BtoB卸売・商社向けの通販/EC開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順

BtoB卸売・商社向けの通販/EC開発は、「要件定義・企画」「設計・開発」「テスト・リリース」の3つのフェーズで進みます。期間の目安は、SaaS型で1〜3か月、パッケージカスタマイズ型で3〜8か月、フルスクラッチ型で8〜18か月です。

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BtoB卸売・商社向けの通販/EC開発の全体像

BtoB卸売・商社向けの通販EC開発の全体像

経済産業省が2025年に公表した「電子商取引に関する市場調査」によれば、国内BtoB-EC市場の規模は約465兆円に達し、EC化率も40%を超える水準まで成長しました。特に卸売・商社では、FAXや電話による受発注から脱却することが業界全体の課題になっています。受発注をオンライン化して業務効率を大きく高めた事例も、続々と報告されています。

しかし、BtoCのECサイトとは異なり、卸売・商社向けのEC開発には、取引先ごとの掛率設定、ロット単位の発注、与信管理、基幹システムとの連携など業界固有の要件があります。そのため、「どのような手順で開発を進めればよいか」「どの工程に重点を置くべきか」が分からないという声が多く聞かれます。

BtoB卸売・商社向けの通販/ECシステムは、企業間の商品受発注をオンラインで完結させる仕組みです。BtoCのECが一般消費者に1個単位で販売するのに対し、BtoB卸売ECでは、ケース単位やロット単位での発注に対応する必要があります。

さらに、取引先ごとの掛率(卸値)の設定や、請求書払い・月末締め翌月末払いといった企業間特有の決済方式への対応も求められます。加えて、与信限度額の管理や承認ワークフローなど、消費者向けECにはない多層的なビジネスロジックも欠かせません。

たとえば食品卸では、同一商品でも取引先の年間購入額に応じて3段階から5段階の価格テーブルが設定されるのが一般的です。期間限定のキャンペーン掛率や数量割引が重なって適用されるケースも、珍しくありません。

複雑な商慣習をシステムに正確に反映させることが、BtoB卸売EC開発の最大の特徴であり、同時に最大の難所でもあります。

EC構築の方式と選択肢

BtoB卸売・商社向けのECシステムを構築する方式は、大きく4つに分けられます。

  • ASP/SaaS型:ecbeing BtoB、Bカート、楽楽B2Bなどのクラウドサービスを利用。初期費用は50万〜300万円程度、導入は1〜3か月
  • パッケージカスタマイズ型:EC-CUBEやShopifyのBtoB向けプラグインなどをベースに、初期費用は300万〜1,500万円程度
  • フルスクラッチ型:ゼロからシステムを設計・開発し、費用は1,500万〜8,000万円以上と最も高額
  • ヘッドレスコマース型:フロントエンド(ユーザーが操作する画面)とバックエンド(受発注や在庫管理の処理部分)を分離

SaaS型は導入までの期間が短いのが強みですが、カスタマイズの自由度には限界があります。独自の掛率計算ロジックや基幹システムとの深い連携が必要な場合は、SaaS型では対応しきれないケースが出てきます。パッケージカスタマイズ型は、SaaS型よりも柔軟に対応できます。ただし、パッケージの制約を超えるカスタマイズは技術的な難易度が上がり、工数も増加します。

フルスクラッチ型は、自社の商流や業務フローに完全にフィットしたシステムを実現できます。年商100億円を超える卸売企業や、数千SKU以上の商品を扱う商社では、基幹システムとの連携の深さやパフォーマンスの観点から、フルスクラッチを選ぶケースが多く見られます。

ヘッドレスコマース型では、近年、commercetools、Elastic Path、Medusaなどのヘッドレスコマース基盤を活用し、既存の基幹システムやERPとAPIで柔軟に連携させるアプローチが注目されています。

卸売・商社ECに求められる固有機能

BtoB卸売・商社向けのECシステムには、BtoCのECとは根本的に異なる固有の機能群が必要です。主な機能は次の4つで、なかでも最も重要なのが「取引先別価格管理」です。

  • 取引先別価格管理:ある建材卸では、約3,000社の取引先に5段階の価格ランクを設定し、商品カテゴリごとの掛率で価格テーブルは数万パターンに及ぶ
  • 受発注ワークフロー:発注の承認フロー、分納・バックオーダー対応、定期発注(リピート注文)の自動化など
  • 在庫・物流連携:リアルタイムの在庫情報を取引先に表示する機能、複数倉庫からの出荷振り分け、ロット管理や賞味期限管理
  • 掛売り決済と与信管理:請求書払い、月末締め翌月末払い、手形決済、取引先ごとの与信限度額のリアルタイム管理

卸売業では、同一商品でも取引先ごとに異なる卸値を適用するのが常識です。そのため、取引先ランクに応じた掛率テーブル、数量ディスカウント、期間限定のプロモーション価格などを柔軟に設定・管理できる仕組みが不可欠です。

卸売業の受注処理では、注文金額が一定額を超えると上長の承認を必要とする多段階承認フローが一般的です。このため、この仕組みをEC上でも再現する必要があります。これらの機能は、卸売ECでは標準的な要件です。

日本の卸売業では、クレジットカード払いが占める比率はわずか5%程度で、約80%が掛売り(請求書払い)です。このため、BtoC向けの決済モジュールを流用するだけでは不十分で、Paid、NP掛け払い、マネーフォワード ケッサイといったBtoB向け後払い決済サービスとの連携や、自社で与信審査を行う仕組みの構築が必要になります。

ポイント

自社の商流に、掛率、ロット発注、与信管理、基幹システム連携などの業界固有の要件がどれだけあるかを先に洗い出すと、EC開発の難しさと構築方式の候補を見通せます。

BtoB卸売・商社向けの通販/EC開発の進め方

BtoB卸売・商社向けの通販EC開発の進め方

BtoB卸売・商社向けのEC開発は、一般的なシステム開発と同じく、「要件定義・企画」「設計・開発」「テスト・リリース」の3つの大きなフェーズで進みます。ただし、卸売・商社特有の商慣習や取引先との関係を踏まえた配慮が、各フェーズで求められます。そのため、BtoCのEC開発やBtoBアプリ開発とは異なる視点が欠かせません。

プロジェクト全体の期間は、SaaS型の導入であれば1〜3か月、パッケージカスタマイズ型で3〜8か月、フルスクラッチ型で8〜18か月が一般的な目安です。

要件定義・企画フェーズ

卸売・商社向けEC開発の成否を左右する最も重要な工程が、この要件定義・企画フェーズです。このフェーズでは、どの取引先との取引をEC化するのか、現在の受発注プロセスのどこにボトルネックがあるのか、EC化によってどのような定量的成果を実現するのかを明確にします。

まず取り組むべきは、現行の受発注業務フローを一覧にして洗い出すことです。ある食品卸の事例では、業務フローを詳しく分析した結果、1件の電話受注に平均12分、FAX受注のデータ入力に平均8分かかっていることが分かりました。営業事務の担当者は、1人あたり1日に約60件の受注処理を行っていることも判明しています。

この工程をEC化することで、次の2つの定量目標を設定しています。

  • 受注処理時間:1件あたり2分以下に短縮
  • 営業事務の工数:約70%削減

要件定義書には、機能要件と非機能要件を分けて、次のような内容を明記します。

  • 機能要件:「取引先別価格テーブル管理」「ロット単位発注」「承認ワークフロー」「在庫リアルタイム連携」「請求書自動発行」「出荷ステータス通知」などの個別機能
  • 非機能要件:「同時アクセス300ユーザーに対するレスポンス3秒以内」「99.9%以上の稼働率」「SSL/TLSによる通信暗号化とIPアドレス制限」など

さらに重要なのが、既存の基幹システム(販売管理システム、在庫管理システム、会計システムなど)との連携要件の整理です。多くの卸売企業では、受注データを基幹システムに手入力する二重作業が発生しているケースが多く、ECシステムから基幹システムへのデータ自動連携を実現すれば、入力ミスの防止と業務効率の大幅な改善が期待できます。

このフェーズの所要期間は、一般的に4〜10週間です。プロジェクトマネージャー、営業部門の担当者、物流担当者、情報システム部門、開発会社のSEが連携し、ワークショップ形式で進めるのが理想的です。

IPA(情報処理推進機構)の調査によると、要件定義に十分な工数を投入しなかったプロジェクトでは、開発フェーズ以降で30〜50%のコスト増加が生じるリスクがあると報告されています。この工程への投資は、決して惜しむべきではありません。

設計・開発フェーズ

要件定義が完了したら、設計・開発フェーズに移ります。設計は「基本設計(外部設計)」と「詳細設計(内部設計)」の2段階で進みます。基本設計では、画面遷移図、データベースのER図、API設計書、システム構成図など、ECシステムの骨格となる設計書を作成します。ここで特に注意したいのは、取引先別価格管理のデータ設計です。

取引先ランク、商品カテゴリ、数量条件、期間条件などが複合的に絡む価格計算ロジックを、拡張性を持たせながら設計する必要があります。価格テーブルの構造が不十分だと、後から新しい価格体系を追加する際に大規模な改修が必要になります。そのため、将来の商流変化も見据えた柔軟な設計が求められます。

次に注意したいのは、基幹システムとの連携方式の設計です。販売管理システム(例:大塚商会のSMILE、OBCの商奉行、SAPなど)との連携には、APIによるリアルタイム同期、バッチ処理による定期連携、CSVファイルの入出力による簡易対応の3つの方式があります。

どの方式を選ぶかによって、開発コストと運用負荷は大きく変わります。ある機械部品商社では、既存の販売管理システムにAPIが用意されていなかったため、RPAを活用してECの受注データを基幹システムに自動転記する中間的なソリューションを採用しました。その結果、フルAPI連携の開発コスト(約800万円)を約200万円に圧縮しています。

最後に、商品マスタの統合設計です。卸売企業が扱う商品数は数千から数万SKUに及ぶことが多く、メーカー型番、自社品番、JANコードなど複数の識別子が混在します。こうした商品データを一つの仕組みで管理するマスタ設計は、非常に重要です。

開発工程では、フロントエンドとバックエンドを並行して進めるのが一般的です。フロントエンドはReact、Next.js、Vue.jsなどが主流で、バックエンドはNode.js、Python/Django、PHP/Laravel、Java/Spring Bootなどが代表的です。開発チームの体制は、中規模案件の場合、次の構成が標準的です。

  • プロジェクトマネージャー:1名
  • リードエンジニア:1名
  • フロントエンドエンジニア:1〜2名
  • バックエンドエンジニア:2〜3名
  • インフラエンジニア:1名

スプリント期間は2週間が最も一般的です。各スプリントの終わりにはデモを実施し、発注側の営業部門や物流担当者のフィードバックを次のスプリントに反映させる運用が推奨されます。

卸売ECの開発では、取引先へのヒアリングも欠かせません。主要取引先5〜10社程度にプロトタイプを見せてフィードバックを集め、実際の発注業務で使いやすいUIに仕上げていきます。このプロセスが、EC化後の利用率向上に直結します。

テスト・リリースフェーズ

開発が完了した機能は、品質を担保するために、次の4つのレイヤーでテストを実施します。

  • 単体テスト:各APIエンドポイントや価格計算ロジックが仕様どおりに動くかを検証
  • 結合テスト:ECフロント、バックエンド、基幹システム連携、決済モジュールなどを連携させ、受注から出荷までの流れを確認
  • システムテスト(総合テスト):本番環境に近い状態で、同時100社200ユーザー時の性能や在庫データ、与信チェックを検証
  • 受入テスト(UAT):社内の営業事務担当者や物流担当者、主要取引先がテスト環境で実際に発注操作を行う

特に取引先別価格テーブルの計算ロジックは、組み合わせのパターンが膨大になるため、テストケースの設計に十分な工数を確保する必要があります。ある化学品商社のEC開発では、価格計算ロジックだけで約1,200パターンのテストケースを作成し、全パターンの自動テストを構築しています。

システムテストでは、実際の業務シナリオに沿って確認を進めます。

取引先からの要望はEC化後の利用率に直結するため、UATで寄せられた改善要望には優先的に対応すべきです。テストフェーズ全体の所要期間は、中規模案件で4〜8週間を確保するのが一般的です。

リリースは段階的に進めるのが強く推奨されます。手順は次の2つです。

  • パイロットリリース:取引頻度が高く協力的な10〜20社程度の取引先を対象に、2〜4週間の試験運用で問題点を洗い出す
  • 段階的な展開:試験運用の結果を踏まえ、対象を段階的に広げていく

ある日用品卸では、約2,000社の取引先のうちまず上位30社で1か月間のパイロット運用を実施しました。受注データの整合性チェックや画面の使い勝手に関する約50件の改善要望を反映した後に全社展開を行い、EC利用率を半年で65%まで引き上げています。

ECシステムの導入と並行して、取引先向けの操作マニュアルの整備やオンライン説明会の開催といった運用支援の準備も、忘れてはなりません。

ポイント

方式ごとに期間の目安が大きく違うため、まず構築方式を決めてから、各フェーズに必要な期間を組み立てるのが考え方の目安です。

費用相場とコストの内訳

BtoB卸売EC開発の費用相場

BtoB卸売・商社向けのEC開発費用は、構築方式や機能の複雑さ、基幹システムとの連携範囲によって大きく異なります。費用の構造を正しく理解するため、人件費・工数の観点とランニングコストの観点に分けて解説します。

人件費と工数

EC開発費用の大半を占めるのが人件費です。開発会社に支払う費用は、「エンジニアの人月単価 × 工数(人月)」で算出されるのが基本です。

人月単価は職種や経験の水準によって差が大きく、2025年時点の国内相場では、職種ごとに次の幅が見られます。

  • プロジェクトマネージャー:120万〜180万円
  • シニアエンジニア:100万〜150万円
  • ミドルクラスのエンジニア:80万〜120万円
  • ジュニアエンジニア:50万〜80万円

大手SIerに発注する場合は、これらの単価が1.3〜1.5倍程度高くなる傾向があります。

費用は構築方式によって大きく変わり、初期費用はSaaS型、パッケージカスタマイズ型、フルスクラッチ型の順に高くなります。

  • SaaS型(Bカート、楽楽B2Bなど):初期設定費用は50万〜300万円に加え、月額利用料は5万〜30万円程度
  • パッケージカスタマイズ型(EC-CUBEベースなど):初期費用は300万〜1,500万円で、カスタマイズの範囲が広がるほど上がる
  • フルスクラッチ型:1,500万〜8,000万円が一般的な相場。基幹システムとの連携やマルチ倉庫対応など複雑な要件を含む場合は、1億円を超えることもある

工数の内訳は、次の配分が標準的です。

  • 要件定義:全体の15〜20%
  • 設計:20〜25%
  • 開発(フロントエンド・バックエンド・基幹連携):30〜35%
  • テスト・品質保証:15〜20%
  • プロジェクト管理とデータ移行:5〜10%

卸売EC特有のコスト要因として、商品マスタの移行費用も見落とせません。数万SKUの商品データを旧システムやExcelから新ECシステムに移すには、データクレンジングを含めて100万〜500万円程度の費用が発生することがあります。

取引先マスタの移行(取引先別価格テーブル、与信情報、過去の取引履歴など)も、同様に手間のかかる工程です。事前にデータの品質と量を把握しておき、見積もりに含めることが重要です。

初期費用以外のランニングコスト

BtoB卸売ECの運用で見落とされがちなのが、ランニングコストです。初期開発費用の安さだけで発注先を決めると、運用開始後に想定外の出費に直面するケースが少なくありません。卸売ECでは月末に注文が集中する傾向があるため、ピーク時のトラフィックに耐えられるスケーリング設計と、そのコストを見込んでおく必要があります。

ランニングコストの主な構成要素は、次の4つです。

  • サーバー・インフラ費用:AWSやGoogle Cloud、Azureなどのクラウドサービスを使う場合、中規模ECサイトで月額10万〜60万円が相場
  • 保守運用費用:バグ修正、セキュリティパッチの適用、OS・ミドルウェアのアップデート対応、取引先からの問い合わせ対応など
  • 決済手数料:BtoB向け後払い決済サービス(Paid、NP掛け払いなど)を利用する場合、取引金額の1.5〜3.5%程度
  • ライセンス費用:ECパッケージの年間ライセンス料(50万〜300万円程度)と、サードパーティAPIの利用料(物流連携、帳票作成、メール配信など)

保守運用費用は、初期開発費用の15〜20%を年間の保守費として見込むのが業界標準です。たとえば初期費用が2,000万円のECシステムなら、年間300万〜400万円の保守費用が発生します。

決済手数料は、月間の取引額が5,000万円なら、それだけで月75万〜175万円になる計算です。ただし、掛売り決済代行を利用することで自社の未回収リスクを軽減できるため、貸倒損失の削減効果と比べて判断する必要があります。

TCO(Total Cost of Ownership:総所有コスト)の観点からは、5年間のトータルコストで投資を判断することが重要です。たとえば初期費用500万円のSaaS型と、初期費用2,000万円のフルスクラッチ型を、次のように比べられます。

  • SaaS型:月額利用料20万円が5年間で1,200万円かかり、合計1,700万円
  • フルスクラッチ型:保守費が年間400万円で、5年間の合計は4,000万円

フルスクラッチ型は、カスタマイズの自由度が高く、取引先数の増加に伴うスケーラビリティでも優位性があります。単純な金額の比較だけでなく、中長期的なビジネス成長を見据えた判断が求められます。

ポイント

初期費用だけで比べず、月額費用や保守費、決済手数料を含めた5年間のトータルコストで比べるのが基本の目安です。見積もりの金額差が将来どう積み上がるかも併せて見ると、判断の材料がそろいます。

見積もりを取る際のポイント

BtoB卸売EC開発の見積もりポイント

適正な価格で高品質なシステムを手に入れるには、自社側でも準備を整えてから見積もりを依頼することが鍵になります。発注先に任せきりにしないことが、見積もり精度を高める出発点です。

要件明確化と仕様書の準備

見積もりの精度は、発注側が提示する情報の質に大きく左右されます。「卸売向けのECサイトを作りたい」といった抽象的な依頼のままでは、開発会社はリスクを見込んで、安全マージンを多く乗せた高めの見積もりを出さざるを得ません。

一方、取引先別の価格テーブルの仕様、受発注フローの業務フロー図、連携する基幹システムのインターフェース仕様を事前に整理して提示すれば、開発会社は正確な工数を算出できます。さらに、取り扱い商品数やSKU数、想定取引先数、同時アクセス数も示せば、結果として適正価格が提示される可能性が大幅に高まります。

理想的には、RFP(提案依頼書)として、次の内容をまとめるのが望ましいです。

  • 目的・背景:なぜEC化するのか
  • 対象範囲:全取引先か一部か、全商品か一部カテゴリか
  • 機能・非機能要件:必要な機能一覧と優先度、非機能要件(性能、セキュリティ、可用性)
  • 連携する既存システム:一覧と仕様
  • 予算・期間・体制:予算と期間の目安、期待する開発手法と体制

RFP作成に社内のリソースが足りない場合は、ITコンサルタントやEC導入支援の専門会社に依頼する選択肢もあります。RFP作成支援の費用は50万〜200万円程度が相場です。この投資により見積もりのブレが大幅に縮小し、結果として開発費用全体の適正化につながるケースが数多く報告されています。

複数社比較と発注先の選び方

BtoB卸売EC開発の発注先は、最低でも3社以上から見積もりを取り、多角的に比較するのが鉄則です。候補には、大手SIer、BtoB-EC専業の開発会社、中堅の受託開発会社、フリーランスチーム、オフショア開発会社の5つのカテゴリがあります。

  • 大手SIer:プロジェクト管理の安定感や大規模開発の実績に強み。一方で、人月単価が高く、最低発注金額も大きくなりがち
  • BtoB-EC専業の開発会社:ドメイン知識が深く、卸売業特有の商慣習を理解したうえでの提案が期待できる
  • 中堅の受託開発会社:コストと品質のバランスに優れ、柔軟な対応力が特徴
  • フリーランスチーム
  • オフショア開発会社

比較で最も重視すべきは、同じ業界(卸売・商社)のBtoB-EC開発実績の有無です。食品卸のECと工業部品商社のECでは、必要な機能も商慣習も大きく異なります。自社の業界を理解している開発会社を選べば、要件定義のスピードと品質が格段に上がります。

次に見るべきは、提案内容の具体性です。見積書の工数が「EC構築一式」という大項目だけの場合と、機能単位で細分化されている場合では、後者のほうが圧倒的に信頼性が高いと判断できます。機能単位の例は、「取引先別価格テーブル機能:フロントエンド○人月、バックエンド○人月」のような書き方です。

見積もり金額だけでなく、パイロットリリース後のサポート体制、取引先への導入支援の有無、基幹システム連携に関する技術的な知見も確認しておくべき要素です。

ある建材卸は、見積もり金額が最も安い会社ではなく、2番目に安い会社を選定しました。その理由は、建材業界の受発注フローに精通した専任PMが配置され、基幹システム(大塚商会のSMILE)との連携実績が5件以上あったためです。結果として、要件定義の手戻りは最小限に抑えられ、当初の見積もり金額から5%以内の差異でプロジェクトが完了しています。

注意すべきリスクと対策

BtoB卸売・商社向けEC開発には、典型的なリスクがあります。最も発生頻度が高いのが、「取引先のEC移行が進まない」というリスクです。

ECシステムを開発しても、取引先が従来どおり電話やFAXで発注を続けると、EC化の投資効果が大幅に損なわれます。そのため、取引先にとってのメリットを明確にする施策を、事前に設計しておくことが重要です。

具体的には、EC利用時の価格優遇(EC限定の割引率設定)、24時間365日いつでも発注できる利便性の訴求、注文履歴のワンクリック再発注機能の提供といった施策が考えられます。

ある文具卸では、EC経由の発注に対して0.5%のリベートを付与する施策を導入したところ、3か月でEC利用率が15%から55%に急増しました。

2つ目のリスクは、基幹システムとの連携トラブルです。販売管理システムや在庫管理システムとのデータ連携は、仕様書が十分に整備されていない古いシステムの場合、想定以上の調査・開発工数が必要になることがあります。

対策として推奨されるのは、要件定義の早い段階で連携先システムの技術的な調査を行うことと、プロトタイプレベルのPoC(概念実証)で連携の実現可能性を検証することです。

PoCの費用は50万〜150万円程度ですが、本開発に入ってから連携がうまくいかないと判明した場合の手戻りコスト(数百万円規模)と比べれば、十分に価値のある先行投資です。

3つ目は、スコープクリープ(要件の膨張)です。開発が進むにつれて「この機能も追加してほしい」という要望が増え、予算やスケジュールを大幅に超えてしまうケースがあります。

対策としては、MVP(Minimum Viable Product)の範囲を要件定義の段階で明確に決めておくことと、追加要望はフェーズ2以降の開発として切り分けるルールを合意しておくことが有効です。

4つ目として、セキュリティリスクへの対応も見逃せません。BtoB卸売ECは、取引先の企業情報や取引条件、場合によっては個人情報も扱います。そのため、開発段階から次の4点を計画に組み込む必要があります。

  • 開発:セキュアコーディングの実践
  • 検査:脆弱性診断の実施
  • 通信:SSL/TLSによる通信暗号化
  • 監視:アクセスログの監視体制の構築

情報セキュリティのインシデントが起きると、システムの復旧費用に加えて、取引先からの信頼失墜による売上減少も含めれば、損害が数千万円に達する可能性があります。事前対策のコストと比べて、リスクが極めて大きいことを認識しておくべきです。

ポイント

見積もりを比べるときは、金額の安さよりも、機能単位で工数が示されているか、同業界のBtoB-EC開発実績があるかが判断の目安になります。

まとめ

BtoB卸売EC開発のまとめ

ここまで、全体像から進め方、費用相場、見積もりのポイントまでを見てきました。卸売・商社向けEC開発を成功に導くには、まず要件定義・企画フェーズで、現行の受発注業務を一覧にして洗い出すことが出発点です。そのうえで、EC化によって実現すべき定量目標を明確にします。

構築方式は、SaaS型、パッケージカスタマイズ型、フルスクラッチ型、ヘッドレスコマース型のそれぞれの特性を理解し、自社の商品数、取引先数、基幹システムの状況、中長期的なビジネス計画を踏まえて判断することが重要です。

設計・開発フェーズでは、取引先別価格管理のデータ設計、基幹システムとの連携方式、商品マスタの統合設計といった卸売・商社特有の技術課題に、十分注意する必要があります。テスト・リリースフェーズでは、主要取引先を対象としたパイロットリリースと段階的な展開が、EC利用率の早期向上とリスク低減の両方を実現する有効な方法です。

費用面では、初期開発費用だけでなく、サーバー費用、保守運用費用、決済手数料、ライセンス費用を含めた5年間のTCOで投資判断を行うことが不可欠です。

発注先は、卸売・商社向けのBtoB-EC開発の実績を持つ企業を最低3社以上比較し、見積もりの粒度、基幹システム連携の技術力、取引先への導入支援体制まで含めて総合的に評価することを強く推奨します。まずは自社の受発注業務の現状分析とRFPの整備から着手し、明確な要件のもとで見積もりを依頼することが、プロジェクト成功への最も確実な第一歩です。

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受発注管理Box|SaaSでは合わない受発注業務を早く・合理的にシステム化

受発注業務のシステム化の検討

「メール・FAX・Excelでの注文管理」「受注・発注・在庫の二重入力」「独自商流でSaaSが合わない」——そんな課題は、受注・発注・在庫・出荷・請求を一元化する受発注管理Boxで解決できます。SaaSとフルスクラッチの“ちょうどいい中間”を、短期間・低コストで実現する仕組みです。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。