BtoB卸売・商社向けの通販サイトやECシステムの開発を検討する際、「開発費用がどの程度かかるのか見当がつかない」「提示された見積もり金額が妥当かどうか判断できない」という悩みを持つ企業担当者は少なくありません。卸売業や商社は、取引先ごとに異なる掛率や与信枠、ロット単位での発注、複雑な物流手配といった業界固有の商慣習をシステムに組み込む必要があるため、一般的なBtoC向けECサイトの構築とは技術的な難易度もコスト構造も大きく異なります。その結果、初期開発費用は数百万円から数千万円、大規模案件では1億円を超えることも珍しくなく、事前に費用構造を正しく把握しておくことが経営判断において極めて重要です。
本記事では、BtoB卸売・商社向け通販/EC開発の費用相場について、開発手法別の費用目安からコスト内訳、開発プロセスの各フェーズで発生する費用、そして見積もりを取得する際に押さえておくべき実践的なポイントまで体系的に解説します。初めてEC開発を外部に発注する担当者の方にも、社内で予算を策定している方にも、適正な投資判断を行うための参考材料としてご活用いただければ幸いです。
本テーマに関する全体ガイドは、以下の記事をご覧ください。
▼全体ガイドの記事
・BtoB卸売・商社向けの通販/EC開発の完全ガイド
BtoB卸売・商社向けの通販/EC開発の全体像

BtoB卸売・商社向けの通販/ECシステムは、企業間取引をオンライン上で完結させるためのプラットフォームです。従来、電話やFAX、対面商談で行われてきた受発注業務をデジタル化することで、業務効率の向上と取引コストの削減を同時に実現します。しかし、ひと口にBtoB-ECといっても、その開発手法や導入形態にはいくつかの選択肢があり、それぞれが費用に直結する要素となっています。費用相場を正しく理解するためには、まず開発手法の違いと、卸売・商社ならではの業界特有の要件を把握しておく必要があります。
開発手法の種類と費用帯
BtoB卸売・商社向けECシステムの開発手法は、大きく分けて「ASP・SaaS型」「パッケージカスタマイズ型」「フルスクラッチ開発」の3つに分類できます。それぞれの手法によって、初期費用や開発期間、カスタマイズの自由度が大きく異なるため、自社の業務要件と予算のバランスを踏まえた選択が求められます。
ASP・SaaS型は、既存のクラウドサービスを利用してBtoB-ECサイトを構築する方法です。BカートやアラジンEC、楽楽B2Bといった国内向けBtoB-EC専用のSaaSプラットフォームが代表的で、初期費用は50万円から300万円程度、月額利用料は5万円から30万円程度が相場です。導入期間も1か月から3か月と短く、スピード重視の場合に適しています。ただし、SaaS型はプラットフォーム側が提供する機能の範囲内での運用が基本となるため、取引先ごとの個別掛率設定や独自の承認フローなど、高度なカスタマイズが必要な場合には対応しきれないケースがあります。
パッケージカスタマイズ型は、EC-CUBEやShopifyのBtoB向けプラグイン、あるいはecbeingやGMOクラウドECといったパッケージソフトウェアをベースに、自社の業務要件に合わせてカスタマイズを行う手法です。初期費用は300万円から2,000万円程度が目安で、開発期間は3か月から8か月程度です。パッケージが持つ基本機能をそのまま活用できる部分については開発工数を抑えられる一方、卸売業特有の複雑な価格体系やロット管理など、パッケージの標準機能では対応できない部分にカスタマイズ費用がかかります。カスタマイズの範囲と深さによって費用が大きく変動するため、事前にパッケージの標準機能と自社要件のギャップを正確に把握することが重要です。
フルスクラッチ開発は、ゼロからすべてを設計・開発する手法で、自社の業務プロセスに完全に最適化されたシステムを構築できるのが最大のメリットです。初期費用は1,000万円から1億円以上と幅が広く、開発期間も6か月から1年半以上を要します。大手商社や取引先数が数百社を超える卸売企業、あるいはERPや基幹システムとの高度な連携が求められるケースでは、フルスクラッチ開発が選択されることが多いです。2025年から2026年にかけては、ヘッドレスコマースのアーキテクチャを採用し、フロントエンドとバックエンドを分離して開発する手法が増えており、この場合はAPI設計やフロントエンド開発に追加の工数が発生しますが、将来的な拡張性や複数チャネルへの展開を見据えた投資としては合理的な選択肢となっています。
卸売・商社ならではの業界特有要件
BtoB卸売・商社向けECシステムの費用が一般的なBtoC-ECサイトよりも高くなる最大の理由は、業界固有の商慣習をシステムに反映させる必要があるためです。まず、価格設定の複雑さが挙げられます。卸売業では、取引先ごとに掛率(定価に対する割引率)が異なるのが一般的であり、さらに数量割引(ボリュームディスカウント)、期間限定の特別価格、新規取引先向けのキャンペーン価格など、複数の価格ロジックが並行して存在します。この価格マトリクスをシステムに正確に実装するだけでも、BtoC-ECと比較して100万円から300万円程度の追加開発費用が見込まれます。
次に、与信管理と決済の仕組みです。BtoC-ECではクレジットカードや電子マネーによる即時決済が主流ですが、BtoB卸売取引では月末締め翌月末払いや手形決済など、掛売り(後払い)が基本です。取引先ごとに与信枠を設定し、注文金額が与信枠を超えた場合にアラートを出すか注文をブロックする機能が必須となります。また、請求書の自動発行や入金消込の仕組みも求められるため、決済・請求関連の機能だけで150万円から400万円程度の開発費用が発生することがあります。
さらに、在庫管理と物流連携も卸売業特有の要件です。卸売業では、複数の倉庫に分散した在庫のリアルタイム管理、ケース単位やパレット単位でのロット発注、出荷指示書の自動生成、配送業者との連携によるトラッキング情報の共有など、物流に関わる機能が多岐にわたります。WMS(倉庫管理システム)や3PL(サードパーティロジスティクス)との連携が求められるケースでは、API開発やデータ連携の設計に相応の工数が必要であり、物流関連機能の開発費用だけで200万円から500万円程度を見込んでおく必要があります。こうした業界特有要件の積み重ねが、BtoB卸売・商社向けECの総開発費用を押し上げる要因となっているのです。
BtoB卸売・商社向けの通販/EC開発の進め方

BtoB卸売・商社向けECシステムの開発は、一般的なWebシステム開発と同様に複数のフェーズに分けて段階的に進められます。各フェーズでどのような作業が発生し、それぞれにどの程度の費用がかかるのかを事前に理解しておくことで、プロジェクト全体の予算計画をより精度高く立てることができます。ここでは、要件定義・企画フェーズから設計・開発フェーズ、テスト・リリースフェーズまでの流れを、費用の観点を交えながら解説します。
要件定義・企画フェーズ
要件定義・企画フェーズは、プロジェクトの成否を左右する最も重要な工程です。このフェーズでは、現行の業務フロー(電話・FAX・メールでの受発注プロセス)を詳細に整理し、ECシステムに置き換える範囲と、引き続きオフラインで対応する範囲を明確にします。卸売・商社の場合、取引先によって発注方法や決済条件が異なることが多いため、主要取引先10社から20社程度の取引パターンを洗い出し、システムが対応すべきバリエーションを具体的に定義する作業が必要です。
要件定義の費用は、プロジェクト全体の開発費用の10%から15%程度が目安とされています。たとえば、総額1,500万円規模のプロジェクトであれば、要件定義に150万円から225万円程度を充てるのが標準的です。この工程には通常1か月から2か月を要し、プロジェクトマネージャー1名とビジネスアナリスト1名の計2名体制で進められることが一般的です。卸売業特有の要件として、取引先マスタの設計(掛率、与信枠、決済条件、配送先情報などの管理項目の定義)、商品マスタの設計(ケース入数、最小ロット、リードタイムなどの属性定義)、そして既存の基幹システム(販売管理システムや在庫管理システム)との連携要件の整理が重要な作業項目になります。要件定義の段階で抜け漏れがあると、後続の設計・開発フェーズで手戻りが発生し、追加費用の原因となるため、この工程に十分な時間と予算を確保することが結果的にプロジェクト全体のコスト最適化につながります。
設計・開発フェーズ
設計・開発フェーズは、プロジェクト全体の費用の60%から70%を占める中核工程です。設計工程では、要件定義で整理された業務要件を技術仕様に落とし込み、データベース設計、画面設計(UI/UXデザイン)、API設計、システムアーキテクチャ設計を行います。卸売・商社向けECの場合、特に重要となるのがデータベース設計です。取引先ごとの価格マスタ、与信情報、発注履歴、在庫データなど、管理すべきデータ項目が多岐にわたるため、将来的なデータ量の増加も見据えた設計が求められます。設計工程の費用は、プロジェクト全体の15%から20%程度が目安で、1,500万円規模のプロジェクトであれば225万円から300万円程度です。
開発工程では、フロントエンド(取引先がアクセスする注文画面や商品カタログ)とバックエンド(受注処理、在庫連携、請求処理などのビジネスロジック)の両方を並行して進めます。BtoB卸売EC特有の開発項目としては、取引先別の商品カタログ表示(取引先ごとに閲覧可能な商品を制御する機能)、複雑な発注フロー(見積依頼から承認を経て正式発注に至るワークフロー)、再発注機能(過去の注文履歴から同一内容をワンクリックで再発注する機能)などがあり、これらの機能は標準的なEC機能に上乗せされるコスト要因です。開発チームの体制としては、中規模案件の場合でプロジェクトマネージャー1名、バックエンドエンジニア2名から3名、フロントエンドエンジニア1名から2名、UI/UXデザイナー1名の計5名から7名が標準的であり、月額の人件費は400万円から700万円程度になります。開発期間は3か月から6か月程度が多く、この期間の人件費が開発フェーズのコストの大部分を構成します。
テスト・リリースフェーズ
テスト・リリースフェーズは、プロジェクト全体の費用の15%から20%を占める工程であり、品質を担保するうえで欠かすことのできないプロセスです。BtoB卸売ECのテストでは、通常の機能テストに加えて、取引先ごとの掛率が正しく反映されるかを確認する価格計算テスト、与信枠の上限に達した場合の挙動を検証する与信管理テスト、大量の商品データや同時アクセスに耐えられるかを測定する負荷テスト、そして既存の販売管理システムや在庫管理システムとのデータ連携が正常に動作するかを確認する結合テストなど、卸売業特有のテスト項目が数多く存在します。
テストの費用は、1,500万円規模のプロジェクトであれば225万円から300万円程度が目安です。テスト期間は1か月から2か月程度で、テストエンジニア1名から2名が専任で担当するほか、開発エンジニアもバグ修正のためにこの期間はテスト対応に工数を割くことになります。特に注意が必要なのは、UAT(ユーザー受入テスト)の工程です。実際の取引先に協力を仰いでテスト注文を行ってもらい、操作性や業務フローに問題がないかを確認するプロセスであり、ここで発覚した不具合やユーザビリティの課題への対応が追加費用を発生させることがあります。リリース後に重大な不具合が発覚するリスクを最小化するためにも、テスト工程の予算は削減すべきではありません。リリース作業自体の費用(サーバー環境の構築、データ移行、DNS設定など)は50万円から150万円程度で、本番環境への切り替えとともに、取引先への案内やマニュアル作成といった周辺作業の費用も含めて計画しておくことが大切です。
費用相場とコストの内訳

BtoB卸売・商社向けEC開発の費用を正確に把握するためには、初期の開発コストだけでなく、継続的に発生するランニングコストも含めた総所有コスト(TCO)の視点で捉えることが不可欠です。ここでは、費用の大部分を占める人件費と工数の考え方、そしてリリース後に発生し続けるランニングコストの内訳について詳しく解説します。
人件費と工数
BtoB卸売・商社向けEC開発の費用において、最も大きな割合を占めるのが人件費です。開発費用全体の65%から80%がエンジニア、デザイナー、プロジェクトマネージャーなどの人件費で構成されるのが一般的です。2025年から2026年時点における国内IT人材の月額単価の相場は、プロジェクトマネージャーが月額90万円から160万円、バックエンドエンジニアが月額80万円から140万円、フロントエンドエンジニアが月額75万円から130万円、UI/UXデザイナーが月額70万円から120万円程度となっています。
工数の算出においてポイントとなるのは、卸売・商社向けECでは標準的なEC機能に加えて業界固有の機能開発が上乗せされるという点です。具体的には、取引先別価格マスタ管理機能の開発に2人月から4人月(160万円から560万円程度)、与信管理・掛売り決済機能に1.5人月から3人月(120万円から420万円程度)、複数倉庫の在庫管理・物流連携機能に2人月から5人月(160万円から700万円程度)、発注承認ワークフロー機能に1人月から2人月(80万円から280万円程度)、既存基幹システムとのAPI連携に2人月から6人月(160万円から840万円程度)といった工数が見込まれます。これらの業界固有機能だけで合計8.5人月から20人月、金額にして680万円から2,800万円程度の追加コストが発生することになります。
発注先の選択によっても人件費の水準は変動します。大手SIerに依頼する場合は、プロジェクト管理体制や品質保証の仕組みが成熟している反面、単価が高くなる傾向にあり、中規模案件でも2,000万円から4,000万円程度になることがあります。一方、BtoB-ECの開発実績を持つ中堅の開発会社に依頼する場合は、同等の機能でも20%から40%程度コストを抑えられるケースが多いです。また、ベトナムやフィリピンなどのオフショア拠点を活用した場合、国内開発と比較して人件費を40%から60%削減できる可能性がありますが、卸売業特有の商慣習(掛率、手形決済、ロット管理など)をオフショアチームに正確に伝達するためのブリッジSE(月額50万円から100万円程度)の配置が不可欠であり、コミュニケーションコストを含めたトータルで比較検討する必要があります。
初期費用以外のランニングコスト
BtoB卸売・商社向けECシステムは、開発して終わりではなく、リリース後も継続的にコストが発生し続けます。ランニングコストを大きく分類すると、インフラ費用、保守・運用費用、外部サービス利用料の3つに分けられます。まずインフラ費用についてですが、AWS、Google Cloud、Azureなどのクラウドプラットフォーム上でシステムを稼働させる場合、月額のインフラ費用はシステムの規模や利用状況にもよりますが5万円から50万円程度が一般的な範囲です。取引先が数十社程度で注文件数が月間数百件レベルであれば月額10万円から20万円程度で収まりますが、取引先が数百社以上で商品点数が数万点に及ぶ大規模なシステムでは月額30万円から80万円以上になることもあります。
保守・運用費用は、初期開発費用の15%から25%を年間のコストとして見込んでおくのが業界の標準的な考え方です。たとえば、初期開発費用が1,500万円のシステムであれば、年間の保守・運用費用は225万円から375万円、月額に換算すると約19万円から31万円程度が目安です。この費用には、バグ修正、セキュリティパッチの適用、サーバーやミドルウェアのバージョンアップ対応、軽微な機能改善、システム監視、障害時の緊急対応などが含まれます。卸売・商社向けECの場合、特に注意が必要なのが取引先側のシステム変更に伴う連携修正や、税制改正(消費税率変更、インボイス制度対応など)への対応です。これらは定期的に発生するイベントであり、保守費用の中で相応の割合を占めることになります。
外部サービス利用料としては、決済代行サービスの手数料(掛売り決済の場合、Paid、マネーフォワードケッサイ、NP掛け払いなどの利用料が取引額の1%から3%程度)、メール配信サービスの月額費用(注文確認メールや出荷通知の自動配信に月額1万円から5万円程度)、検索エンジンやレコメンドエンジンの利用料(大量の商品を扱う場合にAlgoliaなどの外部検索サービスを利用すると月額3万円から15万円程度)、SSL証明書やドメイン維持費(年間数千円から数万円程度)などが該当します。SaaS型のBtoB-ECプラットフォームを利用している場合は、月額利用料(5万円から30万円程度)がこれに加わります。3年間から5年間のTCO(総所有コスト)で見ると、ランニングコストの合計が初期開発費用と同等かそれ以上になるケースも珍しくないため、初期費用だけに目を奪われず、長期的なコストシミュレーションを行ったうえで投資判断を下すことが極めて重要です。
見積もりを取る際のポイント

BtoB卸売・商社向けEC開発の見積もりは、発注側の準備状況によって精度が大きく変わります。ここでは、より正確で比較可能な見積もりを取得するための具体的なポイントを、要件の整理方法から発注先の選定基準、そして見積もり段階で注意すべきリスクまで網羅的に解説します。
要件明確化と仕様書の準備
見積もりの精度を左右する最大の要因は、発注側がどれだけ要件を明確に整理できているかという点に尽きます。「卸売業向けのECサイトを作りたい」という抽象的な依頼だけでは、開発会社はリスクを最大限に見込んだ概算を提示するか、あるいは必要な工数を過小評価して後から追加費用が発生するかのどちらかになりがちです。見積もり依頼の段階で最低限整理しておくべき情報としては、ECサイトの利用者(自社の営業担当者、取引先の発注担当者、管理者など)とその想定ユーザー数、取り扱い商品の点数とカテゴリ構成、取引先ごとの価格設定ルール(掛率のパターン数やボリュームディスカウントの有無)、決済・請求方法(掛売り、クレジットカード、銀行振込など)、連携が必要な既存システムの名称とAPI仕様の有無、セキュリティ要件(IPアドレス制限、二段階認証の要否など)、希望する開発スケジュールと予算の上限などが挙げられます。
理想的には、RFP(提案依頼書)の形でこれらの情報を文書化しておくことが望ましいです。しかし、すべてを完璧に揃える必要はなく、重要なのは「何を実現したいのか」というゴールと「何が決まっていて何がまだ未定なのか」という現状を正確に伝えることです。業務フロー図(現状の受発注プロセスを図示したもの)や画面のワイヤーフレーム(手書きレベルでも構いません)を添えるだけで、見積もりの精度は格段に向上します。実際に、RFPを用意した案件とそうでない案件では、見積もり金額に30%から50%程度の乖離が生じることがあるとされており、この準備工程に数日間を投資することは、プロジェクト全体のコスト最適化にとって極めて有効な投資です。
複数社比較と発注先の選び方
BtoB卸売・商社向けEC開発の見積もりは、最低でも3社から取得して比較検討することをお勧めします。これは最も安い会社を選ぶためではなく、各社の提案内容を比較することで自社の要件に対する妥当な費用水準を把握するためです。同じ要件に対して、A社は800万円、B社は1,800万円、C社は3,000万円という見積もりが出ることは決して珍しくありません。この差は、各社が想定する開発体制、採用する技術スタック、リスクバッファの積み方、そして卸売業界での開発経験の有無によるものであり、金額の高低だけで優劣を判断することはできません。
発注先を選定する際に確認すべきポイントとして、最も重要なのはBtoB-EC、特に卸売業や商社向けの開発実績です。BtoC向けECサイトの構築経験が豊富であっても、卸売業特有の掛率管理、与信管理、ロット発注、掛売り決済といった業務要件に対応した経験がなければ、設計段階で想定外の工数が発生するリスクがあります。実績を確認する際は、単に「BtoB-ECの開発経験がある」というレベルではなく、「食品卸の掛売りECを構築した」「建材商社の受発注システムをERPと連携させた」など、自社の業種や業態に近い具体的な事例があるかどうかを確認することが大切です。
また、開発完了後の保守・運用体制が整っているかどうかも重要な判断基準になります。BtoB-ECは取引先企業の業務に直結するシステムであるため、障害発生時の復旧対応やセキュリティアップデートの提供体制が脆弱な開発会社に依頼すると、リリース後に大きなリスクを抱えることになります。さらに、契約形態(請負契約か準委任契約か)の提案内容や、仕様変更時の対応プロセスが明確に定義されているかどうかも、開発会社のプロジェクト管理の成熟度を測る指標となります。請負契約は予算の見通しが立てやすいメリットがある一方で仕様変更時に追加費用が発生しやすく、準委任契約は柔軟な対応が可能な反面で費用の上限が読みにくいという特性があるため、プロジェクトの性質に応じた契約形態を提案できる開発会社は信頼性が高いといえます。
注意すべきリスクと対策
BtoB卸売・商社向けEC開発の見積もりに関して、発注側が特に注意すべきリスクがいくつかあります。最も頻繁に発生するのが、開発途中での仕様変更による追加費用の膨張です。卸売業のEC開発では、プロジェクトが進むにつれて「この取引先には特殊な決済条件がある」「季節商品のカタログ切り替え機能が必要だった」「営業担当者から代理注文できる機能を追加してほしい」といった追加要件が次々と浮上することが少なくありません。こうした仕様変更が積み重なると、当初の見積もりから30%から60%の費用増加につながるケースもあります。この対策としては、開発着手前にMVP(最小限の機能セット)を明確に定義し、追加機能は優先順位をつけてフェーズ2以降に回すというスコープ管理の考え方を、社内の関係者全員と開発会社との間で共有しておくことが有効です。
次に注意すべきは、見積もりに含まれていない隠れたコストの存在です。たとえば、既存システムからのデータ移行費用(取引先マスタ、商品マスタ、過去の注文履歴などの移行)が見積もりに含まれていないケースは意外に多く、特にレガシーシステムからの移行ではデータクレンジング(不整合データの修正)やフォーマット変換に想定以上の工数がかかることがあり、データ移行だけで100万円から500万円程度が追加で発生する場合があります。また、取引先向けの操作マニュアル作成費用、社内担当者への研修費用、リリース初期のサポート体制構築費用なども、見積もりの本体には含まれていないことが多いため、見積もりを受領した際には「何が含まれていて何が含まれていないのか」を開発会社に一つひとつ確認することが大切です。
さらに、卸売・商社向けEC特有のリスクとして、取引先のITリテラシーの差異があります。取引先の発注担当者のなかには、これまでFAXや電話での発注に慣れ親しんだ方も多く、ECシステムへの移行がスムーズに進まない場合があります。このリスクに対しては、操作が直感的で分かりやすいUI設計に十分な予算を充てること、段階的な導入計画(ITリテラシーの高い取引先から先行導入し、フィードバックを反映してから全取引先に展開する方法)を立てること、そして電話やFAXでの発注を並行して受け付ける移行期間を設けることが有効な対策です。開発会社との契約においても、リリース後3か月から6か月程度の安定稼働支援期間を設け、その間の軽微な改善や不具合対応を保守費用に含める形で合意しておくことをお勧めします。
まとめ

BtoB卸売・商社向けの通販/EC開発の費用相場は、ASP・SaaS型の導入で50万円から300万円、パッケージカスタマイズ型で300万円から2,000万円、フルスクラッチ開発で1,000万円から1億円以上と、開発手法や要件の複雑さによって大きな幅があります。費用の内訳としては人件費が全体の65%から80%を占め、卸売・商社特有の業界要件(取引先別掛率管理、与信管理、ロット発注、物流連携など)の開発が標準的なEC機能に上乗せされるコスト要因となっています。開発プロセスにおいては、要件定義に全体の10%から15%、設計・開発に60%から70%、テスト・リリースに15%から20%という配分が一般的であり、特に要件定義フェーズに十分な時間と予算を投じることが後工程での手戻りを防ぎ、結果的にプロジェクト全体のコストを最適化する鍵となります。
適正な見積もりを取得するためには、RFPの準備と要件の明確化が何よりも重要であり、最低3社から見積もりを取得して比較検討することで妥当な費用水準を把握できます。発注先の選定においては、金額だけでなく卸売業界でのBtoB-EC開発実績、保守・運用体制の充実度、プロジェクト管理の透明性を総合的に評価することが成功の鍵です。また、初期開発費用だけでなく、年間で初期費用の15%から25%程度が保守・運用コストとして継続的に発生する点を忘れてはなりません。3年から5年のTCO(総所有コスト)で評価し、仕様変更による追加費用やデータ移行費用などの隠れたコストにも事前に備えておくことで、限られた予算のなかでも事業成長に貢献するBtoB-ECシステムを実現することができます。信頼できる開発パートナーとともに、長期的な視点で投資判断を行うことが大切です。
▼全体ガイドの記事
・BtoB卸売・商社向けの通販/EC開発の完全ガイド

受発注業務のシステム化をお考えなら
「メール・FAX・Excelでの注文管理」「受注・発注・在庫の二重入力」「独自商流でSaaSが合わない」——そんな課題は、受注・発注・在庫・出荷・請求を一元化する受発注管理Boxで解決できます。SaaSとフルスクラッチの“ちょうどいい中間”を、短期間・低コストで。
株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>


株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
