BtoB卸売・商社向けの通販/EC開発の完全ガイド

BtoB卸売・商社向けの通販/EC開発では、得意先ごとの掛率やロット発注、基幹システムとの連携といった業界固有の要件を、システムに正しく組み込む必要があります。そこで、企画から発注までの流れ、開発会社の選び方、費用の目安を押さえておくと、プロジェクト全体の見通しがつかめます。

BtoCのEC開発に関するノウハウは、インターネット上に豊富にあります。一方で、BtoBの卸売・商社に特化した通販サイトやECシステムの開発は、体系的にまとまった情報がまだ不足しているのが現状です。各テーマの詳しい内容は、下記の個別記事で確認できます。

▼関連記事一覧
・BtoB卸売・商社向けの通販/EC開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順
・BtoB卸売・商社向けの通販/EC開発でおすすめの開発会社/ベンダー6選と選び方
・BtoB卸売・商社向けの通販/EC開発の見積相場や費用/コスト/値段について
・BtoB卸売・商社向けの通販/EC開発の発注/外注/依頼/委託方法について

BtoB卸売・商社向けの通販/EC開発の進め方

EC開発を要件定義・企画、設計・開発、テスト・リリースの3フェーズに分けた図解。
目的と業務要件の整理から段階的に進みます。

BtoB卸売・商社向けのEC開発は、「要件定義・企画」「設計・開発」「テスト・リリース」の3つのフェーズで進みます。BtoCのECサイトとは異なり、業界の商慣習をシステムに正確に反映させる必要があります。

その代表例は、取引先ごとの掛率設定やロット単位の発注、基幹システムとの連携です。そのため、各フェーズで卸売・商社ならではの配慮が求められます。

また、プロジェクト全体の期間は、SaaS型の導入であれば1〜3か月、パッケージカスタマイズ型で3〜8か月、フルスクラッチ型で8〜18か月が一般的な目安です。

要件定義・企画フェーズ

EC開発は、なぜEC化するのかという目的をはっきりさせるところから始まります。受発注業務の効率化が主な目的か、新規顧客の開拓か、既存取引先のリテンション強化かによって、必要な機能や開発規模が大きく変わります。

要件定義で最も大切なのは、BtoB卸売特有の業務要件を漏れなく洗い出すことです。得意先マスタの管理方法や掛率テーブルの構造、ロット単位の発注ルールのほか、与信管理のルールや基幹システムとの連携方法も含まれます。

さらに、現行の受発注業務フローを1件ずつ追い、どの工程をEC化するかを決めておくと、後工程での手戻りを大幅に減らせます。IPA(情報処理推進機構)の調査では、要件定義に十分な工数をかけなかったプロジェクトで30〜50%のコスト増加リスクがあると報告されています。

設計・開発フェーズ

設計では、取引先別の価格管理データと商品マスタの統合設計が特に重要になります。卸売企業が扱う商品数は数千〜数万SKUに及ぶことが多く、メーカー型番・自社品番・JANコードといった複数の識別子が混在します。そのため、拡張性を考慮した設計が求められます。

基幹システムとの連携方式には、次の3つがあります。

  • API連携
  • バッチ連携
  • CSV入出力

開発では、フロントエンドとバックエンドを並行して進め、2週間スプリントごとのデモで現場のフィードバックを反映させる運用が推奨されます。さらに、主要取引先5〜10社にプロトタイプを見せて使い勝手を確かめる工程は、EC化後の利用率向上に直結します。

テスト・リリースフェーズ

テストでは、取引先別の価格計算ロジックの検証が最も重要な作業になります。組み合わせのパターンが膨大になるため、自動テストを組むことが推奨されます。

リリースは、一斉に公開せず、取引頻度の高い10〜20社を対象にパイロットリリースを行うのが有効です。2〜4週間の試験運用を経て、段階的に展開します。

たとえば、ある日用品卸では、上位30社で1か月間のパイロット運用を行い、約50件の改善要望を反映してから全社に展開しました。その結果、半年でEC利用率を65%まで引き上げた実績があります。

▶ 詳細はこちら:BtoB卸売・商社向けの通販/EC開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順

ポイント

目的と業務要件を先に固めるほど、後工程での手戻りを減らせます。掛率やロット発注のルールは、設計に入る前に決めておくことが大切です。

BtoB卸売・商社向けの通販/EC開発でおすすめの開発会社

BtoB卸売・商社向けのEC開発は、BtoCとは根本的に異なる要件を多く含みます。そのため、専門的な知見を持つ開発パートナーの選定が、プロジェクトの成否を大きく左右します。

矢野経済研究所の調査では、BtoB-ECシステム導入プロジェクトのうち約30%が「現場の業務に合わない」という理由で、十分に活用されていないと報告されています。したがって、卸売業の業務フローに精通した開発会社を選ぶことが欠かせません。

BtoB卸売EC開発の実績を持つ代表的な開発会社は、6社挙げられます。株式会社riplaは、コンサルから開発まで一気通貫で支援できる会社です。株式会社ecbeingは、国内EC構築シェアNo.1で、累計1,600サイト以上の実績を持ちます。

株式会社アイルは、BtoB専用Web受発注システム「アラジンEC」を提供し、5,000社以上の導入実績を誇ります。株式会社Daiは、BtoB専用ECカート「Bカート」で1,500社以上の利用実績があります。

株式会社スマイルワークスは、ERPとEC統合に強みを持ちます。株式会社フライトシステムコンサルティングは、BtoB-ECパッケージ「EC-Rider B2B」を展開しています。各社は得意とする企業規模や業種がそれぞれ異なるため、自社の要件に合うパートナーを選ぶことが大切です。

開発会社の選定ポイント

開発会社を選ぶときに最も重視したいのは、「BtoB-ECの開発実績」と「卸売・商社業界への理解度」の2点です。BtoCのEC開発実績が豊富でも、掛率管理や与信管理、ロット単位の発注制御といったBtoB固有の要件に対応した経験がなければ、要件定義の段階から認識のズレが生じがちです。

次に確かめたいのは、基幹システム連携の実績です。自社が使う販売管理システムやERPとの連携経験の有無は、プロジェクトの難易度とリスクに直結します。

さらに、開発後の保守・運用体制も大事な判断材料です。開発から保守まで一貫して対応できる会社を選ぶことが、長期的なTCO削減につながります。

▶ 詳細はこちら:BtoB卸売・商社向けの通販/EC開発でおすすめの開発会社/ベンダー6選と選び方

ポイント

開発会社は、BtoB-ECの開発実績と卸売・商社業界への理解度で比べるのが基本です。見積金額だけで選ぶと、現場の業務に合わない仕組みになるおそれがあります。

BtoB卸売・商社向けの通販/EC開発の費用相場

機械部品商社の事例における5年TCOを比較し、SaaS型は約1,100万円、フルスクラッチ型は約3,750万円と示す図解。
初期費用だけでは見えない方式間の差が表れています。

BtoB卸売・商社向けのEC開発費用は、構築方式や機能の複雑さ、基幹システムとの連携範囲によって大きく変わります。取引先ごとの掛率設定、与信管理、ロット発注といった業界固有の要件が、BtoC-ECと比べて開発コストを押し上げる主な要因です。複数倉庫の在庫管理も、開発コストを押し上げる要因になります。

初期開発費用は数百万円から数千万円、大規模案件では1億円を超えるケースもあります。そのため、費用の構造を正しくつかんでおくことが、経営判断に欠かせません。

開発手法別の費用目安

ASP・SaaS型(Bカート、アラジンEC、楽楽B2Bなど)の初期費用は50万〜300万円、月額利用料は5万〜30万円が相場です。導入期間も1〜3か月と短いのが特徴です。

パッケージカスタマイズ型(EC-CUBEベースなど)は、初期費用300万〜2,000万円、開発期間3〜8か月が目安です。パッケージの標準機能を活かしつつ、柔軟にカスタマイズできます。

フルスクラッチ型は、1,000万〜8,000万円以上の費用と8〜18か月の開発期間を要します。一方で、自社の商流に完全に合ったシステムを実現できます。ヘッドレスコマース型は、フロントエンドとバックエンドを分ける構成で、将来の拡張性に優れた選択肢として近年注目されています。

ランニングコストとTCOの考え方

初期開発費用だけで比べると、判断を誤るおそれがあります。リリース後もサーバー・インフラ費用(月額5万〜50万円)と保守運用費用(初期開発費の15〜25%を年間で計上)がかかります。さらに、決済手数料(取引額の1.5〜3.5%)やライセンス費用も、継続的に発生します。

5年間のTCO(総所有コスト)で見ると、SaaS型の方がフルスクラッチ型よりトータルで安価になるケースもあります。一方で、カスタマイズの自由度やスケーラビリティでは、フルスクラッチ型に優位性があります。

たとえば、ある機械部品商社では、SaaS型(5年TCO約1,100万円)とフルスクラッチ(5年TCO約3,750万円)を比較し、機能要件を満たせる範囲でSaaS型を選びました。中長期的なビジネス成長を見据えた投資判断が求められます。

▶ 詳細はこちら:BtoB卸売・商社向けの通販/EC開発の見積相場や費用/コスト/値段について

ポイント

費用は、初期開発費だけでなく保守運用費や決済手数料も含めた5年間のTCOで比べるのが基本です。構築方式を決める前に、この全体像をつかんでおくことが大切です。

BtoB卸売・商社向けの通販/EC開発の外注・発注方法

EC開発を外注する前の準備を、社内体制、RFP作成、提案依頼、提案評価の順に示した図解。
依頼前の社内整理が各社の提案を比べる土台になります。

BtoB卸売・商社向けのEC開発を外部の開発会社に頼むときは、事前準備から契約までの流れを理解しておくことが大切です。そうすれば、トラブルを防ぎ、プロジェクトを円滑に進められます。社内にシステム開発の知見がなくても、外注の全体像をつかんでおけば、パートナー選びと予算管理を適切に行えます。

RFP作成とベンダー選定の流れ

発注の最初の作業は、社内体制を整えたうえでRFP(提案依頼書)を作ることです。社内では、プロジェクトの責任者を決め、次の各部門からメンバーを選びます。

  • 営業
  • 物流
  • 経理
  • 情報システム

RFPには、EC化の目的と背景、現行業務フローの概要、必要機能一覧(優先度つき)を書きます。連携する基幹システムの情報と、想定ユーザー数や取引規模も盛り込みます。さらに、希望スケジュールと予算の目安も、あわせて書きます。

RFPは3〜5社に送付し、2〜3週間で提案書の提出を依頼するのが一般的です。提案書の評価では、技術提案の妥当性に加えて、卸売業の業務への理解度やプロジェクトマネージャーのコミュニケーション力も重要な判断基準となります。

契約形態の選び方

EC開発の契約形態は、「請負契約」と「準委任契約」の2つに大きく分かれます。請負契約は仕様が明確な場合に適しており、費用の上限が事前に確定する利点があります。一方で、仕様変更時に追加費用が生じやすい欠点もあります。

準委任契約は、アジャイル開発のように要件を柔軟に変えながら進める場合に向いています。ただし、スコープ管理を怠ると、予算超過のリスクがあります。実務では、要件定義と基本設計を準委任契約で進め、詳細設計以降を請負契約で費用を確定させる「ハイブリッド型」が増えています。

たとえば、ある食品卸売企業では、要件定義を準委任契約(計450万円)で実施し、開発フェーズを請負契約(2,200万円)で発注しました。その結果、仕様変更を当初見積もりの5%以内に収め、スケジュール通りのリリースを実現しました。

▶ 詳細はこちら:BtoB卸売・商社向けの通販/EC開発の発注/外注/依頼/委託方法について

ポイント

発注では、RFPを作って複数社に提案を依頼し、提案内容を比べてから決めるのが基本です。契約形態は、要件がどこまで確定しているかで請負と準委任を使い分けます。

まとめ

BtoB卸売・商社向けの通販/EC開発は、BtoCのEC構築とは異なる専門性が求められるプロジェクトです。卸売業固有の商慣習をシステムに正しく実装できるかどうかが、成功の鍵となります。その中身には、得意先別の掛率管理や与信管理、ロット単位の発注制御、基幹システムとの連携があります。

開発の進め方は、まず現行の受発注業務フローを徹底的に分析し、EC化の目的を明確にしたうえで要件定義に取り組むことが大切です。費用は、SaaS型であれば50万円から500万円、フルスクラッチであれば1,000万円から5,000万円が相場ですが、5年間のTCOで比べる視点も欠かせません。

開発会社の選定では、BtoB-ECの開発実績と卸売業界への理解度を最も重視し、見積金額だけでなく提案内容の質やコミュニケーション体制も含めて評価します。発注では、RFPを丁寧に作成して複数社から提案を受け、比較検討するプロセスを省かないことが、後悔のないパートナー選びにつながります。

契約形態は、プロジェクトの特性に応じて請負と準委任を使い分け、要件の不確実性が高い初期フェーズでは柔軟性を確保しておくことをおすすめします。ここまでで全体像をつかんだら、各テーマの詳細は下記の個別記事で確認できます。

▼関連記事一覧(再掲)
・BtoB卸売・商社向けの通販/EC開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順
・BtoB卸売・商社向けの通販/EC開発でおすすめの開発会社/ベンダー6選と選び方
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・BtoB卸売・商社向けの通販/EC開発の発注/外注/依頼/委託方法について

受発注管理Box|SaaSでは合わない受発注業務を早く・合理的にシステム化

受発注業務のシステム化

「メール・FAX・Excelでの注文管理」「受注・発注・在庫の二重入力」「独自商流でSaaSが合わない」——そんな課題は、受注・発注・在庫・出荷・請求を一元化する受発注管理Boxで解決できます。SaaSとフルスクラッチの“ちょうどいい中間”を、短期間・低コストで実現します。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。