BtoC通販・ECサイト開発の発注は、外注先のタイプを選び、要件をRFPにまとめ、複数社の提案を比べて契約したあと、開発中も発注側が進捗を確認する流れで進みます。
コロナ禍を経てオンラインショッピングの利用が定着し、新規参入を目指す企業はもちろん、既存サイトのリニューアルを検討する企業も増加の一途をたどっています。とはいえ、社内リソースだけで対応するには、ハードルが高いのが現実です。
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・BtoC通販/ECサイト開発の完全ガイド
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BtoC通販/ECサイト開発を外注する前の基礎知識
経済産業省が公表した「電子商取引に関する市場調査」によると、2024年の国内BtoC-EC市場規模は約24.8兆円です。EC化率も9.38%まで上昇しています。
外注を成功させるには、まず外注の種類と特徴を理解し、自社に合う発注形態を見極めることが欠かせません。外注先の「開発会社」といっても、専門領域、得意な構築方法、対応できる規模は会社ごとに大きく異なります。
また、すべてを外注するのか、一部を内製するのかによって、プロジェクトの進め方もコスト構造も大きく変わります。そのため、外注の種類と内製・外注の判断基準を先に押さえておくと、後の選定で迷いにくくなります。
外注の種類と特徴
外注先は、事業規模と必要な機能に合うタイプから選びます。
- 大手SIer:大規模ECと基幹システム連携に対応する
- EC専門会社:EC機能に詳しく、カスタマイズに強い
- Web制作会社・フリーランス:小規模構築や部分改修に向く
大手SIer(システムインテグレーター)は、NTTデータ、富士通、日立ソリューションズなどが代表例です。年商数十億円以上のEC事業を展開する大企業向けに、フルスクラッチ開発やパッケージ開発を得意としています。高度なセキュリティ要件にも対応できます。
初期費用は3,000万円から1億円以上が一般的です。プロジェクト管理体制は整っている一方、開発期間は6か月から1年以上かかるケースが多く見られます。そのため、意思決定のスピードが求められるスタートアップには、不向きな面もあります。
2つ目は、EC専門の開発会社です。ecbeing、W2、コマースメディアなどが該当し、カート機能、決済連携、在庫管理、物流連携といったECサイト特有の業務知識に精通しています。
パッケージ型やオープンソース型をベースにしたカスタマイズ開発を得意とし、費用相場は300万〜3,000万円程度です。EC業界のトレンドにも敏感で、レコメンド機能、パーソナライゼーション、OMO(Online Merges with Offline)対応などを提案できます。そのため、売上向上に直結する提案が期待できます。
3つ目は、Web制作会社です。デザインに強みを持ち、ShopifyやBASE、STORESなどのSaaS型プラットフォームを活用したECサイト構築を得意としています。費用は50万〜500万円程度と比較的リーズナブルで、中小規模のEC事業に適しています。
ただし、複雑なシステム連携やカスタム開発への対応力は、限定的な場合があります。将来の拡張性を考慮して選ぶ必要があります。
4つ目は、フリーランスエンジニアです。クラウドソーシングサービスやフリーランスマッチングプラットフォームを通じて、個人のエンジニアに開発を依頼する方法です。1人あたり月額50万〜100万円程度と抑えられますが、プロジェクト管理は発注側が行う必要があります。
小規模なECサイトの構築や、既存サイトの部分的な機能追加には適しています。一方で、大規模プロジェクトでは品質管理やスケジュール管理の難易度が高まるため、注意が必要です。
どのタイプを選ぶかは、EC事業の規模と必要な機能の複雑さで決まります。予算や開発スピードの優先度も、判断に影響します。
内製と外注の判断基準
内製か外注かは、事業の中核性、社内体制、開発速度を基準に判断します。
- 内製向き:ECが事業の中核で、社内に経験者がいる
- 外注向き:専門人材がいない、または3か月以内の公開を目指す
- ハイブリッド:初期開発を外注し、運用改善から技術移管する
BtoC通販・ECサイトを内製するか外注するかは、経営戦略に関わる重要な意思決定です。内製が適しているのは、ECサイトが自社の中核事業で、顧客体験の差別化が競争力の源泉になっているケースです。
たとえば、ZOZOTOWNのようにEC事業そのものが本業の企業があります。独自のサイズ提案機能やパーソナライゼーション機能が、他社との差別化要因です。
社内に開発チームがあれば、機能改善と顧客フィードバックへの即応が可能です。加えて、社内にエンジニアが5名以上在籍し、EC関連の開発経験を持つメンバーがいる場合も、内製が選択肢に入ります。
一方、外注が適しているのは、社内にEC開発の専門知識を持つエンジニアがいない場合や、開発のスピードが最優先の場合です。
たとえば、EC事業の立ち上げで「3か月以内にサイトをオープンしたい」という要望がある場合、社内チームの組成から始めていては到底間に合いません。
さらに、年商1億円未満の事業フェーズでは、専任エンジニアの雇用が負担になる場合があります。雇用コストは年間600万〜900万円以上です。このコストに見合うリターンが得られない場合は、外注が有利です。
実際、EC事業の初期フェーズ(年商0〜3億円程度)では外注でサイトを構築し、事業が軌道に乗って年商5億円を超えた時点で内製チームへの移行を始める例があります。この流れは、多くの成功企業に共通して見られます。
初期開発を外注し、リリース後の運用改善から内製へ切り替える方法も有効です。この場合は、外注先から技術移管を受けます。技術移管では、ソースコードの引き継ぎ、運用マニュアルの整備、ナレッジ共有セッションの実施を契約に盛り込みます。
BtoC通販/ECサイト開発の発注・委託の流れ

外注を成功させるには、発注の各ステップを丁寧に進めることが欠かせません。外注プロジェクトは大きく「発注準備」「ベンダー選定・契約」「開発の進行管理」の3段階に分かれます。
各段階で押さえるポイントを明確にし、手戻りのない進行を心がけることは、コスト超過やスケジュール遅延を防ぐうえで効果的です。
発注準備(要件整理・RFP作成)
発注準備では、後工程の手戻りを防ぐ情報を先にそろえます。
- 目標:ターゲット、事業目標、KPIの数値目標
- 機能:必須(MVP)、リリース後半年以内、将来対応の3段階
- 要件書:決済、外部連携、非機能要件、予算を記載したRFP
外注の第一歩は、自社がECサイトに求める要件を明文化することです。実際、日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の調査では、システム開発プロジェクトの失敗原因の約40%が要件定義の不備に起因するとされています。そのため、この段階に十分な時間と労力をかけることが、プロジェクト全体の成否を左右します。
BtoC通販サイトの要件整理では、特に次の5つの観点を明確にしておく必要があります。
第一に、ターゲットユーザーと事業目標を明確にします。狙う顧客層は、年齢、性別、購買頻度、利用デバイスの比率などまで具体化します。
リリースから1年後・3年後の売上目標やKPIも数値で示します。KPIには月間訪問者数、コンバージョン率、客単価などを含めます。これにより、外注先は適切な規模感のシステム設計を行えるようになります。
第二に、必要な機能を洗い出します。商品検索・絞り込み、カート、会員登録・マイページの機能を整理します。ポイント・クーポン、レビュー・口コミ、お気に入り登録も確認します。
レコメンド機能など、BtoC-ECの機能は多岐にわたります。そこで、すべてを初期リリースに盛り込むのではなく、優先度を付けて分けます。優先度を付けて整理しておくと、外注先から見積もりを出してもらいやすくなります。
第三に、決済方法を整理します。クレジットカード決済、コンビニ決済、後払い決済を確認します。
電子決済では、Amazon Pay、楽天ペイ、PayPayが対象に入ります。Apple PayとGoogle Payも含めます。対応する決済手段の数は、BtoCのコンバージョン率に直結します。
SBペイメントサービスの調査では、希望する決済手段がないことを理由に、ECサイトでの購入を断念したユーザーがいます。その割合は全体の約70%にのぼります。決済手段の選定は、売上を左右する重要な要件です。
第四に、外部システムとの連携を洗い出します。物流倉庫のWMS(倉庫管理システム)、会計ソフト、POSシステムが対象です。
CRM、MAツール、モール(Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピング)も対象に入ります。そのうえで、各システムと在庫や受注をどうつなぐかを決めておきます。
第五に、非機能要件を押さえます。セール時のアクセス集中に耐えられるか(同時アクセス数の想定)を見ておきます。
ページ表示速度の目標値、セキュリティ基準、バックアップ方針を整理します。PCI DSSへの準拠が必要かどうかも、セキュリティ条件として確認します。
これらの要件を整理したうえで、RFP(提案依頼書)として文書にまとめます。RFPには、プロジェクトの背景と目的、現行の業務フローを記載します。
ターゲットユーザーの定義や、優先度を付けた機能要件一覧も必要です。非機能要件や既存システムとの連携要件も記載します。希望スケジュールと予算の目安も書き添えます。
RFPの作成期間は、2〜4週間を見込むのが一般的です。この段階で丁寧に準備すると、精度の高い見積もりと提案を引き出せ、後工程での手戻りも大幅に削減できます。
ベンダー選定から契約まで
ベンダー選定では、候補を広く集め、価格だけでなく実績と体制を比べます。
- 候補:最低3社、可能なら5社へのRFP送付
- 評価:実績、提案、技術力、費用、保守、管理手法
- 契約:納品物、検収、権利帰属、責任範囲の明記
RFPが完成したら、次はRFPを送るベンダー(開発会社)を選びます。候補は、EC業界の展示会やセミナーで情報を集めます。
業界メディア(ECのミカタ、ネットショップ担当者フォーラム、MarkeZineなど)で実績を調べることもできます。同業他社からの紹介や、Web制作・システム開発のマッチングサービスも活用できます。
複数社の提案と見積もりを比べることをお勧めします。複数社から提案を受けると、費用の相場感がつかめるだけでなく、自社が見落としていた技術的な選択肢や機能提案を得られることも少なくありません。
比べる観点は、上の一覧にある6項目です。まず、BtoC-ECサイトの開発実績を確認します。自社と同じ業種・規模の実績があるかどうかも、見ておきたい点です。
提案内容の具体性、開発チームの技術力、コミュニケーション力を評価します。見積もり金額の妥当性や内訳の透明性、保守・運用体制も判断材料になります。プロジェクトマネジメント手法は、アジャイルとウォーターフォールのどちらを選んだ理由まで確認します。
費用だけで判断するのは危険で、最安値のベンダーが必ずしも最適とは限りません。
過去には、最安値のベンダーを選んだことで手戻りや追加開発が発生し、当初見積もりの1.8倍の費用がかかった事例もあります。
ベンダーが決まったら、契約書の締結に進みます。契約書には、開発範囲(スコープ)を明確に定義します。
納品物は、ソースコード、設計書、テスト結果報告書、運用マニュアルなどです。スケジュール、マイルストーン、検収条件、検収期間も記載します。
瑕疵担保責任(契約不適合責任)の範囲と期間を定めます。さらに、知的財産権の帰属、秘密保持条項、中途解約の条件も必要です。
ソースコードの著作権は、「開発費用の支払いをもって発注側に帰属する」と明記します。これは、将来のベンダー変更時のリスクを避けるうえで欠かせません。
この条項がないと、ベンダー変更時にソースコードの使用許諾が必要になります。その場合、追加費用が発生したり、最悪はゼロから作り直したりする可能性があります。
開発開始後の進行管理
開発中は、発注側が定例確認と成果物レビューを担います。
- 定例:最低週1回、可能であれば週2回
- ゲート:段階の終わりごとに成果物を承認する
- UAT:発注側による受入テストの実施
契約後、開発が始まったら、発注側も能動的に関わることが成功の鍵を握ります。特に重要なのは、定例ミーティングの設定と運用です。
定例ミーティングでは、進捗状況の確認、課題の共有、仕様の確認を行います。特に要件定義・設計フェーズでは、発注側の意思決定が進捗を左右します。そのため、社内のキーパーソンが参加できる体制を整えます。
参加者は、事業責任者、EC運営担当者、情報システム部門の担当者です。
プロジェクト管理ツールも効果的です。BacklogやJira、Asanaなどで、タスクの進捗を一覧で見られるようにします。発注側と開発側がリアルタイムで状況を確認すれば、認識のずれを防げます。
各フェーズ(要件定義、基本設計、詳細設計、実装、テスト)の完了時には、成果物のレビューと承認を行う「ゲートレビュー」を導入することを推奨します。
発注側が各フェーズの成果物を確認し、問題がなければ次に進むゲートを設けると、後工程での大規模な手戻りを防げます。
デザインカンプは、慎重に確認します。対象は、トップページ、商品一覧ページ、商品詳細ページ、カートページ、マイページなどです。主要画面のデザインが確定してから実装に入ると、「完成品がイメージと違う」というトラブルを防げます。
テストフェーズでは、開発会社が行う単体テスト・結合テストに加えて、発注側がユーザー目線で行うUAT(ユーザー受入テスト)を必ず実施します。
UATでは、実際の業務シナリオに沿って、商品の検索から注文完了、決済処理、注文確認メールの受信、管理画面からの出荷処理までを確認します。
テスト項目は事前にテストケースとして文書化し、合格基準を明確にしておくと、検収時の判断がスムーズになります。
発注時の費用と契約形態

BtoC通販・ECサイト開発を外注する際の費用は、構築方法と必要な機能の範囲によって大きく異なります。また、開発会社との契約形態によって、費用の発生の仕方やリスクの負担先も変わります。
適切な契約形態を選ぶことは、予算管理とプロジェクトの成功を両立させるうえで欠かせません。
請負契約と準委任契約の違い
契約形態は、成果物の確定度と仕様変更の可能性で選びます。
- 請負契約:総額を確定しやすい形式
- 準委任契約:稼働時間に応じて費用が決まる形式
ECサイト開発の外注で主に使われる契約形態は、請負契約と準委任契約の2種類です。それぞれの特徴を理解し、プロジェクトの性質に合った形を選ぶことが大切です。
請負契約は、開発会社が「成果物の完成」を約束する契約形態です。発注側は、RFPや要件定義書で定めた仕様どおりのシステムが完成して初めて、報酬を支払う義務が生じます。
開発会社には成果物の完成義務があり、2020年の民法改正以降は「契約不適合責任」とされています。システムが契約内容に適合しない場合、発注側は修正や代金の減額、損害賠償請求、契約解除を請求できます。
請負契約のメリットは、総額が確定して予算管理がしやすい点と、完成責任が開発会社側にある点です。
費用相場は、SaaS型のカスタマイズで50万〜300万円、オープンソース型のカスタマイズ開発で200万〜800万円です。パッケージ型の導入・カスタマイズは500万〜3,000万円、フルスクラッチ開発は3,000万〜1億円以上が一般的です。
一方、準委任契約は、開発会社が「業務の遂行」を約束する契約形態です。成果物の完成義務はありません。
エンジニアの稼働時間に対して報酬が支払われるため、「月額90万円×3人×6か月=1,620万円」のように、人月単価と稼働期間で費用が算出されます。
準委任契約のメリットは、開発の途中で仕様変更や優先順位の変更に柔軟に対応できる点です。アジャイル開発と相性が良く、2週間ごとのスプリントで成果物をレビューしながら方向性を調整するスタイルに適しています。
ただし、総額が確定しないため、予算管理には注意が必要です。想定していた機能の実装に予定以上の工数がかかった場合は、追加費用が発生するリスクがあります。
実務では、要件が明確な部分は請負契約、流動的な部分は準委任契約で発注するハイブリッド型を採用するケースも増えています。たとえば、ECサイトの基本機能(商品管理、カート、決済、会員管理)は請負契約で500万円とし、運用開始後の機能追加や改善は準委任契約で月額80万円×2人とします。
この方式により、初期開発のコストを確定させつつ、リリース後の柔軟な改善体制を確保できます。
費用を適正に抑えるためのポイント
費用を抑えるには、初期機能と継続費用を分けて考えます。
- MVP:初期リリースの範囲を絞る
- SaaS:既製のプラットフォームを使う
- 比較:複数社の見積もりを取って比べる
まず最も重要なのは、MVP(Minimum Viable Product:実用最小限の製品)の考え方を取り入れることです。初回リリースでは必要最小限の機能に留め、公開後にユーザーの行動データを分析しながら、機能を段階的に足していく方法です。
すべての機能を最初から盛り込もうとすると、開発費用が膨らむだけでなく、リリースまでの期間も長期化し、市場投入のタイミングを逃すリスクがあります。
あるアパレルECでは、当初2,000万円の見積もりでした。フルスペックの開発をMVP型に切り替え、初期リリースを800万円に抑えました。
リリース後は売上データに基づいて必要な機能を順次追加し、1年間のトータル投資額は1,200万円です。当初計画よりも高いROI(投資利益率)を達成しています。
ShopifyやfutureshopなどのSaaS型を基盤にすると、サーバー構築やセキュリティ対策にかかる費用を大幅に減らせます。
Shopifyの場合、月額33ドル(ベーシックプラン)から利用でき、決済機能や在庫管理機能が標準で備わっています。そのため、カスタマイズ開発に集中できます。
フルスクラッチで構築した場合、サーバー費用だけで年間100万〜300万円かかるところを、SaaS型なら月額数千円〜数万円に抑えられます。
同じ要件でも、ベンダーによって見積もり金額に2〜3倍の差が出ることは珍しくありません。見積もりの内訳を工程別・機能別に分解してもらい、各項目の妥当性を確認すると、不要なコストを削ぎ落とせます。
さらに、開発会社の所在地も費用に影響します。東京都内の開発会社と地方の開発会社では、人月単価に差が出る場合があります。
同じ品質でも、差は15〜30%程度になるケースがあります。リモートワークが普及した現在は、地方の開発会社も有力な選択肢です。
外注で失敗しないための注意点

BtoC通販・ECサイト開発の外注では、適切な準備と管理を行わなければ、さまざまなトラブルに直面する可能性があります。開発プロジェクトの失敗は、決して少なくありません。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の調査では、約30%が予算超過を経験しています。スケジュール遅延については、約40%が経験しているとされています。
よくある失敗パターンと対策
失敗を防ぐには、要件、体制、運用保守の3点を先に管理します。
- 要件:曖昧な要求を残さない
- 体制:発注側の責任者と定期レビューを置く
- 運用:リリース後の保守費用と担当者を先に決める
最も頻発する失敗パターンの1つ目は、要件定義の曖昧さによる仕様変更の多発です。「良い感じのデザインで」「使いやすいUIで」といった抽象的な要件のまま開発を進めると、完成品が発注側のイメージと大きく乖離し、大幅な修正が必要になります。
あるファッションECでは、要件定義が不十分なまま開発を始めました。その結果、デザイン修正だけで当初スケジュールから3か月遅延し、追加費用300万円が発生しました。
対策としては、前述のRFP作成を丁寧に行い、ワイヤーフレームやモックアップの段階で画面ごとのイメージを共有することが有効です。
2つ目の失敗パターンは、ベンダーへの「丸投げ」です。「プロに任せたから大丈夫」と考えて定例ミーティングを省くのは危険です。
中間成果物の確認を怠ると、開発途中で方向性のズレが発覚し、大きな修正が必要になるリスクも高まります。
EC事業のドメイン知識は、発注側にしかありません。商品の見せ方、ユーザーの購買行動、販促施策との連動は、EC事業の成功に直結します。そのため、発注側が主体的に判断する必要があります。
対策としては、社内にプロジェクトオーナーを明確に置き、週次の進捗確認と各フェーズでの成果物レビューを必ず行う体制をつくります。
3つ目は、費用だけでベンダーを選んでしまうパターンです。最安値の見積もりを出したベンダーを選ぶと、品質問題が起きる場合があります。
スキル不足や体制の薄さが原因となり、追加開発やリカバリー費用が発生するケースは非常に多く見られます。
ある食品ECでは、最安値のベンダーに発注しました。決済処理の不具合で、サイトオープン後に注文データが消失し、顧客からの信頼を大きく損なう事態に至りました。
対策としては、見積もり金額だけでなく、実績、技術力、体制の充実度を総合的に評価する選定基準を設けることが重要です。
4つ目は、リリース後の運用保守体制を考慮していないパターンです。ECサイトは、リリースが終わってから本格的に運用が始まるものです。
セキュリティアップデート、バグ修正、機能追加、サーバーの負荷対策などが、リリース後も続きます。そのため、運用フェーズで継続的に発生する業務の担当者は、開発開始前に決めておきます。
運用保守の月額費用は、サイト規模にもよりますが、月額10万〜50万円程度が相場です。この費用を初期の予算計画に含めないと、リリース後に予算不足となるリスクがあります。
品質を担保するためのチェックポイント
品質の確認は、開始前、開発中、公開前の3つに分けます。
- 開始前:セキュリティ体制と開発チームの見極め
- 開発中:コードレビュー、テスト計画、決済・在庫・負荷を確認する
- 公開前:SSL、解析、SEO、表示速度、1〜2週間の監視
開発を始める前には、外注先のセキュリティ体制を確認します。ECサイトは、顧客の個人情報やクレジットカード情報を扱うため、情報セキュリティへの意識と体制が不十分な開発会社への依頼は極めて危険です。
プライバシーマークやISO27001(ISMS)の取得状況、セキュリティに関する社内規程の有無、過去のセキュリティインシデントの有無と対応実績を確認します。
あわせて、開発チームのメンバー構成と経験も確認します。プロジェクトマネージャーのEC開発経験年数、主要エンジニアのスキルセット、チーム全体のBtoC-EC構築の実績数を把握します。
品質面では、コードレビューの実施体制を確認します。開発会社内でコードレビューが制度化されているか、レビュー基準が明確か、セキュリティ観点のコードチェックを行っているかを見ます。SQLインジェクション、XSS対策、CSRF対策などが対象です。
テスト計画の中身も、見落とせないチェックポイントです。単体テスト、結合テスト、システムテストに加えて、性能テストやセキュリティテストの内容を確認します。各段階のテスト内容、テストケース数、網羅率の目標値、テスト環境の構成を、事前に把握します。
ECサイトでは、特に次の3点のテストを押さえておく必要があります。決済処理の正確性テストでは、二重決済の防止、決済金額の正確性、各決済手段の動作を確認します。
在庫連動では、注文時の在庫引き当て、在庫切れ時の表示制御、在庫数の同期精度を確認します。負荷テストでは、想定ピーク時のアクセス数に対するレスポンスタイムを計測します。
リリース前は、本番環境でのステージングテストを実施します。SSL証明書や、Google Analyticsなどのアクセス解析ツールの設定を確認します。
SEO対策では、メタタグ、構造化データ、サイトマップを確認します。各種ブラウザやデバイスでの表示も見ておきます。
特にスマートフォンは、BtoC-ECの売上の70%以上を占めるケースが多いため、表示の確認が必須です。ページ表示速度については、Googleが推奨するCore Web Vitalsの基準値をクリアしているかを見ます。これらのチェックポイントを一覧にして外注先と共有すると、見落としのない品質管理につながります。
リリース後の初期は、集中的なモニタリング期間として見ておきます。エラーログ、決済処理の正常性、問い合わせ対応体制を重点的に確認します。
まとめ
BtoC通販・ECサイト開発の外注は、適切な準備と管理を行えば、専門知識とスピード感を生かせる有効な手段です。ここまでの内容を整理すると、まず外注の種類と特徴を理解し、自社の事業フェーズや体制に合った発注形態を選ぶことが出発点になります。
次に、RFPで要件を明確にし、複数のベンダーから提案と見積もりを取って比較検討します。契約形態は、プロジェクトの性質に応じて請負契約と準委任契約を使い分け、ソースコードの権利帰属や瑕疵担保責任の範囲を契約書に明記しておくことが大切です。
開発開始後は、「丸投げ」を避けて定例ミーティングと各フェーズのゲートレビューを行い、進捗と品質を継続して確認します。
費用面では、MVPの考え方で初期投資を抑え、リリース後の運用保守費用も含めたトータルコストで判断します。そうした判断は、長期的なROIの向上にもつながります。
外注先とよいパートナーシップを築き、公開後も改善を重ねていくと、競争力のあるECサイトに育っていきます。
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会社紹介
株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
