情報システム部門が中期的なシステム刷新やクラウド移行を検討し始めると、目の前の障害対応や保守業務に追われるあまり、3年後・5年後を見据えたIT投資の全体像を描けないまま、個別プロジェクトだけが積み上がっていく企業は少なくありません。経営会議では「DXを進めろ」と号令がかかる一方、現場からは老朽化したシステムの保守要望が絶えず、限られたIT予算と人員をどこに配分すべきか判断がつかないまま時間だけが過ぎていきます。こうした情報システム部門が主体となり、中期IT計画の策定からシステム全体のグランドデザイン、ITガバナンス体制の構築までを一気通貫で支援するサービスがIT戦略コンサルです。
本記事では、IT戦略コンサルの基本的な考え方と特徴、混同されやすいDX戦略コンサルとの違い、現状アセスメントからガバナンス構築までの仕組み、提供される主な機能、導入目的、ITベンダーやSIerとの違いを順に解説します。IT戦略コンサルという言葉を初めて調べている担当者の方でも、自社にどのような支援が必要なのかを判断できるよう、実際のプロジェクトの流れに沿って整理します。
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・IT戦略コンサルの完全ガイド
IT戦略コンサルとは何か?全体像と特徴

IT戦略コンサルは、特定のITベンダーやパッケージを売り込む立場ではなく、情報システム部門が抱える中期的な投資判断そのものを支援する専門家です。既存システムの構成、保守切れのリスク、IT予算の使途、情シス部門の人員やスキル、ベンダーロックインの状況などを棚卸ししたうえで、3〜5年先を見据えたシステム全体のあるべき姿と投資計画を描きます。個別システムの機能改善ではなく、情報システム部門全体の投資判断とガバナンスをどう組み立てるかという、より上位の意思決定を支援する点が特徴です。
支援の中心は個別システムの刷新ではなく投資判断そのものです
IT戦略コンサルが扱うのは、老朽化したシステムをどう入れ替えるかという個別の技術検討だけではありません。既存システムのデータモデルや外部連携、業務フローを可視化し、どの投資を優先すべきかという評価基準を整理します。そのうえで、経営層が求めるKPIや事業目標と、情報システム部門が持つ制約条件をすり合わせ、限られた予算と人員の配分方針を具体化します。個別最適の積み重ねではなく、情報システム全体としての投資ポートフォリオを描く点が大きな特徴です。
この過程では、「なるべく早く老朽化リスクを解消したい」という情シス部門の視点と、「投資額を抑えて事業成長に予算を回したい」という経営層の視点が食い違いやすくなります。IT戦略コンサルは両者の間に立ち、リスクの定量化や投資対効果のシミュレーションを通じて、社内の合意形成を前に進める役割も担います。
情報システム部門が主体という立場が前提です
IT戦略コンサルの依頼元は、経営企画部門ではなく情報システム部門であることが一般的です。経営層に対して事業戦略そのものを提言する立場ではなく、情報システム部門が中期経営計画の方向性を踏まえながら、技術・インフラレイヤーでどのような投資計画とガバナンス体制を組むべきかを整理する立場に近いといえます。
ただし、情シス部門主体だからといって、経営層と切り離された技術論だけで完結するわけではありません。策定した投資計画やガバナンス方針は最終的に経営層への説明・承認を経る必要があるため、情シス部門の実務感覚と経営層への説明責任の両方を満たせるコンサルタントかどうかを、契約前に見極める必要があります。
DX戦略コンサルとの違い:経営レイヤーと情シスレイヤー

IT戦略コンサルは、名称の似ているDX戦略コンサルと混同されがちですが、両者が主に対象とする階層とゴールは明確に異なります。この違いを理解しておくと、いま自社に必要な支援がどちらなのかを見極めやすくなります。
DX戦略コンサルは経営層主体の超上流工程です
DX戦略コンサルは、経営層・取締役会レイヤーを主な対象とし、現状アセスメントからDXビジョンの策定、それを中期経営計画へ組み込むための戦略ロードマップ策定、取締役会承認までという、事業そのものの方向性を扱う超上流工程が中心です。検証するのも「その事業モデルは顧客に受け入れられるか」というビジネスモデル仮説の検証が主眼になります。
IT戦略コンサルは情シス主導の技術・インフラレイヤーです
これに対してIT戦略コンサルは、情報システム部門が主体となり、中期IT計画・情報システム全体のグランドデザイン・IT投資計画の策定・システム間の全体最適化・ITガバナンス体制構築・IT組織/人材戦略という、技術・インフラレイヤーの中期計画に対象を限定します。DXビジョンという事業構想そのものではなく、その構想を支える情報システムをどう構築・運用していくかという、一段具体的な計画に踏み込む点が異なります。
実際のプロジェクトでは、DX戦略コンサルが描いた中期経営計画・DXビジョンを前提として、その実現に必要な情報システムの全体像をIT戦略コンサルが具体化するという役割分担になることもあります。逆に、DXビジョンがまだない段階でIT戦略コンサルへ中期IT計画の策定だけを依頼すると、経営目標との紐づけが弱いまま老朽化対応中心の計画になりやすい点には注意が必要です。
IT戦略コンサルの仕組み:現状アセスメントからガバナンス構築までの4フェーズ

IT戦略コンサルのプロジェクトは、大きく現状アセスメント、グランドデザイン策定、IT投資計画・ロードマップ策定、ITガバナンス・組織戦略策定という4つのフェーズで進みます。全体構想からロードマップ策定までを通しで見ると、一般的に約3ヶ月〜6ヶ月(12週〜24週)を見込む案件が多くなります。
現状アセスメントからグランドデザイン策定へ進みます
最初の現状アセスメントには1〜1.5ヶ月程度を見込むことが一般的で、既存システムの構成、保守切れのリスク、IT予算の使途(現行維持のためのラン・ザ・ビジネス予算か、新規価値創出のためのバリューアップ予算か)、情シス部門の人員・スキル、ベンダーロックインの状況などを棚卸しします。続くグランドデザイン(あるべき姿)策定には1〜2ヶ月程度をかけ、ITアーキテクチャ全体像、クラウドを基本とするインフラ方針、システム間のデータ連携基盤(API・EAI構想)、ゼロトラストなどのセキュリティ方針を具体化します。
IT投資計画とガバナンス・組織戦略を並行して固めます
IT投資計画・ロードマップの策定には1〜1.5ヶ月程度を見込み、3〜5年の中期IT計画としてシステム刷新・統廃合の時系列と年次の概算IT予算をまとめます。ITガバナンス・組織戦略の策定には0.5〜1ヶ月程度がかかり、グランドデザインや投資計画の検討と並行して進むことが多くなります。中堅企業ではコンサルタント2〜3名が稼働する体制で月額300万〜500万円程度、3ヶ月の総額で1,000万〜1,500万円規模、対象システムが数百に及ぶ大企業では月額500万〜1,500万円以上、6ヶ月の総額で3,000万〜1億円規模になることもあり、企業規模と対象範囲によって費用感は大きく変わります。
IT戦略コンサルが提供する主な機能・支援内容

IT戦略コンサルが提供する支援内容は事業者によって幅がありますが、共通して見られるのは、現状棚卸しと予算構造の可視化、そしてベンダーマネジメント体制の再定義という2つの機能です。それぞれがどのような目的で使われるかを理解しておくと、契約範囲を検討する際の判断材料になります。
「守りのIT」と「攻めのIT」の予算配分を再構成します
多くの企業では、既存システムの維持保守にあたる「守りのIT」がIT予算の8割以上を占め、データ活用や新規サービス創出に向けた「攻めのIT」に予算を回す余地が乏しくなっています。IT戦略コンサルは、既存システムの棚卸し結果をもとに、この予算ポートフォリオを可視化し、守りと攻めのバランスをどう再構成するかをロードマップの核として提示します。単に予算を削減するのではなく、優先度の低い保守案件を整理し、浮いた予算を戦略的な投資へ回す道筋を描くことが目的です。
ベンダーマネジメント体制の再定義と内製化を支援します
もう一つの重要な機能が、情報システム部門の役割そのものの再定義です。従来の「運用保守を回す担当」から、「IT企画とベンダーコントロールを担う司令塔」へと役割を移していくための、シャドーIT防止の全社ITルール整備、ベンダーマネジメント方針の策定、内製化に向けた採用・育成計画の立案までを支援します。ベンダーに任せきりだった判断を情シス部門側に取り戻すための体制づくりが狙いです。
導入目的と得られる効果

IT戦略コンサルを利用する目的は、単に中期計画の資料を作ることにとどまりません。事業目標とIT投資を結びつけ、経営層への説明責任を果たせるガバナンス体制を築くという、経営とシステムの両面に関わる効果が期待されています。
中期経営計画とIT投資を紐づけ、老朽化対応止まりを防ぎます
情報システム部門だけで中期IT計画を作ると、老朽化したシステムをどう延命・入れ替えるかという対症療法的な計画に陥りがちです。IT戦略コンサルは、海外売上比率の向上やEC化率の向上といった中期経営計画の事業目標とIT投資計画を紐づけることで、単なる保守計画ではなく事業成長を支えるIT投資として経営層に説明できる形に組み立てます。この紐づけができているかどうかが、経営層の投資承認を得られるかどうかを大きく左右します。
ITガバナンス体制を構築し、経営への説明責任を果たせるようにします
経済産業省の「システム管理基準」では、IT戦略は一度立てて終わりではなく、組織を取り巻く環境変化を定期的に評価し、ビジネスモデルとIT戦略ビジョンの見直しを行うことが求められています。ITシステム利活用に関わるパフォーマンスとコストの目標設定・実績評価の方法を定め、モニタリングによって是正措置を講じることも規定されています。IT戦略コンサルは、情シス部門・経営企画・主要事業部門のトップからなる「ITステアリングコミッティ(IT戦略委員会)」の組成を支援し、自らはPMO事務局として中立的にデータや市場トレンドを提供する立場に立ちます。KPIダッシュボードによる定量化を通じて、外部の視点を交えた経営層への説明力を高める点が、導入効果の中心です。
ITベンダー・SIer・BPRコンサルとの違い

IT戦略コンサルは、ITベンダーの導入担当、システム開発を請け負うSIer、業務プロセス全体を扱うBPRコンサルと役割が重なるように見えることがあります。しかし、それぞれの主な関心事と契約上の立場は異なります。混同したまま依頼すると、期待していた中立性や視座が得られないことがあるため、違いを整理しておきます。
ITベンダー・SIerは自社製品や開発の実行に軸足があります
ITベンダーの担当者は、自社製品・自社クラウド基盤の導入提案を通じて契約獲得を目指す立場にあります。SIerは、決定した方針や仕様に基づいてシステムを開発・構築することが主な業務であり、まだ全体構想が固まっていない段階での中立的なグランドデザイン策定は本来の得意領域ではありません。IT戦略コンサルは、これらの実行担当者とは異なり、契約や実装に利害を持たない立場から現状分析・投資計画策定・ガバナンス構築を担うことに存在意義があります。
BPRコンサルとは対象範囲の広さと着地点が異なります
BPR(業務プロセス再構築)コンサルは、特定システムの導入有無にかかわらず、組織全体の業務プロセスや役割分担そのものを見直すことを目的とします。IT戦略コンサルも業務フローの可視化やあるべき姿の整理を行いますが、その先には必ず情報システムの中期投資計画・グランドデザインという具体的な着地点があります。BPRの検討がシステム刷新を伴わずに完結することもある一方、IT戦略コンサルの支援は情報システム全体の投資判断というゴールに向けて進む点が異なります。
IT戦略コンサル導入前に確認しておきたいポイント

IT戦略コンサルを依頼するかどうかは、企業規模やシステム数だけで決まるものではありません。契約形態や体制、費用の考え方まで含めて整理しておくことで、依頼後に「思っていた支援と違った」という行き違いを防げます。
策定後の月次モニタリングと年次ローリングは稼働率が変わります
中期IT計画は策定して終わりではなく、環境変化に応じた定期的な見直しが前提です。月次モニタリング(IT戦略委員会への同席、各プロジェクトの進捗評価、KPI測定支援)は月額50万〜150万円程度、稼働率にして0.2〜0.5人月程度が目安になります。年次アップデート(次年度予算策定に合わせたローリング計画の見直し)は期間2〜3ヶ月、費用300万〜1,000万円程度を見込むことが多く、秋から冬にかけての次年度予算策定シーズンに実施が集中する傾向があります。
情シス部門に経験者が少ない企業ほど検討価値があります
「中期IT計画を求められているが何から手をつけてよいか分からない」「システム刷新の優先順位を客観的な基準で決められない」「情シス部門とベンダーの力関係が逆転してしまっている」といった状況にある企業は、IT戦略コンサルの利用を検討する価値があります。反対に、すでに投資計画やガバナンス方針が固まっており、個別システムの実装だけを必要としている場合は、そのシステムの導入実績が豊富なベンダーやSIerに直接相談するほうが適していることもあります。
依頼先を具体的に比較する評価軸や進め方については、IT戦略コンサルの選定ポイントで詳しく解説しています。
組織内評価が難しい場合は外部専門家の評価活用も選択肢です
経済産業省の「システム管理基準」では、戦略策定は経営者に権限委譲し、最終評価・承認は取締役会等が担うことが基本とされていますが、組織内評価を直接行うことが難しい場合には、外部専門家による第三者評価を利用することも規定されています。社内にIT投資の妥当性を客観的に評価できる人材がいない場合、IT戦略コンサルにこの第三者評価的な役割を期待できるかどうかも、契約前に確認しておきたいポイントです。
まとめ

IT戦略コンサルは、経営層主体のDX戦略コンサルとは異なり、情報システム部門が主体となって、現状アセスメントからグランドデザイン策定、IT投資計画・ロードマップ策定、ITガバナンス・組織戦略策定までを一貫して支援する専門サービスです。全体で約3〜6ヶ月の策定フェーズを経たあとも、月次モニタリングと年次ローリングによって計画を更新し続ける前提で運用します。
IT戦略コンサルは情シス部門の投資判断を前に進める役割を担います
ITベンダーやSIerが自社製品・自社開発の実行に軸足を置くのに対し、IT戦略コンサルは中立的な立場から現状を可視化し、経営層と情シス部門の合意形成を進める役割を担います。BPRコンサルとは、業務プロセス全体の見直しにとどまらず、必ず情報システムの投資計画という具体的な着地点に向かう点で異なります。
まずは自社がどの段階にいるかを整理することから始めます
まずは、自社が中期IT計画そのものを持たない段階にいるのか、計画はあるもののガバナンス体制が整っていない段階にいるのかを整理してください。そのうえで、現状アセスメントからグランドデザイン、投資計画、ガバナンス構築までどこまでの支援を必要としているかを具体化すると、依頼先の探し方や契約範囲を絞り込みやすくなります。策定した中期IT計画のなかで、既製パッケージやSaaSでは吸収しきれない独自業務や、既存システムとの深い連携が課題になる場合は、個別開発による対応も選択肢になります。riplaはフルスクラッチ開発の立場から、IT戦略コンサルが描いたグランドデザインでは埋まらない業務要件の整理や、既存システムとの連携を含む構築を支援しています。
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・IT戦略コンサルの完全ガイド
株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
