ECアプリ開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順

ECアプリ開発は、要件定義・企画、設計・開発、テスト・リリースの3つのフェーズを順に進めます。経済産業省の調査によると、2025年の国内BtoC-EC市場規模は約25兆円に達し、そのうちスマートフォン経由の購入比率は60%を超えました。各フェーズで何を決め、どこでつまずきやすいかを押さえておくと、発注先との打ち合わせで確認すべきことが分かります。

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・ECアプリ開発の完全ガイド

ECアプリ開発の全体像

ネイティブアプリ開発、クロスプラットフォーム開発、PWAの特徴を並べた図解
方式ごとに得意とする点が異なります。

ECアプリとは、スマートフォンやタブレット上で商品の閲覧・検索・購入・決済を行えるモバイルアプリのことです。ECサイトをWebブラウザで使う場合と比べると、ECアプリは再訪を促しやすい特徴があります。

さらに、プッシュ通知やカメラ、GPSなどのデバイス機能や、オフライン時の一部機能も使えます。また、ホーム画面からワンタップで起動できる点も、ユーザー体験上の優位性です。

スマートフォン普及率は90%を超え、アプリの重要性が高まっています。実際に、アプリを導入したEC事業者の約70%がコンバージョン率の向上を実感しており、平均的な改善幅は20%から40%に上るとされています。

ネイティブアプリとクロスプラットフォーム開発の違い

開発方式は、対応するOSと体験品質の優先順位で選びます。

  • ネイティブ:iOSとAndroidそれぞれの特性を深く使える方式です。
  • 共通開発:1つのコードを共有し、開発効率を高める方式です。

ECアプリの開発方式は大きく3つに分けられます。1つ目は「ネイティブアプリ開発」で、iOSならSwift、AndroidならKotlinといったプラットフォーム固有の言語を使って開発する方式です。

デバイスの性能を最大限に引き出せるため、滑らかなアニメーションや高速な画面遷移を実現できます。一方で、iOS版とAndroid版を別々に開発するため、コストと期間が増えやすい点がデメリットです。

2つ目は「クロスプラットフォーム開発」です。Flutter(Google開発)やReact Native(Meta開発)を使い、1つのコードベースからiOS・Android両方のアプリを生成します。

開発工数を40%から60%削減できるケースが多いことから、近年のECアプリ開発ではこの方式が主流になりつつあります。特にFlutterは、2025年時点でGitHub上のスター数が17万を超え、世界中の開発者コミュニティで活発に利用されています。

3つ目は「PWA(Progressive Web App)」で、Webサイトをアプリのように動作させる技術です。アプリストアへの公開が不要で開発コストも低い反面、プッシュ通知の制約(特にiOS)やネイティブ機能へのアクセスが限られるといった課題があります。

ECアプリでは、ユーザー体験の品質が購入率に直結します。そのため、本格的な売上拡大を目指すなら、ネイティブアプリかクロスプラットフォーム開発が一般的です。

ECアプリに必要な主要機能と技術トレンド

機能は、購買体験と再訪の両方から優先順位を付けます。

  • 購買機能:検索、カート、決済、会員の基本機能です。
  • 継続利用:通知、レビュー、分析を使って改善します。

ECアプリには、まず押さえておくべき基本機能があります。主要機能には、商品カタログ表示と検索、ショッピングカートと注文管理などがあります。決済機能も必要で、クレジットカードや電子マネーに加え、QRコード決済や後払いにも対応します。

会員登録とマイページ、プッシュ通知、注文履歴と配送状況の追跡も主要機能です。これらの基本機能に加えて、近年のECアプリでは、差別化のためにさまざまな先進機能が導入されています。

AIを活用したレコメンデーション機能は、閲覧履歴や購入履歴を分析して個人に合った商品を提案します。導入企業では、購入単価が平均15%から25%向上したという報告があります。

また、ARを使った試着・配置シミュレーション機能は、アパレルや家具のEC事業者を中心に導入が進んでおり、返品率を減らすうえで大きく役立っています。たとえば、あるアパレルECアプリでは、AR試着機能の導入後に返品率が約30%減少したという実績があります。

ライブコマース機能を取り入れたECアプリも増えています。リアルタイムの商品紹介と即時購入を組み合わせ、従来のEC購入と比べて3倍から5倍のコンバージョン率を実現する事例もあります。

決済面では、Apple PayやGoogle Payへの対応が欠かせません。BNPL(Buy Now Pay Later、後払い決済)への対応も、重要性を増しています。特にZ世代を中心とした若年層のユーザーでは、BNPL対応のECアプリの利用率が、従来の決済方法のみ対応のアプリと比較して約1.5倍高いという調査結果もあります。

ポイント

迷ったときは、対応するOSと体験品質のどちらを優先するかで開発方式を決めます。そのうえで、購買機能と継続利用の機能に優先順位を付けます。

ECアプリ開発の進め方

要件定義・企画から設計・開発、テスト・リリースへ進むECアプリ開発の図解
企画から公開まで、順に検討を積み上げます。

要件定義・企画、設計・開発、テスト・リリースの3フェーズの流れは、一般的なモバイルアプリ開発と共通します。ただし、決済システムや在庫管理システム、配送管理との連携が複雑になりやすいため、注意が必要です。

開発期間は、機能の範囲によって変わります。基本機能を備えたECアプリで4か月から8か月、フルスクラッチで高度な機能を盛り込む場合は10か月から18か月程度が目安です。

要件定義・企画フェーズ

企画では、アプリを作る目的と、その成果を測るKPIを言葉にしておきます。

  • 目的:売上、再訪、業務効率のどれを主目標にするかを決めます。
  • 優先度:MVPと将来の機能を分けたうえで見積もります。

ECアプリ開発の最初のステップは、ビジネス目標を定めて要件を整理することです。このフェーズでは、「なぜアプリを開発するのか」「アプリで、どの事業KPIを改善したいのか」に答えることから始めます。

成功するプロジェクトでは、定量的な目標を設定します。たとえば、既存ECサイトのモバイルCVR(コンバージョン率)を1.2%から2.5%へ引き上げる目標や、月間アプリ経由売上を3,000万円達成する目標です。

目標が曖昧なまま開発に着手すると、開発の途中で仕様変更や機能追加の要求が頻発します。その結果、スケジュールの遅れやコストの膨らみにつながります。

要件定義では、まずターゲットユーザーを分析します。具体的には、既存ECサイトのアクセスデータを基に、アプリのメインターゲットとなるユーザーペルソナを策定します。分析の対象は、デバイス比率や年齢層のほか、購入頻度や平均滞在時間などです。

次に、搭載する機能の優先順位を付けます。すべての機能を初期リリースに入れると、期間もコストも膨らみます。

そのため、MVP(Minimum Viable Product、最小限の実用的プロダクト)で核となる機能を先にリリースします。ユーザーの反応を見ながら、段階的に機能を広げていく方法が有効です。

ある食品EC事業者は、初期リリースを商品閲覧・検索・カート・決済・プッシュ通知の5機能に絞りました。リリース後3か月で月間アクティブユーザー数が5万人を突破し、その後にレコメンド機能を追加しました。さらに、お気に入りリストやクーポン機能も順次追加し、開発リスクを抑えながら売上を伸ばしました。

また、このフェーズでは既存の基幹システムやECプラットフォームとの連携方針も決めます。Shopify、EC-CUBE、コマースクリエイターを利用している場合は、既存のAPIでアプリのバックエンドと連携するかを判断します。一方で、バックエンドも含めてフルスクラッチで構築する選択肢もあります。

既存プラットフォームのAPIを活用する方式であれば、商品データや顧客データ、在庫情報を既存システムと一つにまとめて管理できます。そのため、運用面での効率が高くなります。

要件定義フェーズの期間は、一般的に3週間から6週間です。この段階で丁寧に検討するかどうかが、後工程をスムーズに進められるかを大きく左右します。

設計・開発フェーズ

設計では、画面体験と既存システムとの連携を同時に確認します。

  • UI/UX:ワイヤーフレームで、操作の迷いを減らします。
  • 連携:APIとデータ同期の失敗条件を定めます。

要件定義が完了したら、UI/UXデザインとシステム設計に移ります。ECアプリの設計では、まずワイヤーフレーム(画面の骨組み)を作成します。そのうえで、画面遷移図とともに、アプリ全体のユーザーフローを図にまとめます。

トップページから商品一覧、商品詳細、カート、決済完了までが購入フローです。ECアプリでは特に重要な流れのため、タップ数を抑えて購入まで迷わない設計が求められます。たとえば、ある大手アパレルECアプリでは、購入完了までのステップ数を7ステップから4ステップに削減したことで、カゴ落ち率を18%改善した事例があります。

UI/UXデザインでは、FigmaやAdobe XDなどのデザインツールを使い、プロトタイプ(操作可能なモックアップ)を作成します。プロトタイプの段階で実際のユーザーに使ってもらい、操作の分かりやすさや購入フローの自然さを確かめます。

このユーザビリティテストを行えば、開発着手後の手戻りを大幅に減らせます。デザインが確定したら、システム設計に進みます。

ECアプリのシステム構成は、フロントエンド(アプリ本体)、バックエンドAPI、データベース、外部サービス連携の4層が一般的です。

バックエンドには、Node.jsやPython(Django/FastAPI)、Ruby on Rails、Go言語などを使います。データベースはPostgreSQLやMySQLを選び、高速なキャッシュ層としてRedisを併用する構成が標準的です。

開発フェーズでは、アジャイル開発手法を採用するのが現在の主流です。2週間を1スプリントとして、動作する機能を順に実装し、レビューします。発注者は開発中のアプリを定期的に確認できるため、方向性のズレを早期に修正できます。

ECアプリ開発で特に注意が必要なのは、決済機能の実装です。クレジットカード決済には、PCI DSS(Payment Card Industry Data Security Standard)への準拠が求められます。

ただし、自社で決済処理を行わない方法もあります。その場合は、Stripe、PayPay、GMOペイメントゲートウェイなどの決済サービスAPIを使うのが一般的です。

Apple PayやGoogle Payへの対応は、ユーザー体験の向上とCVR改善につながるため、初期段階から組み込んでおくことをお勧めします。

開発フェーズの期間は、スコープによって変わります。基本的なECアプリで2か月から4か月、大規模なものでは6か月から12か月程度を見込んでおく必要があります。

テスト・リリースフェーズ

公開前には、購入が成功する流れと、異常時に復旧できる流れを一連で確認します。

  • 動作:端末、OS、決済、通知を組み合わせて試します。
  • 品質:負荷、脆弱性、クラッシュの有無を確認します。

開発が完了したら、テストフェーズに移ります。ECアプリのテストでは、一般的なモバイルアプリのテストに加えて、EC特有の観点も求められます。まず機能テストで、各機能が仕様どおりに動くかを確かめます。

決済処理では、正常な流れだけでなく、通信エラー時の動きも確かめます。決済キャンセルや返金処理、二重決済の防止といった異常系も、徹底的にテストします。過去には、決済の異常系テストが不十分なまま本番リリースを行い、二重課金が発生して顧客からのクレームが殺到した事例もあります。

パフォーマンステストでは、セール時やキャンペーン開始時のように、アクセスが集中する状況を想定した負荷テストを行うことが欠かせません。平常時の10倍から20倍のアクセスが瞬間的に発生することもあります。そのため、サーバーのオートスケーリング設定やCDN(Content Delivery Network)の活用状況も検証します。

ある食品EC事業者では、年末セールの直後にアプリがダウンしました。約4,000万円の機会損失を教訓に、本番想定の5倍の負荷テストを標準化しました。

セキュリティテストでは、個人情報やクレジットカード情報を扱うリスクに対応します。脆弱性診断ツールによる自動スキャンに加えて、専門企業によるペネトレーションテスト(擬似攻撃テスト)も推奨します。

テストが完了したら、Apple App Store(iOS)とGoogle Play Store(Android)への申請と審査に進みます。Appleの審査は一般的に1日から7日程度かかります。ただし、リジェクト(審査不合格)となるケースも珍しくありません。

特にECアプリでは、アプリ内課金(In-App Purchase)のガイドラインへの抵触や、プライバシーポリシーの不備が主なリジェクト理由になります。初回申請でリジェクトされる場合に備えて、リリーススケジュールには2週間程度のバッファを設けておくのが賢明です。

リリース後は、クラッシュレポート(Firebase Crashlyticsなど)を監視します。あわせて、ユーザーレビューとアプリ内の行動データを分析し、改善を繰り返すことが成功の鍵です。

ポイント

判断に迷ったら、要件定義で目標と機能の範囲を固め、連携や決済の条件は設計の段階で決めておくと、手戻りを減らせます。

費用相場とコストの内訳

基本的、中規模、大規模のECアプリについて初期開発費用の目安を並べた図解
機能の範囲が広がるほど、費用帯も上がります。

ECアプリの開発費用は、搭載する機能の範囲、開発方式、開発会社の規模やスキルレベルによって大きく変わります。具体的な金額は、プロジェクトごとの要件によって上下します。ここで示すのは一般的な費用感で、あくまで目安としてご覧ください。

人件費と工数

開発費は、役割別の単価と工数の掛け合わせで考えます。

  • 役割:PM、デザイン、開発、QAの単価を分けて見ます。
  • 方式:ネイティブか共通開発かを工数に反映します。

ECアプリの開発費用の大部分を占めるのは人件費です。エンジニアの単価は、スキルレベルや開発会社の規模で異なります。国内では、ジュニアエンジニアが月額60万円から80万円、ミドルレベルが月額80万円から120万円です。

シニアエンジニアやテックリードは、月額120万円から180万円が相場です。プロジェクトマネージャーの費用は月額80万円から150万円、UI/UXデザイナーは月額70万円から120万円程度です。

基本的なECアプリは、商品表示や検索、カート、決済、プッシュ通知を備えます。開発期間は4か月から6か月で、初期開発費用は800万円から1,500万円程度です。

標準的な体制は、プロジェクトマネージャー1名とデザイナー1名です。そのうえで、フロントエンドエンジニアとバックエンドエンジニアを、それぞれ1名から2名配置します。さらに、QA(品質保証)エンジニア1名を加えると、計5名から7名になります。

中規模のECアプリは、基本機能に加えて、レコメンド機能やクーポン・ポイント管理、複数決済、SNS連携などを備えます。開発期間は6か月から10か月で、チームは7名から10名体制です。費用は1,500万円から3,000万円が目安です。

大規模なECアプリは、AIレコメンドやAR機能、ライブコマース、多言語・多通貨対応、高度な分析ダッシュボードなどを備えます。開発期間は10か月から18か月で、チームは10名以上です。費用は3,000万円から8,000万円以上が見込まれます。

クロスプラットフォーム開発(FlutterやReact Native)は、ネイティブ開発より工数を30%から50%程度削減できることがあります。その結果、コストの圧縮につながります。

一方で、ネイティブアプリに比べて、性能やデバイス固有の機能に制約が生じる場合があります。そのため、アプリに求める要件とのバランスを見て判断します。

初期費用以外のランニングコスト

継続費は、インフラ、ストア、決済、保守に分けて確認します。

  • 固定費:サーバー、ストア、監視、保守の費用を計上します。
  • 変動費:決済手数料と利用量に応じて見込みます。

ECアプリの開発を検討する際に見落としがちなのが、リリース後に継続的に発生するランニングコストです。サーバーやクラウドインフラの費用も見積もります。利用するサービスには、AWS(Amazon Web Services)、Google Cloud Platform、Microsoft Azureなどがあります。

これらのクラウドサービスの利用料は、月額5万円から50万円程度です。アクセス数や取引量が増えるとサーバーリソースの追加が必要になるため、この費用は事業の成長とともに増える傾向にあります。

次に、決済手数料がかかります。クレジットカード決済の場合、決済額の3.0%から3.6%が手数料として発生するのが一般的です。たとえば、月間決済額が1,000万円のECアプリであれば、月額30万円から36万円の決済手数料が発生する計算になります。

Apple App StoreやGoogle Play Storeを経由してアプリ内購入が発生すると、売上の15%から30%が手数料になります。ただし、物販型のECアプリは、通常は自社決済のため手数料は発生しません。

さらに、アプリの保守・運用費用も発生します。バグ修正やOSアップデートへの対応、セキュリティパッチの適用、機能改善などが含まれます。この保守運用費用は、初期開発費用の15%から25%程度を年間で見込むのが一般的です。

初期開発費用が1,500万円のアプリであれば、年間225万円から375万円、月額に換算すると約19万円から31万円の保守運用費用が必要になります。特にiOSでは、Appleが毎年大型のOSアップデートを行うため、それに伴う動作検証と修正対応が避けられません。

継続的に発生するランニングコストは、初期段階から事業計画に組み込んでおく必要があります。

ポイント

費用は、機能の範囲と開発体制で大きく変わります。初期費用だけで判断せず、決済手数料や保守運用費用などのランニングコストも含めて見積もります。

見積もりを取る際のポイント

ECアプリの開発を外部に発注する際は、適切な見積もりを取り、信頼できるパートナーを選ぶことが、プロジェクト成功の大きな鍵を握ります。見積もりを依頼する前の準備、開発会社の比較と選定、リスク管理の順に確認します。

要件明確化と仕様書の準備

RFPは、開発会社が同じ前提で提案するための土台です。

  • 必須要件:OS、機能、連携、予算を明記します。
  • 評価軸:提案の質、体制、保守を先に決めます。

見積もりの精度を最も左右するのは、要件の明確さです。「ECアプリを作りたいのですが、いくらかかりますか」といった漠然とした問い合わせでは、開発会社も正確な見積もりを出せません。

見積もり依頼の前に、最低限として次の情報を整理しておくことをお勧めします。まず、対象プラットフォーム(iOSのみ、Androidのみ、両方)を決めます。

次に、搭載したい機能の一覧と優先順位を作り、既存のECサイトやバックエンドシステムの構成も整理します。最後に、希望するリリース時期と予算の上限を明確にします。

理想的には、RFP(Request for Proposal、提案依頼書)を作って開発会社に提示するのが効果的です。

RFPには、プロジェクトの背景と目的、機能要件に加えて、必須機能とオプション機能の区分や、非機能要件(パフォーマンス、セキュリティ、可用性)を書き込みます。スケジュールの制約や予算の範囲、評価基準も記載しておくと、提案の前提がそろいます。

RFPを作れば、複数の開発会社から同じ条件での提案を受けられるため、比較検討を公平に進められます。また、RFPを作る過程で自社の要件を改めて整理することになるため、曖昧だった部分が明確になるという副次的なメリットもあります。

RFPの作成に不慣れな場合は、ITコンサルティング会社やプロジェクト支援の専門家に作成を支援してもらう方法もあります。その場合の費用は、50万円から150万円程度が目安です。

複数社比較と発注先の選び方

比較では、価格だけでなく、技術と長期運用の相性を見ます。

  • 提案:方式とスコープの根拠を確かめます。
  • 実績:EC、アプリ、近い業種の経験を比べます。

ECアプリの開発会社は、最低でも3社から5社に見積もりを依頼して比べることを推奨します。金額だけでなく、複数の観点から総合的に評価します。

まず確認したいのは、ECアプリの開発実績です。EC領域特有の決済処理、在庫連携、配送管理などの知見を持つ開発会社と、EC開発の経験が少ない開発会社では、設計の質や開発中のトラブル対応力に大きな差が出ます。そのため、過去に開発したECアプリの実例を見せてもらい、可能であれば実際のアプリをダウンロードして操作感を確かめるのが理想です。

次に、提案内容の具体性と妥当性を確かめます。「おまかせください」という姿勢よりも、要件に対して具体的な技術選定の根拠を示し、リスクや課題を率直に指摘してくれる開発会社のほうが、信頼性は高いといえます。

たとえば、既存のWebフロントエンドがReactなら、FlutterよりReact Nativeを推奨する理由を確認します。コンポーネントの再利用と学習コストの両面から説明できる会社を選びます。このような具体的な提案から、開発会社の技術理解の深さを判断できます。

コミュニケーション体制も、判断材料のひとつです。開発中のやり取りがスムーズに行えるかどうかは、プロジェクトの成否に直結します。

提案段階でのレスポンスの速さや説明の分かりやすさ、質問への回答の的確さから、コミュニケーションの質を見極めます。また、契約形態についても確認が必要です。

請負契約(成果物に対して固定金額を支払う方式)と準委任契約(工数に対して支払う方式)のどちらが適しているかは、要件の確定度合いによって異なります。要件が明確なら請負契約、要件が流動的なら準委任契約(またはアジャイル型の開発契約)が適しています。

注意すべきリスクと対策

外注リスクは、仕様、納期、権利、セキュリティに分けて管理します。

  • 変更管理:追加機能の条件と影響を記録します。
  • 引き継ぎ:ソース、設計、権利の範囲を決めます。

ECアプリ開発で頻繁に起きるリスクと対策を把握しておくと、プロジェクトを円滑に進められます。

最も一般的なリスクは「スコープクリープ」で、開発途中の機能追加や仕様変更によって、スケジュールとコストが膨らむことです。あるEC事業者では、当初1,200万円の見積もりで開始しました。しかし、開発途中で仕様変更が度重なり、最終的に2,500万円まで増えました。

これを防ぐには、要件定義フェーズで機能の優先順位を明確にし、初期リリースに含める機能と将来の追加開発に回す機能を線引きしておくと有効です。また、契約書に変更管理の手順(仕様変更時の見積もりと承認の流れ)を明記しておくことも、対策のひとつです。

もう一つの重大なリスクは、知的財産権(ソースコードの著作権)に関するトラブルです。発注したECアプリのソースコードの帰属先は、契約時に明確にしておきます。将来、開発会社を変更する際に、引き渡しを拒否されるケースがあるためです。

契約書には、ソースコードの著作権が発注者に帰属する旨を明記します。あわせて、納品物にソースコード一式とドキュメントが含まれるかを確認しておくべきです。

ECアプリは顧客の個人情報や決済情報を扱うため、情報漏洩が発生した場合の影響は甚大です。そのため、セキュリティリスクへの対策も欠かせません。

開発会社がISMS(ISO 27001)やPマーク(プライバシーマーク)を取得しているかは、セキュリティ対策のレベルを判断する一つの指標になります。また、開発環境の管理体制(ソースコードのアクセス管理、開発用テストデータの取り扱いなど)も、契約前に確かめておくことをお勧めします。

ECアプリは、リリース後も保守・運用が長期にわたって続きます。加えて、開発会社の経営の安定性も確かめておく必要があります。

開発会社の経営が不振になると、保守対応が滞るおそれがあります。そのため、設立年数や従業員数、主要取引先などを確かめ、長期的な体制があるかを見極めます。

ポイント

見積もりは、要件を文書にまとめて複数社に提示し、金額、実績、提案の根拠、契約条件を合わせて比べます。契約では、仕様変更の扱いとソースコードの帰属先を先に決めておきます。

まとめ

ECアプリ開発は、モバイルコマースの成長に伴い、EC事業者にとってますます重要な投資分野になっています。

まず、開発方式の特徴を理解します。ネイティブアプリ、クロスプラットフォーム、PWAのなかから、自社の目標と予算に合う方式を選びます。

要件定義・企画フェーズでは、ビジネスゴールとMVPの範囲を決めます。設計・開発ではアジャイル開発を採用し、定期的なレビューと軌道修正を行います。テスト・リリースでは、決済の異常系テストとパフォーマンステストを重点的に行う3段階の進め方が効果的です。

費用の目安は、基本的なECアプリで800万円から1,500万円です。中規模は1,500万円から3,000万円、大規模は3,000万円から8,000万円以上です。さらに、サーバー費用や決済手数料、保守運用費用などのランニングコストも含め、総所有コストで事業計画を立てます。

見積もりでは、RFPを作って複数社から提案を受けます。金額だけでなく、EC開発の実績、技術力、体制、契約条件を総合的に評価して、発注先を決めてください。

スコープクリープの防止、知的財産権の明確化、セキュリティ対策の確認など、リスク管理の観点にも忘れずに取り組むことが、プロジェクトの成功につながります。

ECアプリは、リリース後の継続的な改善によって真価を発揮します。信頼できる開発パートナーとともに、長期的な視点でアプリの成長戦略を描いていくことをお勧めします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。