Laravel(ララベル)は、PHPで開発されたWebアプリケーションフレームワークの中で世界的に最も高いシェアを誇り、国内でも数多くの業務システム・SaaS・ECサイト・社内ツールの基盤として採用されています。MVC(モデル・ビュー・コントローラ)構成にもとづいた明快な設計、Eloquent ORMやArtisanコマンド、Bladeテンプレートエンジンといった生産性の高い機能群を備え、認証・キュー・スケジューラ・テストまでをフレームワーク標準でカバーできる「全部入り」の使い勝手が支持される理由です。一方で、システムは作って終わりではなく、リリース後に長く安定稼働させてはじめて投資が回収できます。Laravel開発を外部に依頼しようとする企業担当者にとって、「初期開発費だけでなく、毎年いくら保守・運用にかかるのか」「サーバーやSaaSのランニングコストはどの程度か」「バージョンアップ対応にはどれくらいの予算を見込むべきか」といった疑問は、稟議や中期計画を立てるうえで避けて通れない論点になります。
本記事では、Laravel開発の保守・運用費用・ランニングコストに焦点を当て、年間保守費用の相場と内訳、AWSをはじめとするインフラ・SaaSの月額コスト、Laravel特有のリリースサイクル(LTS/EOL)に伴うバージョンアップ対応費用、そして中長期でコストを最適化する具体策までを、具体的な数値とともに体系的に解説します。LaravelはMITライセンスのオープンソースでフレームワーク自体は完全無料、かつPHPエンジニアの人材が豊富で内製化しやすいという、運用コストの観点で有利な特性を持っています。これらの強みをどう活かせば総保有コスト(TCO)を抑えられるのかという視点で読み進めることで、初期費用だけでなくその後数年間のランニングコストまで見据えた、現実的な予算計画を立てるための判断軸が身に付くはずです。これからLaravelでの開発パートナーを選定する方はもちろん、既存システムの運用予算を見直したい方にも役立つ内容です。
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▼全体ガイドの記事
・Laravel開発の完全ガイド
Laravel開発の保守・運用費用の全体像

Laravel開発の保守・運用費用を考えるうえで、まず押さえておきたいのは「総保有コスト(TCO)は初期開発費だけでは決まらない」という事実です。一般的に、システムは初期構築費よりも、リリース後に発生し続ける保守・運用・改修のコストのほうが、数年単位で見れば大きくなることも珍しくありません。Laravel開発における年間保守費用の目安は、初期開発費用の15〜25%程度/年が相場です。たとえば初期開発に1,000万円かけたシステムであれば、年間で150万〜250万円程度の保守費用を継続的に見込んでおく必要があるということになります。この保守費用には、サーバーの稼働監視やセキュリティパッチの適用、不具合(バグ)の修正、軽微な機能追加や仕様変更への対応などが含まれます。保守契約の相場としては、こうした内容を含めて月額11万円〜が一つの目安です。Laravelに固有の費用テーブルが定まっているわけではありませんが、PHP・Laravelは利用企業が多く保守を担えるエンジニアの母数が大きいため、希少言語に比べて保守単価が高騰しにくいという、運用コスト面でのメリットがあります。
もう一つ重要なのは、保守・運用費用を「ソフトウェアの保守費」と「インフラ・SaaSのランニングコスト」の2階建てで捉える視点です。前者は開発会社へ支払う人件費ベースの保守契約費であり、後者はAWSなどのクラウドサーバー代やメール配信・監視ツールといった外部サービスの利用料です。この2つは性質が異なり、最適化のアプローチも変わります。とくにLaravelはMITライセンスのオープンソースであり、フレームワーク自体のライセンス費用は完全に無料です。商用フレームワークや一部の業務パッケージのように、利用ユーザー数やサーバー台数に応じたライセンス料が毎年積み上がることがないため、ランニングコストの土台を低く抑えられるのが大きな強みです。本記事では、この2階建ての構造を踏まえ、それぞれのコストがどの程度かかり、どこを工夫すれば中長期で削減できるのかを、具体的な数値とともに順を追って解説していきます。
保守費とランニングコストの2階建て構造
Laravel開発のコストを正しく見積もるには、初期開発費用・年間保守費用・インフラランニングコストの3要素を分けて考えることが出発点になります。初期開発費用は要件定義から設計・実装・テスト・リリースまでの一括費用であり、いわば「作るためのコスト」です。これに対して年間保守費用は、前述のとおり初期開発費の15〜25%/年が目安で、リリース後にシステムを健全に保ち続けるための「守るためのコスト」にあたります。具体的には、PHPやLaravelのセキュリティアップデートへの追随、サーバーOSやミドルウェアのパッチ適用、ユーザーから報告される不具合の調査・修正、軽微な画面修正や項目追加といった日常的な改修が保守費に含まれます。そしてインフラランニングコストは、システムを動かし続けるための「動かすためのコスト」であり、サーバー・データベース・ストレージ・通信などのクラウド利用料が中心です。この3つを混同して「初期費用さえ払えば終わり」と考えてしまうと、運用開始後に想定外の出費が続いて予算が逼迫します。見積もりを比較する際は、初期費用の安さだけでなく、保守契約の範囲と月額、そして想定インフラ構成までを必ず確認し、数年単位の総保有コストで判断することが、後悔しないパートナー選定につながります。
Laravelが運用コストで有利な理由
Laravelは、保守・運用コストの観点で他の選択肢に比べていくつかの明確な優位性を持っています。第一に、前述のとおりMITライセンスのオープンソースであり、フレームワーク自体の利用は完全無料です。サーバー台数やユーザー数が増えてもライセンス費用が発生しないため、事業のスケールに伴ってコストが青天井に増えていく心配がありません。第二に、PHPおよびLaravelのエンジニア人口が国内外で非常に多く、保守を担える人材を確保しやすい点です。希少な言語やフレームワークで構築すると、担当エンジニアが退職・交代した際に後任が見つからず、保守単価が高騰したり、最悪の場合システムがブラックボックス化したりするリスクがあります。Laravelはコミュニティが活発で情報も豊富なため、こうした人材リスクを抑えられます。第三に、ドキュメントが充実しており学習しやすいため、軽微な改修であれば社内エンジニアでも対応しやすく、内製化によって外注保守費を圧縮できる余地が大きいことです。一方で注意すべきは、Laravelは活発に開発されているフレームワークであり、後述するように定期的なバージョンアップ対応を前提に運用設計しておく必要がある点です。この「無料・人材豊富・内製化しやすい」という強みと、「バージョンアップ前提」という特性の両面を理解することが、Laravelの保守・運用コストを正しく見積もる第一歩になります。
年間保守費用の内訳と相場

Laravel開発の年間保守費用は、初期開発費用の15〜25%程度/年が目安であり、保守契約の相場はサーバー管理・バグ修正・軽微な機能追加を含めて月額11万円〜が一般的です。ただし、この「15〜25%」という幅には理由があります。システムの規模や複雑さ、求められる稼働率(SLA)、対応のスピード、機能改修の頻度などによって、必要な保守の手厚さが変わるためです。たとえば、社内利用中心で多少の停止が許容されるシステムであれば保守は軽め(15%前後)で済みますが、24時間365日稼働が前提のBtoC向けサービスや、決済・個人情報を扱うシステムでは、監視体制やセキュリティ対応を手厚くする必要があり、保守費用は上限(25%前後)に近づきます。重要なのは、保守契約を結ぶ際に「何が含まれ、何が含まれないか」を契約書で明確にしておくことです。月額の保守費に含まれる作業範囲(監視・パッチ適用・障害対応・軽微改修の工数上限など)と、それを超える大きな機能追加が別途見積もりになる線引きを曖昧にしたまま契約すると、「これは保守の範囲外です」というトラブルにつながりやすくなります。
保守契約に含まれる作業範囲
月額11万円〜の保守契約に一般的に含まれる作業を具体的に見ていきましょう。まず中核となるのがサーバー・インフラの管理です。サーバーの稼働状況やリソース(CPU・メモリ・ディスク)の監視、ミドルウェア(Webサーバーやデータベース)のメンテナンス、定期的なバックアップの確認などが含まれます。次に重要なのがセキュリティ対応です。Laravelやその依存ライブラリ、PHP本体、OSに脆弱性が発見された際にセキュリティパッチを適用し、システムを安全な状態に保ちます。これは攻撃や情報漏えいを防ぐうえで欠かせない作業であり、保守の中でも優先度が高い領域です。三つ目がバグ修正で、リリース後に発覚した不具合や、利用者から報告された動作不良の調査・修正を行います。四つ目が軽微な機能追加・改修で、画面の文言変更、入力項目の追加、帳票フォーマットの微調整といった小さな改修が、契約で定めた工数の範囲内で対応されます。これらに加えて、月次の稼働レポート提出や、定例の打ち合わせを含む保守契約もあります。Laravelの場合、Eloquent ORMやマイグレーション機能によってデータベース構造の変更が追跡・管理しやすく、軽微な改修の影響範囲を把握しやすいため、こうした日常的な保守作業を比較的低リスクで進められるのも利点です。
保守費用を左右する要因
同じLaravelシステムでも、保守費用が初期開発費の15%で収まるケースと、25%近くまで膨らむケースがあります。その差を生む主な要因を理解しておくと、自社のシステムにどれくらいの保守予算が必要かを見通しやすくなります。第一の要因はシステムの規模と複雑さです。機能数が多く、外部システムとの連携が複雑なほど、保守時に確認・テストすべき範囲が広がり、工数が増えます。第二は求められる稼働率と対応スピードです。障害時に即時対応を求めるSLAや、夜間・休日も含む24時間監視を契約に含めると、その分の人件費が保守費に上乗せされます。第三はセキュリティ要件の高さで、個人情報や決済情報を扱うシステムでは、脆弱性診断や監査ログの管理など、より手厚い対応が必要になります。第四は技術的負債の蓄積度合いです。初期開発時にテストコードが整備されず、コードの品質が低い状態でリリースされたシステムは、改修のたびに思わぬ不具合が連鎖し、保守工数が膨らみがちです。逆に言えば、初期開発の段階でPHPUnitなどによる自動テストを整備し、Laravelの標準的な設計作法に沿ってコードを書いておけば、リリース後の保守コストを構造的に抑えられます。保守費用は「リリース後に決まる固定費」ではなく、「初期開発の品質に強く影響される変動費」だと捉えることが、トータルコストを抑える鍵になります。
インフラ・SaaSのランニングコスト

保守費用と並んで毎月かかり続けるのが、システムを動かすためのインフラ・SaaSのランニングコストです。Laravelで構築したWebアプリケーションは、AWS(Amazon Web Services)をはじめとするクラウド上で稼働させるのが一般的で、その月額費用はシステムの規模やアクセス数によって大きく変動します。目安としては、小規模システム(単一サーバー+データベースで運用するシンプルな構成)で月額1.5万〜3万円、中規模システム(負荷分散やマルチAZ構成のデータベースを採用する構成)で月額5万〜15万円、大規模システム(高トラフィックに対応する冗長構成)で月額15万〜50万円以上が相場です。この費用の中心を占めるのが、アプリケーションを動かすサーバー(コンピューティングリソース)と、データを保存するデータベースです。アクセス数が増えればサーバーを増強・増設する必要があり、データ量が増えればストレージ費用も上がります。重要なのは、Laravelフレームワーク自体はMITライセンスで完全無料のため、このインフラ費用に「ソフトウェアのライセンス料」が含まれない点です。純粋にクラウドリソースの使用量に応じた費用だけで運用でき、コストの見通しが立てやすいのが利点です。
規模別のサーバー・DB費用の目安
規模別にもう少し具体的にインフラ費用を見ていきましょう。小規模システムは、利用者が限られた社内ツールや、立ち上げ初期のサービスが該当します。アプリケーションサーバーとデータベースを1台ずつ、あるいは1台のサーバーに同居させるシンプルな構成で、月額1.5万〜3万円程度に収まります。スモールスタートに適しており、Laravelの軽量さもあって小さな構成でも十分に動作します。中規模システムは、ユーザー数が増え、安定稼働や可用性が求められる段階のサービスです。アプリケーションサーバーを複数台にしてロードバランサーで負荷分散し、データベースをマルチAZ(複数のデータセンターにまたがる冗長構成)にして障害に備える構成が典型で、月額5万〜15万円が目安になります。大規模システムは、高トラフィックを捌く必要があるBtoCサービスや基幹システムで、サーバーの自動スケーリング、読み取り専用のレプリカデータベース、キャッシュサーバー(RedisやMemcached)、CDN(コンテンツ配信網)などをフル活用する構成となり、月額15万〜50万円以上に達します。Laravelはキューやキャッシュ、セッション管理を外部のデータストアに逃がす仕組みが標準で整っているため、規模拡大に応じてスケールしやすく、構成の段階的な拡張がしやすいのも特徴です。事業の成長フェーズに合わせて、最初は小さく始め、必要になったタイミングで構成を拡張していくのが、インフラ費用を無駄なく使う基本戦略になります。
SaaS費用とライセンスの考え方
サーバー・データベース以外にも、Laravelアプリケーションの運用には付随的なSaaS(外部サービス)の費用がかかります。代表的なのがメール配信サービスです。会員登録時の認証メールやパスワードリセット、通知メールなどを安定して送信するために、SendGridやAmazon SESといったメール配信サービスを利用するのが一般的で、費用は送信量に応じて無料枠〜数万円程度です。Laravelは標準でこれらのメールサービスとの連携機能を備えており、設定だけで切り替えられるため導入がスムーズです。次にエラー監視・パフォーマンス監視ツールが挙げられます。本番環境で発生した例外(エラー)をリアルタイムに検知・通知するサービス(SentryやBugsnag、New Relicなど)を導入すると、障害の早期発見と原因特定が容易になり、結果的に保守の効率が上がります。これらは無料プランから始められるものも多いですが、本格運用では月額数千円〜数万円程度を見込んでおくとよいでしょう。そして繰り返しになりますが、Laravelフレームワーク自体はMITライセンスのオープンソースであり、ライセンス費用は完全に無料です。ここが商用パッケージとの大きな違いで、ユーザー数やトランザクション量が増えてもソフトウェアのライセンス料が積み上がることがありません。つまり、Laravelの運用コストの大半は「使った分だけ払う」クラウドリソースとSaaSの従量課金で構成され、固定的なライセンス負担がない分、コストを事業規模に連動させてコントロールしやすいのです。
Laravelのバージョンアップ(LTS/EOL)対応費用

Laravelの保守・運用を語るうえで、他のフレームワークとの違いとして特に重要なのがバージョンアップ対応です。Laravelは活発に開発が続けられているフレームワークで、約12ヶ月ごとにメジャーバージョンがリリースされます。この速いリリースサイクルは、最新のPHPの機能やセキュリティ強化、開発生産性の向上といった恩恵をいち早く受けられる反面、利用者側には「定期的にバージョンアップしていく」という運用負荷を生みます。各バージョンにはサポート期間が定められており、LTS(長期サポート)版はバグ修正が2年・セキュリティ修正が3年提供されるのに対し、通常版はセキュリティサポートが2年でEOL(End of Life、サポート終了)を迎えます。ここを理解せずに「一度作ったらそのまま使い続けられる」と考えていると、気づかないうちにサポートが切れたバージョンを使い続けることになり、脆弱性が放置される危険な状態に陥ります。つまりLaravel開発では、初期開発の段階から「バージョンアップを前提とした運用設計」をしておくことが、セキュリティと長期的なコストの両面で極めて重要になるのです。
LTSとEOLのサポート期間とリスク
Laravelのサポート期間を正しく把握しておくことは、バージョンアップ計画の前提となります。前述のとおり、Laravelは約12ヶ月ごとにメジャーリリースを行い、各メジャーバージョンには明確なサポート期限が設定されています。通常版ではバグ修正が一定期間、セキュリティ修正が2年間提供された後、EOL(サポート終了)を迎えます。LTS版が提供される場合は、バグ修正2年・セキュリティ修正3年とより長くサポートされますが、いずれにせよ無期限ではありません。EOLを迎えたバージョンは、新たに脆弱性が発見されても公式のセキュリティ修正が提供されなくなります。この状態で運用を続けることは、鍵のかからない金庫に重要なデータを保管するようなもので、外部からの攻撃や情報漏えいのリスクが時間とともに高まっていきます。とくに個人情報や決済情報を扱うシステムでは、サポート切れバージョンの放置はコンプライアンス上も看過できない問題です。だからこそ、Laravelシステムを運用する際は、現在利用しているバージョンのEOLがいつかを把握し、サポートが切れる前に計画的にバージョンアップを実施することが必須になります。これは「やってもやらなくてもよい改善」ではなく、セキュリティを維持するための「やらなければならない運用」だと位置づけるべきです。逆に、Laravelはアップグレードガイドが公式に整備され、互換性の変更点が明確に文書化されているため、計画的に取り組めばバージョンアップ自体は予測可能な作業として進められます。
メジャー・マイナーVUPの費用目安
バージョンアップ対応には、改修とテストの工数に応じた費用が発生します。目安としては、メジャーバージョンアップ(たとえばLaravel 10から11へ、といった大きな更新)で50万〜200万円、マイナーバージョンアップ(同一メジャー内の更新)で10万〜50万円程度を想定しておくとよいでしょう。この費用の幅は、システムの規模・複雑さ、利用している外部ライブラリの数、そして互換性の変更がアプリケーションのどこにどれだけ影響するかによって決まります。メジャーバージョンアップでは、フレームワークの仕様変更によって既存のコードを書き換える必要が生じたり、依存ライブラリ(パッケージ)も合わせて更新する必要が出たりするため、改修後に全体が正しく動くかを検証する回帰テストの工数が大きくなります。ここで効いてくるのが、初期開発時にPHPUnitなどで自動テストを整備しておくことです。テストコードが充実していれば、バージョンアップ後に「どこが壊れたか」を自動で素早く検出でき、検証工数を大幅に削減できます。逆にテストがないと、人手で全機能を確認することになり、その分の費用と時間がかさみます。また、毎年のメジャーリリースに律儀に追随するのか、それとも数バージョンごとにまとめて上げるのかという方針も、トータルの費用に影響します。一般には、こまめに小さく上げ続けるほうが一回あたりの変更差分が小さく、まとめて何世代も上げるよりも安全かつ低コストになる傾向があります。いずれにせよ、バージョンアップ費用は「いつか必ず発生する運用コスト」として、保守予算とは別枠で年間計画に織り込んでおくことが、突発的な出費を避けるうえで重要です。
保守・運用コストの最適化策

ここまで見てきた保守費用・インフラ費用・バージョンアップ費用は、いずれも工夫次第で中長期的に圧縮できます。重要なのは、運用が始まってから場当たり的にコスト削減を試みるのではなく、初期開発の段階から「運用コストを抑える前提」で設計・体制づくりをしておくことです。Laravelは、オープンソースで無料・人材が豊富・ドキュメントが充実しているという特性から、コスト最適化に取り組みやすいフレームワークです。ここでは、Laravelの強みを活かした実践的なコスト最適化策を、インフラ・設計・体制の3つの観点から紹介します。これらを組み合わせることで、初期費用だけでなく数年単位の総保有コストを着実に下げることができます。
クラウド活用と拡張性の高い設計
インフラランニングコストを最適化する第一の鍵は、スケーラブルなクラウド(AWSなど)の特性を活かし、アクセス数に応じてリソースを柔軟に調整することです。クラウドは使った分だけ課金される従量課金が基本のため、常時ピークに合わせた過剰なサーバーを確保しておくと無駄なコストが発生します。そこで、オートスケーリング(負荷に応じてサーバー台数を自動増減する仕組み)を導入し、アクセスが多い時間帯だけリソースを増やし、少ない時間帯は縮小することで、サーバー代の無駄を削減できます。あわせて、継続利用が見込めるリソースについては、AWSのリザーブドインスタンスやSavings Plansといった長期利用割引を活用することで、オンデマンド料金より大幅にコストを下げられます。第二の鍵は、初期段階から保守・運用を見据えた拡張性の高い設計にしておくことです。将来の機能追加やトラフィック増加を見越して、処理を適切に分割し、キャッシュやキューを活用できる構成にしておけば、後から大規模な作り直しをせずに機能を拡張でき、改修コストを抑えられます。Laravelはキャッシュ・キュー・セッションを外部ストアに逃がす仕組みや、サービス層を分離する設計パターンが標準的に整っているため、こうした拡張性の高い設計を実現しやすいフレームワークです。「最初に少し丁寧に設計しておく」ことが、結果的に数年分の改修コストとインフラコストの両方を引き下げる、最も費用対効果の高い投資になります。
内製化とコミュニティ活用による削減
保守費用を抑えるうえで特に効果が大きいのが、Laravelの「学習しやすさ」と「コミュニティの豊富さ」を活かした内製化の推進です。Laravelは公式ドキュメントが非常に充実しており、日本語の解説記事やコミュニティの情報も豊富なため、社内のエンジニアが学習して保守を担えるようになるハードルが、希少な技術に比べて格段に低くなっています。すべての保守を外部の開発会社に委託すると月額の保守費が固定的に発生し続けますが、文言修正や項目追加といった軽微な改修を社内で対応できる体制を整えれば、外注保守費を圧縮できます。すべてを内製化する必要はなく、「日常的な軽微改修は社内、大きな機能追加やバージョンアップは外部の専門会社」といった役割分担にするだけでも、トータルの運用コストは下がります。さらに、PHP・Laravelはエンジニア人口が多いため、採用や育成がしやすく、担当者が交代しても後任を確保しやすいという人材リスクの低さも、長期的なコスト安定に寄与します。また、Laravelには認証や管理画面、決済連携など、よく使われる機能を提供するオープンソースのパッケージが豊富に公開されています。これらのコミュニティ資産を活用すれば、ゼロから自前で作り込む必要がなく、開発・保守の工数を削減できます。このように、Laravelの「無料・人材豊富・情報豊富」というオープンソースならではの強みを、内製化とコミュニティ活用という形で運用に取り込むことが、中長期のコスト削減に直結します。あわせて、こまめなバージョンアップで技術的負債を溜めない運用を続けることが、結果的に保守・改修コストを低く保つ最良の方法になります。
まとめ

本記事では、Laravel開発の保守・運用費用・ランニングコストについて、年間保守費用の相場と内訳、インフラ・SaaSの月額コスト、LTS/EOLに伴うバージョンアップ対応費用、そして中長期のコスト最適化策までを体系的に解説しました。年間保守費用は初期開発費の15〜25%/年が目安で、サーバー管理・バグ修正・軽微な機能追加を含む保守契約は月額11万円〜が相場です。インフラのランニングコストはAWS等のクラウドで、小規模で月額1.5万〜3万円、中規模で月額5万〜15万円、大規模で月額15万〜50万円以上が目安であり、メール配信(SendGrid等、無料〜数万円)やエラー監視ツールが別途必要になる一方、LaravelはMITライセンスのオープンソースでフレームワーク自体は完全無料という強みがあります。加えて、Laravelは約12ヶ月ごとにメジャーリリースされ、LTSはバグ修正2年・セキュリティ修正3年、通常版はセキュリティサポート2年でEOLを迎えるため、EOL放置による脆弱性リスクを避ける計画的なバージョンアップ(メジャーVUP 50万〜200万円、マイナーVUP 10万〜50万円)が欠かせません。コストを抑える鍵は、クラウドのオートスケーリングと拡張性の高い設計、そしてLaravelのドキュメントの豊富さと人材の多さを活かした内製化・コミュニティ活用にあります。これらを初期開発の段階から織り込むことで、初期費用だけでなく数年単位の総保有コストを着実に下げられます。具体的な保守・運用の予算策定は、想定する利用規模と稼働要件を整理したうえで、複数の開発会社に保守契約の範囲と月額・インフラ構成まで含めた見積もりを取ることから始めることをお勧めします。
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・Laravel開発の完全ガイド
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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
