社内エンジニア不足のフルスクラッチ・オーダーメイド開発について

社内にエンジニアがいない企業は、独自開発する範囲を切り分けるのが現実的です。標準業務はSaaSに任せ、独自性が必要な領域は、著作権の確保を含む伴走型支援で作ると、独自性と将来の自走を両立しやすくなります。

経営者や事業責任者、フルスクラッチかパッケージかで迷う担当者に向けて、判断の指針を示します。

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技術人材がいない企業がフルスクラッチを選ぶリスク

フルスクラッチの保守・改修に伴う追加費用、対応待ち、複雑さを3枚のパネルで示す図。
改修を外部に委ねるほど、自社で費用や対応速度を管理しにくくなります。

フルスクラッチは、既製品では満たせない独自の要件を実現できる開発方法です。ただし社内に技術者がいないと、完成後の保守や改修を開発ベンダーに頼ることになります。

自社専用のシステムは、内容を理解して保守や改修を担える人が、開発に関わった限られた人に偏ることがあります。自社で内容を把握できない状態が続くと、改修費用や対応速度を管理しにくくなります。

ベンダーへの依存は、ロックインや保守を自走できない状態など、長期的なリスクにつながります。作り込むほど中身がブラックボックス化し、改修のたびにベンダーの提示額を払い続ける恐れもあります。このリスクを理解しておくことが、後悔のない判断の前提になります。

保守・改修の自走困難とスピードの低下

システムは、市場や業務の変化に合わせて完成後も改修を続ける必要があります。ただし技術者がいないまま作ると、改修はベンダーに頼るほかなく、中身もブラックボックス化します。軽微な変更でも、ベンダーへ依頼して見積もりや作業を待つことになります。その影響は、次のような形で表れます。

  • 追加費用:機能追加や仕様変更のたびに、その都度費用がかかります。
  • 対応待ち:画面への項目追加も、ベンダーに発注して数週間待つことがあります。
  • 複雑さ:独自性が高いほど、外部の人には内容を理解しにくくなります。

改修の速度や費用をベンダーに委ねると、自社で軽微な修正もできず、ビジネスの速度が落ちます。独自性を追求した結果、変化への対応力を失うのは本末転倒です。この自走の難しさは、フルスクラッチの最大のリスクの一つといえます。

特定のベンダーに依存し、構造も委託先だけが理解している状態になると、乗り換えが極めて難しいロックインに陥ります。

  • 交渉の難しさ:費用が高くても、委託先しか構造を知らず交渉しにくくなります。
  • 引き継ぎ負担:別の会社へ移るには引き継ぎ費用が膨大になり、現実的に動けない場合があります。
  • 著作権:契約で権利が自社に移らないままだと、将来の移行が制限される恐れがあります。

技術者がいない企業は、著作権に目が向きにくい面があります。権利が自社になければ、ソースコードを自由に扱えず、内製運用に移ることも難しくなる場合があります。

技術知識がないと契約条項を見落としやすく、それが将来の選択肢を左右します。そのため、発注時にソースコードや設計資料の権利を確認し、自社で確保しておくことが大切です。独自システムのリスクは、技術面だけでなく契約面にもあります。

ポイント

判断の目安は、完成後の保守や改修を自社でどこまで担えるかです。自社で担えない部分が大きいほど、フルスクラッチで作る範囲を絞る必要があります。

標準はSaaS、差別化だけ作り込むハイブリッド戦略

標準業務にはSaaSやパッケージ、差別化領域には独自開発を対応させた左右比較図。
業務の性質に合わせて、既存サービスと独自開発を使い分けます。

フルスクラッチのリスクを抑えつつ独自性も保つには、標準機能をSaaSやパッケージで補い、差別化領域だけを作るハイブリッド戦略が有効です。この戦略は、現実的で成功率の高い方法として多くの企業に支持されています。

エンジニアがいない企業が全てを自社専用にすると、保守の負担もロックインのリスクも大きくなります。だからこそ、標準と独自を分けることがリスク管理の鍵になります。

会計や勤怠管理など、多くの企業に共通する業務は既存のSaaSで対応できる場合があります。独自性が必要な領域を見極めて投資を集中すれば、保守の負担を抑えながら必要な機能を作れます。

コア業務とノンコア業務の切り分け

まず、差別化に効く領域を見極めて、独自にする範囲を絞り込みます。そのうえで、業務を棚卸しし、独自開発が必要なコア業務とSaaSで対応できる業務に分けます。

  • コア業務:顧客への価値や競合との差別化に直結する領域です。
  • ノンコア業務:会計、勤怠管理、社内情報共有などの汎用業務です。

コア業務は既製品で代替できない場合があり、独自に作り込む価値があります。一方で、ノンコア業務は標準的なSaaSやパッケージで対応できることがあり、独自開発は費用と保守の面で合理的でない場合があります。特に、エンジニアがいない企業では、ノンコア業務をSaaSに任せることで保守の手間を減らせます。

自社の業務を知る現場の視点で切り分ければ、限られた予算と労力をコア領域に集中できます。何をSaaSに任せるかを先に考えることが、賢い投資判断の出発点です。この切り分けが、リスクを抑え独自性を保つ戦略の土台になります。

標準と独自を使い分ける企業の実例

ハイブリッド戦略を具体的に見るために、領域の切り分けで知られるホームセンター大手、株式会社カインズの例を取り上げます。

  • 標準業務:購買や倉庫管理にERPパッケージやSaaSを導入しています。
  • 差別化領域:EC画面や独自サービスを自社エンジニアが構築・改修します。

購買や倉庫管理は多くの企業に共通し、標準ソリューションで対応できる領域です。一方で、EC領域ではアクセス数の増加といった成果を上げています。画面や独自サービスは、顧客体験と競合との差別化に直結するため、独自開発の価値が高い領域です。

この事例は、全てを独自開発する方法と既製品で済ませる方法の両方を避け、領域ごとに手段を選ぶ有効性を示しています。同様の内製体制をすぐに作れなくても、業務ごとに標準と独自を見極める考え方は応用できます。独自性は、選んだ領域に集中させてこそ活きます。

ポイント

迷ったときは、その業務が自社の差別化に直結するかで判断します。直結しない業務はSaaSやパッケージに任せ、独自開発は差別化の領域に限ると、保守の負担を抑えられます。

エンジニアゼロから独自開発を進める伴走型支援

伴走型支援で社内に蓄積する担当者、実務を通じた学習、目指す体制を3枚のカードで示す図。
開発への参加と実務経験が、完成後の自社運用につながります。

独自開発を丸投げの外注で進めると、完成後もベンダー依存のリスクが残ります。差別化のコア領域には、SaaSで満たせない独自システムが必要な場合があります。そこで有効なのが、伴走型支援(コ・デベロップメント)です。

伴走型支援(コ・デベロップメント)は、外部ベンダーを自社チームの一員として迎え、一緒に開発する方法です。開発と並行してノウハウを社内へ移すため、完成後の保守や軽微な改修を自社で進める土台を作れます。

技術者がゼロの企業でも、伴走型支援を使えば独自開発と内製化を同時に進められます。外部依存を避けたい企業にとって現実的な方法です。

一緒に作ることで得るノウハウの移譲

伴走型支援では、自社の担当者が外部ベンダーと一緒にプロジェクトを進めます。

  • 担当者:業務を知る人やITに関心のあるリーダーが参加できます。
  • 実務を通じた学習:開発手法やプロジェクト管理ツールの使い方を学びます。
  • 目指す体制:完成後に保守や軽微な改修を社内で進められる状態です。

担当者は、最初からエンジニアである必要はありません。従来型の外注では、完成品を受け取ってもシステムを扱う力が社内に残りません。一方で、伴走型支援では運用・改修の力も社内に蓄積します。

技術人材ゼロから内製化するには、パートナーと実務に取り組み、主体的に学ぶことが大切です。

伴走型支援を選ぶ場合も、契約でソースコードや設計ドキュメントの著作権を確保します。

  • 権利の確認:著作権が自社に帰属する形かを、契約時に確かめます。
  • 将来の選択肢:別のパートナーへの切り替えや、自社運用に備えるための土台です。
  • ノウハウの移譲:システムを扱う力を、社内に残すための項目です。

権利を自社で扱えないと、ノウハウを得ても、別会社への移行や完全な自社運用が難しくなる恐れがあります。

業務を棚卸ししてコア領域に絞り、ノンコアはSaaSに任せれば、独自開発の範囲を整理できます。そのうえで、コア領域は丸投げを避け、著作権の確保を含む契約で伴走型支援を始めることが、将来の自走につながります。

ポイント

独自開発を進めるなら、丸投げにせず、担当者が開発に加わる伴走型支援を選ぶかどうかが分かれ目です。著作権を契約で確保しておくと、将来の自走や別パートナーへの切り替えに備えられます。

SaaSとフルスクラッチを切り分ける判断軸

システム全体を一括で決めるより、業務領域ごとに判断するのが基本です。標準機能はSaaSやパッケージで補い、差別化が必要な部分だけを独自開発する方法もあります。エンジニアがいない企業は、保守の負担が小さく、外部依存のリスクが低い選択を優先します。

段階的な判断のステップ

次の順に検討すると、SaaSで済む業務と独自開発する領域を整理できます。

  1. 業務を棚卸しし、ノンコア業務とコア業務に分けます。
  2. ノンコア業務は、SaaS、パッケージ、ノーコードで対応し、保守の負担を抑えます。
  3. コア業務は、SaaSのカスタマイズや組み合わせで要件を満たせるか見極めます。
  4. 要件を満たせない場合に、独自開発の方法を検討します。
  5. 独自開発では丸投げを避け、著作権確保を含む伴走型支援を選びます。

汎用業務を独自開発する理由はほとんどなく、既存サービスで保守の負担を小さくできます。段階ごとに見ていくと、不要な開発を避けて、本当に独自性が必要な領域に投資できます。

避けたい最も危険な選択

特に避けたいのは、全業務をフルスクラッチで作り、丸投げの外注で進める方法です。

  • 自走の困難さ:完成後の保守や改修を、自社だけでは進められません。
  • ベンダー依存:移行が難しく、改修費や待ち時間が膨らむ恐れがあります。
  • 予算の圧迫:IT予算が維持費に回ってしまう場合があります。

技術者がいないまま複雑なシステムを抱えると、改修のたびに費用と時間を払い続けることになります。

使いどころを誤らなければ、フルスクラッチは競争力につながる手段になります。独自性と自社の対応力のバランスを見て、SaaS活用や伴走型支援で将来の選択肢を守ります。

ポイント

判断の目安は、標準で満たせる業務はSaaSに任せ、満たせない要件だけを独自開発の候補にすることです。特に避けたいのは、全業務を丸投げの外注で作る方法です。

まとめ

社内にエンジニアがいない企業が全業務をフルスクラッチにすると、保守や改修を自走しにくくなります。さらに、ベンダーロックインや著作権の問題が起きると、将来の選択肢が狭まる恐れもあります。

標準業務はSaaSやパッケージに任せ、差別化に関わるコア領域だけに独自開発を絞るのが現実的です。

独自開発が必要な場合は、丸投げを避けて伴走型支援を活用し、著作権の確保を契約に含めます。

まず業務を棚卸しし、段階的に判断すれば、独自性とリスク管理の両立につながります。自社専用のシステムを検討する際は、信頼できるパートナーと独自開発すべき領域を見極めましょう。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。