システムのモダナイゼーションのパッケージ/クラウド製品一覧

モダナイゼーションを支援する製品は、クラウドベンダーの移行サービスとレガシー言語の自動変換ツールに大別できます。課題に合わせてこの2つを見分けると、候補を効率よく絞り込めます。

提供形態の違い、主要5製品・サービス、課題別の絞り方を順に見ます。各テーマの詳細は関連記事もご覧ください。

クラウドベンダーの移行サービスと自動変換ツールという2つの提供形態

クラウドベンダーの移行サービスと特定言語向け専門ツールの役割を左右で比較した図
移行先クラウドの選択とコード変換は別の検討軸です。

支援サービスは、クラウドベンダーの移行サービスと、特定言語の資産を変換する専門ツールに大別されます。

どちらを選ぶかは、対象システムの現状と、自社で移行を判断できる範囲によって変わります。

クラウドベンダーのサービスによる評価・移行・最適化の一貫支援

AWS、Microsoft Azure、Google Cloudは、オンプレミスの資産を検出して評価します。そのうえで、自社プラットフォームへの移行計画から実行までを支援するサービスを、各社が提供しています。

近年は生成AIを使うエージェント機能も加わり、依存関係の分析から移行後のコード生成まで自動化する領域が出てきています。

ただし、これらは基本的に自社クラウドへの移行を前提としています。そのため、移行先を横断して比べる場合は、各サービスの評価機能を個別に確認する必要があります。

レガシー言語からの自動変換に特化した専門ツール

専門ツールは、COBOLやPL/Iなどで書かれた資産を、既存のビジネスロジックを維持したままJavaなどへ書き換えます。

こうした専門ツールは、国内SIerを中心に提供されています。

専門ツールは、クラウドベンダーのサービスと組み合わせて使われる場合もあります。ただし、変換後のコードをどの環境で稼働させるかは、別途検討が必要です。

対象システムの環境や資産によって、移行の進め方は変わります。たとえば、次の2つのように分かれます。

  • 標準的な環境:稼働環境がすでに一般的なOS・ミドルウェアなら、クラウドベンダーのサービスだけで移行を完結できることも珍しくありません。
  • メインフレーム固有の資産:独自の言語や帳票、バッチ処理がある場合は、専門ツールで変換してからクラウドへ載せる方法が現実的です。

ポイント

移行サービスと専門ツールのどちらを軸にするかは、現状と自社で移行を判断できる範囲で決まります。標準的な環境なら移行サービスで足りることもあり、メインフレーム固有の資産は専門ツールでの変換が現実的です。

製品・サービスを比較するときの共通軸

サービス紹介の文面だけでは、自社システムに適用できるかを判断しにくいものです。そのため、候補を比べる際は次の共通軸を確認します。

  • 対応範囲:対象となる言語やワークロード、自動化の範囲
  • 検証支援:移行後の処理結果を確かめるための機能の有無
  • 支援体制:日本語資料と国内サポートの有無
  • 料金体系:課金の対象と、見積もりの根拠
  • 国内実績:国内での支援実績や協力会社

対応言語・対象ワークロードと自動化の範囲

「モダナイゼーションに対応」と書かれていても、実際に使えるかどうかは対象によって異なります。

発注側は、対象がメインフレームのCOBOL資産か、VMware環境の仮想マシンか、.NETアプリケーションかを、まず確認します。

生成AIによる自動化も、何を自動で生成し、どこから人手のレビューが必要になるかは製品ごとに差があります。そこで、対応ワークロードと自動化の範囲を具体的に確かめておきます。

移行後の検証支援と国内サポート体制

移行作業そのものより、新旧システムが同じ結果を返すことを確かめる「機能等価性検証」の負荷が大きくなりがちです。あわせて、検証とサポート、共通軸の料金体系について次を確かめます。

  • 検証の支援:実績のある支援会社の利用可否と、確認機能の有無
  • 国内サポート:日本語資料や国内パートナー経由の支援の有無
  • 費用の案内:移行時の金額と、専門ツールの見積もり条件が明示されているか

クラウドサービスは評価・計画フェーズを無料で提供する場合が多い一方で、移行実行時の費用は案内の詳しさに差があります。専門ツールは、対象コード量に応じた個別見積もりが基本です。

比較を公平に進めるには、コード量や複雑度、テスト範囲といった見積もりの根拠を、各社に同じ条件で示します。

ポイント

5つの共通軸は、各社に同じ条件で聞き比べることが基本です。資料の文面だけでは自社への適用を判断しにくいため、対象言語や見積もりの根拠まで具体的に聞くことが欠かせません。

システムのモダナイゼーションを支援する主要5製品・サービス

2026年7月時点で、現行の公式ページと対象業務を確認できた5製品・サービスを取り上げます。掲載順は、対象ワークロードや提供形態で整理した並びです。優劣を示すランキングではありません。

AWS Transform

AWS Transformは、生成AIを活用したエージェント機能で、レガシーシステムやコードのモダナイゼーションを支援するAWSのサービスです。

公式サイトでは、AWS Transformの対象ワークロードを4種類に分けて案内しています。

  • .NET・SQL Server:アプリケーションとデータベースの移行・高速化
  • メインフレーム:資産の移行期間の短縮
  • VMware:Amazon EC2への移行加速
  • 言語のバージョン:Java・Node.js・Pythonなどのアップグレード

料金は個別ページで確認する案内となっているため、対象ワークロードごとに見積もりを取得する必要があります。

AWS Application Migration Service

AWS Application Migration Service(MGN)は、オンプレミス環境や他クラウドからAWSへ移行するサービスです。物理サーバーやVMware、Hyper-Vなどを、既存の構成のままリホストします。

公式サイトでは、移行後のモダナイゼーションに使える選択肢も案内されています。

  • モダナイゼーションの選択肢:ディザスタリカバリ、OSバージョンアップグレード、ライセンス変換の提供
  • 段階的な刷新:先に稼働環境をクラウドへ移し、後からリファクタリングを進める流れ

Azure Migrate

Azure Migrateは、Microsoftが無料で提供する統合移行プラットフォームです。サーバーやSQL Serverデータベース、Webアプリケーションなどを扱います。

公式ドキュメントによると、次のような機能や支援が提供されています。

  • 移行工程:検出・評価・移行・最新化を、一つのポータルで実施
  • 計画支援:Azure Copilot移行エージェント(プレビュー)の提供

評価・計画の部分は無料ですが、実際の移行で使うパートナーツールには、別途課金される場合があります。

Google Cloud Migration Center

Google Cloud Migration Centerは、オンプレミスや他クラウドからGoogle Cloudへの移行を支援する統合プラットフォームです。

公式ドキュメントでは、既存資産の検出、クラウド費用の見積もり、TCO(総所有コスト)レポートの生成が案内されています。複数の移行シナリオに応じたツールを提供し、移行の計画から実行まで支援します。

料金は個別に確認が必要ですが、無料で始められるオプションも案内されています。

Xenlon~神龍

Xenlon~神龍(TISI株式会社)は、COBOLやPL/Iなどのレガシー言語で書かれた大規模システムを、既存のビジネスロジックを維持したままJavaへ自動変換します。

  • 削減効果:一般的なリビルド開発と比べ、費用は約50%減、所要期間は約50%短縮と公式サイトで案内されています。
  • 対応内容:仮想化基盤やCI/CDの導入、Open COBOL環境のモダナイゼーションも扱います。

国内のメインフレーム資産を多く抱える企業が検討する選択肢です。料金は個別見積もりで、資料請求または問い合わせフォームから確認します。

自社の課題別に候補を絞る方法

候補選びの出発点となる言語・保守人材、移行先クラウド、期限の3課題を並べた図
優先する課題を決めると、比較の入口が定まります。

5つのサービスを一度に細部まで比べるより、自社の課題を一つ決めて、その対応可否から候補を絞るほうが効率的です。

メインフレーム資産の言語・保守人材が課題の場合

COBOLなどのレガシー言語を扱う保守人材が不足している場合は、Xenlon~神龍のような自動変換ツールを検討します。AWS Transformのメインフレーム対応機能も、候補に入ります。

比べる観点は、既存のビジネスロジックをどこまで引き継げるかと、変換後のコードを保守できる体制があるかです。

移行先クラウドが決まっている場合

AWS、Azure、Google Cloudのいずれかを標準のクラウドとして採用しているなら、そのベンダーの移行サービスを起点に候補を比べます。

  • AWS:AWS Transform、AWS Application Migration Service
  • Azure:Azure Migrate
  • Google Cloud:Google Cloud Migration Center

同じベンダーのサービスなら、既存のIDやネットワーク環境との親和性を確かめやすくなります。一方で、複数クラウドを併用する企業は、周辺システムの稼働先も踏まえて移行先を判断すると、後の連携コストを抑えられます。

まずリホストで期限に間に合わせたい場合

サポート終了(EOS)などで期限が迫っている場合は、リホスト機能を優先して検討します。候補となるのは、AWS Application Migration ServiceとAzure Migrateです。

これらは既存の構成を維持したまま、短期間で移行を進められます。なお、リファクタリングやリビルドは、移行後に段階を踏んで取り組むものとして計画します。

ポイント

5つのサービスを細部まで一度に比べるより、自社の課題を一つ決めて対応可否から絞るほうが効率的です。課題は、メインフレームの言語・保守人材、移行先クラウド、期限のどれを優先するかで決めます。

料金・契約前の確認事項

クラウドベンダーのサービスは無料または従量課金が中心ですが、移行費用は対象システムの規模や複雑さによって変わります。そのため、公開料金だけで判断せず、システム情報を提示して見積もりを取得します。

課金の対象

クラウドベンダーは評価・計画を無料で提供することが多い一方で、移行後のインフラ費用や、連携するパートナーツールの利用料は別途かかります。また、自動変換ツールは、対象コード量や難易度に応じた個別見積もりが一般的です。

発注側は、現在の資産規模と対象範囲を具体的に伝え、初期費用と稼働後のランニングコストを分けて確認します。

サポート体制とデータ・コードの持ち出し条件

外部サービスでは、成果物や契約内容が将来の運用に影響します。

  • 成果物の形式:変換後のコードやドキュメントが、自社で保守できる標準形式かどうか
  • 依存と持ち出し条件:特定のクラウドやツールに縛られると、将来の見直しが難しくなる場合があります。成果物を外へ出す際の取り決めも、契約前に確かめます。
  • 契約形態と支援範囲:国内SIerでは一括請負か、保守運用を含む継続契約かによって、稼働後に受けられる対応の中身が変わります。
  • 運用時の支援:障害時の問い合わせ窓口と対応時間、追加改修時の見積もり方法を確かめておくと、稼働後の進行がスムーズになります。

ポイント

移行費用は規模や複雑さで変わるため、公開料金だけで判断せず、システム情報を示して見積もりを取得します。初期費用と稼働後のコストを分け、成果物の持ち出し条件を契約前に押さえておくことが大切です。

PoCと機能等価性検証による最終候補の絞り込み

資料比較で絞った候補をパイロット検証し、本番相当データで回帰検証する流れの図
検証範囲を広げながら、処理結果の一致まで確かめます。

資料比較で2〜3件に絞ったら、対象システムの一部でPoCを行います。そのうえで、新旧システムの処理結果が一致するかという機能等価性まで確かめます。

影響の小さい範囲でのパイロット検証

対象のうち影響範囲が限られる機能を選び、実際にサービスやツールを適用してPoCを行います。

変換率、移行後の処理速度、想定外のエラーの発生程度を記録します。また、複数の候補は同じ条件で比べます。

本番データを使った機能等価性の検証

新システムが旧システムと同じ処理結果を返すかどうかを見極める作業は、モダナイゼーションのなかでも最も難易度の高い工程です。

PoCでは、本番相当データを使った回帰検証をどこまで自動化できるか、結果をどう確かめられるかも見ておきます。これにより、稼働後のトラブルを減らせます。

ポイント

2〜3件に絞った候補は、一部の対象でPoCを行い、新旧の処理結果が一致するかまで確かめます。変換率や処理速度を同じ条件で記録すると、候補を並べて比べやすくなります。

システムのモダナイゼーションの製品比較で押さえておきたいポイント

製品一覧から候補を選ぶ際に、判断が分かれやすい論点を取り上げます。

複数サービスの組み合わせ

自動変換ツールでコードを書き換えたあと、クラウドベンダーの移行サービスで稼働環境を用意するという組み合わせは一般的です。1つのサービスですべてを完結させる必要は、必ずしもありません。

発注側は、対象システムの特性に応じて、各サービスの役割分担を決めておきます。

特定サービスの推奨に頼らない判断

どの企業にも共通する1位のサービスはありません。対象システムの言語や移行先クラウド、期限といった条件によって、適したサービスが変わります。

まずは自社の必須要件で候補を絞り、PoCで比べてから最終判断します。候補が定まらない場合は、最優先の課題を一つに絞って、その課題への対応可否で一次選考を行います。

さらに、料金やサポート体制などの副次的な条件は、二次選考以降に加えていきます。最初から全条件を同時に満たす候補を探すより、この進め方が効率的です。

まとめ

支援サービスは大きく、AWS・Azure・Google Cloudの移行プラットフォームと、Xenlon~神龍のようなレガシー言語の自動変換ツールに分かれます。

言語・アーキテクチャ、移行先クラウド、期限のどれを優先するかによって、候補が変わります。

対応ワークロードと自動化範囲による候補の絞り込み

対象がメインフレームのCOBOL資産か、VMware環境か、移行先クラウドが決まっているかを整理します。そのうえで、対応可否から候補を絞り込みます。

PoCと機能等価性の検証による最終判断

資料だけでは分からない適合性は、実際の対象で検証して確かめることが大切です。

  • 精度と一致度:対象コードの一部を使うPoCで、変換の正確さと新旧の結果の一致を確かめます。
  • 個別開発の補完:クラウドサービスや自動変換ツールで吸収しきれない独自業務ロジックや複雑な連携を、riplaが受け持ちます。
  • 支援内容:riplaがフルスクラッチ開発の立場から、分析、個別のアーキテクチャ設計、既存システムとの連携を行います。

選定の評価軸については、システムのモダナイゼーションの選定ポイント・選び方・種類で詳しく解説しています。あわせてご参照ください。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。