1972年創業の米国ERPベンダーEpicorの導入を外注するには、目的と社内体制を固め、RFP(提案依頼書)で比較できる提案を集めたうえで、契約範囲と変更管理を明確にします。
導入実績と業界理解のあるパートナーを選ぶとともに、発注企業側も主体的にプロジェクトを進めることが成功の鍵です。
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Epicor導入を外注する際の全体像
Epicor ERPの導入を外注すると、プロジェクトは「準備フェーズ」「パートナー選定フェーズ」「契約・キックオフフェーズ」「導入・稼働フェーズ」の四段階に分かれます。各フェーズで発注企業が決めるべきことと、外注先が担う業務の範囲を理解しておくことが、成功の第一歩になります。
国内のERP導入プロジェクトに関する調査では、失敗要因として「要件定義の不十分さ」と「ベンダー選定のミス」が上位を占めています。このことから、外注の入口にあたる準備フェーズとパートナー選定フェーズの質が、プロジェクト全体の成否を左右するといえます。
準備フェーズ:現状分析と目的の明確化
外注先に依頼する前に、自社内で「なぜEpicorを導入するのか」「導入後にどんな業務改善を実現したいのか」を明らかにしておく必要があります。目的が曖昧なままだと、後工程での要件変更や追加コストの最大の要因になります。
目的は、製造業であれば生産リードタイムの短縮や在庫精度の向上、流通業であれば受発注処理の自動化や需要予測の精度向上といった、具体的なKPIとして設定します。
現行システムのデータ移行範囲や、既存業務フローとのギャップ分析(Fit-Gap分析)も、この段階で行うのが理想的です。
パートナー選定フェーズ:RFP配布と評価
準備フェーズが整ったら、RFP(提案依頼書)を作成し、複数の外注候補先に配布します。Epicorの場合、国内の認定パートナー(VAR)や、Epicor専門のコンサルティングファーム、大手SIerのERP部門など、複数の選択肢があります。
RFPを配布してから提案書を受け取るまでは、通常2〜4週間程度かかります。そのため、選定のスケジュールには十分な余裕を持たせる必要があります。
提案内容を評価するときは、価格の安さだけでなく、Epicorの導入実績数、担当コンサルタントの専門性、アフターサポートの充実度を重点的に確認することが求められます。
発注先の種類と特徴

Epicor ERPの導入を外注する際、発注先の選択肢は主に三つに分かれます。それぞれの特徴を理解したうえで、自社のプロジェクト規模・予算・求めるサポートレベルに合う発注先を選ぶことが大切です。適切な発注先を選べば、プロジェクトのリスクを大幅に減らせます。
Epicor認定パートナー(VAR)
VAR(付加価値再販業者)は、Epicorが公式に認定したパートナー企業です。ソフトウェアライセンスの販売から導入支援、カスタマイズ、保守サポートまでを、ワンストップで提供します。
- 国内の例:FPTジャパンは、Epicorの戦略的パートナーとして、300社超のERP導入実績をもとにEpicor Kineticの導入支援を行っています。
- メリット:Epicorの最新機能の情報を早く得られます。公式トレーニングを受けた認定コンサルタントが担当するため、製品知識の深さが担保されています。
- 留意点:VARが扱う製品はEpicorに限られるため、中立的な視点で他のERPと比べたい場合は、別途、中立のコンサルタントを活用する価値があります。
大手SIer・ITコンサルティングファーム
大手SIerやITコンサルティングファームは、Epicor導入に加えて、既存システムとの連携設計や業務プロセス改革(BPR)、変更管理や組織研修まで、包括的に支える体制を持っています。
特にグローバルで複数拠点を持つ製造業では、海外拠点との同時展開や多言語・多通貨への対応が求められます。そのため、グローバルプロジェクトの管理経験が豊富な大手SIerの関与が有効です。
ただし、大手SIerへの発注は費用が高くなりがちです。プロジェクトマネージャーやアーキテクト以外の実作業は下請けに委託されることも多いため、担当体制と実際の実働メンバーの経験値を事前に確認することが重要です。
独立系コンサルタント・中堅ITベンダー
Epicorの認定資格を持つ独立系コンサルタントや中堅ITベンダーは、大手SIerに比べてコストを抑えながら、豊富な現場経験に基づいたきめ細かい対応が期待できます。
特に中堅・中小製造業のEpicor Kinetic導入では、規模感に合った柔軟な体制で対応できる独立系や中堅ベンダーが、現実的な選択肢になります。
たとえば、Tomerlin-ERPは20年以上にわたってEpicor専門のコンサルティングを提供し、数百件の導入実績を持つ専門ファームです。
- 専門ファームの例:Tomerlin-ERPは、20年以上にわたってEpicor専門のコンサルティングを提供し、数百件の導入実績を持つ専門ファームです。
- 選定時の確認事項:自社と同規模・同業種の導入事例の有無と、担当コンサルタントの稼働可能なキャパシティを、事前に確認することが欠かせません。
RFP(提案依頼書)の作り方と発注プロセス

RFP(Request for Proposal:提案依頼書)は、Epicor導入の発注プロセスで最も大事な書類です。
RFPの質が低いと、複数のベンダーから受け取る提案書を比べにくくなります。それに加えて、後工程での認識のずれや追加要件、費用超過の原因にもなります。
ガートナーの調査でも、ERP導入プロジェクトの成否を分ける要因として、RFP作成の質が上位に挙げられています。このため、RFPの作成には十分な時間と労力をかけたいところです。
RFPに盛り込むべき主要項目
RFPには、複数社の提案を比べられるよう、最低限次の5項目を盛り込みます。
- プロジェクトの背景と目的:導入に至った経営課題、改善したいKPI、導入後のあるべき姿
- 業務スコープ:Epicorで対象とする業務領域(生産管理・購買・販売・財務・倉庫管理など)と、既存システムとの連携範囲
- 技術要件:クラウドかオンプレミスか、シングルサインオン要件、既存ERP・MESとのAPI連携要件、マスターデータ移行の方針
- スケジュール:RFPの提出期限、提案プレゼンの日程、選定完了日と稼働目標日
- 評価基準:実績や専門性、価格、サポート体制のそれぞれに配点ウェイトを事前に設定し、公平な比較選定につなげる
技術要件にあるクラウドは、Epicor Kinetic SaaSを指します。複数社の提案を同じ前提で比べられるよう、この区分もRFPの段階で示しておきます。
発注プロセスの標準的な流れ
RFP完成後の発注プロセスは、一般的に次の流れで進みます。前半では、①候補先ベンダーへのRFP配布(3〜5社が目安)、②ベンダーからの質疑応答対応(1〜2週間)、③提案書の受領と提案プレゼンテーション(各社30〜60分)を行います。後半では、④評価・採点と最終候補の絞り込み(2社程度)、⑤詳細ヒアリングと価格交渉、⑥NDA(秘密保持契約)締結と最終発注先の決定に進みます。
RFP配布から発注先の決定までは、通常4〜8週間かかります。そのため、Epicor導入のキックオフ予定日から逆算して、スケジュールを組む必要があります。
複数社から提案を受ける「競争入札方式」にすると、価格交渉力が高まり、適正な市場価格での契約につながります。
契約形態の選び方と注意点

Epicor導入の外注契約は、プロジェクトの性質やリスクの配分の考え方によって、適した形態が変わります。
契約形態を誤ると、要件変更時の追加費用をめぐるトラブルが起きたり、品質や納期の責任の所在が曖昧になったりします。
主な契約形態は三つあります。それぞれの特徴を理解したうえで、プロジェクトの状況に合う形態を選ぶことが大切です。
請負契約(固定価格型)
請負契約は、あらかじめ合意した仕様とスコープに対して、固定の費用で納品まで請け負う契約形態です。要件が明確に固まっており、大きな変更が見込まれない場合に適しています。
- メリット:発注企業にとっては予算が読みやすく、予算超過のリスクを抑えられる点です。
- 要件変更:業務プロセスの見直しを伴う導入では途中で要件が変わりやすく、そのたびに追加費用や変更範囲の再合意が必要になります。
- ベンダー側の傾向:利益確保のため工数を抑えようとする力が働き、追加のサポートや丁寧なフォローが得られない場合もあります。
契約書には、変更管理プロセスを明確に定めておくことが欠かせません。
準委任契約(時間工数型)
準委任契約は、コンサルタントや専門家の労働力・時間を購入する形態です。費用は、時間単価に工数を掛けて決まります。
- 適した場面:要件が流動的なEpicor導入では、要件定義フェーズや、稼働後の運用支援・継続改善フェーズ
- 発注側の関与:コンサルタントの活動内容を直接指示・管理でき、プロジェクトの方向性を柔軟に調整しながら進められます。
- 注意点:工数の増加がそのまま費用増につながるため、スコープ管理と進捗確認を怠ると予算超過を招きかねません。
発注側は、月次の工数報告書やマイルストーンレポートを定期的に確認し、コスト実績を追える仕組みを整えることが大切です。
フェーズ別混合契約の活用
実務では、プロジェクトのフェーズごとに契約形態を使い分ける「混合契約」が有効です。
- 要件定義フェーズ:準委任契約で柔軟に進める
- 設計・開発・テストフェーズ:請負契約で成果物の責任を明確にする
- 稼働後の運用支援:再び準委任契約で、継続サポートを確保する
混合契約は、リスクとコストのバランスを最も取りやすいアプローチです。
Epicor Kinetic のようなパッケージERPでは、大規模なスクラッチ開発が発生しません。そのため、構成設定・データ移行・トレーニングなど工程ごとに成果物を明確に定義できるほど、請負型の固定価格契約と相性がよくなります。
発注先選定の重要ポイント
Epicorは世界150か国・2万社以上の導入実績を持つグローバルERPですが、国内の導入パートナー数は他の主要ERPと比べて限られています。そのため、適切な発注先を見つけることが、最初のハードルになります。
発注先を選ぶ際は、価格だけでなく複数の観点から評価することが、プロジェクト成功の確率を大幅に高めます。
Epicor専門の導入実績と担当者の経験値
Epicor導入の経験が豊富なパートナーを選ぶ際は、「実績が何件あるか」だけでなく、「自社と同規模・同業種での導入経験があるか」を必ず確認します。
- 規模の違い:売上高100億円規模の製造業と1000億円規模の多国籍メーカーでは、設定難易度やカスタマイズ量、データ移行の複雑さが大きく異なります。
- 担当者の体制:提案書のシニアコンサルタントが実際に担当するか、受注後に経験の浅い担当者へ切り替えられるかを、プレゼンの段階で明示的に確認します。
- 資格の保有:Epicorの公式認定資格(Epicor Certified Professional)を保有しているかどうかも、技術力を測る一つの指標になります。
稼働後のサポート体制とパートナーシップの継続性
Epicor ERPの本当の価値は、稼働後に発揮されます。導入直後は操作ミスや設定の不備、業務フローとシステムのギャップが次々と表面化します。だからこそ、迅速に問題を解決できるサポート体制が欠かせません。
発注先を選ぶ際は、稼働後のサポートプランの内容を詳しく確認する必要があります。具体的には、ヘルプデスクの対応時間、レスポンスタイムSLA、定期ヘルスチェックの有無を見ておきます。
また、Epicor KineticはクラウドERPとして、継続的にバージョンアップが行われます。そのため、将来のアップグレード支援や新機能の活用提案まで含めて長く付き合える発注先を選ぶことが、中長期の投資対効果を高めるうえで大切です。
コミュニケーション能力と業界理解の深さ
ERP導入では、システム側の技術的な問題だけでなく、コミュニケーションが成功を左右する場面も数多く発生します。社内の業務部門との調整や経営層への報告、エンドユーザーへのトレーニングなどが、その例です。
発注先の担当コンサルタントが製造業や流通業の業務フローを深く理解しており、現場の担当者と対等に話せるかどうかは、プロジェクトの円滑な進行に直結します。
提案プレゼンテーションの段階で、担当コンサルタントが自社の業界課題を具体的に理解し、わかりやすい言葉で質問に答えられるかを評価します。この点は、発注先を選ぶうえで重要な判断材料になります。
委託・依頼時の注意点と失敗を防ぐためのポイント
Epicor導入を外注する際、発注企業側が陥りやすい失敗パターンがいくつかあります。外注先に任せきりにせず、発注企業が主体的にプロジェクトを率いることが、成功の条件です。
国内外のERP導入プロジェクトの統計では、プロジェクトの約半数が予算超過または納期遅延を経験しています。そのうち70%以上は、発注側の関与不足や要件定義の不備に起因しているとされています。
NDA締結と知的財産権の明確化
Epicor導入では、外注先と機密情報を共有する場面が多くあります。業務フローや財務データ、顧客データ、原価構造などは、競合他社に知られると経営上の影響が大きい情報です。
- NDA:契約前に必ず締結し、利用目的と保存期間、第三者提供の禁止を文書に明記します。契約終了後の情報廃棄義務も定めます。
- 知的財産権:カスタムレポート、業務フロー設計書、データモデルなどが、発注企業と外注先のどちらに帰属するかを、契約書に明確に定めます。
後になって「カスタマイズ部分のソースコードは弊社資産です」と主張されるトラブルも、実際に起きています。だからこそ、契約前に権利の扱いを確かめておく必要があります。
スコープ管理と変更管理プロセスの確立
Epicor導入で最も多いトラブルの一つが、「スコープクリープ」と呼ばれる現象です。プロジェクトの進行中に要件が広がり、費用や工数が際限なく増えてしまいます。
発注契約の段階で、スコープ変更が生じた場合の手続きを定めておくことが、スコープクリープを防ぐ最善策です。その手続きは次の流れで、「変更管理プロセス」として契約に盛り込みます。
- 変更要求書の提出
- 影響評価
- 承認
- 追加費用・工数の合意
プロジェクト憲章にもスコープの定義、除外事項、前提条件を明記し、ベンダーと発注企業の双方が署名します。これにより、後の「言った言わない」トラブルを予防できます。
発注企業には、月次でステアリングコミッティ会議を開き、スコープ、コスト、スケジュールの三点を定期的にモニタリングする体制を整えることを、強く推奨します。
社内オーナーシップとステークホルダー巻き込み
ERP導入の最大の失敗要因の一つが、現場の業務部門や経営層の関与不足による「プロジェクトの孤立」です。
Epicorのような統合ERPは、製造や購買、販売、財務など複数の部門にまたがるシステムです。このため、IT部門だけでなく各業務部門の主要メンバーもプロジェクトチームに加わることが欠かせません。
発注前の段階から、次の役割を明確に決めておきます。
- プロジェクトオーナー:通常は経営層またはCIOが担う
- プロジェクトマネージャー:プロジェクト全体を進める担当
- スーパーユーザー候補:各業務部門で選ぶ担当者
発注企業には、外注先との合同プロジェクトチーム体制を、RFPの要件としても明示することをお勧めします。
発注企業側も積極的にプロジェクトへ関わることで、業務要件が正しく伝わり、成果物の品質も上がります。
まとめ
Epicor導入の発注を成功させるには、準備からプロジェクト推進まで、次の5点を一貫して整えることが大切です。
- 発注前に導入目的を明確にし、社内体制を整える
- 質の高いRFPを作成し、複数社から比較可能な提案を受ける
- プロジェクトの特性に合った契約形態を選ぶ
- Epicorの専門知識と業界理解を持つ相手を見極める
- スコープ・変更を管理し、社内メンバーを巻き込んで進める
riplaは、コンサルティングから開発まで一気通貫で支援できる企業です。
IT事業会社として社内DXを推進してきた経験を活かし、Epicorをはじめとする基幹システムの導入と外注を支援しています。要件定義や発注先の選定、PMO支援に加えて、稼働後の定着支援まで、企業の業務要件に合わせて柔軟に提供しています。
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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
