富士通(富士通Japan株式会社を含む)が提供する国産ERP「GLOVIA(グロービア)」は、日本企業の会計ルール・商習慣を前提に設計されているという強みを持つ一方で、実際に自社の業務に導入した際に「本当に現場が使いこなせるのか」「自社独自の業務ルールが標準機能でどこまで再現できるのか」という不安は、国産・海外発を問わずERP導入プロジェクトに共通する課題です。カタログやデモ画面だけでは判断しきれないこの適合度を検証する工程が、PoC(Proof of Concept:概念実証)・プロトタイプ・モックアップ開発です。GLOVIAは大企業向けのGLOVIA SUMMIT/G2、中堅企業向けのGLOVIA iZ、業種特化型のGLOVIA smart/OM、中小企業向けのGLOVIA きらら、そして2026年4月から提供が始まった統合製品「GLOVIA One」まで幅広い製品ラインナップを持つため、PoCの段階では機能の適合度だけでなく「自社の規模にはどの製品ラインナップが適しているか」という選定の視点も同時に検証できる点が特徴です。
本記事では、GLOVIA導入におけるPoC・プロトタイプ・モックアップ開発に焦点を当て、その目的と国産ERPとしての検証のしやすさ、標準的な進め方と期間・費用の目安、GLOVIA固有のPoCで確認すべきポイント(日本特有の商習慣への適合確認、製品ラインナップ選定のためのモックアップ活用)、そしてPoCでよくある失敗パターンと成功のポイントまでを体系的に解説します。PoCは「やるかやらないか」ではなく「どこまで丁寧に、何を目的にやるか」で本契約後の手戻りとコストを大きく左右する工程です。これから導入パートナーとPoCの計画を立てる方にとって、実践的な判断軸を持ち帰っていただける内容を目指しています。
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・GLOVIA導入の完全ガイド
GLOVIA導入におけるPoCの目的と全体像

PoC・プロトタイプ・モックアップ開発は、GLOVIAの本契約前に、自社の実際の業務データやユースケースを使ってシステムを動かし、機能面・業務適合面での検証を行う工程です。契約後に追加のカスタマイズが次々と発生することが、ERP導入プロジェクトにおけるコスト膨張の最大の要因であるとされており、これを防ぐために本契約前の実機検証が重要な役割を果たします。特にGLOVIAのような統合基幹システムの導入では、PoCの真の目的は単なる機能検証にとどまらず、現場の担当者が実際にシステムを使いこなせるかという「現場受容性」の検証にあります。マニュアルを渡されなくても直感的に操作できるか、既存の業務フローと大きくかけ離れていないか、決算や請求処理といった重要な業務が実データで最後まで問題なく流れるかを、契約前の段階で確かめておくことが、稼働後の混乱を防ぐ最大の予防策になります。GLOVIAは日本企業の会計ルール・商習慣を前提に設計されている国産ERPであるため、この現場受容性の検証において「そもそも土台となる業務ロジックが日本の実務に沿っている」という安心感がある一方で、自社固有の商習慣や既存システムとの連携要件がどこまで標準機能でカバーできるかは、製品によらず実機で確認する必要があります。
PoCの2つの目的
GLOVIA導入におけるPoCには、大きく2つの目的があります。1つ目は、自社業務との適合度(現場受容性)の検証です。パンフレットやデモ画面だけでは分からない「現場が実際に使いこなせるか」を、実データ・実業務フローに近い形で検証します。特に会計・人事給与・販売管理・生産管理といった複数の業務が連動する統合ERPでは、ある部門の入力が別部門の帳票にどう反映されるかといった業務横断的な流れを確認することが重要です。2つ目は、不要なカスタマイズの削減です。「自社特有」と思い込んでいた業務が、実は標準機能で対応可能だと分かれば、それだけで高額な追加開発を防ぐことができます。標準機能で不足する要件へのアドオン開発費用は、初期導入費用の3〜4割程度を占める最大のコスト増要因になるとされており、この削減インパクトは非常に大きいものです。PoCの段階で「これだけは譲れない要件」を明確にし、それが標準機能で満たせるかを見極めることが、後工程での手戻りと追加コストを最小化する最も効果的な方法です。
国産ERPとしてのPoCにおける利点
GLOVIAが国産ERPであることは、PoCの進めやすさにも一定の利点をもたらします。海外発のERPパッケージのPoCでは、まず標準機能が日本の会計処理・商習慣にそもそも対応しているかどうかという基本的な確認から始める必要がありますが、GLOVIAの場合は開発当初から日本企業の業務プロセスを前提に設計されているため、この基本的な適合性の確認に要する時間を短縮しやすく、より早い段階で自社固有の細かな業務ルールの検証に集中できるという利点があります。また、手形管理、独自の請求ルール、多段階の稟議・承認フローといった日本企業特有の複雑な業務パターンについても、標準機能がある程度これらを想定して設計されているため、PoCの段階で「まったく対応できない」という致命的な問題が発覚するリスクは、海外発パッケージに比べて相対的に低いと考えられます。ただし、これは「PoCを省略してよい」という意味ではなく、あくまで検証の効率が高まるという意味であり、自社固有の細かな業務ルールについては引き続き実データでの検証が欠かせません。
PoCの標準的な進め方と期間・費用の目安

GLOVIA導入のPoCを効果的に進めるには、対象範囲を絞り込み、段階的に検証を広げていく進め方が有効です。ここでは標準的な進め方のステップと、期間・費用の目安について解説します。
PoCの進め方のステップ
GLOVIA導入のPoCは、一般的に「対象範囲の設定」「実データの準備」「実機検証」「フィット&ギャップの整理」という4つのステップで進めます。まず対象範囲の設定では、いきなり会計・人事給与・販売管理・生産管理のすべてを検証するのではなく、「特定の1部門×1業務プロセス」といった限定スコープからスタートするのが現実的です。次に実データの準備では、実際の取引データ・マスタデータの一部を用意し、テスト環境にインポートします。この際、個人情報や機密情報を含むデータについては、マスキングや匿名化などの適切な処理を施す必要があります。続く実機検証では、現場の担当者に実際に操作してもらい、日常業務に近いシナリオ(受発注の入力から出荷、請求書の発行、会計仕訳への反映といった一連の流れ)を通しで確認します。最後にフィット&ギャップの整理では、検証を通じて明らかになった「標準機能で対応できる範囲」と「対応できない範囲」を一覧化し、対応できない部分について、業務運用の見直しで吸収するのか、アドオン開発で対応するのかを判断します。このステップを踏むことで、契約後に想定外の追加開発が発生するリスクを大きく減らすことができます。なお、これら4つのステップは一度きりで終わらせるのではなく、対象範囲を広げながら複数回繰り返す「反復型」で進めることも有効です。最初のPoCで得られた知見をもとに評価基準やシナリオを見直し、次の対象業務でより精度の高い検証を行うというサイクルを回すことで、限られた期間・予算の中でも検証の質を高めていくことができます。
PoCの期間・費用の目安
GLOVIA導入のPoCにかかる期間は、検証範囲によって大きく異なります。小規模なテスト運用であれば、2〜4週間程度、実データを用いた検証を行うのが一つの目安です。特定の業務範囲(例えば生産管理の一部工程や、会計の月次決算処理)に絞った本格的なPoCの場合は、数ヶ月単位の期間を要することもあります。費用面では、本格的なプロトタイプ構築・検証には数百万円〜数千万円規模の費用がかかり得る一方で、実データでのテスト運用を自社のメンバー中心で巻き取ることで、外部委託に比べて30万〜80万円程度の費用削減効果が見込めるとされています。さらに重要なのは、PoCの段階で不要な要件を早期に削ることで、導入費用全体の3〜4割を占めるカスタマイズ費用を大幅に圧縮できるという点です。PoC自体には一定の期間・費用がかかりますが、それによって回避できる後工程の手戻りコストを考えれば、多くの場合PoCへの投資は十分に見合うものといえます。予算上の制約からPoCの期間・費用を圧縮したい場合は、すべての業務を横並びで検証するのではなく、業務上の重要度やリスクの高さに応じて優先順位を付け、最もミスが許されない領域(例えば会計処理や請求業務)から重点的に検証するというメリハリのある進め方が現実的な落としどころになります。
GLOVIA固有のPoCで確認すべきポイント

一般的なERPパッケージのPoCで確認すべき事項に加えて、GLOVIA導入のPoCでは固有に確認しておきたいポイントがあります。とりわけ「日本特有の商習慣への適合確認」と「製品ラインナップ選定のためのモックアップ活用」は、GLOVIAならではの検証項目です。
日本特有の商習慣への適合確認
GLOVIAのPoCでは、自社の会計処理・請求ルール・承認フローといった、日本企業特有の複雑な業務パターンについて、実データを流し込んで「最後まで処理が問題なく流れるか」を確認することが特に重要です。例えば、手形の発行・裏書・割引・決済といった一連の処理、部門間での按分を伴う複雑な原価配賦、複数の承認者を経る多段階の稟議フロー、インボイス制度に対応した適格請求書の発行と仕入税額控除の計算処理などは、標準機能で対応可能な範囲とそうでない範囲が業種・企業ごとに異なるため、実機でのシミュレーションが欠かせません。GLOVIAは日本の会計ルールを前提に設計されているため、これらの業務が「まったく想定されていない」という事態は起こりにくいものの、自社独自の細かいルール(例えば取引先ごとに異なる締め日・支払サイト、部門特有の承認権限の設定など)については、パラメータ設定の範囲で対応できるのか、それともアドオン開発が必要なのかを、PoCの段階で明確に切り分けておく必要があります。
製品ラインナップ選定のためのモックアップ活用
GLOVIAは大企業向けのGLOVIA SUMMIT/G2から中小企業向けのGLOVIA きららまで、幅広い製品ラインナップを持つことが特徴であるため、PoCの段階で「自社の規模と業務要件にはどの製品ラインナップが最も適しているか」を見極める視点も重要になります。同じ業務範囲であっても、必要な拡張性やカスタマイズの自由度によって、選ぶべき製品ラインナップは変わってきます。将来の事業拡大や拠点展開を見据える企業であれば、2026年4月から提供が始まった統合製品「GLOVIA One」のようなクラウドのマルチテナント構成・API連携・AIエージェント機能を備えた製品の画面モックアップを実際に触ってみることで、自社の将来像に合っているかを確認できます。一方、特定業種の業務要件に強く最適化された機能を重視する場合は、業種特化型のGLOVIA smart/OMのモックアップで、その業種テンプレートがどこまで自社の実務にフィットするかを確認する方が有効なケースもあります。PoCの段階で複数の製品ラインナップのモックアップを比較検討することで、契約後に「もっと自社に合う製品があったのでは」という後悔を避けることができます。特に、事業承継やM&Aによる子会社・関連会社の統合を控えている企業や、数年内の海外展開を計画している企業にとっては、現時点の規模だけでなく3〜5年後を見据えた製品選定の視点が欠かせません。モックアップを使って将来の利用イメージを関係者間で共有しておくことは、経営層への説明資料としても有効に活用できます。
PoCでよくある失敗パターンと成功のポイント

PoCを実施していても、進め方を誤ると期待した効果が得られないことがあります。ここでは、GLOVIA導入のPoCでよく見られる失敗パターンと、それを避けるための成功のポイントを解説します。
よくある失敗パターン
GLOVIA導入のPoCで陥りやすい失敗パターンには、いくつかの共通点があります。1つ目は、現場を無視した選定です。情報システム部門が機能・価格だけを基準にPoCの範囲や評価軸を決めてしまい、実際に日々システムを操作する現場の担当者の意見が反映されないと、稼働後に「以前のExcelの方が使いやすかった」という反発を招き、システムが形骸化してしまいます。2つ目は、検証範囲を広げすぎることです。会計・人事給与・販売管理・生産管理のすべてを一度にPoCで検証しようとすると、検証項目が膨大になり、かえって本質的な適合性の確認がおろそかになってしまいます。3つ目は、Excel連携の不便さを軽視することです。PoCの段階でCSV出力・取り込みを伴う周辺システムとの連携を試すと、文字化けや列のズレといった細かな問題が頻発することがあり、これを本番運用直前まで放置すると、稼働後に現場の負担が急増します。これらの失敗は、いずれもPoCの計画段階で回避可能なものであり、事前に想定しておくことが重要です。4つ目として、PoCの成果物や検証記録を体系的に残さないまま終えてしまうケースも見落とされがちです。口頭でのフィードバックだけで終わらせてしまうと、担当者の異動や記憶の風化によって、契約後の設計フェーズで「なぜその機能を選んだのか」という根拠が失われ、同じ論点を何度も蒸し返す非効率が生じます。検証シナリオ、確認結果、標準機能で対応できた範囲とできなかった範囲を一覧化したドキュメントを残しておくことは、地味ながらプロジェクト全体の生産性を大きく左右します。
PoCを成功させるためのポイント
GLOVIA導入のPoCを成功させるためには、いくつかの実践的なポイントがあります。1つ目は、現場のキーパーソンを検証の初期段階から巻き込むことです。情報システム部門だけでなく、実際にシステムを操作する現場の担当者に検証シナリオの設計から参加してもらうことで、机上の空論ではない実践的な評価が可能になります。2つ目は、検証範囲を絞り込み、優先順位の高い業務プロセスから着手することです。「1業務×1部門」といった限定的なスコープから始め、そこでの検証を踏まえて段階的に範囲を広げていく方が、効率的かつ確実に適合性を見極められます。3つ目は、「これだけは譲れない要件」をあらかじめリスト化し、PoCの評価基準として明文化しておくことです。評価基準が曖昧なままPoCを進めると、担当者の主観によって評価が左右されてしまい、後工程での認識齟齬につながります。4つ目は、PoCの結果を踏まえたFit&Gap分析のレポートを、契約前に導入パートナーと共有し、対応方針(標準機能で運用を合わせるか、アドオン開発で対応するか)について合意形成しておくことです。この一連のプロセスを丁寧に踏むことが、契約後の手戻りとコスト超過を防ぐ最も確実な方法になります。
まとめ

本記事では、GLOVIA導入におけるPoC・プロトタイプ・モックアップ開発について、その目的と全体像、標準的な進め方と期間・費用の目安、GLOVIA固有のPoCで確認すべきポイント、そしてよくある失敗パターンと成功のポイントを解説しました。PoCの目的は、現場受容性の検証と不要なカスタマイズの削減にあり、GLOVIAが国産ERPとして日本企業の業務プロセスを前提に設計されている点は、基本的な適合性確認の効率を高める利点になります。一方で、手形管理や多段階の稟議フローといった日本企業特有の複雑な業務パターンや、自社の規模にはどの製品ラインナップが適しているかという選定の視点は、GLOVIA導入のPoCならではの確認事項です。PoCの期間は小規模なテスト運用で2〜4週間、特定業務に絞った本格的な検証で数ヶ月単位が目安となり、この段階への投資は後工程の手戻りコストを大きく削減する効果があります。PoCを成功させるためには、現場のキーパーソンを早期に巻き込み、検証範囲を絞り込み、評価基準を明文化したうえで、Fit&Gap分析の結果を契約前に導入パートナーと共有することが重要です。導入を検討される際は、自社の業務要件と規模を整理したうえで、GLOVIAの導入実績が豊富なパートナーとともにPoCの計画を立てることをお勧めします。丁寧なPoCの積み重ねは、単に契約前のリスク回避にとどまらず、その後の設計・開発フェーズにおける仕様のブレを減らし、結果としてプロジェクト全体の期間短縮にもつながる投資であるという認識を、発注側・パートナー双方が共有しておくことが成功への近道です。
▼全体ガイドの記事
・GLOVIA導入の完全ガイド
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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
