OMSのリニューアルとは、受注処理の操作画面と複数チャネルの注文画面を、UX・UI・ブランド体験の観点から作り直す取り組みです。
古いままの受注処理画面では、オペレーターが操作に迷い、入力ミスや折り返し確認が増えています。EC・電話注文・実店舗の注文を一画面で見渡せず、複数のシステムを行き来する手間もあります。
- OMSのリニューアルの全体像と特徴
- 2つの画面とリニューアルの仕組み
- 主要機能と導入目的
- モダナイゼーション・刷新・更改・新規開発との違い
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OMSのリニューアルの全体像と特徴

OMS(Order Management System、受注管理システム)は、EC・電話・店舗など複数チャネルの注文情報を受け付け、在庫引当や出荷指示につなげる基幹的な仕組みです。
OMSのリニューアルは、日々操作する画面の見た目・操作の流れ・情報の見やすさを作り直し、使う人にとっての体験を刷新する取り組みです。このシステムそのものを入れ替えるというより、画面を中心にした見直しを指します。
「リニューアル」の起点となるUX・UI・ブランド刷新
OMSリニューアルの出発点は、「利用者からどう見えているか」という視点です。ここでいう利用者は、EC事業の背後で電話対応をしながら受注入力を行うコールセンターやカスタマーサポートの担当者と、複数チャネルの注文を横断的に確認する管理担当者を指します。
画面が使いにくいままだと、対応時間の長さや入力ミスという形で、顧客対応の質にも間接的に影響します。そのためOMSリニューアルでは、古いUIを新しいデザインに替えるだけでなく、実際の操作フローを可視化します。迷いやすい箇所や余計な入力手順を洗い出したうえで、画面設計をやり直します。
特に、見た目の刷新と操作性の改善を同時に進める点が、単純な表示調整との違いです。
モダナイゼーション・刷新・更改・新規開発との狙いの違い
OMSに関連する取り組みには似た言葉がいくつかあり、混同すると社内の議論がかみ合わなくなります。違いを整理してから検討を始めると、社内の合意形成も進みやすくなります。「モダナイゼーション」は、古い技術基盤をどう移行するかというHOW(手法)を扱い、既存の注文データや在庫引当ロジックをどの方式で刷新するかが論点です。
「刷新」は、注文処理の遅延や在庫連携ミスによる機会損失を経営として定量化し、投資判断を行うWHY・WHENの文脈で語られます。「更改」は、保守契約の満了やサポート終了(EOS・EOL)といった外圧をきっかけに、期限から逆算して進める取り組みです。
これに対してOMSのリニューアルは、技術基盤や契約期限ではなく、コールセンター担当者が使う受注処理画面と複数チャネルの統合ビュー画面という、利用者が直接触れる操作体験の陳腐化を起点にします。また、これから新しくOMSを導入する「OMS開発」とは異なり、既に稼働しているシステムの画面・操作性を作り直す点が前提です。
OMSリニューアルが対象にする「2つの画面」

OMSリニューアルの検討では、対象の画面を2つに分けると論点を整理しやすくなります。ひとつはオペレーターが直接操作する受注処理画面で、もうひとつは複数チャネルの注文を俯瞰する統合ビュー画面です。
この2つは求められる評価軸が異なるため、同じ「使いやすさ」という言葉でまとめずに、それぞれ個別に検討します。
コールセンター・CS担当者向けの受注処理画面
受注処理画面は、電話対応をしながら顧客検索、注文内容の入力、変更・キャンセルの処理などを行う画面です。オペレーターは通話しながら操作するため、入力項目の並び、必須項目の分かりやすさ、エラー表示の位置が、対応時間と入力ミスの発生率に直結します。
ここでの評価軸は、作業効率、入力ミスの削減、新人オペレーターが独り立ちするまでの研修コストです。画面が使いにくいと、ベテランの勘や個人の慣れに頼った運用になりやすく、担当者が代わるたびに対応品質がばらつきます。
リニューアルでは、ベテランが無意識に行っている確認手順を洗い出し、画面上の動線として明示します。これが、属人化を減らす具体的な手立てになります。
複数チャネルを横断する統合ビュー画面
統合ビュー画面は、EC・電話注文・実店舗など複数チャネルの注文状況を一覧で確認する画面です。管理担当者や責任者が、どのチャネルでどの程度の注文が滞留しているか、出荷遅延が起きていないかを俯瞰して把握するために使います。
ここでの評価軸は、情報の一覧性、ダッシュボードとしての設計、チャネルを横断したときの見やすさです。受注処理画面がオペレーター個人の作業効率に関わるのに対し、統合ビュー画面は組織としての意思決定の速さに関わります。
表示項目を詰め込みすぎると、重要な異常値が埋もれてしまいます。そのため、日常的に確認する指標と、例外時にのみ深掘りする情報を分けて設計することが大切です。
OMSリニューアルの仕組みと進め方

OMSリニューアルは、デザインから入るのではなく、まず現状の操作を調べることから始まります。その後は、要件定義から検証、設計確定を経てテストへと進みます。
UI/UX刷新特有の工程を踏むため、通常のシステム改修よりも、現場のオペレーターを早い段階から巻き込むのが特徴です。
現状調査・アセスメントから要件定義・PoCまで
最初の現状調査・アセスメントでは、オペレーターへのヒアリングや操作ログの分析を通じて、迷いやすい画面、繰り返し起きる入力ミス、確認のために他のツールを行き来している箇所を洗い出します。この工程はおおむね1〜3ヶ月程度を見込むことが多く、ここでの発見が後続の要件定義の精度を左右します。
続く要件定義・PoCの工程では、ワイヤーフレームを使ったプロトタイピングと、現場オペレーターによるユーザビリティテストを繰り返します。この工程には、2〜4ヶ月程度を見込むのが一般的です。さらに、上流工程(リサーチからプロトタイプ検証まで)を合わせると、おおむね3〜7ヶ月程度が目安になります。
規模の小さいクラウド型・パッケージのカスタマイズであれば、全体で3〜6ヶ月程度です。一方、基幹連携を伴う大規模な刷新では、半年から1年以上を見込む必要があります。
ワイヤーフレーム・デザイン確定からUATまで
要件が固まったら、画面構成案(ワイヤーフレーム)を作成し、デザインを確定させます。この工程はおおむね1〜2ヶ月程度が目安です。デザイン確定後の開発が終わると、実際の運用を想定したユーザー受け入れテスト(UAT)とデータ移行の検証に入り、ここには2〜6ヶ月程度を見込みます。
スケジュールが遅れる要因には、要件の肥大化(Must・Wantの仕分け不足)、顧客マスタや注文履歴のデータ移行仕様が決まらないこと、基幹システムや倉庫管理・決済・CTIとの外部連携の仕様確認漏れがあります。
そのほか、表示速度やスマートフォン実機の確認が不足したままデザインレビューを往復することや、遅延の結果としてテスト工程が省略されることも挙げられます。要件定義の完了時、ワイヤーフレームの完成時、デザイン初稿の完成時といった節目ごとに決裁者へ中間報告を行うと、終盤でのちゃぶ台返しを防ぎやすくなります。
主要機能とUI/UX刷新のポイント

OMSリニューアルの機能面では、新しい機能を足すことよりも、既存の機能をどう見せ、どう操作させるかという設計に重点が置かれます。受注処理画面と統合ビュー画面では、押さえるべきポイントが異なります。
受注処理画面に求められる機能
受注処理画面では、顧客検索や過去の注文履歴確認をスムーズに行える導線、入力フォームの自動補完、誤入力を防ぐエラー表示のわかりやすさが重視されます。都度の受注入力が続くなかでも、オペレーターが通話をしながら迷わず操作できることが最優先です。
あわせて、注文修正やキャンセルといった例外処理の画面遷移も、重要な確認ポイントです。例外処理の頻度は決して低くないため、正常な受注フローだけでなく、修正・キャンセル・返品といった分岐も、画面設計の段階から想定しておく必要があります。
統合ビュー画面に求められる機能
統合ビュー画面では、チャネルごとの注文件数や出荷状況をまとめて表示するダッシュボード機能と、異常値(処理の滞留や出荷遅延)を目立たせる表示の工夫が求められます。加えて、担当者の役割に応じて必要な情報だけを絞り込める権限設定も欠かせません。全チャネルの情報を同じ密度で並べると、かえって重要な異常が見つけにくくなるため注意が必要です。
また、既存の会計・基幹システムやWMS(倉庫管理システム)との連携が前提の場合、統合ビュー画面がどのデータをリアルタイムに反映し、どこまでを定期バッチで更新するかも設計上の論点です。表示を刷新するなら、裏側のデータ更新頻度も合わせて見直すことが、見た目ほどの改善効果を得るうえで欠かせません。
導入目的と期待できる効果

OMSリニューアルの目的は、日々の受注処理にかかる時間と負担を減らし、組織として顧客対応の質を保てる状態をつくることにあります。画面の見た目を整えることは、その手段です。
入力ミス・処理時間・研修コストの改善
画面が整理され、確認すべき情報の位置が一定になると、受注1件あたりの処理時間が短くなり、入力ミスも減らせます。加えて、新人オペレーターが独り立ちするまでの研修時間を圧縮できることも、コールセンター運営における重要な効果です。研修担当者の負担が減れば、既存メンバーの離職防止にもつながります。
これらの効果は、CS部門の人件費削減だけでなく、顧客対応のスピード向上という形で間接的に顧客満足度にも波及します。ただし、効果の大きさは業務量や現状の画面のわかりにくさの度合いによって変わります。そのため、導入前に処理時間や入力ミスの発生件数を実測し、リニューアル後と比べられるようにしておくことが望ましいです。
リニューアルを先送りした場合に生じる隠れコスト
使いにくい画面をそのまま放置すると、入力ミスや誤操作への対応にかかる人件費という手戻りコストが積み重なります。さらに、現場が正式なOMSではなく、使い慣れたExcelや個人の記録に頼る「シャドーIT」化が進み、情報が個人に閉じてしまうこともあります。
顧客対応の遅さや不親切な印象は、ブランドイメージの低下につながる可能性もあります。こうした隠れコストは、決算書には表れにくいものの、確実に組織の負担になっていきます。
通常のシステム保守費用が「守りのコスト」であるのに対し、UI/UXの継続的な改善は「攻めのコスト」としてのPDCA投資と位置づけられます。フィードバックループの運用費用、デザインシステムやブランドガイドラインの保守更新費用、継続的な画面改修の開発費用という3つの構造で捉えると、リニューアル後の運用費用も見積もりやすくなります。
他のアプローチ・他システムとの違い

OMSリニューアルを検討するうえでは、目的が近い他のアプローチとの違いを整理しておくと、社内で説明しやすくなります。
モダナイゼーション・刷新・更改との違い
モダナイゼーションは、既存の注文データや在庫引当ロジックをどの移行方式(リホスト・リプラットフォーム・リファクタといった手法)で刷新するかというHOWが中心の技術的な取り組みです。刷新は、注文処理の遅延や在庫連携ミスがもたらす機会損失を経営として定量化し、投資判断を行うWHY・WHENの文脈で語られます。
更改は、保守契約の満了やサポート終了(EOS・EOL)といった外部要因を起点に、期限から逆算してスケジュールを組む取り組みです。これらはいずれも重要な取り組みですが、起点となる論点がリニューアルとは異なります。
技術基盤の老朽化が主な課題であればモダナイゼーション、経営層への説明や投資対効果の整理が急務であれば刷新、契約更新が迫っているのであれば更改の視点から検討を始めます。社内の合意形成を進めるには、自社の課題がどの起点に近いかを見極めることが最初の一歩です。
新規開発(グリーンフィールド導入)との違い
「OMS開発」は、これまでOMSを持たなかった企業が新規に導入する、いわゆるグリーンフィールドの取り組みです。業務フローそのものを新たに設計するため、要件定義の自由度は高くなります。また、現行業務からの移行という制約もありません。
これに対してOMSリニューアルは、既に稼働している業務フローと蓄積されたデータを前提に、操作画面だけを作り直す点が大きく異なります。そのため検討では、現行の運用を壊さずに移行できるか、稼働中の注文データや顧客情報をどう引き継ぐかが常に論点になります。
白紙から設計できない分、特に現場のヒアリングと丁寧な移行計画が、新規導入以上に成否を分けるといえます。
OMSリニューアル導入前の確認ポイント

OMSリニューアルを検討し始める段階では、画面の見た目に目が向きがちです。しかし、対象範囲、検討体制、実現手段まで含めて事前に整理しておくと、後戻りを防げます。
刷新の対象範囲
受注処理画面と統合ビュー画面のどちらを優先するか、あるいは両方を同時に手がけるかによって、必要な期間と体制が変わります。
現場の負担が大きいのはどちらか、経営層が課題として認識しているのはどちらかを整理します。そのうえで優先順位を明確にし、要件定義に入ることが大切です。
検討体制への関係者の巻き込み
OMSリニューアルには、情報システム部門以外の関係者も必要です。実際に画面を操作するコールセンター・CS部門の現場担当者を、要件定義やユーザビリティテストの段階から参加させることが、使われる画面を作るうえで欠かせません。
あわせて、EC事業部門や店舗運営部門など、複数チャネルに関わる関係者の意見も早期に集めておくと、統合ビュー画面の設計に反映しやすくなります。
SaaS・パッケージ・フルスクラッチの選択
標準的な機能で足りる部分は、クラウド型やパッケージ型のカスタマイズで対応します。一方、自社の受注フローや評価制度に強く結びつく独自部分だけを、フルスクラッチで作り込むという判断が必要になる場面もあります。
実現手段の方向性は、独自の業務フローや顧客体験が競争優位の源泉になっているかどうかと、現場の作業負荷や学習コストの課題がどれほど深刻かという観点から検討します。
フルスクラッチの場合、初期費用は数千万円から数億円規模になることもあります。要件定義・ディレクション費だけで全体の1〜3割を占めることも珍しくありません。具体的な選定の進め方は、OMSのリニューアルの選定ポイント・選び方・種類もあわせてご確認ください。
まとめ

OMSのリニューアルは、コールセンター・CS担当者が使う受注処理画面と、複数チャネルの注文を横断的に見る統合ビュー画面という2つの操作体験を、UX・UI・ブランド刷新の観点から作り直す取り組みです。
モダナイゼーションは技術基盤の移行を、刷新は投資判断を、更改は契約更新を起点に考えます。新規導入としてのOMS開発も含め、起点となる課題はそれぞれ異なります。
現状調査からPoC、デザイン確定、UATまでという工程を踏み、現場のオペレーターを早期から巻き込みながら進めることで、入力ミスの削減や研修コストの圧縮といった効果を得やすくなります。ただし、標準的な機能で対応できる部分と、自社の受注フローに深く結びつく独自部分を見極める作業は簡単ではありません。
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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
