OMSのリニューアルでは、現場の負荷と優先課題を先に特定し、その結果に合わせて標準機能ベース・フルスクラッチ・ハイブリッドから選ぶことが重要です。
進め方を決めずに見積もりだけを集めると、要件が膨らみやすくなります。そのため、選定前の課題整理からPoCの進め方までを順に見ていきます。
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OMSリニューアル選定前に整理すべき自社の課題
OMSのリニューアルが指す範囲は広いため、最初に「自社にとってのリニューアルが何を解決すべきか」をはっきりさせる必要があります。まず着目したいのは、コールセンター・CS担当者向けの受注処理画面と、複数チャネルの注文を横断する統合ビュー画面のどちらに、大きな負荷や不満が集中しているかです。
受注処理画面で負荷が集中している箇所
電話対応をしながら受注を入力する場面では、どの画面でオペレーターが手を止めているか、どの入力項目でミスが起きやすいかを洗い出します。新人が独り立ちするまでにどれだけ研修時間がかかっているかも、あわせて確認しておきます。
また、ベテランの操作を横で観察するだけでも、画面上の迷いどころは意外と特定しやすいものです。課題を「入力ミスが多い」「研修に時間がかかる」「例外処理の画面遷移が複雑」のように具体化できれば、比較すべき対応策も絞り込みやすくなります。
統合ビュー画面で課題が出ている箇所
複数チャネルの注文状況を確認する際は、担当者が別々の画面を行き来していないか、出荷遅延や在庫連携ミスに気づくのが遅れていないかを見ます。表示項目が多すぎて重要な異常が埋もれている場合もあれば、逆に必要な情報が別のツールにしかなく、都度手作業で突き合わせている場合もあります。
どちらの課題が強いかによって、後述する評価軸の重み付けが変わります。また、受注処理画面と統合ビュー画面の課題は、しばしば連動しています。
たとえば、受注処理画面での入力ミスが統合ビュー画面上の在庫連携ミスとして表面化することもあれば、統合ビュー画面で発見が遅れた出荷遅延が、結果として受注処理画面での問い合わせ対応の増加につながることもあります。そのため、両者のつながりを意識して課題を整理しておくと、リニューアル後の効果も見えてきます。
OMSリニューアルの3つのアプローチ(種類)

OMSリニューアルの実現手段は、大きく分けて標準機能ベースの刷新、フルスクラッチによるオーダーメイド刷新、両者を組み合わせたハイブリッドの3つです。選ぶべきアプローチは、自社の独自性と課題の深刻度によって変わります。そのため、どれが優れているかを一律に決めることはできません。
比較の起点は、次の3点です。
- 標準機能で業務をどこまで吸収できるか
- 独自フローをどこまで作り込む必要があるか
- 標準側と独自側の境界を管理できるか
標準機能ベース(クラウド・パッケージのカスタマイズ)
既存のOMS製品が持つ標準的な画面テーマやレイアウト変更の機能を使い、表示項目の並び替えや配色調整の範囲でUIを刷新する方法です。
短期間かつ比較的低コストで着手できる一方で、受注処理の独自フローや特殊な例外処理まで自由に作り込むことは難しいです。カスタマイズできる範囲は、製品ごとの仕様に左右されます。
フルスクラッチによるオーダーメイド刷新
自社の受注フローや顧客体験そのものが競争優位の源泉になっている場合や、現場の作業負荷・学習コストの課題が深刻な場合には、フルスクラッチで画面と操作フローを一から設計する合理性が生まれます。入力フォームの自動補完や、わかりやすいエラー表示も、業務に合わせて作り込めます。
情報を集約したダッシュボードも設計できますが、初期費用は数千万円から数億円規模になることがあります。さらに、要件定義・ディレクション費だけで、全体の1〜3割を占めることも珍しくありません。
要件が肥大化しやすいため、Must要件とWant要件の仕分けを、ガバナンスとして徹底する必要があります。
ハイブリッド(標準機能+独自部分のスクラッチ)
標準的な受注処理はクラウド型・パッケージ型の機能をベースにしつつ、独自のブランド体験や特殊な業務フローが重要な部分だけをスクラッチで作り込むアプローチです。AIを活用した開発支援を組み合わせることで、開発速度が3〜5倍になり、開発期間を3〜7割程度短縮できるという見方もあります。
標準化する範囲と独自に作り込む範囲の線引きを最初に決めておくことが、費用とスケジュールの両面でコントロールしやすくする鍵になります。また、ハイブリッドを選ぶ場合は、標準機能側と独自スクラッチ側のどちらを正のデータとするか、両者の間でデータをどう受け渡すかという役割分担を先に決めておく必要があります。
役割分担があいまいなまま開発を始めると、後から「この機能はどちらの担当範囲か」という調整が発生し、結局スケジュールが伸びる原因になります。
製品・アプローチを比較する評価軸

アプローチの方向性が決まったら、具体的な候補を比較するための評価軸をそろえます。見た目の印象だけで判断せず、実際の業務シナリオに沿って確認することが重要です。
操作性と研修コストの評価軸
実際にオペレーターへ操作してもらい、初見でどこまで迷わず進められるか、エラー発生時にどの程度自力で解決できるかを見ます。デモの説明を聞くだけでは分からない部分があるため、可能であれば現場のオペレーターに実機を触ってもらい、完了までの所要時間やつまずいた箇所を記録します。
また、ベテランと新人の両方に操作してもらうと、経験の差によってどれだけ習熟に時間がかかるかも見えてきます。
外部連携と拡張性の評価軸
基幹システムやWMS(倉庫管理システム)のほか、決済やCTIなど、既存の周辺システムとの連携が前提になっている場合、どこまでがAPIによる標準連携で、どこからが個別開発になるのかを確認します。「連携できる」という説明に加えて、同期の方向や頻度、エラー発生時の復旧手順まで具体的に確かめると、導入後の想定外を減らせます。
TCO(総保有コスト)の評価軸
初期費用や月額費用に加え、デザインシステムの保守更新費用も比較します。さらに、継続的なUI改修費用や、社内の管理・問い合わせ対応の工数も対象です。
標準機能ベースは導入しやすい一方、機能追加で制約が出ることがあります。フルスクラッチは自由度が高い反面、保守体制の維持費用が発生します。
そのため、3〜5年程度で総保有コストを試算し、初期費用だけで判断しないことが大切です。候補製品はOMSのリニューアルのパッケージ・クラウド製品一覧も確認できます。
保守・運用費用の考え方
OMSリニューアル後の費用は、システムを安定して動かす「守りのコスト」と、UI/UXを継続的に改善する「攻めのコスト」に分けると整理しやすくなります。
守りのコストと攻めのコスト(PDCA投資)
通常のシステム保守費用は、初期構築費用のおおむね1〜1.5割程度が年間目安とされ、月額では数万円から数十万円の水準になることが一般的です。これに対して、UI/UXの継続改善費用は、ユーザーテストやフィードバックループの運用費用、デザインシステム・ブランドガイドラインの保守更新費用、継続的な画面改修の開発費用という3つの構造で発生します。
外部に委託する場合は、月額数十万円から100万円以上のリテーナー契約が目安になることもあります。ただし、この水準は依頼範囲によって大きく変わるため、必ず個別に見積もりを取得してください。
放置した場合の隠れコスト
先送りすると、入力ミスや誤操作への対応に手戻りが発生します。現場が独自のExcel運用へ戻るシャドーIT化も起こり得ます。また、顧客対応の遅さによるブランドイメージの低下も、見えにくいコストです。
保守・運用費用を検討する際は、リニューアルにかかる費用だけでなく、先送りした場合に生じるこれらのコストも、あわせて比較材料にすることが望ましいです。隠れコストは月次のコスト表に現れにくいため、稟議の場では説明が後回しになりがちです。
入力ミスへの対応時間や、シャドーIT化による二重入力の件数を記録します。顧客対応の遅れに関する問い合わせ件数も、簡易な記録で構いません。こうした記録が、リニューアル投資の必要性を説明する材料になります。
開発期間・スケジュールの目安
アプローチを選ぶ際は、費用だけでなくスケジュール感も比較材料になります。規模と実現手段によって、必要な期間は大きく変わります。
規模別の全体期間目安
クラウド・SaaSの標準機能を使う小規模な刷新は、おおむね1〜3ヶ月です。クラウド・パッケージをカスタマイズする中規模の刷新は、3〜6ヶ月を見込みます。基幹連携を伴うフルスクラッチの大規模刷新は、半年から1年以上かかる場合があります。
UI/UXデザイン刷新に特有の現状調査(1〜3ヶ月程度)と要件定義・PoC(2〜4ヶ月程度)を合わせた上流工程だけで、3〜7ヶ月程度かかることも珍しくありません。
スケジュール遅延の5つの要因
代表的な遅延要因は、要件の肥大化とデータ移行仕様の未確定です。基幹システム、WMS(倉庫管理システム)、決済、CTIとの外部連携の確認漏れも、遅延につながります。表示速度やスマートフォン実機の確認不足も、レビューを長引かせます。
遅延の結果としてテスト工程が省かれてしまうことも、要因の一つです。選定段階でベンダーに「過去のプロジェクトでどの要因による遅延が多かったか」を確認しておくと、自社での対策も立てやすくなります。
決裁者への中間報告のタイミングも、遅延を防ぐうえで欠かせない論点になります。そのため、要件定義、ワイヤーフレーム、デザイン初稿の完成時を報告の節目にします。方向性のずれを早期に修正できる体制かどうかも、選定段階で確認しておきます。
PoC・プロトタイプ検証の進め方

候補となるアプローチや製品を2〜3件程度まで絞り込んだら、実際の受注処理を想定したPoC(概念実証)を行い、資料上の説明では見えない部分を検証します。
4ステップで進めるPoC
まずワイヤーフレームで、顧客検索や複数チャネルの注文履歴の確認、新規受注入力といった操作の流れを画面で追えるようにします。次にデザインカンプやクリッカブルプロトタイプで、関係者間のデザインの一貫性を早い段階で確かめます。
そのうえで現場オペレーターを巻き込んだユーザビリティテストを行い、操作に迷った箇所という定性評価と、完了率・エラー発生回数・処理時間という定量評価の両方を記録します。最後に、入力フォームの自動補完やエラー表示、ダッシュボードの整理といった業務システム特有の改善点を、フィードバックループとして設計に反映します。
デザインレビューで陥りやすい失敗
見た目だけで評価すると、業務上の使いにくさを見落とします。現場の視点を入れず、早期確認を省く進め方も危険です。
PC画面だけで承認し、スマートフォンを確認しないことも手戻りにつながります。一方で、ヒューリスティック評価(UX専門家によるチェックリスト評価)や、実際の操作ログを分析する自動分析といった手法は、ユーザーを毎回集める負担を抑えながら検証の質を上げる方法として有効です。
導入前に確認しておきたいポイント
アプローチと候補が固まってきた段階で、あらためて確かめたい論点を整理します。
小規模な受注体制でのリニューアルの要否
オペレーターの人数が少なくても、入力ミスや研修コストが業務に負担をかけているなら、検討する価値があります。一方、現状の画面で大きな支障が出ておらず、担当者が慣れで対応できているなら、優先度を下げて他の投資に回す判断も合理的です。
自社対応と外部委託の使い分け
デザイン・UXの専門知見が社内にどれだけ蓄積されているか、要件定義からUATまでを推進できる体制があるかで判断が分かれます。専門知見が不足している場合は、外部のUI/UX設計や開発の支援を受けたほうが、手戻りを抑えながら進められることが多くあります。
外部委託を選ぶ場合も、丸ごと任せきりにせず、現状調査やユーザビリティテストの結果を自社側でも把握できる体制を残しておくことが欠かせません。委託先が変わったときや将来さらに改修を重ねるときに、判断の根拠となった調査結果や設計意図が社内に残っていないと、同じ課題を繰り返し調べ直すことになりかねません。
着手の順序
いきなり全社的な刷新を計画せず、まず現状調査・アセスメントから始めます。オペレーターへのヒアリングと操作ログの分析で、課題を具体化します。そのうえで、3つのアプローチから候補を絞り込みます。
考え方を整理する場合は、OMSのリニューアルとは?|考え方・特徴・仕組み・目的を解説も確認できます。
まとめ
OMSリニューアルの選定では、受注処理画面と統合ビュー画面のどちらに課題が集中しているかを見極めたうえで、標準機能ベース・フルスクラッチ・ハイブリッドという3つのアプローチから方向性を選びます。そのうえで操作性、外部連携、TCOという評価軸で候補を比較し、保守・運用費用とスケジュールの目安を踏まえて実現可能な計画を立てることが重要です。
最終的な判断は、実案件に近いPoCで現場オペレーターに操作してもらった結果に基づいて行うことが望ましいです。資料上の機能一覧は、その判断を補う材料になります。
標準機能ベースの製品では、自社の独自フローや基幹連携を吸収しきれない場合があります。その場合に無理に業務を合わせようとすると、現場の負担が残ります。
riplaはフルスクラッチ開発の立場から、選定前の課題整理、既製クラウドサービスと基幹システムをつなぐ連携、独自業務に合わせた個別開発までを支援しています。標準機能とスクラッチ部分の線引きに迷う段階からでも相談可能です。
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会社紹介
株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
