IT戦略コンサルとは?|考え方/特徴/仕組み/目的を解説

IT戦略コンサルとは、情報システム部門が中期的なシステム刷新やIT投資の判断を進めるために、中期IT計画の策定からグランドデザイン、ITガバナンス体制の構築までを一貫して支援するサービスです。

経営会議では「DXを進めろ」と号令がかかる一方で、現場からは老朽化したシステムの保守要望が絶えません。限られたIT予算と人員をどこに配分すべきか判断がつかないまま、時間だけが過ぎていきます。そこで、IT戦略コンサルは個別システムの刷新だけでなく、事業目標に沿った投資判断と実行計画も支援します。

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IT戦略コンサルの全体像と特徴

IT戦略コンサルの全体像を確認する情報システム部門の担当者

IT戦略コンサルは、特定のITベンダーやパッケージを売り込まず、情報システム部門が抱える中期的な投資判断そのものを支援する専門家です。

コンサルタントはまず、既存システムの構成、保守切れのリスク、IT予算の使途を洗い出します。あわせて、情シス部門の人員やスキル、ベンダーロックインの状況も把握します。そのうえで、3〜5年先を見据えたシステム全体のあるべき姿と投資計画を描きます。

その特徴は、個別システムの機能改善より上位の意思決定を支援する点にあります。具体的には、情報システム部門全体の投資判断とガバナンスをどう組み立てるかを扱います。

上位の意思決定を支えるため、支援は課題の整理から、投資の優先度を決めて実行し、効果を検証するところまでに及びます。

  • 事業目標とIT課題の整理
  • 投資の優先度とロードマップ
  • 実行と効果検証の支援

支援の中心は、個別システムの刷新ではなく投資判断そのもの

IT戦略コンサルが扱うのは、老朽化したシステムをどう入れ替えるかという個別の技術検討だけではありません。既存システムのデータモデルや外部連携、業務フローを一覧にし、どの投資を優先すべきかという評価基準を整理します。

そのうえで、経営層が求めるKPIや事業目標と、情報システム部門が持つ制約条件をすり合わせ、限られた予算と人員の配分方針を具体化します。個別最適の積み重ねではなく、情報システム全体の投資ポートフォリオを描く点が、この支援の大きな特徴です。

この過程では、「なるべく早く老朽化リスクを解消したい」という情シス部門の視点と、「投資額を抑えて事業成長に予算を回したい」という経営層の視点が食い違いやすくなります。そこでIT戦略コンサルは両者の間に立ち、リスクの定量化や投資対効果のシミュレーションを通じて、社内の合意形成を前に進める役割も担います。

情報システム部門が主体となる立場が前提

IT戦略コンサルの依頼元は、経営企画部門ではなく情報システム部門であることが一般的です。情報システム部門が主体となり、事業戦略そのものを経営層に提言するよりも、中期経営計画の方向性を踏まえて、技術・インフラレイヤーの投資計画とガバナンス体制を整理する立場に近いといえます。

ただし、情シス部門が主体だからといって、経営層と切り離された技術論だけで完結するわけではありません。策定した投資計画やガバナンス方針は、最終的に経営層への説明と承認を経る必要があります。そのため、契約前に、情シス部門の実務感覚と経営層への説明責任の両方に応えられるコンサルタントかどうかを見極めておくことが欠かせません。

ポイント

依頼先がIT戦略コンサルの支援を担えるかは、個別システムの機能改善ではなく、中期の投資判断とガバナンスまで組み立てられるかで見分けます。

DX戦略コンサルとの違い:経営レイヤーと情シスレイヤー

DX戦略コンサルとIT戦略コンサルの違いを整理する担当者

IT戦略コンサルは、名称の似たDX戦略コンサルと混同されがちですが、両者が主に対象とする階層とゴールは明確に異なります。この違いを押さえておくと、いま自社に必要な支援がどちらかを見極めやすくなります。

経営層主体の超上流工程であるDX戦略コンサル

DX戦略コンサルは、経営層・取締役会を主な対象とします。現状アセスメントからDXビジョンの策定、それを中期経営計画に組み込む戦略ロードマップ策定、取締役会承認までを扱う、事業そのものの方向性に関わる超上流工程が中心です。

検証の主眼は、「その事業モデルは顧客に受け入れられるか」というビジネスモデル仮説の検証に置かれます。

情シス主導の技術・インフラレイヤーであるIT戦略コンサル

IT戦略コンサルは、情報システム部門が主体となって進めます。中期IT計画やグランドデザイン、IT投資計画の策定が中心で、システム間の全体最適を図ります。ITガバナンス体制の構築やIT組織・人材戦略も含みますが、対象は技術・インフラレイヤーの中期計画に限られます。

DXビジョンという事業構想そのものを扱うのではなく、その構想を支える情報システムをどう構築し、運用していくかという一段具体的な計画に踏み込みます。実際のプロジェクトでは、DX戦略コンサルが描いた中期経営計画とDXビジョンを前提に、必要な情報システムの全体像をIT戦略コンサルが具体化する役割分担になることもあります。

逆に、DXビジョンがまだない段階で中期IT計画の策定だけを依頼すると、経営目標との紐づけが弱いまま、老朽化対応中心の計画になりがちです。

ポイント

自社に必要なのが事業の方向性を決める支援か、その方向性を支える情報システムの中期計画かで、DX戦略コンサルとIT戦略コンサルのどちらが合うかが決まります。

IT戦略コンサルの仕組み:現状アセスメントからガバナンス構築までの4フェーズ

IT戦略コンサルの4つのフェーズの流れ

IT戦略コンサルのプロジェクトは、4つのフェーズで進みます。まず現状アセスメントを行い、次にグランドデザインを策定します。その後、IT投資計画・ロードマップと、ITガバナンス・組織戦略を並行して固めます。

全体構想からロードマップ策定までを通しで見ると、一般的に約3ヶ月〜6ヶ月(12週〜24週)を見込む案件が多くなります。

現状アセスメントからグランドデザイン策定まで

最初の現状アセスメントには、1〜1.5ヶ月程度を見込むのが一般的です。既存システムの構成、保守切れのリスク、ベンダーロックインの状況を洗い出し、情シス部門の人員・スキルも把握します。IT予算の使途は、現行維持のためのラン・ザ・ビジネス予算か、新規価値創出のためのバリューアップ予算かで区別します。

続くグランドデザイン(あるべき姿)策定には、1〜2ヶ月程度をかけます。ITアーキテクチャ全体像とクラウドを基本とするインフラ方針を具体化し、システム間のデータ連携基盤(API・EAI構想)やゼロトラストなどのセキュリティ方針も固めます。

IT投資計画とガバナンス・組織戦略の並行策定

IT投資計画・ロードマップの策定には1〜1.5ヶ月程度を見込みます。3〜5年の中期IT計画として、システム刷新・統廃合の時系列と年次の概算IT予算をまとめます。ITガバナンス・組織戦略の策定には0.5〜1ヶ月程度がかかり、グランドデザインや投資計画の検討と並行して進むことが多くなります。

中堅企業では、コンサルタント2〜3名が稼働する体制で、月額300万〜500万円程度、3ヶ月の総額で1,000万〜1,500万円規模になります。対象システムが数百に及ぶ大企業では、月額500万〜1,500万円以上、6ヶ月の総額で3,000万〜1億円規模になることもあります。費用感は、企業規模と対象範囲によって大きく変わります。

ポイント

社内に現状の整理や中期IT計画がどこまであるかで、4つのフェーズのうちどこから依頼するかが変わります。全体を一度に任せるかどうかも、同じ基準で判断できます。

IT戦略コンサルが提供する主な機能・支援内容

IT戦略コンサルが提供する主な支援内容

支援内容は事業者によって幅がありますが、共通して見られる機能は2つです。ひとつは、現状を洗い出して予算の構造を一覧にすることです。もうひとつは、ベンダーマネジメント体制を再定義することです。

それぞれの目的を理解しておくと、契約範囲を検討するときの判断材料になります。

「守りのIT」と「攻めのIT」の予算配分の再構成

多くの企業では、既存システムの維持保守にあたる「守りのIT」がIT予算の8割以上を占めています。そのため、データ活用や新規サービス創出に向けた「攻めのIT」に予算を回す余地が乏しくなりがちです。

IT戦略コンサルは、既存システムを洗い出した結果をもとに予算の内訳を一覧にします。そのうえで、守りと攻めのバランスをどう組み直すかを、ロードマップの核として示します。目的は、予算を単純に削ることではありません。優先度の低い保守案件を整理し、浮いた予算を戦略的な投資へ回す道筋を描くことにあります。

ベンダーマネジメント体制の再定義と内製化への支援

もう一つの重要な機能は、情報システム部門の役割そのものを再定義することです。従来の「運用保守を回す担当」から、「IT企画とベンダーコントロールを担う役割」へ移していきます。

そのための支援として、シャドーIT防止の全社ITルール整備、ベンダーマネジメント方針の策定、内製化に向けた採用・育成計画の立案までを手がけます。

狙いは、ベンダーに任せきりだった判断を情シス部門側に取り戻す体制づくりです。

ポイント

予算の構造を整理したいのか、ベンダーとの関係を組み直したいのかで、契約範囲に含める機能の優先順位が変わります。

導入目的と得られる効果

IT戦略コンサル導入の目的を整理する会議

IT戦略コンサルを利用する目的は、中期計画の資料を作ることだけではありません。事業目標とIT投資を結びつけ、経営層への説明責任を果たせるガバナンス体制を築くことが、経営とシステムの両面に関わる効果として期待されています。

中期経営計画とIT投資の紐づけによる老朽化対応止まりの防止

情報システム部門だけで中期IT計画を作ると、老朽化したシステムをどう延命・入れ替えるかという、対症療法的な計画に陥りがちです。IT戦略コンサルは、海外売上比率の向上やEC化率の向上といった中期経営計画の事業目標と、IT投資計画を紐づけます。その結果、単なる保守計画ではなく、事業成長を支えるIT投資として経営層に説明できる形に組み立てられます。

この紐づけができているかどうかで、経営層の投資承認を得られるかどうかが大きく変わります。

ITガバナンス体制の構築と経営への説明責任

経済産業省の「システム管理基準」では、IT戦略は一度立てて終わりではなく、組織を取り巻く環境変化を定期的に評価して、ビジネスモデルとIT戦略ビジョンを見直すことが求められています。あわせて、ITシステム利活用に関わるパフォーマンスとコストの目標設定・実績評価の方法を定め、モニタリングで是正措置を講じることも規定されています。

IT戦略コンサルは、情シス部門・経営企画・主要事業部門のトップからなる「ITステアリングコミッティ(IT戦略委員会)」の組成を支援します。自らはPMO事務局として、データや市場トレンドを中立的に提供します。

KPIダッシュボードで定量化しながら、外部の視点を交えて経営層への説明力を高めることが、導入効果の中心です。

ITベンダー・SIer・BPRコンサルとの違い

IT戦略コンサルと他の専門サービスとの違い

IT戦略コンサルは、ITベンダーの導入担当、システム開発を請け負うSIer、業務プロセス全体を扱うBPRコンサルと、役割が重なって見えることがあります。

しかし、それぞれの主な関心事と契約上の立場は異なります。混同したまま依頼すると、期待していた中立性や視座が得られないことがあります。そのため、依頼前に違いを押さえておくことが大切です。

自社製品や開発の実行を主な役割とするITベンダー・SIer

ITベンダーの担当者は、自社製品や自社クラウド基盤の導入を提案し、契約の獲得を目指す立場にあります。

SIerは、決まった方針や仕様に基づいてシステムを開発・構築することが主な業務です。まだ全体構想が固まっていない段階で中立的なグランドデザインを策定することは、本来の得意領域ではありません。

IT戦略コンサルは、これらの実行担当者とは異なり、契約や実装に利害を持たない立場から、現状分析、投資計画策定、ガバナンス構築を担うことに意味があります。

対象範囲の広さと着地点が異なるBPRコンサル

BPR(業務プロセス再構築)コンサルは、特定システムの導入の有無にかかわらず、組織全体の業務プロセスや役割分担そのものを見直すことを目的とします。

IT戦略コンサルも、業務フローを洗い出し、あるべき姿を整理します。ただし、その先には、情報システムの中期投資計画やグランドデザインという具体的な着地点があります。

BPRの検討は、システム刷新を伴わずに完結することもあります。一方で、IT戦略コンサルの支援は、情報システム全体の投資判断というゴールに向けて進みます。

ポイント

期待するのが中立な現状分析と投資計画か、製品導入や開発の実行か、業務プロセス全体の見直しかで、依頼先を選び分けます。

IT戦略コンサル導入前に確認しておきたいポイント

IT戦略コンサル導入前に確認しておきたいポイント

IT戦略コンサルを依頼するかどうかは、企業規模やシステム数だけで決まるものではありません。契約形態や体制、費用の考え方まで含めて整理しておけば、依頼後に「思っていた支援と違った」という行き違いを防げます。

策定後の月次モニタリングと年次ローリングの稼働率と費用

中期IT計画は、策定して終わりではなく、環境変化に応じた定期的な見直しが前提です。月次モニタリング(IT戦略委員会への同席、各プロジェクトの進捗評価、KPI測定支援)は、月額50万〜150万円程度、稼働率にして0.2〜0.5人月程度が目安になります。

年次アップデート(次年度予算策定に合わせたローリング計画の見直し)は、期間2〜3ヶ月、費用300万〜1,000万円程度を見込むことが多くなります。秋から冬にかけての次年度予算策定シーズンに、実施が集中する傾向があります。

情シス部門に経験者が少ない場合

中期IT計画を求められているが何から手をつけてよいか分からない場合や、システム刷新の優先順位を客観的な基準で決められない場合は、IT戦略コンサルの利用を検討する価値があります。情シス部門とベンダーの力関係が逆転している場合にも、この考え方は当てはまります。

反対に、すでに投資計画やガバナンス方針が固まっていて、個別システムの実装だけが必要な場合は、そのシステムの導入実績が豊富なベンダーやSIerに直接相談するほうが適していることもあります。

依頼先を比べる評価軸や進め方は、IT戦略コンサルの選定ポイントで詳しく解説しています。

組織内評価が難しい場合の外部専門家による第三者評価

経済産業省の「システム管理基準」では、戦略の策定は経営者に権限を委譲し、最終的な評価と承認は取締役会等が担うのが基本とされています。組織内で評価を直接行うことが難しい場合には、外部専門家による第三者評価を利用することも規定されています。

社内にIT投資の妥当性を客観的に評価できる人材がいない場合、IT戦略コンサルにこの第三者評価的な役割を期待できるかどうかを、契約前に確認しておくことが大切です。

まとめ

IT戦略コンサルの要点をまとめる担当者

IT戦略コンサルは、経営層主体のDX戦略コンサルとは異なり、情報システム部門が主体となって進めるサービスです。現状アセスメントからグランドデザイン策定、IT投資計画・ロードマップ策定、ITガバナンス・組織戦略策定までを一貫して支援します。

全体で約3〜6ヶ月の策定フェーズを経たあとも、月次モニタリングと年次ローリングで計画を更新し続ける前提で運用します。

情シス部門の投資判断を前に進める役割

ITベンダーやSIerが自社製品や開発の実行を主な役割とするのに対し、IT戦略コンサルは中立的な立場から現状を一覧にし、経営層と情シス部門の合意形成を進めます。

BPRコンサルは業務プロセス全体の見直しで完結することもありますが、IT戦略コンサルは必ず情報システムの投資計画という着地点に向かいます。

自社の段階と必要な支援範囲の整理

まずは、自社が中期IT計画そのものを持たない段階か、計画はあるがガバナンス体制が整っていない段階かを整理してください。そのうえで、現状アセスメントからグランドデザイン、投資計画、ガバナンス構築までのどこに支援が必要かを具体化すると、依頼先の探し方や契約範囲を絞り込みやすくなります。

策定した中期IT計画のなかで、既製パッケージやSaaSでは吸収しきれない独自業務や既存システムとの深い連携が課題になる場合は、個別開発による対応も選択肢になります。riplaは、フルスクラッチ開発の立場から、IT戦略コンサルのグランドデザインでは埋まらない業務要件の整理や、既存システムとの連携を含む構築を支援しています。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。