OMS刷新の選定ポイント/選び方/種類

OMS刷新の候補には、受注・在庫連携のワークフローに特化したパッケージ・クラウド製品、ECモールやカートと一体化した製品、基幹システムとの連携やフルスクラッチを前提にしたアプローチがあります。機能数や知名度だけで選ぶと、自社の受注フローに合わず、表計算ソフトや手作業との二重管理が残ることも少なくありません。選定の出発点は、現在どの工程に機会損失やリスクが集中しているかを明らかにすることです。

本記事では、OMS刷新で整理すべき自社課題、比較される3つのアプローチ、製品を比較する評価軸、SaaS・フルスクラッチ・ハイブリッドの選び分け、RFPやデモ・PoCの進め方を解説します。これから候補を探す担当者の方が、比較の観点をそろえ、自社に合う候補を絞り込めるようにまとめています。

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OMS刷新の検討で最初に整理すべき自社課題

OMS刷新の選定前に自社課題を整理する担当者

製品カタログを集める前に、受注、在庫引当、出荷指示、取引先連携のどこで問題が起きているかを特定することが選定の土台になります。課題を一文で説明できれば、比較対象に含める製品と不要な機能が見えやすくなります。

機会損失と対応コストを数値で捉えます

売り越しによるキャンセル件数と平均客単価から機会損失を、誤出荷対応にかかる時間と時給から対応コストを、それぞれ概算します。この数値が大きいほど、標準機能で在庫連携の精度を高められる製品を優先的に比較する必要があります。反対に、機会損失よりも取引先対応の煩雑さが大きい場合は、EDI・API連携の柔軟性を重視した比較に切り替えます。数値化にあたっては、直近1年分の欠品キャンセル件数や誤出荷件数を月次で洗い出し、繁忙期とそれ以外で発生傾向がどう変わるかも合わせて確認しておくと、比較検討の際に必要な処理能力の目安が見えてきます。

部門ごとに異なる要求水準を洗い出します

EC事業部門は新規チャネル追加への対応力を、カスタマーサポートや物流部門は出荷指示のフォーマットや例外処理のしやすさを、IT部門は既存の基幹システムとの連携可否を、それぞれ重視します。この3部門の要求を選定の初期段階で洗い出しておくと、後になって「標準機能では現場が回らない」という手戻りを防ぎやすくなります。要求水準を洗い出す際は、部門ごとの希望を単に集めるだけでなく、優先順位をつけて「必須」「あれば望ましい」「今回は見送る」に分類しておくと、後工程の評価軸づくりや候補の絞り込みがスムーズになります。

OMS刷新で比較される3つのアプローチ

OMS刷新で比較される3つのアプローチを整理する図

実際の候補は、受注・在庫連携のワークフローに特化したタイプ、ECモール・カートと一体化したタイプ、基幹システムと連携するフルスクラッチ・ハイブリッド型に大別できます。分類名よりも、自社が最優先する業務を標準機能で処理できるかを確認することが重要です。

受注・在庫連携に特化したワークフロー型

複数のECモールや自社サイトからの受注を集約し、在庫を自動的に引き当て、出荷指示や送り状発行までをつなぐタイプです。受注処理の遅延や売り越しの解消を最優先課題とする企業に向いています。取引先が多い卸売業務を抱える企業では、EDI連携の対応幅も比較の軸になります。このタイプは受注から出荷までの標準フローが確立している分、導入までの期間を短縮しやすい一方、自社独自の値引きルールや承認フローを反映しようとすると追加開発が必要になる場合があるため、標準機能の範囲を事前にすり合わせておくことが欠かせません。

ECモール・カート一体型のOMS機能

自社ECのカートシステムやECモールの管理画面に内包された受注管理機能を活用するタイプです。導入の手間を抑えられる一方、対応できるチャネル数やカスタマイズの範囲があらかじめ決まっていることが多く、将来的な多店舗展開や実店舗POSとの連携を計画している場合は、拡張の余地を早めに確認しておく必要があります。特定のカートやモールに機能が最適化されているぶん、別チャネルを追加する際に別システムとの二重運用が生じやすい点も、比較の際に見落とされがちな論点です。

基幹連携・フルスクラッチ型

自社独自の在庫引当ロジックやBtoB特有の掛率・与信管理など、標準機能では対応しきれない業務プロセスが競争優位の源泉になっている場合に選択肢となるタイプです。基幹システムとの深い連携を必要とする場合や、標準化できる業務とできない業務が混在する場合は、共通業務をパッケージ・SaaSに任せ、独自部分だけを開発するハイブリッド構成も検討されます。フルスクラッチは開発・保守にかかる費用と期間が大きくなりやすい反面、法改正やモール仕様変更への対応も含めて自社の裁量で計画できるという特徴があります。

製品選定で比較すべき評価軸

OMS刷新の製品比較の評価軸を検討する会議

候補製品は、業務カバー範囲、複数チャネル連携の精度、外部連携、運用負荷とセキュリティ、料金体系という軸で比較します。同じ質問を各社へ提示し、回答とデモ結果をそろえることで、印象ではなく適合度で判断できます。

業務カバー範囲と複数チャネル連携の精度を確認します

受注、在庫引当、出荷指示、取引先へのEDI連携、返品・キャンセル処理のうち、どこまでが標準機能で、どこからが追加開発になるかを確認します。とくに、複数チャネルの在庫をどのくらいの頻度・タイムラグで同期するかは、売り越し防止の実効性に直結するため、デモで実際の同期挙動を確認することが欠かせません。「連携あり」という説明だけで判断せず、同期がリアルタイムなのか、数分〜数十分単位のバッチ処理なのかを具体的に確認し、自社の受注量に照らして許容できる遅延かどうかを見極めます。

運用負荷・セキュリティ・料金体系を確認します

出荷指示の作成や取引先マスタの登録・更新にどの程度の手作業が残るか、権限管理やログ、バックアップ、データ出力の仕様、契約終了時のデータ返却条件を確認します。料金体系は、受注件数、SKU数、店舗数、API呼び出し回数など課金単位が製品ごとに異なるため、初期費用と月額費用だけでなく、移行、連携開発、教育、問い合わせ対応などの社内工数までを含めた総保有コストで比較することが重要です。将来的な受注件数の増加やチャネル追加を見込んで、課金単位が変わる境界値と、その際の費用感まであらかじめ確認しておくと、契約後の想定外のコスト増を防ぎやすくなります。

SaaS・パッケージ・フルスクラッチ・ハイブリッドの選び分け

SaaSとフルスクラッチとハイブリッドを比較する担当者

標準的な受注処理と法改正・モール仕様変更への継続的な追随を重視するならパッケージ・SaaSが第一候補になります。独自の在庫引当ロジックや基幹連携が競争優位に直結するなら、フルスクラッチやハイブリッドが選択肢に入ります。

標準機能で足りるか自社プロセスが競争優位の源泉かで判断します

パッケージ・SaaSは短期間で利用を始めやすく、複数社で共通する受注処理やモール仕様変更への追随をベンダー側に任せやすい点が特徴です。ただし、独自の値引きルールや複雑なセット商品の分解など、自社固有のロジックが事業競争力に直結している場合は、標準機能に業務を合わせることで現場の運用が複雑になるおそれがあります。機能を細かく作り込めることではなく、その独自性に投資する事業上の理由があるかどうかで判断します。判断に迷う場合は、その業務プロセスをやめた場合に売上や顧客満足度にどの程度の影響が出るかを試算してみると、標準化してよい業務と守るべき業務の線引きがしやすくなります。

コア・サテライト型で責任分界を明確にします

複数事業を持つ企業では、受注や在庫連携などモール対応で共通化しやすい部分をパッケージ・SaaSに任せ、確定した取引データを基幹システムへ渡す連携部分だけを個別開発するコア・サテライト型の構成も考えられます。この場合、パッケージ側と基幹システム側のどちらを正本のデータとするか、再送や取消が発生した際にどちらが処理を担うかを、あらかじめ取り決めておく必要があります。連携部分の開発工数は、対象システムの仕様やデータ項目によって大きく変わるため、一般的な相場を前提にせず、入出力項目と例外処理を具体的に示したうえで個別に見積もることが重要です。

RFP・比較表の作成とPoCの進め方

OMS刷新のRFPとPoCを準備するチーム

比較表やRFPでは、機能の有無だけでなく実際の業務シナリオと合格条件を示します。PoCは説明を聞くだけで終わらせず、自社に存在する取引形態と例外処理を使って検証します。

RFPには業務シナリオと非機能要件を記載します

RFPには、対象チャネル数、SKU数、月間受注件数、取引先数、現行フロー、解決したい課題を記載します。そのうえで、モール受注・自社EC受注・卸売受注など実在する受注経路、承認段階、返品・キャンセル、売り越し発生時の対応フローを示します。非機能要件には、権限、操作ログ、バックアップ、障害時対応、データ保管場所、エクスポート形式を含め、要件を「必須」「望ましい」「将来」の3段階に分けると、すべてを必須として候補を失う事態を避けられます。ベンダーへの提示資料には、現行システムで実際に発生している売り越し件数や出荷遅延の頻度も添えると、各社からより具体的で比較しやすい提案を引き出せます。

PoCでは実データを用いて1案件をフルパスで通します

PoCでは、実際の受注データやSKUを用いて、受注から在庫引当、出荷指示、取引先への出荷通知までを1案件通しで確認します。正常系だけでなく、売り越しが発生した場合の対応、返品・キャンセル、複数倉庫への分割出荷といった例外処理も試します。処理時間、手作業の回数、CSVやAPIで欠落した項目を記録し、致命的な問題が見つかった場合に「本番移行を中止して旧システムに戻す」ロールバック基準を合意しておくことも重要です。PoCの実施者はIT部門だけに任せず、EC事業部門やカスタマーサポートの担当者にも参加してもらうと、画面の分かりやすさや例外対応のしやすさといった、資料上の機能一覧だけでは見えない部分まで評価できます。

OMS刷新の選定でよくある失敗を避ける方法

OMS刷新選定の失敗パターンを回避する担当者

よくある失敗は、機能一覧と管理者画面だけで比較し、取引先や現場の例外処理、移行後の運用まで確認しないことです。導入目的と責任者を明確にし、EC事業部門・カスタマーサポート・IT部門の視点を選定に反映します。

コスト優先で選定しGAPが大きくなる失敗

初期コストの安さを優先してパッケージを選んだ結果、自社の受注フローとの差分(GAP)が大きすぎ、標準機能では現場が回らないと後から気づき、大量の追加要件と莫大なカスタマイズ費用、稼働遅延を招くケースがあります。評価点を単純に合計するのではなく、必須要件を満たさない候補は早い段階で除外することが重要です。安価な製品ほど「まず導入してから運用でカバーする」という判断に流れやすいため、契約前に必須要件のチェックリストで足切りをかけておくことが有効です。

業務棚卸しをせずフルスクラッチを選ぶ失敗

業務の棚卸しを行わずに要件定義をベンダーに任せてしまうと、現場が日常的に行っている例外処理が反映されないまま開発が進み、稼働直後にイレギュラー対応ができず倉庫の出荷ラインが止まってしまうような事態を招きかねません。システム選定に着手する前の段階で、自社の受注フローと例外処理を洗い出し、「今回は対応しない業務」を部門間で合意しておくことが欠かせません。棚卸しの過程で、担当者しか把握していない属人的な処理が見つかることも多いため、複数の現場担当者から話を聞き、記録として残しておくとプロジェクト全体の抜け漏れを減らせます。

OMS刷新の選定前に確認しておきたいポイント

OMS刷新の選定前チェックポイントを確認する担当者

候補を絞り込む前に、取扱規模だけでなく、拡大計画や稟議スケジュールまで踏まえて確認しておきたい論点を整理します。

拡大計画があるなら現状の取扱規模だけで判断しません

現在の受注件数が少なくても、新規モール出店や実店舗展開、卸売拡大の計画があるなら、将来のチャネル数を前提にした比較が必要です。反対に拡大の予定がなく、現行の運用で無理なく回っているなら、必須要件を絞り込んで過剰な機能への投資を避けることも選択肢になります。将来の拡大時期がまだ確定していない場合は、追加チャネルや取引先が増えた際に料金・機能の両面でどこまで柔軟に対応できるかを、契約前に具体的な条件として確認しておくとよいでしょう。

稟議までのスケジュール感を選定段階から意識します

OMS刷新は取引先とのEDI連携やマスタデータ整備を伴うため、選定に時間をかけすぎると本稼働に間に合わなくなるおそれがあります。現行システムの限界やサポート切れが見えている場合は、そこから逆算して比較・PoC・稟議承認のスケジュールを組み立てておくことが重要です。具体的な候補製品を確認したい場合は、OMS刷新のパッケージ・クラウド製品一覧を参照すると、共通の評価軸で比較しやすくなります。

PoCの対象範囲を早めに決めておきます

候補を2〜3製品まで絞った段階で、どの受注経路・どの例外処理までをPoCで検証するかを先に決めておくと、各社への依頼内容がぶれません。取引先の協力が必要なEDI連携のテストは、日程調整に時間がかかることが多いため、早めに声掛けしておくと選定全体のスケジュールが安定します。

まとめ

OMS刷新の選び方をまとめる担当者

OMS刷新の選定では、機会損失や部門ごとの要求水準といった自社課題を特定し、ワークフロー型・モール一体型・フルスクラッチ型のどのアプローチが自社に合うかを見極めたうえで、業務カバー範囲・連携精度・運用負荷・料金体系という評価軸で候補を比較することが重要です。実データを用いたPoCで例外処理まで確認し、稟議スケジュールを踏まえて意思決定することが、導入後の手戻りを防ぎます。

評価軸をそろえてから比較すると判断がぶれません

機能の多さや知名度ではなく、自社の受注フローと拡大計画に照らして必須要件を先に固めることが、候補を絞り込むうえでの土台になります。

課題の可視化から選定を始めます

まずは現在の受注処理でどこに機会損失や手戻りが集中しているかを可視化し、拡大計画を踏まえて必要なアプローチを見極めることから始めてください。候補が複数のパッケージ・SaaSに絞れた段階でも、最終判断は資料の機能一覧だけでなく、実データを使ったPoCの結果に基づいて行うことが望ましいといえます。既製のパッケージ・SaaSでは対応しきれない独自の在庫引当ロジックや基幹連携がある場合、riplaはフルスクラッチ開発の立場から、要件整理から既存システムとの連携を含む構築まで支援しています。

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株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。