Epicor ERPの導入を検討している企業の担当者にとって、「どの会社に依頼すればよいのか」「発注プロセスをどう進めるべきか」という疑問は、プロジェクトを動かす前の最大のハードルとなることが少なくありません。Epicor(エピコ)は1972年創業の米国ERPベンダーで、製造業・流通業を中心に世界150か国・2万社超の導入実績を持ちます。現在はクラウドネイティブな「Epicor Kinetic」として進化し、生産管理・在庫管理・財務管理・品質管理などを一つのプラットフォームに統合するグローバル標準の基幹システムです。しかし、優れた製品であっても、発注先の選定や委託プロセスを誤ると、費用超過・納期遅延・現場定着の失敗という三重苦に陥るリスクがあります。
この記事では、Epicor導入を外注・発注する際の全体像から、RFP(提案依頼書)の作り方、発注先の種類と選定基準、契約形態の選び方、失敗しないための注意点まで、実務に即した形で体系的に解説します。Epicor導入プロジェクトを成功させるための「発注の教科書」として、ぜひ最後までお読みください。
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Epicor導入を外注する際の全体像

Epicor ERPの導入を外注する場合、プロジェクトは大きく「準備フェーズ」「パートナー選定フェーズ」「契約・キックオフフェーズ」「導入・稼働フェーズ」の四段階に分かれます。それぞれのフェーズで発注企業がすべき意思決定と、外注先が担う業務範囲を正しく理解しておくことが、プロジェクト成功の第一歩となります。国内のERP導入プロジェクトに関する調査では、失敗要因として「要件定義の不十分さ」と「ベンダー選定のミス」が上位を占めており、外注の入口にあたる準備フェーズとパートナー選定フェーズの質がプロジェクト全体の成否を左右すると言えます。
準備フェーズ:現状分析と目的の明確化
外注先に依頼する前に、自社内で「なぜEpicorを導入するのか」「導入後にどのような業務改善を達成したいのか」を明確にする必要があります。製造業であれば生産リードタイムの短縮や在庫精度の向上、流通業であれば受発注処理の自動化や需要予測の精度向上といった具体的なKPIを設定することが重要です。この段階での目的の曖昧さが、後工程での要件変更・追加コストの最大要因になります。また、現行システムのデータ移行範囲や、既存業務フローとのギャップ分析(Fit-Gap分析)もこの段階で行うことが理想的です。
パートナー選定フェーズ:RFP配布と評価
準備フェーズが整ったら、RFP(提案依頼書)を作成し、複数の外注候補先に配布します。Epicorの場合、国内の認定パートナー(VAR)や、Epicor専門のコンサルティングファーム、大手SIerのERP部門など複数の選択肢があります。RFP配布から提案書受領まで通常2〜4週間程度を要するため、選定スケジュールには十分な余裕を持たせる必要があります。提案内容を評価する際は、価格の安さだけでなく、Epicorの導入実績数・担当コンサルタントの専門性・アフターサポートの充実度を重点的に確認することが求められます。
発注先の種類と特徴

Epicor ERPの導入を外注する際、発注先の選択肢は主に三つに分類されます。それぞれの特徴を理解した上で、自社のプロジェクト規模・予算・求めるサポートレベルに合った発注先を選定することが重要です。適切な発注先を選ぶことで、プロジェクトのリスクを大幅に低減することができます。
Epicor認定パートナー(VAR)
VAR(付加価値再販業者)は、Epicorが公式に認定したパートナー企業であり、ソフトウェアライセンスの販売から導入支援・カスタマイズ・保守サポートまでをワンストップで提供します。日本国内では、FPTジャパンがEpicorの戦略的パートナーとして、300社超のERP導入実績をもとにEpicor Kineticの導入支援を行っています。VARを選ぶ最大のメリットは、Epicorの最新機能情報へのアクセスが早く、公式トレーニングを受けた認定コンサルタントが担当するため、製品知識の深さが担保されていることです。一方で、VARが扱う製品はEpicorに限られるため、他のERPパッケージとの比較検討を中立的な視点で行いたい場合には別途中立コンサルタントの活用を検討する価値があります。
大手SIer・ITコンサルティングファーム
大手SIerやITコンサルティングファームは、Epicor導入に加えて、既存システムとの連携設計・業務プロセス改革(BPR)・変更管理・組織研修まで包括的にサポートできる体制を持っています。特にグローバルで複数拠点を持つ製造業の場合、海外拠点との同時展開や多言語・多通貨対応が求められるため、グローバルプロジェクト管理の経験が豊富な大手SIerの関与が有効です。ただし、大手SIerへの発注は費用が高くなりがちであり、プロジェクトマネージャーやアーキテクト以外の実作業は下請けに委託されるケースも多いため、担当体制・実際の実働メンバーの経験値を事前に確認することが重要です。
独立系コンサルタント・中堅ITベンダー
Epicorの認定資格を持つ独立系コンサルタントや中堅ITベンダーは、大手SIerに比べてコストを抑えながら、豊富な現場経験に基づいたきめ細かい対応が期待できます。特に中堅・中小製造業向けのEpicor Kinetic導入案件では、規模感に合った柔軟な体制で対応できる独立系や中堅ベンダーが現実的な選択肢となります。Tomerlin-ERPのように20年以上にわたってEpicor専門のコンサルティングを提供し、数百件の導入実績を持つ専門ファームも存在します。選定の際は、自社と同規模・同業種の導入事例を保有しているか、担当コンサルタントの稼働可能なキャパシティが十分かを事前に確認することが欠かせません。
RFP(提案依頼書)の作り方と発注プロセス

RFP(Request for Proposal:提案依頼書)は、Epicor導入の発注プロセスにおける最も重要なドキュメントです。RFPの質が低いと、複数のベンダーから受け取る提案書の比較が難しくなるだけでなく、後工程での認識齟齬・追加要件・費用超過の原因にもなります。ガートナーの調査でも、ERP導入プロジェクトの成否を分ける要因としてRFP作成の質が上位に挙げられており、この工程に十分な時間と労力を投じることが重要です。
RFPに盛り込むべき主要項目
Epicor導入に向けたRFPには、最低限以下の項目を盛り込む必要があります。まず「プロジェクトの背景と目的」として、導入に至った経営課題・改善したいKPI・導入後のあるべき姿を具体的に記載します。次に「業務スコープ」として、Epicorで対象とする業務領域(生産管理・購買・販売・財務・倉庫管理など)と、既存システムとの連携範囲を明示します。「技術要件」としては、クラウド(Epicor Kinetic SaaS)かオンプレミスかの選択、シングルサインオン要件、既存ERPやMESとのAPI連携要件、マスターデータ移行の方針を記載します。「スケジュール」には、RFP提出期限・提案プレゼン日・選定完了日・稼働目標日を明記します。最後に「評価基準」として、実績・専門性・価格・サポート体制それぞれの配点ウェイトを事前に設定し、公平な比較選定を実現します。
発注プロセスの標準的な流れ
RFP完成後の発注プロセスは、①候補先ベンダーへのRFP配布(3〜5社が目安)、②ベンダーからの質疑応答対応(1〜2週間)、③提案書受領・提案プレゼンテーション(各社30〜60分)、④評価・採点・最終候補絞り込み(2社程度)、⑤詳細ヒアリングと価格交渉、⑥NDA(秘密保持契約)締結・最終発注先決定という流れで進めるのが一般的です。RFP配布から発注先決定まで通常4〜8週間を要するため、Epicor導入のキックオフ予定日から逆算してスケジュールを組む必要があります。また、複数社からの提案を受ける「競争入札方式」とすることで、価格交渉力が高まり、適正な市場価格での契約が実現しやすくなります。
契約形態の選び方と注意点

Epicor導入プロジェクトにおける外注契約の形態は、プロジェクトの性質やリスク配分の考え方によって適切な選択肢が異なります。契約形態の選択を誤ると、要件変更時のコスト追加トラブルや、品質・納期の責任所在が曖昧になるリスクが生じます。以下の三つの主要な契約形態の特徴を理解した上で、プロジェクトの状況に合った契約形態を選択することが重要です。
請負契約(固定価格型)
請負契約は、あらかじめ合意した仕様・スコープに対して固定の費用で成果物を納品する契約形態です。要件が明確に固まっており、大きな変更が見込まれない場合に適しています。発注企業にとっては予算が読みやすく、予算超過のリスクを抑えられる点がメリットです。ただし、Epicor導入プロジェクトのように業務プロセスの見直しを伴うケースでは、導入途中での要件変更が発生しやすく、その都度「追加費用」や「変更スコープの再合意」が必要となるため、変更管理プロセスを契約書に明確に定めておくことが不可欠です。請負契約の場合、ベンダー側も利益確保のために最小限の工数で完遂しようとするインセンティブが働くため、追加サポートや丁寧なフォローアップが得られにくくなるケースもあります。
準委任契約(時間工数型)
準委任契約は、コンサルタントや専門家の労働力・時間を購入する形態であり、時間単価×工数で費用が決まります。要件が流動的なEpicor導入プロジェクトの要件定義フェーズや、稼働後の運用支援・継続改善フェーズに適しています。発注企業はコンサルタントの活動内容を直接指示・管理できるため、プロジェクトの方向性を柔軟に調整しながら進めることができます。反面、工数の増加がそのまま費用増につながるため、スコープ管理と進捗モニタリングを怠ると予算超過が生じやすいという点に注意が必要です。準委任契約では月次の工数報告書やマイルストーンレポートを定期的に確認し、コスト実績を追跡する仕組みを整えることが重要です。
フェーズ別混合契約の活用
実務では、プロジェクトのフェーズごとに契約形態を使い分ける「混合契約」が有効です。たとえば、要件定義フェーズは準委任契約(時間工数型)で柔軟に進め、設計・開発・テストフェーズは請負契約(固定価格型)で成果物責任を明確にし、稼働後の運用支援は再び準委任契約で継続サポートを確保するという組み合わせが、リスクとコストのバランスを最も取りやすいアプローチです。Epicor Kinetic のようなパッケージERPでは、大規模なスクラッチ開発が発生しないため、構成設定・データ移行・トレーニングといった工程ごとに明確な成果物定義ができるほど、請負型の固定価格契約に馴染みやすくなります。
発注先選定の重要ポイント

Epicorは世界150か国・2万社以上の導入実績を持つグローバルERPですが、国内での導入パートナー数は他の主要ERPと比較して限られており、適切な発注先を見つけることが最初のハードルとなります。発注先を選定する際には、価格だけでなく複合的な観点から評価することが、プロジェクト成功の確率を大幅に高めます。
Epicor専門の導入実績と担当者の経験値
Epicor導入経験が豊富なパートナーを選ぶ際は、単に「実績が何件あるか」だけでなく、「自社と同規模・同業種での導入経験があるか」を必ず確認することが重要です。たとえば売上高100億円規模の製造業と1000億円規模の多国籍メーカーでは、Epicorの設定難易度・カスタマイズ量・データ移行の複雑さが大きく異なります。また、提案書に名前が挙がるシニアコンサルタントが実際にプロジェクトを担当するのか、それとも案件受注後に経験の浅い担当者に切り替えられるのかを、プレゼンテーションの段階で明示的に確認することも欠かせません。Epicorの公式認定資格(Epicor Certified Professional)を保有しているかどうかも、技術力を測るひとつの指標となります。
稼働後のサポート体制とパートナーシップの継続性
Epicor ERPの本当の価値は稼働後に発揮されます。導入直後は操作ミス・設定の不備・業務フローとシステムのギャップが次々と顕在化するため、迅速な問題解決ができるサポート体制が不可欠です。発注先を選ぶ際は、稼働後のサポートプランの内容(ヘルプデスクの対応時間・レスポンスタイムSLA・定期ハルスチェックの有無)を詳細に確認する必要があります。また、Epicor Kinetic はクラウドERPとして継続的にバージョンアップが行われるため、将来的なアップグレード支援や新機能の活用提案も含めた長期パートナーシップを結べる発注先を選ぶことが、中長期での投資対効果を高めるうえで重要です。
コミュニケーション能力と業界理解の深さ
ERP導入プロジェクトでは、システム側の技術的な問題だけでなく、社内の業務部門との調整・経営層への報告・エンドユーザーへのトレーニングなど、コミュニケーションが成功の鍵を握る場面が多数発生します。発注先の担当コンサルタントが製造業や流通業の業務フローを深く理解しており、現場の担当者と対等な会話ができるかどうかは、プロジェクトの円滑な進行に直結します。提案プレゼンテーションの段階で、担当コンサルタントが自社の業界課題について具体的な知識を持ち、わかりやすい言葉で質問に答えられるかを評価することが、発注先選定における重要な判断軸となります。
委託・依頼時の注意点と失敗を防ぐためのポイント

Epicor導入を外注する際、発注企業側が陥りやすい失敗パターンがいくつかあります。外注先に全てを任せきりにするのではなく、発注企業が主体的にプロジェクトをリードすることが成功の要件です。国内外のERP導入プロジェクトの統計では、プロジェクトの約半数が予算超過または納期遅延を経験しており、そのうち70%以上が発注側の関与不足や要件定義の不備に起因しているとされています。
NDA締結と知的財産権の明確化
Epicor導入プロジェクトでは、自社の業務フロー・財務データ・顧客データ・原価構造など、競合他社に知られると経営上の影響が大きい機密情報を外注先と共有する必要があります。発注先との契約前に必ずNDA(秘密保持契約)を締結し、情報の利用目的・保存期間・第三者提供の禁止・契約終了後の情報廃棄義務を明文化することが必要です。また、プロジェクトを通じて作成されたカスタムレポート・業務フロー設計書・データモデルなどの知的財産権が発注企業に帰属するのか外注先に帰属するのかも、契約書に明確に定めることが重要です。後になって「カスタマイズ部分のソースコードは弊社資産です」という主張をされるトラブルも実際に発生しているため、注意が必要です。
スコープ管理と変更管理プロセスの確立
Epicor導入で最も多いトラブルのひとつが「スコープクリープ」と呼ばれる、プロジェクト進行中の要件拡大による費用・工数の際限ない増加です。発注契約の段階で、スコープ変更が生じた場合の手続き(変更要求書の提出→影響評価→承認→追加費用・工数の合意)を明確に定めた「変更管理プロセス」を盛り込むことが、スコープクリープを防ぐ最善策です。また、プロジェクト憲章にもスコープの定義・除外事項・前提条件を明記し、ベンダーと発注企業の双方が署名することで、後の「言った言わない」トラブルを予防することができます。定期的なステアリングコミッティ会議(月次)を設け、スコープ・コスト・スケジュールの三点を定期モニタリングする体制を整えることを強く推奨します。
社内オーナーシップとステークホルダー巻き込み
ERP導入の最大の失敗要因のひとつが、現場の業務部門や経営層の関与不足による「プロジェクトの孤立」です。Epicorのような統合ERPは、製造・購買・販売・財務など複数の部門にまたがるシステムであるため、IT部門だけでなく各業務部門の主要メンバーをプロジェクトチームに参画させることが不可欠です。発注前の段階から、プロジェクトオーナー(通常は経営層またはCIO)・プロジェクトマネージャー・各業務部門の「スーパーユーザー候補」を明確に定め、外注先との合同プロジェクトチーム体制を構築することを、RFPの要件としても明示することをお勧めします。外注先任せにせず、発注企業側も積極的にプロジェクトに関与することで、業務要件の伝達精度が高まり、成果物の品質が向上します。
まとめ

Epicor ERP導入を外注・発注する際の成功の鍵は、①発注前の目的明確化と内部体制構築、②質の高いRFP作成による適切な競争入札、③プロジェクト特性に合った契約形態の選択、④Epicor専門知識と業界理解を兼ね備えたパートナーの選定、⑤スコープ管理・変更管理・社内巻き込みによるプロジェクト推進の五点に集約されます。発注企業として「外注先に任せきり」ではなく、主体的にプロジェクトをリードする姿勢を持つことが、ERP導入プロジェクト成功の最も確実な道です。Epicor Kineticは製造業・流通業のDXを加速させる強力なプラットフォームであり、適切な発注・委託のプロセスを踏むことで、その真価を最大限に引き出すことができます。
riplaは、コンサルティングから開発まで一気通貫で支援できる企業です。IT事業会社として社内DXを推進してきた経験を活かし、Epicorをはじめとする基幹システムの導入・外注支援において、要件定義から発注先選定サポート・PMO支援・稼働後の定着支援まで、企業の業務要件に合わせた柔軟なサービスを提供しています。Epicor導入の外注・発注でお困りの際は、ぜひriplaにご相談ください。
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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
