Laravel開発のPoC・プロトタイプ・モックアップ開発について

Laravel(ララベル)は、PHPで最も広く使われているWebアプリケーションフレームワークであり、Artisanによる雛形自動生成、Eloquent ORM、標準の認証機構、Composerで導入できる豊富なパッケージ群といった「すでに用意された部品」を組み合わせて、短期間でアプリケーションを立ち上げられる点に大きな強みがあります。新しい事業アイデアや社内業務の改善構想を形にしようとするとき、いきなり本番システムをフルスクラッチで作り始めるのは、費用面でもリスク面でも得策ではありません。そこで重要になるのが、PoC(概念実証)・プロトタイプ・モックアップといった「小さく作って早く検証する」アプローチです。これらは似た言葉として混同されがちですが、目的・期間・費用・関与者がそれぞれ異なり、選択を誤ると「見た目だけ確認したかったのに技術検証まで請求された」「逆に事業性を確かめたかったのに画面イメージで終わってしまった」といったミスマッチが起こります。

本記事では、Laravel開発におけるPoC・プロトタイプ・モックアップの違いと全体像から始め、Laravel/PHPならではのプロトタイピング高速化手法、費用相場と期間の目安、PoCの成否を分けるGo/No-Go判断基準、そしてよくある失敗と回避策・検証フェーズの進め方までを、具体的な数値とともに体系的に解説します。これから新規プロダクトや業務システムの検証を外部に依頼しようとしている担当者の方はもちろん、社内で「まず小さく試したい」と考えている方にとっても、どの手法をどの予算で選べばよいかの判断軸が身に付く内容です。最後までお読みいただくことで、無駄な投資を避けつつ、確度の高い意思決定にたどり着くための進め方を押さえられるはずです。

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PoC・プロトタイプ・モックアップの違いと全体像

PoC・プロトタイプ・モックアップの違いと全体像

新しいシステムやサービスを検討する際、「まずは小さく作って試したい」というニーズに応えるのが、モックアップ・プロトタイプ・PoC(Proof of Concept=概念実証)という3つの手法です。これらは「本番開発の前段階で検証を行う」という点では共通していますが、検証する対象がまったく異なります。ごく単純化すると、モックアップは「見た目」を、プロトタイプは「操作感や技術」を、PoCは「事業として・技術として成り立つか」を検証するための手法です。Laravelはこのいずれの段階でも力を発揮しますが、特にバックエンドのロジックや業務フローを伴うプロトタイプ・PoCで、その雛形自動生成や豊富なパッケージの強みが効いてきます。まずはこの3つの違いを正しく理解し、自社が今どの段階の検証を必要としているのかを見極めることが、無駄な投資を避ける第一歩になります。

下表は、3つの手法の期間・費用相場・関与者・目的を一覧で整理したものです。数字はあくまで一般的な目安であり、検証する範囲や要件の複雑さによって変動しますが、それぞれの位置づけの違いを把握するうえで役立ちます。モックアップからプロトタイプ、PoCへと進むにつれて、検証する内容が「画面」から「動作」、さらに「事業・技術の成立性」へと深まり、それに伴って期間も費用も大きくなっていく点を押さえておきましょう。

項目モックアッププロトタイプPoC(概念実証)
期間1〜2週間1〜3週間数日〜2週間(最長3ヶ月)
費用相場約30〜40万円約70〜90万円小50〜100万 / 中100〜300万 / 大300万〜
関与者開発・デザイナー・関係者技術者・経営判断者技術者・経営判断者
目的見た目・画面の合意操作感・技術の検証事業的・技術的成立性の実証

モックアップとプロトタイプの違い

モックアップは、完成イメージを「見た目」として固めるための静的な画面デザインです。実際に動作はしませんが、レイアウト・配色・ボタンの配置・画面遷移の流れなどを具体的に可視化することで、依頼者・開発者・デザイナー・関係者の間で「最終的にどんな画面になるのか」の合意を取りやすくなります。期間は1〜2週間、費用相場は約30〜40万円が目安で、デザインツールや簡易なHTML/Bladeテンプレートで作られることが多く、関与するのは主に開発者・デザイナーと社内の関係者です。目的が「見た目・画面の合意」に絞られているため、機能の作り込みは行いません。これに対してプロトタイプは、実際に「操作できる」試作品を指します。ボタンを押すと画面が切り替わる、フォームに入力すると次のステップに進むといった操作感を確かめられるのが特徴で、ユーザーが直感的に使えるか、想定した業務フローが破綻しないか、技術的に実現できるかといった点を検証します。期間は1〜3週間、費用相場は約70〜90万円が目安で、技術者に加えて経営判断者が関与し、操作性や技術の妥当性を評価します。モックアップが「絵」だとすれば、プロトタイプは「触れる試作機」であり、検証の深さが一段上がる点が両者の決定的な違いです。

PoC(概念実証)が検証するもの

PoC(Proof of Concept=概念実証)は、3つの手法の中で最も検証の射程が広く、「このアイデアは事業として・技術として本当に成り立つのか」を実証するための取り組みです。モックアップやプロトタイプが主に画面や操作感に焦点を当てるのに対し、PoCでは「想定した効果が実際に得られるのか」「技術的に実現可能なのか」「投資に見合うリターンがあるのか」といった、より本質的な問いに答えを出します。期間は数日から2週間が中心ですが、検証内容が複雑な場合は最長3ヶ月程度に及ぶこともあります。費用相場は検証規模によって幅が大きく、小規模で50〜100万円、中規模で100〜300万円、大規模になると300万円以上が目安です。関与者は技術者と経営判断者で、技術検証の結果を踏まえて「本開発に進むか/撤退するか」という重要な意思決定を行います。ここで重要なのは、PoCは「作ること」自体が目的ではなく、「次の意思決定の材料を得ること」が目的だという点です。したがって、PoCに着手する前に「何が確認できれば成功とみなすのか」という評価基準を定めておくことが、後述するGo/No-Go判断を機能させる前提になります。Laravelは、SQLiteによる即席のデータ検証や、管理画面パッケージによる業務UIの素早い構築など、PoCに必要な最小限の動作環境を短期間で用意できるため、技術検証のスピードを大きく高められます。

Laravel/PHPでプロトタイピングを高速化する手法

Laravel/PHPでプロトタイピングを高速化する手法

PoCやプロトタイプの価値は「いかに早く・安く検証できるか」にあります。検証に何ヶ月もかかってしまっては、それはもはや小さな試作ではなく本開発に近づいてしまい、撤退の判断も鈍ります。この「速く作る」という点において、LaravelはPHPフレームワークの中でも際立った武器を備えています。Artisanコマンドによる雛形の自動生成、コマンド一つで構築できる認証基盤、BladeとTailwind CSSによる素早い画面構築、そして業務システムの肝である管理画面を自動生成できるパッケージ群など、検証フェーズで最も工数のかかる部分を「すでに用意された部品」で賄えるのです。ここでは、Laravel/PHPでプロトタイピングを高速化する具体的な手法を整理します。これらの仕組みを使いこなせるかどうかが、検証スピードとコストを大きく左右するLaravel最大の差別化軸になります。

Artisanの雛形自動生成と認証スキャフォールド

Laravelのプロトタイピングを語るうえで欠かせないのが、Artisan(アルチザン)と呼ばれるコマンドラインツールによる雛形の自動生成です。たとえば php artisan make:model -a というコマンドを実行するだけで、データを表現するモデル、データベースの構造を定義するマイグレーション、処理を司るコントローラ、テストデータを生成するファクトリなどを一括で生成できます。これにより、データの作成・参照・更新・削除(CRUD)を担う基盤が即座に整い、本来であれば手作業で何時間もかけて書くはずのコードを一瞬で用意できます。検証フェーズでは「とにかく動くものを早く作る」ことが重要なため、この雛形生成は絶大な効果を発揮します。さらに大きいのが認証スキャフォールドの存在です。Laravel Breeze(ブリーズ)やJetstream(ジェットストリーム)といった公式パッケージを導入すれば、ログイン・ユーザー登録・パスワードリセット・メール認証といった、どんなアプリケーションでも必要になる認証まわりの機能を、コマンド一つで数分のうちに構築できます。認証機能は自前で実装するとセキュリティ面の考慮も含めて意外に工数がかかる部分ですが、Laravelではこれが「最初から用意されている」ため、検証本来の目的である業務ロジックや事業価値の確認にリソースを集中できます。これらの自動生成の仕組みこそ、Laravelが「速く試せる」フレームワークと呼ばれる理由の中核です。

管理画面パッケージ・Blade・SQLiteの活用

業務システムのプロトタイプで最も工数がかかるのが、管理画面やダッシュボードの構築です。ここでLaravelが圧倒的な強みを見せるのが、Filament(フィラメント)・Nova(ノヴァ)・Voyager(ボヤージャー)といった強力な管理画面パッケージの存在です。これらを導入すると、データの一覧表示・検索・編集・登録といった管理機能を持つ画面を、ほぼ設定だけで自動生成できます。中でもFilamentはモダンで高機能であり、BtoB(企業間取引)向けの業務システムのプロトタイプであれば、そのバックエンドUIを数日で完成させられるほどの生産性を発揮します。本来なら数週間かかる管理画面の作り込みを数日に短縮できるため、検証フェーズの期間とコストを大幅に圧縮できます。フロント側の画面モックには、Laravel標準のテンプレートエンジンであるBlade(ブレード)と、Tailwind CSS(テイルウィンド)を組み合わせるのが定番です。Bladeは記述がシンプルで、Tailwindのユーティリティクラスを使えばデザインの当て込みも素早く行えるため、プロトタイプの画面を短時間で組み上げられます。そしてデータベースには、SQLite(エスキューライト)の活用が有効です。通常のデータベースサーバーを立ち上げる代わりに、環境変数でファイルベースのSQLiteを指定するだけで、すぐにデータの保存・検証を始められます。サーバー構築の手間が一切不要なため、PoCの立ち上がりを最短化できます。雛形自動生成・認証スキャフォールド・管理画面パッケージ・Blade+Tailwind・SQLiteという部品群を組み合わせることで、Laravelは検証フェーズに必要な機能を驚くほど短期間で揃えられるのです。

費用相場と期間の目安

費用相場と期間の目安

検証手法を選ぶうえで、費用相場と期間の目安を把握しておくことは欠かせません。前述のとおり、モックアップは1〜2週間・約30〜40万円、プロトタイプは1〜3週間・約70〜90万円が目安です。PoCは検証規模によって幅が大きく、期間は数日から2週間(複雑な場合は最長3ヶ月)、費用は小規模で50〜100万円、中規模で100〜300万円、大規模で300万円以上が相場です。これらの数字を頭に入れておくと、ベンダーから提示された見積もりが妥当な範囲にあるか、あるいは検証の射程に対して過剰/過小ではないかを判断しやすくなります。重要なのは、検証フェーズの予算は「本番開発への投資判断を誤らないための保険」だと捉えることです。数十万円〜数百万円の検証を惜しんで、いきなり数千万円規模の本開発に突入し、後から「そもそも需要がなかった」と判明する事態こそ、最も避けるべき失敗です。次に、近年の費用構造を大きく変えつつある生成AIの活用についても触れておきます。

手法別・規模別の費用と期間

あらためて手法別に費用と期間を整理しましょう。まずモックアップは、見た目の合意を取るための静的な画面デザインであり、1〜2週間・約30〜40万円が目安です。検証する内容が画面に限定されるため、3つの手法の中で最も短期間・低コストで実施できます。次にプロトタイプは、実際に操作できる試作品を作るため、1〜3週間・約70〜90万円が相場になります。操作感や技術的な実現性まで踏み込むぶん、モックアップより工数が増えます。そしてPoCは、検証する事業・技術の成立性の難易度によって費用が大きく変わります。小規模な検証(特定機能が技術的に動くかの確認など)であれば50〜100万円、中規模(業務フロー全体を通した効果検証など)で100〜300万円、大規模(複数システム連携や大量データを伴う検証など)になると300万円以上を見込む必要があります。期間も、シンプルなものは数日〜2週間で終わりますが、検証対象が複雑で業務サイクルを通した観察が必要な場合は最長3ヶ月程度かかることもあります。これらの数字はあくまで一般的な目安であり、実際の費用は検証範囲の絞り込み方によって大きく変動します。逆に言えば、検証範囲を適切に絞れば、相場の下限に近いコストで必要な答えを得ることも十分可能です。見積もりを比較する際は、金額の多寡だけでなく「何をどこまで検証する前提の金額なのか」を必ず確認することが重要です。

生成AI活用による費用圧縮の可能性

近年、検証フェーズの費用構造を大きく変えつつあるのが生成AIの活用です。特にフロントエンドのUI生成にv0(ヴィーゼロ)のようなツールを使うと、画面デザインやコンポーネントの初期実装を自動生成でき、手作業の工数を大幅に削減できます。こうした生成AIツールを組み合わせることで、検証フェーズ全体の費用を50〜75%削減し、従来のベンダー見積もりの30〜50%程度、金額にして30万〜150万円程度に抑えられる例も出てきています。Laravelのバックエンド側では、前述のArtisan雛形生成や管理画面パッケージによる自動化がもともと効いているため、ここに生成AIによるフロント生成を掛け合わせると、検証フェーズのコストはさらに圧縮されます。ただし注意したいのは、生成AIで安く速く作れるのはあくまで「検証用の試作」であって、本番運用に耐える品質・セキュリティ・保守性を備えたシステムとは別物だという点です。生成されたコードをそのまま本番に流用しようとすると、かえって技術的負債を抱えるリスクがあります。生成AIは「検証の速度と費用を改善する手段」として活用し、検証で得た知見をもとに本開発では改めて適切な設計で作り込む、という使い分けが現実的です。費用を抑えること自体が目的化しないよう、「何を確かめるための検証か」という本来の目的を見失わないことが大切です。

PoCのGo/No-Go判断基準

PoCのGo/No-Go判断基準

PoCを実施したものの、「なんとなく良さそうだった」「現場の反応は悪くなかった」といった曖昧な印象だけで本開発に進んでしまうのは、最も危険なパターンです。PoCの本来の目的は、次の意思決定の材料を得ることにあります。そのためには、検証を始める前に「どの数値がどの水準に達したらGo(本開発へ進む)とするのか、達しなければNo-Go(撤退・見送り)とするのか」という判断基準を、定量的に定めておく必要があります。ここで有効なのが、価値・運用・経済という3つのレイヤーで成立性を評価するフレームワークです。それぞれのレイヤーに明確な合格ラインを設定し、その達成状況に応じて「Go/再設計/No-Go」を機械的に判定できるようにしておくことで、関係者の主観や声の大きさに左右されない、客観的な意思決定が可能になります。以下では、3つのレイヤーの具体的な基準と、それらを組み合わせたゲート判定の考え方を解説します。

価値・運用・経済の3レイヤー評価

Go/No-Go判断は、価値・運用・経済という3つのレイヤーで評価すると、検証結果を多面的かつ定量的に捉えられます。第一の価値レイヤーは、「そのシステムがユーザーや業務にどれだけの価値をもたらすか」を測る軸です。具体的な合格ラインとしては、作業時間が30%以上削減される、業務上のエラーが10%以上削減される、利用者の推奨度を示すNPS(ネット・プロモーター・スコア)が+20以上になる、といった水準が目安になります。これらが満たされていれば、システムが本質的な価値を生んでいると判断できます。第二の運用レイヤーは、「実際の業務の中で継続的に使われ続けるか」を測る軸です。利用率70%以上、導入から4週間後の継続率60%以上、エラー発生率5%以下、そして既存の運用フローに無理なく適合すること、といった基準で評価します。どれほど価値が高くても、現場で使われ続けなければ意味がないため、この運用面の検証は欠かせません。第三の経済レイヤーは、「投資に見合う経済的リターンがあるか」を測る軸です。ROI(投資利益率)が年率20%以上、初期投資を回収するペイバック期間が18ヶ月以下、といった水準が目安になります。価値・運用・経済の3つを揃って評価することで、「使われるが儲からない」「効果はあるが定着しない」といった片寄った判断を避け、バランスの取れた意思決定ができます。

ゲート判定でGo/再設計/No-Goを分ける

3つのレイヤーの評価結果を、最終的にどう意思決定へ結びつけるかを決めるのがゲート判定です。考え方はシンプルで、価値・運用・経済のすべてのレイヤーが合格ラインを満たしていれば「Go」、すなわち本開発へ進む判断を下します。一方、価値と運用は満たしているものの経済レイヤーだけが未達の場合は、即座にNo-Goとするのではなく「再設計」と位置づけます。これは、価値も定着も確認できているのだから、コスト構造や課金モデル、適用範囲を見直せば経済性を改善できる余地があるためです。スコープを絞ったり、開発・運用コストを下げたりすることで、Goに転じられる可能性が残されています。これに対して、最も根本的な価値レイヤーが未達の場合は「No-Go」、つまり撤退・見送りの判断を下します。価値そのものが生まれていないということは、運用や経済をいくら調整しても本質的な解決にはならないからです。このように「全合格=Go/経済のみ未達=再設計/価値未達=No-Go」という明確なルールをあらかじめ合意しておけば、検証後の意思決定が紛糾せず、感情論や担当者の思い入れに引きずられることもなくなります。重要なのは、この判定ルールをPoC着手前に関係者全員で合意しておくことです。検証結果が出てから基準を作ろうとすると、都合の良い解釈が入り込み、本来撤退すべき案件をずるずると延命させる「終わらないPoC」の温床になります。

よくある失敗と回避策・検証フェーズの進め方

よくある失敗と回避策・検証フェーズの進め方

PoC・プロトタイプ・モックアップは「小さく試す」ための手法ですが、進め方を誤ると、かえって時間とコストを浪費する結果に陥ります。検証フェーズには典型的な失敗パターンが存在し、それらは事前に知っておけば十分に回避できるものです。ここでは、検証フェーズでよく見られる3つの失敗とその回避策を整理したうえで、検証を成功に導くための具体的な進め方とコスト配分の考え方を解説します。Laravelの高速プロトタイピングという技術的な武器を持っていても、検証の「進め方」を誤れば、その強みは活きません。技術と進め方の両輪を押さえることが、確度の高い意思決定への近道です。

3つの典型的な失敗と回避策

検証フェーズでよく見られる失敗の第一は、検証範囲が膨らんでフルスペック化してしまうことです。「せっかく作るならあの機能も、この機能も」と欲張った結果、検証用の試作のはずが実質的なミニ本開発になってしまい、期間も費用も当初想定を大きく超えてしまうパターンです。回避策は、MoSCoW(モスクワ)法を使って機能を「Must(必須)/Should(推奨)/Could(任意)/Won’t(今回はやらない)」に分類し、検証に本当に必要なMustだけに絞ることです。検証の目的に照らして「これがなければ答えが出ない」機能だけを残せば、試作は適切な規模に収まります。第二の失敗は、成功・撤退の基準がないまま始めてしまい、結論が宙に浮く「終わらないPoC」です。明確なゴールがないため、いつまでも検証が続き、撤退すべき案件もずるずると延命してしまいます。回避策は、1ページの計画書に定量的なKPI(重要業績評価指標)と撤退基準、そしてプランB(代替案)を明記し、関係者で事前に合意しておくことです。前述のGo/No-Go判断基準を、この計画書に落とし込んでおくとよいでしょう。第三の失敗は、現場の巻き込み不足とセキュリティの軽視です。検証を技術者だけで進め、実際に使う現場の声を後回しにすると、「現場の業務に合わない」ものができあがり、定着しません。また、権限管理や監査ログといったガバナンス面を軽視すると、本開発に進む段階で大きな手戻りが生じます。回避策は、初日から現場の担当者を検証に参加させ、権限・監査ログなどのガバナンス要件については、法務・セキュリティ部門と事前に合意しておくことです。これら3つの失敗は、いずれも「始める前の準備」で防げるものばかりです。

検証フェーズの進め方とコスト配分

検証を成功に導くには、段階を踏んだ進め方が有効です。標準的な流れは、(1)課題深掘り・仮説構築(1〜2週間)、(2)設計・機能絞り込み(1〜2週間)、(3)実装(約3〜5週間、ここでLaravelのパッケージ活用が効く)、(4)テスト・検証(業務サイクルの2倍以上の期間をかけて実利用で確かめる)、(5)評価・ロードマップ策定(1〜2週間)の5ステップです。とくに見落とされがちなのが、(4)のテスト・検証に「業務サイクルの2倍以上」の期間を確保することです。たとえば週次で回る業務であれば、最低2週間以上は実際に使ってもらい、一時的な物珍しさではなく定着するかどうかを見極める必要があります。次に、コスト配分の考え方を、2ヶ月・200万円規模の業務システムMVP(実用最小限の製品)を例に見てみましょう。配分の目安は、要件定義・設計(プロジェクトマネジメント込み)が全体の20〜25%(40〜50万円)、UI/UXが15〜20%(30〜40万円)、バックエンド(Laravelによる実装)が30〜35%(60〜70万円)、フロントエンドが20〜25%(40〜50万円)、インフラ・テストが10〜15%(20〜30万円)です。バックエンドが最も大きな比重を占めますが、Laravelの雛形自動生成や管理画面パッケージを活用すれば、この部分の工数を抑えつつ品質を確保できるため、限られた予算の中で検証の本質に集中できます。注意したいのは、要件定義・設計とテストの配分を削りすぎないことです。これらを圧縮すると、目的の曖昧な検証や、定着確認の甘い検証になり、結局「やってみたが判断できない」という最悪の結果を招きます。段階を踏んだ進め方と適切なコスト配分こそが、検証フェーズへの投資を確かな意思決定に変える鍵になります。

まとめ

Laravel開発のPoC・プロトタイプ・モックアップ開発まとめ

本記事では、Laravel開発におけるPoC・プロトタイプ・モックアップについて、3つの手法の違いと全体像、Laravel/PHPによるプロトタイピング高速化手法、費用相場と期間の目安、PoCのGo/No-Go判断基準、よくある失敗と回避策・検証フェーズの進め方までを体系的に解説しました。まず押さえるべきは、モックアップ(1〜2週間・約30〜40万円)は「見た目」を、プロトタイプ(1〜3週間・約70〜90万円)は「操作感・技術」を、PoC(数日〜2週間、最長3ヶ月・小50〜100万/中100〜300万/大300万円〜)は「事業的・技術的な成立性」を検証する手法であり、自社が今どの段階の検証を必要としているかを見極めることが出発点になるという点です。Laravelは、Artisanによる雛形自動生成、Laravel Breeze/Jetstreamの認証スキャフォールド、Filamentをはじめとする管理画面パッケージ、Blade+Tailwindの画面モック、SQLiteによる即席DB検証といった部品群により、検証フェーズに必要な機能を短期間で揃えられる点が最大の差別化軸です。生成AIをフロント生成に組み合わせれば、ベンダー見積もりの30〜50%(30万〜150万円程度)まで費用を圧縮できる例も生まれています。そして検証の成否を分けるのは、価値・運用・経済の3レイヤーで定量的にGo/No-Goを判断する仕組みと、フルスペック化・終わらないPoC・現場巻き込み不足という3つの失敗を回避する準備、さらに段階を踏んだ進め方と適切なコスト配分です。数十万円〜数百万円の検証投資を惜しまず、確度の高い意思決定の材料を得てから本開発に進むことが、Laravel開発を成功させる賢い進め方です。具体的な検証の進め方は、Laravelの実績が豊富な開発会社に要件概要を提示し、検証範囲と費用感を相談することから始めることをお勧めします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。