絞って段階的に進めるのが基本です。範囲を広げるほど期間も長くなるため、本格検証では数ヶ月単位を見込んでおきます。

Epicor固有のPoC手法

テンプレートと自社業務の適合確認を、一致する業務、運用で寄せられる差、残すべき固有要件の3区分に整理した図。
標準機能に合わせる範囲と固有要件を分けて考えられます。

Epicor Kineticには、一般的なクラウドERPのPoCに加えて、固有の検証方法があります。Kinetic Industry Solutionsで業務の適合を確認し、Epicor Application Studioで試作します。どちらも、他のパッケージにはない固有の手法です。

Kinetic Industry Solutionsを使ったフィット確認

自社の業種に近いKinetic Industry Solutionsを土台に検証でき、テンプレートが標準の業務フローを示します。

汎用ERPのようにゼロから設計せず、テンプレートの標準動作を基準にできます。現場は、その標準動作を自社の実業務と比べられます。この比較こそが、適合確認の本質です。

比較では、業務を3つの区分に切り分けます。

  • 一致する業務:テンプレートどおりに、標準機能をそのまま使えます。
  • 業務運用で寄せられる差:運用を見直すことで、標準機能に合わせられる差です。
  • 残すべき固有要件:自社独自の要件として扱います。

この切り分けの精度が高いほど、後続のApplication Studioで必要な拡張を絞り込めます。その結果、本格導入の期間と費用の無駄を減らすことにもつながります。

Epicor Application Studioを使ったモックアップ・プロトタイピング

Epicor Kinetic固有の手法は、低コード拡張基盤のEpicor Application Studioを使うことです。標準機能で対応できない要件を試作して確かめます。

試作が有効かどうかは、作れる範囲と、現場から得られる反応で判断します。

  • 試作内容:画面レイアウト、入力項目、簡易的な承認ワークフローを形にします。
  • 関係者との共有:専門知識が必要な範囲は限られ、短期間で画面やフローを共有できます。
  • 要件の修正:現場の意見で認識違いを解消し、業務が回らない場合は本開発前に修正できます。

モックアップを省いて本開発に入ると、現場の意見を反映する機会がないまま構築が進みます。その結果、稼働直前に大きな仕様変更が必要になるリスクも高まります。

簡易モックアップをPoCで活用することが、本格導入後の手戻りを減らします。

ポイント

Epicor固有の検証は、業種テンプレートで業務がどこまで合うかを切り分けることから始めます。残った固有要件だけをApplication Studioで試作すると、拡張の範囲を絞り込めます。

PoCでの失敗パターンと対策

PoCで起こりやすい失敗パターンを、現場の不参加、全機能の一括検証、Excel連携の軽視、工程管理の粒度の不一致の4項目で示した図。
検証の対象、参加者、データ連携、工程の扱いに注意点が分かれています。

Epicor Kinetic導入前のPoCには、典型的な失敗パターンが報告されています。防止策と合わせて押さえておきます。

典型的な失敗パターン

PoCで起こりやすい失敗を、4つの観点から整理します。

  • 現場を巻き込まない:経営層や情報システム部門だけで検証します。
  • 全機能を一度に検証する:対象を絞らず項目が膨大になり、現場受容性の確認も曖昧になります。
  • Excel連携を軽視する:クラウドからの出力時にCSV変換が必要になり、文字化けや列ズレで二度手間になります。
  • 工程管理の粒度が合わない:時間単位の計画が必要でも日単位でしか扱えません。

機能の豊富さや価格の安さだけで評価し、現場を巻き込まないままだと、稼働後に「以前のExcelの方が使いやすい」と反発されます。さらに、入力が後回しにされ、データが蓄積されないこともあります。

本格導入で最初から全機能を稼働させると、膨大な操作マニュアルに現場が混乱し、入力を放棄するリスクもあります。

工程管理の粒度が合わないと、担当者が手作業で計画を立て直すことになります。PoCで見落とせば、導入後に大きな不満につながります。

PoCを成功させるためのポイント

PoCの企画から導入計画まで、成功に向けて取り組むのは3点です。

  • 現場を企画から巻き込む:管理部門だけで決めず、操作するオペレーターの意見を反映します。
  • 検証範囲を意図的に絞る:「1工程×1製品ライン」などから段階的に進めます。
  • 分析結果を文書化する:標準機能、拡張、運用の対応範囲を分けます。

情報システム部門や経営層だけでなく現場の意見も取り入れると、稼働後の定着率が大きく変わります。最初の3ヶ月は、実績入力の定着だけを目標にする方法もあります。

全機能を一気に検証・導入せず、小さく始めて成功体験を重ねると、現場受容性を高めやすくなります。

分析結果があいまいなままだと、本格導入の見積もりも不確かになり、後工程でトラブルの原因になります。

PoCは、導入の可否を決めるだけでなく、成功する導入方法を具体化する工程です。ここでまとめた内容は、複数の導入パートナーに相見積もりを依頼する際にも使えます。具体的には、フィット&ギャップ分析、検証で得た課題リスト、Application Studioのモックアップ画面です。

要件と検証結果を文書で残しておけば、パートナーごとに前提条件が異なる見積もりを比べてしまうリスクを避けられます。その結果、より精度の高い意思決定にもつながります。

ポイント

PoCで失敗を防ぐには、現場を企画の段階から巻き込み、検証範囲を絞って、分析結果を文書に残しておくことが欠かせません。

まとめ

Epicor KineticのPoC・プロトタイプ・モックアップ開発は、現場受容性と不要なカスタマイズを確かめる工程です。

限定範囲の検証は2〜4週間が目安です。一方、本格的な検証では、数ヶ月単位を要することもあります。

Kinetic Industry Solutions(業種別テンプレート)での適合確認と、Epicor Application Studio(低コード拡張基盤)での試作は、Epicor Kinetic固有の手法です。どちらも他パッケージにはない手法です。

クラウドネイティブなため、契約前でも検証用の環境を比較的早く用意できます。

成功のためには、現場のキーパーソンを企画から巻き込み、範囲を絞って段階的に検証することが欠かせません。現場を外したまま全機能を一度に検証すると、稼働後に反発を受けやすくなります。分析結果は文書にまとめ、本格導入計画に反映します。

導入を検討する際は、自社の業種と、PoCで確認したい項目を整理しておきます。そのうえで、中堅製造業のクラウドERP導入とEpicor Kineticの検証実績が豊富なパートナーに相談することをお勧めします。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。