ヘルスケアアプリ開発の完全ガイド

ヘルスケアアプリ開発は、規制への該当性と扱うデータを先に整理し、要件・費用・委託先を順に決めることが土台です。国内のヘルスケア産業は2025年時点で約33兆円に達するとの試算もあり、薬機法や個人情報保護法への対応も欠かせません。

全体の進め方は、まずアプリの種類と規制上の位置づけを確認し、続いて開発計画と予算を固めることから始まります。最後に、要件に合うパートナーと契約条件を見極めます。開発の進め方から発注方法までの4テーマは、下のリストから必要なものを選んで読めます。

ヘルスケアアプリ開発の進め方

ヘルスケアアプリを用途別の4種類に分けた図解。
用途の違いが規制確認の出発点になります。

開発は、企画・要件定義から運用・保守まで7つのフェーズで進みます。ただし、期間はアプリの機能と医療機関との連携範囲によって変わります。

  1. 企画・要件定義
  2. UI/UXデザイン
  3. システム設計
  4. 開発・実装
  5. テスト
  6. リリース
  7. 運用・保守

シンプルな健康記録アプリであれば、3〜6ヶ月程度で完成する例があります。一方で、医療機関との連携やAI診断機能を含むと、12〜18ヶ月以上かかることもあります。

通常のアプリ開発に加えて、医療・健康分野の規制とセキュリティを設計に織り込む必要があります。そのため、最初にアプリの種類を見極めておくと、後続の判断が進めやすくなります。

アプリの種類と規制対応の全体像

規制を確認するには、アプリが誰のどの判断を支えるかを見ておく必要があります。用途ごとに、次の4種類に分けて考えられます。

  • フィットネス・健康管理:歩数、睡眠、食事などの日々の健康データ
  • 医療・診断支援:画像解析や疾病管理など、医師の診断を支える機能
  • 遠隔医療・オンライン診療:患者と医療機関をオンラインでつなぐ仕組み
  • 医療情報管理:電子お薬手帳や患者向けの医療情報

日常の健康管理を目的とするアプリは、医薬品医療機器等法(薬機法)上の医療機器に原則として該当しません。診断に使う画像解析や疾病管理のアプリは、医療機器プログラムとして規制対象になる場合があります。

医療機器に該当するかの判断に迷う場合は、厚生労働省が総合相談窓口を設けるPMDA(医薬品医療機器総合機構)へ相談できます。この該当性の確認を開発初期に済ませておくと、規制対応のリスクを抑えられます。

開発期間を左右するのは、要件の明確さと規制対応の複雑さです。そこで、要件を早い段階で具体化しておくと、手戻りが減り、全体の期間も短くできます。

企画・設計・開発・テスト各フェーズのポイント

企画・要件定義は、開発全体の方向を決める重要な段階です。国内利用率は2022年時点で53%に達し、3年間で21ポイント増えました。

競合との差別化には、市場調査と対象ユーザーの具体化が欠かせません。そのうえで、ペルソナ設定では、次のような生活背景まで定めます。

  • 40代のデスクワーク中心の男性
  • 健診で血圧と体重に課題がある
  • 継続的な記録習慣を身につけたい

この人物像を機能選定とUI設計につなげると、必要な体験が明確になります。

設計・開発では、クラウドネイティブな構成を検討します。通信経路はTLS 1.2以上で暗号化し、アクセス権限も必要最小限にします。

iOSのApple HealthKit、AndroidのGoogle Fitと連携すると、端末のセンサーデータや他アプリの健康データを安全に取得できます。

リリース前の検証は、機能、セキュリティ、ユーザー受入の3層で行います。特に、セキュリティテストには、ペネトレーションテストも含めます。

申請の前には、App StoreとGoogle Playの審査基準を読み込んでおきます。設計段階から要件を確認しておくと、リジェクトのリスクを抑えられます。

詳細はヘルスケアアプリ開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順をご覧ください。

ポイント

アプリの種類で医療機器に当たるかを先に確かめ、要件の範囲を早い段階で決めることが、期間の見通しにつながります。医療機関との連携やAI診断の有無で、期間は大きく変わります。

ヘルスケアアプリ開発でおすすめの開発会社

開発会社の選定は、リリース後の法的リスクや品質にも関わります。そのため、個人情報保護法や薬機法、高度なセキュリティ、医療・健康分野の知識を備えた相手を探しましょう。各社の実績と得意領域を見て、要件との相性を確かめます。

株式会社ripla|コンサルから開発まで一気通貫で支援

riplaは、構想から運用定着までを見据えて、コンサルティングと開発を一気通貫で支援しています。

  • 事業づくり:上流工程から、何を作るかを一緒に考えます。
  • UX設計:行動変容と継続利用につながる体験の提案
  • システム連携:幅広い基幹システムの構築・導入に対応

IT事業会社として社内DXを進めてきた経験を生かし、事業成果とシステムの定着を重視しています。

営業・顧客・生産・販売管理などの業務要件に合わせて、体制を柔軟に組みます。

健康管理機能と人事システムを連携する健康経営アプリや、保険会社向けのウェルネスアプリなど、複合要件にも対応します。初めて開発する企業にも、プロジェクト全体を案内する伴走型の支援を提供します。

その他のおすすめ開発会社と選び方のポイント

ヘルスケア領域では、各社の専門分野が異なります。そのため、自社の要件に近い開発実績を確認することが大切です。

  • テックファーム株式会社:健康アプリやウェアラブル連携の実績があります。
  • 株式会社エムティーアイ:女性向けヘルスケアサービスを運営しています。
  • 株式会社プラクテックス:ヘルスケアデバイス連携を専門としています。

テックファーム株式会社は、第一生命保険の健康促進アプリ「健康第一」や、カシオG-SHOCKシリーズのフィットネス向けスマートウォッチ専用アプリを開発しています。また、同社には2022年度グッドデザイン賞を受賞した健康増進アプリ「QOLism」の実績もあります。

株式会社エムティーアイの「ルナルナ」は、シリーズ累計1,400万ダウンロードを超えます。1996年の創業以来、200以上のモバイルコンテンツやサービスを開発・運営してきました。加えて、同社は大規模サービスのインフラ設計や長期運用にも知見があります。

株式会社プラクテックスは、体組成計・血圧計・血糖値計からBluetooth経由でデータを取得する、デバイス連携の専門会社です。同社は「HEALTHPLAYER SDK」を活用します。

選定時には、ISMSやPマーク、薬機法・個人情報保護法に詳しい担当者がいるかを確認します。保守・運用体制の評価も欠かせません。

詳細はヘルスケアアプリ開発でおすすめの開発会社/ベンダー6選と選び方をご覧ください。

ポイント

開発会社は、規制やセキュリティへの知見と、要件に近い開発実績があるかで比べます。保守・運用の体制も、リリース後の品質に関わるため欠かせません。

ヘルスケアアプリ開発の費用相場

小規模・中規模・大規模の開発費用と期間を並べた図解。
機能や連携の規模が大きくなるほど、費用と期間の幅も広がります。

開発費用は、機能の複雑さ、対応するプラットフォーム数、セキュリティ水準によって変わります。初期費用だけでなく、運用中の支出も含めて予算を組むことが大切です。

開発規模別の費用目安とコスト構造

規模ごとの費用と期間を並べると、見積もりの前提を比べやすくなります。

  • 小規模:単一機能を中心とするアプリ。
  • 中規模:複数機能やウェアラブル連携を含むアプリ。
  • 大規模:AI予測や電子カルテとのAPI連携を含むアプリ。

小規模では、歩数、食事記録、体重管理などが中心になります。費用は100万〜300万円程度、期間は3〜4ヶ月程度です。

中規模では、ウェアラブル連携や複数機能を組み合わせます。費用は300万〜800万円程度、期間は4〜6ヶ月が目安です。

大規模では、AI・機械学習による健康状態の予測や、電子カルテとのAPI連携を扱います。費用は800万〜5,000万円以上で、期間は6ヶ月〜1年以上かかる場合があります。

費用の70〜90%は人件費が占めます。具体的には、エンジニアの月額単価の相場は、初級レベルで70〜100万円、上級レベルで100〜180万円程度です。

健康データは、個人情報保護法上の「要配慮個人情報」にあたります。そのため、暗号化、アクセス制御、監査ログなどのセキュリティ実装費も見積もりに含めてください。

ランニングコストと費用を抑えるアプローチ

リリース後は、利用規模や保守範囲に応じて継続費用が発生します。予算では、次の項目を見落とさないことが大切です。

  • クラウドサーバー:小規模なら月額1〜5万円程度から始まり、数万人規模では月額10〜30万円以上になる場合があります。
  • 保守・アップデート:初期開発費用の年間約20%が目安です。
  • ストア登録・維持:Apple Developer Programは年間約1万4,800円などの費用がかかります。

法規制への対応費も見込んでおきます。個人情報保護法の改正やガイドラインの更新に伴い、システム改修が必要になる場合があります。

初期費用を抑える方法の一つは、MVP(Minimum Viable Product:最小限の実用機能のみを持つ製品)から始めることです。核となる機能で市場を確かめ、利用者の声を受けて段階的に拡張します。

FlutterやReact Nativeなどのクロスプラットフォームフレームワークを使えば、iOSとAndroidをまとめて開発できます。このため、ネイティブ開発と比べると費用を抑えられる場合があります。

IT導入補助金などの公的補助金を使うと、実質的な開発コストを3分の1〜5分の1程度まで圧縮できるケースもあります。

詳細はヘルスケアアプリ開発の見積相場や費用/コスト/値段についてをご覧ください。

ポイント

規模ごとの目安に、運用中の支出と法規制への対応費を加えて予算を組めば、後からの想定外の出費を減らせます。初期費用を抑える手段として、MVPや公的補助金も検討の対象になります。

ヘルスケアアプリ開発の発注・外注方法

RFPの用意から複数社の提案評価までをつないだ図解。
条件を揃えて提案を集めると、候補企業を同じ土台で見比べられます。

外注の判断から契約、発注後の管理までを一つの流れで考えると、品質・納期・費用のずれを抑えやすくなります。

開発費用は、小規模案件から数千万円規模まで幅があります。そのため、まず社内の体制と必要な専門知識を確かめておくことが大切です。

RFP作成から発注先選定までの手順

社内に専門エンジニアがいない、早く市場へ出したい、規制対応の知見が必要といった場合は、外注が有力です。

発注先は、得意領域や管理体制の異なる次の4種類から検討します。

  • 大手SIer
  • 中小規模の専門開発会社
  • フリーランス
  • オフショア開発会社

日本の規制に詳しいかどうかを確かめてください。なお、海外企業へ委託する場合は、国内のブリッジSEが常駐する体制かも確認します。

候補企業に同じ条件で提案を依頼するため、最初にRFP(提案依頼書)を用意します。RFPには、次の7点を盛り込みます。

  1. プロジェクトの背景と目的
  2. 必要な機能(必須機能と希望機能を区別)
  3. 対応プラットフォーム(iOS・Android・Web)
  4. 想定ユーザー数
  5. 予算上限
  6. 納期
  7. 評価基準

さらに、個人情報・医療データの取り扱い方針と、対象規制への対応方針も、RFPに明記します。見積もりは3〜5社以上から集め、提案の質と費用を合わせて評価することが大切です。

ヘルスケア専門会社では、基本的なアプリが150〜350万円程度、高度な機能を持つアプリは350〜650万円以上が一般的な相場です。

契約時の注意点と発注後のプロジェクト管理

発注先が決まったら、契約形態と契約書を確認します。代表的な契約形態は次の2種類です。

  • 請負契約:成果物の完成に対して報酬を支払います。費用を確定しやすい一方、仕様変更には追加費用が発生します。
  • 準委任契約:業務の遂行に対して報酬を支払います。要件が固まっていない初期段階やアジャイル開発に向いています。

企画・要件定義は準委任契約で進め、要件が確定してから開発を請負契約にする二段階の進め方も、多くのプロジェクトで採用されています。

契約書では、ソースコードや著作権など知的財産権の帰属に加えて、個人情報・医療データの守秘義務、瑕疵担保期間と対応範囲を確認します。なお、保守・運用サポートの内容と期間は、締結前に確かめておく必要があります。

開始後は、週次または隔週で定例会を開き、変更依頼を文書やチケット管理ツールに残します。また、マイルストーンごとに方向性を見直すと、認識違いを防げます。

詳細はヘルスケアアプリ開発の発注/外注/依頼/委託方法についてをご覧ください。

ポイント

発注では、RFPで条件を揃え、3〜5社以上の提案と費用を比べることが判断の目安になります。契約形態は、要件が固まっているかどうかで選びます。

まとめ

ヘルスケアアプリ開発では、規制・セキュリティの確認を起点に、要件、費用、委託先を一貫して決めていくことが欠かせません。

アプリの用途によって薬機法などの扱いは変わります。必要に応じてPMDAへ相談し、開発初期に方針を固めることが大切です。

企画の段階では、対象ユーザーと機能要件を定め、セキュリティと使いやすさを両立するUI/UXを設計します。

開発規模別の相場を基準にしつつ、MVP、クロスプラットフォーム、公的補助金を検討すれば、費用を調整できます。

費用の目安は、小規模が100万〜300万円程度、中規模が300万〜800万円程度、大規模が800万円以上です。

発注時はRFPで条件を揃え、3〜5社以上の提案を比べます。実績、規制・セキュリティへの対応力、保守体制を確認し、自社の目的に合う計画を開発会社と組み立ててください。

各テーマの手順や相場を詳しく確認したい方は、該当する記事へ進んでください。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。