Infor導入の選定では、生産形態や業種に合うCloudSuiteのエディションを絞り込み、導入パートナーとあわせて比べることが大切です。自社の事業構造に合うかは、機能一覧より実際の業務に当てはめて確かめるのが確実です。合わないと、想定外のアドオン開発につながることがあります。
選定は次の流れで見ていくと、比べる観点を整理できます。
- 導入前の課題整理
- エディションの選び方
- 導入形態とパートナーの比較
- RFPとPoCの進め方
Infor導入の全体像は、次の記事で詳しく扱っています。
▼全体ガイドの記事
・Infor導入の完全ガイド
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Infor導入検討前に整理すべき自社の課題
発注側の担当者は、選定を始める前に、課題がどこにあるかを特定します。生産管理やサプライチェーンに加えて、財務と拠点間連携も対象になります。
課題を具体化しておくと、比較するエディションを絞り込みやすくなります。逆に、不満が漠然としたままだと、機能の印象だけで選んでしまいかねません。
拠点・事業ごとのシステム分散の確認
複数拠点では、生産管理や会計システムが拠点ごとに異なる場合があります。連結決算でデータ形式を手作業でそろえたり、在庫を拠点間で共有できなかったりする状況は、情報連携の課題にあたります。
発注側は、使用中のシステムと連携にかかる工数を拠点ごとに洗い出しておきます。
業種フィットと事業規模の課題の切り分け
既存の汎用ERPで、業種ならではの業務フローをアドオン開発で無理に補っている場合は、業種フィットの低さが課題です。個別受注生産のルーティングや業界特有のEDI対応などが、その典型です。
拠点数や取引規模の拡大に、システムがついていけていない場合は、事業規模への対応力が課題になります。
この二つは似ているようで解決策が異なります。そのため、どちらが自社にとってより深刻かを先に切り分けておくと、後の評価軸への重み付けがぶれにくくなります。
CloudSuiteエディションの種類と選び方

CloudSuiteは大きく4つに分けられ、製造業向けのディスクリート製造型とプロジェクト型製造、製造業以外向けの財務・購買特化型と流通特化型があります。分類名だけで決めず、自社の優先業務を標準機能で処理できるかを確かめます。
同じ製造業でも、見込生産か個別受注生産かで候補は変わります。そのため、業種名に加えて生産形態まで照らし合わせます。
ディスクリート製造型とプロジェクト型の違い
見込生産や小ロット多品種生産が中心のディスクリート製造業では、CloudSuite Industrialのような系譜のエディションが候補になります。一方、航空宇宙・防衛や産業機械のように、個別受注生産(ETO)やプロジェクト単位の原価管理が中心となる業種では、CloudSuite Industryの系譜が想定する業務モデルに近くなります。
自社の受注形態が見込生産寄りかプロジェクト型寄りかを最初に見極めると、候補を絞りやすくなります。
財務・購買特化型と流通特化型
製造業以外には、財務・購買・在庫の統制を重視する医療・公共・金融サービス向けのエディションがあります。卸売・物流業向けには、在庫最適化と受注処理の迅速化を重視したエディションが用意されています。
自社が製造業かサービス業か、また流通・物流の比重が大きいかによって、比べるエディション群が変わります。そのため、業種の整理を飛ばして機能一覧だけを比べないことが大切です。
導入形態とパートナー選定の考え方
CloudSuiteはクラウド提供が基本のため、導入形態そのものより、どの導入パートナーと組むかがプロジェクトの成否を左右しやすくなります。そこで、自社に近い業種・規模での導入実績があるパートナーを見極めることが欠かせません。
同じエディションでも、担当するパートナーの経験やフィット&ギャップ分析の進め方によって、導入期間やアドオン開発の量は大きく変わり得ます。
クラウド提供の基本形と、運用負担・自由度のバランス
CloudSuiteの各エディションは、ベンダー側が運用するクラウド基盤上で提供されるのが基本の形です。自社でサーバーを調達・監視する負担は小さくなる一方、オンプレミス型パッケージに比べると、カスタマイズの自由度は相対的に抑えられる傾向があります。
そこで、自社が独自の業務ルールをどこまでシステムに反映させたいかを整理します。標準機能への合わせ込みで足りる部分と、連携や個別開発が必要になる部分を、事前に分けておきます。
導入パートナーの実績と支援体制の確認
Infor導入は、製品の機能に加えて、要件定義から保守までをどのパートナーが担うかによって、進み方が大きく変わります。
選定段階では、自社と同じ業種・同程度の規模での導入実績があるか、フィット&ギャップ分析やPoCの支援経験があるかを、具体的に確かめます。さらに、本稼働後の保守や法改正対応を、どこまで請け負ってくれるかも確認します。
エディションの選定とパートナーの選定は、別々ではなくセットで検討するのが望ましいです。
製品選定で比較すべき評価軸
候補エディションは、業務範囲とInfor OSの活用度、既存システムとの連携を基準に比べます。マルチエンティティ対応と料金体系も、同じ評価軸に加えます。
候補ごとに同じ質問を投げ、デモの結果をそろえて見ます。そうすると、印象ではなく適合度で判断しやすくなります。
評価担当者が自由な基準で採点すると、営業説明の分かりやすさに評価が引っ張られかねません。そのため、確認方法まで統一しておくことが大切です。
業務範囲とInfor OSの活用度
第一に、生産管理から財務までの業務を対象に、どこまでが標準機能でカバーされ、どこからが追加設定や開発になるかを見ます。サプライチェーンや資産管理も、対象に含めて確かめます。
第二に、Infor OSに含まれるAIエージェントや分析基盤(Birst)、統合基盤(ION)を、自社が実際にどこまで活用できるかを見ます。
標準搭載されているという説明は、判断の出発点です。自社のデータ整備状況やIT体制で、どこまで使いこなせるかを、デモで見極めます。
既存システム連携とマルチエンティティ対応の確認
既存の会計システムや周辺システムとの連携では、対象データと同期方向を確かめます。頻度やエラー時の復旧方法も見ておきます。
連携の確認では、「APIがある」という回答に加えて、どの項目がどの頻度で同期されるかを聞きます。失敗時に、どこまで自動でリトライされるかも、踏み込んで質問しておきます。
複数拠点や複数事業を持つ企業では、通貨、言語、法制度の違いに、標準機能でどこまで対応できるかを比べます。あわせて、追加設定が必要な範囲がどこかも確かめます。「マルチエンティティ対応」という説明で済ませず、自社に必要な国・地域固有の要件を一つずつデモで見ると、認識違いを防げます。
クラウド・個別開発・ハイブリッドの選び分け
業種フィット率の高い標準機能と、法改正・バージョンアップへの継続的な追随を重視するなら、CloudSuiteの標準導入が第一候補になります。
既存パッケージでは吸収しきれない独自の業務プロセスが競争力の源泉なら、個別開発が候補になります。標準業務と独自業務を分けられるなら、ハイブリッドが適しています。
判断を誤ると、両極端の失敗につながります。標準化すべき業務まで個別開発すると保守負担が膨らみ、守るべき独自性まで標準機能に合わせると競争力を損ないます。
CloudSuiteと個別開発の判断基準
CloudSuiteは業種特化エディションによって、短期間で標準機能を使い始めやすいのが特徴です。AI・分析・統合基盤も、最初から使える点が強みです。
ただし、利用料に加えて、アカウント管理や仕様変更への対応、パートナーとのやり取りといった社内工数は発生します。個別開発は、自社独自の業務プロセスやシステム連携に合わせられます。その分、要件定義、テスト、保守を自社側で担う範囲が大きくなります。
判断は、機能を細かく作り込めることよりも、その独自性に投資する事業上の理由があるかどうかで決めます。
ハイブリッドにおける責任分界
複数事業を持つ企業では、標準化しやすい生産・財務業務をCloudSuiteに任せる方法があります。そのうえで、自社独自の管理帳票や特殊な承認フローだけを、別システムや個別開発でつなぎます。
この場合、CloudSuiteと既存システムのどちらを正のデータとするかを、事前に取り決めておく必要があります。連携エラー時に、どちらが処理を担うかも決めておきます。
連携の工数は、接続対象や項目数によって大きく変わります。そのため、一般的な固定相場を前提にせず、入出力項目と例外処理を示して、個別に見積もってもらいます。
比較表・RFPとPoCの進め方

比較表やRFPには、機能の有無だけでなく、実際の業務シナリオと合格条件を示します。デモも、説明を聞くだけでなく、自社の生産形態や取引構造を反映した条件で確かめます。
資料や口頭の説明だけで適合度を判断すると、実データを投入した段階で、想定外の設定作業が見つかることが少なくありません。
RFPの業務シナリオと非機能要件
RFPには、対象拠点や利用者数、生産形態といった前提を書きます。取引規模や現行フロー、解決したい課題も、あわせて記載します。そのうえで、実在する受注パターンや承認段階、例外処理を示します。
非機能要件では、権限や操作ログ、バックアップを取り上げます。障害時対応、サポート窓口、データ保管場所も含めます。
多通貨・多言語対応の要否も、RFPに明記しておきます。ただし、すべてを必須にすると候補を失いかねません。そこで、各要件を「必須」「望ましい」「将来」の3段階に分けておくと、その事態を避けやすくなります。
PoCでの主要工程のフルパス確認
PoCでは、実際の受注データを使い、受注から財務連携までの主要工程を一通り試します。正常系だけでなく、仕様変更や途中でのキャンセル、複数拠点間のデータ連携まで含めるのが望ましい進め方です。
合格条件には、処理時間や手入力の回数を記録します。加えて、問い合わせが必要になった箇所や、データ連携で欠落した項目も書き留めます。PoCを小さな本番として扱うと、デモでは見えない運用負荷を比べられます。
Infor導入前に確認しておきたいポイント

候補を絞ったあとは、事業規模だけでなく、データ移行の範囲まで確かめます。ベンダーロックインのリスクや契約条件も、あわせて確認します。
比較表の機能欄では見えにくい条件を、事前に検証しておきます。そうすると、導入後に運用が止まるリスクを抑えられます。
ここでの確認を省くと、契約後に「聞いていた話と違う」という食い違いが生じることがあります。その場合、追加費用や工期延伸の交渉に時間を取られます。
単一拠点・小規模の場合の検討価値
複数拠点でなくても、業種特有の業務フローを既存システムがカバーしきれず、アドオン開発が積み上がっている場合は、検討する価値があります。一方で、既存の汎用ERPで大きな支障なく運用できているなら、置き換えの必要性は薄いといえます。
判断に迷うときは、現行システムの保守費用とアドオン開発の累積費用を数年単位で見積もります。そのうえで、Infor導入後の想定コストと比べると、意思決定の材料になります。
旧システムからのデータ移行範囲の確認
既存の生産管理・会計データを、新しいエディションへどこまで移行できるかを、事前に洗い出しておきます。移行できない項目が何かも、同じ作業で確かめます。
過去の取引履歴や図面・仕様情報のように、業種によって重要度の高いデータは、移行の可否と移行後の検証方法まで具体的に確認しておくことが望ましい進め方です。移行対象を「全件そのまま移す」前提で計画すると工数が膨らみやすいため、直近数年分を本移行し、それ以前は参照用に残すといった段階的な方針も検討に値します。
ベンダーロックインのリスクと契約条件の確認
クラウド型のエディションを選ぶと、将来ほかの仕組みへ移る際に、契約・生産・財務の履歴データを一般的な形式で取り出せるかが課題になり得ます。そのため、契約前に、解約時のデータ出力形式、API連携の継続可否、サポート終了時の移行支援の有無を確認しておくと、将来の選択肢を狭めずに済みます。
具体的な候補製品を確かめたい場合は、Infor導入のパッケージ・クラウド製品一覧もあわせてご覧ください。
まとめ
Infor導入の選定では、拠点・事業ごとのシステム分散と業種フィットの課題を特定します。そのうえで、ディスクリート製造型とプロジェクト型、財務・購買特化型と流通特化型のどれに近いかで、エディションの方向性を絞り込みます。
次に、業務範囲とInfor OSの活用度、既存システム連携を基準に候補を比べます。マルチエンティティ対応も比べる観点に含め、実データを使ったPoCで主要工程を確かめます。
課題診断からエディションとパートナーの同時絞り込み
業種フィットやInfor OSの活用度、既存システム連携は、同じ質問で比べます。マルチエンティティ対応も加えて確かめれば、エディション名の印象に左右されず候補を絞り込めます。
同時に、導入パートナーの実績と支援体制も評価します。ここが、Infor導入を成功させる分かれ目になります。
実データによるPoCでの確認
資料に並ぶ機能数よりも、自社の受注から生産、財務連携まで途切れずに処理できるかを見ます。関係者と例外処理まで試し、削減できた時間と残る運用工数を測ったうえで、決めてください。
既製のCloudSuiteエディションで、独自の業務プロセスや基幹システム連携を吸収しきれない場合は、個別開発やハイブリッド構成も検討の対象になります。
riplaは、フルスクラッチ開発の立場から、エディション比較で明らかになった不足機能の整理や、自社業務に合わせたシステム構築を支援しています。
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・Infor導入の完全ガイド
▼RFP作成前に読みたい無料ホワイトペーパー
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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
