SaaSアプリのフルスクラッチ開発は、要件定義から設計、実装、テストまでを一から行う方式です。事業に合わせて設計できる一方、初期費用と期間が最も大きくなります。
独自の課金や厳格なマルチテナント要件があり、自社の資産として育てたい企業に向く方式です。全体像はSaaSアプリ開発の完全ガイドもご覧ください。
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SaaSアプリのフルスクラッチ開発の概要

自社のビジネスモデルに合わせて設計でき、既製品の制約を受けずに済むのが、この方式の出発点です。要件定義から設計、実装、テストまでを一から行うため、こうした自由度が生まれます。また、競争力を左右するマルチテナント基盤や独自課金、コア機能を作り込めます。ただし、ログインや権限管理まで全部を自作するわけではなく、テンプレートやBaaS、課金基盤も組み合わせます。
方式の定義と、パッケージSaaSやノーコードとの違いを先に押さえると、自社に合う方法を選びやすくなります。
フルスクラッチ・オーダーメイドの定義
SaaSでフルスクラッチを選ぶ意味は、既製品では決まっている基盤や料金の仕組みまで、自社の事業に合わせて設計できる点にあります。
- 定義:既製品に頼らず、機能や画面、データ構造、連携まで要望に合わせて一から開発する方式です。
- マルチテナント基盤:データ分離、リソース配分、設定や機能制限を自由に設計できる点です。
- 課金体系:月額・年額・従量・段階・席数課金を、事業モデルに合わせて組み合わせられます。
規模別に見ると、標準的なSaaS業務システムの中規模開発は4〜8か月、700万〜1,500万円、13〜18人月程度です。一方、複雑なエンタープライズ向けでは2,000万〜5,000万円以上かかります。
何でも作れる自由には、それに見合う費用と期間が伴います。そのため、自由度と投資規模は合わせて見ておく必要があります。
パッケージSaaS/ノーコードとの違い
開発方法を選ぶときは、費用や立ち上げ速度とあわせて、独自要件をどこまで実現できるかで比べます。
- パッケージSaaS:初期費用を抑え、短期間で始められます。
- ノーコード:Bubbleなどを使って、100万〜300万円、1〜3か月でMVPを作れます。
- フルスクラッチ:独自要件に合わせて設計でき、システムを自社の資産として持てます。
パッケージSaaSは提供機能の範囲に限られるため、独自課金や厳格なマルチテナント要件に対応しきれない場合があります。ノーコードも、規模が大きくなるとライセンス費が高額になり、特殊要件に制約があります。
フルスクラッチは初期費用と期間が最も大きい一方で、業務やビジネスモデルに合わせた独自機能により差別化できます。さらに、システムを自社資産として保有できる点も特徴です。
各方式は適材適所で選ぶものです。たとえば、初期はノーコードで市場を検証し、方向性が定まってからフルスクラッチへ移る段階的な進め方もあります。最適な手法は、事業の段階と優先事項によって変わります。
フルスクラッチのメリット

フルスクラッチなら、競争力の根幹を自由に設計し、自社の資産として育てられます。主な利点は、独自のテナント設計と課金、IP資産化と拡張性です。
マルチテナント設計と独自課金体系の自由度
顧客の機密性やコスト効率に応じて、テナントごとのデータ分離方式を選べます。また、課金も事業モデルに沿って組み立てられ、収益構造を柔軟に設計できます。
- データ分離:専用データベースか、共有DBでの行単位の識別かを選べます。
- 料金体系:月額・年額・従量・席数・機能別などを設定できます。
- 独自課金:業界特有の単位を含め、事業に合う料金を実装できます。
たとえば、機密性の高い業界ではテナントごとにDBを分離し、一般向けでは共有DBを行レベルで識別する設計も可能です。顧客セグメントごとに使い分けられます。
パッケージやノーコードでは、テナント管理や課金が既存の枠組みに制限されます。一方、フルスクラッチなら、想定テナント数とセキュリティ要件に応じて方式を選べます。
課金体系の自由度も際立ちます。月額・年額の固定課金に加えて、利用量やユーザー数、機能ごとのアドオンに応じた課金も実装できます。
業界特有の課金単位も含めて、ビジネスモデルが求める料金体系を設計できます。料金は収益構造そのものなので、料金を変えられる自由が競争優位につながります。
特に、パッケージの課金機能に縛られず、「こう課金したい」という要望を実現できる点が、この方式を選ぶ動機になります。独自性の高いSaaSを目指す企業にとって、有力な手法です。
事業のIP資産化と拡張性
自社開発のシステムは、ソースコードを含めて自社の知的財産(IP)として保有できます。そのため、事業のコア競争力を手元に置けます。
一方、パッケージSaaSやノーコードでは、中核が外部サービスに依存し、自社が持つのは設定やデータにとどまります。
- 資金調達やM&A:技術資産として評価される基盤になります。
- 規模の拡大:テナント数に応じて、構成を段階的に強化できます。
- 機能の拡張:自社の設計に沿って、追加開発できます。
パッケージやノーコードは、規模の拡大時に制約が生じ、作り直しになる場合があります。ただし、フルスクラッチでも成長を見越した設計が必要で、初めから備えておけば、事業成長の妨げになる事態を避けやすくなります。
大規模なトラフィックや機能拡張を予定し、SaaSを長期的に事業の柱へ育てるなら、資産化と拡張性は投資に見合う価値につながります。
フルスクラッチのデメリットと注意点

自由度と資産性には、初期投資や継続的な運用負担が伴います。そのため、事業計画には開発費だけでなく、保守やインフラを含むTCO(総所有コスト)も見込んでおく必要があります。
負担を把握しないまま進めると、予算超過や開発の頓挫を招くおそれがあります。そこで、費用と運用の両面を事前に理解しておくことが大切です。
高額コストと長期開発
全工程を一から進めるため、エンジニアの人件費が積み上がります。また、費用と期間は規模や要件によって異なります。
高額な費用と長い開発期間は、フルスクラッチの大きなデメリットです。
- 中規模の標準的な業務システム:4〜8か月、700万〜1,500万円、13〜18人月程度です。
- 複雑なエンタープライズ向け:2,000万〜5,000万円以上です。
- ノーコード:100万〜300万円、1〜3か月で立ち上げられます。
マルチテナント設計やテナント間のデータ分離テストにも、時間と費用がかかります。特に、データが混ざらないかを調べるセキュリティテストは欠かせません。
テストを軽視すると、リリース後にデータ漏洩という重大な障害を招きます。さらに、開発中に市場へ出せない期間は、収益を得られない機会損失にもつながります。
発注側は、選ぶ前に初期投資と開発期間に耐えられる資金力があるかを確認します。あわせて、フルスクラッチでしか実現できない要件かどうかも慎重に見極めます。
安易に選ぶと、市場投入の遅れと予算超過を招きます。だからこそ、必要性を吟味し、事業計画に無理がないかを確かめてください。
継続的な保守・運用負担とTCO
SaaSは、リリース後も改修や障害対応が続きます。そのため、エンジニアとの継続的な保守契約が欠かせません。初期費以外の継続費用も、発注側が計画に含めておく必要があります。継続費用は、保守、インフラ、機能追加・更新、監査・設計の4つの項目で構成されます。
- 年間保守費:初期開発費の15〜20%が目安です。
- インフラ費:月額5万〜50万円以上かかり、トラフィック増加により10〜30%増えます。
- 機能追加・更新費:初年度は初期開発費の30〜50%程度です。
- 監査・設計費:ISO 27001などの要件で費用が20〜50%上振れする場合があります。
たとえば、初期開発費が1,500万円なら、年間保守費は225万〜300万円です。テナント増加に伴うDBやサーバーのスケール費用も、継続してかかります。
TCOには、保守費、インフラ費、競合対策や解約防止の機能追加費が含まれます。そのため、初期費だけでなく、数年単位の総額で事業計画を立てる必要があります。
継続コストを含むTCOで判断すると、後から維持費の大きさに困る事態を防ぎやすくなります。
成功させるポイント
大きな投資を無駄にしないため、発注側はMVPで範囲を管理し、開発体制を見極めます。初期機能を絞るとともに、外注先との役割分担も明確にします。
投資が大きい分、失敗時の損失も大きくなります。だからこそ、MVPの範囲管理と外注先選びが、成功の確率を高める要点です。
MVPによるスコープ管理
MVP(実用最小限の製品)は、市場検証に必要な機能に開発範囲を絞る考え方です。初期から要望をすべて盛り込むと、予算超過や長期化を招きます。
- 初期リリース:テナント登録から課金、コア業務までを一気通貫で作る範囲です。
- 後続フェーズ:高度な分析、細かな権限、多数の外部連携は後に回せます。
- 変更管理:追加要望は、影響範囲と工数を見積もってから合意します。
コア機能を10機能程度に絞ると、3,000万円規模の見積もりを900万〜1,500万円に圧縮できます。これは50〜70%の削減にあたります。
範囲を曖昧にすると、開発中に要望が増えるスコープクリープが起き、予算超過と納期遅延につながります。そのため、発注側はMVPの範囲を先に定めておきます。
早期に公開して利用データを見ながら段階的に拡張すると、投資リスクを抑えられます。特に、自由度を規律ある管理で制御できるかが、成否を分けます。
外注先の見極めと役割分担
設計の難易度が高いSaaS開発では、外注先の経験と役割分担が重要です。価格に加えて、引き継ぎやリリース後の支援も確認します。
- フリーランス:人月60万〜80万円ですが、1人に丸投げすると頓挫や属人化のリスクがあります。
- 大手SIer:人月150万〜300万円で、中間マージンや組織コストが加わります。
- 中堅開発会社:人月80万〜120万円で、中核設計を任せる選択肢です。
経験の浅い体制にマルチテナントや課金連携を任せると、設計の誤りを後から直せないおそれがあります。そのため、発注側は根幹部分を実力のある相手に依頼します。
要件定義や中核設計を任せ、機能単位で分割発注する方法もあります。自社が開発全体の主導権を持てば、コストと品質を調整しやすくなります。
初期開発の後も、保守や機能追加に伴走できるかを確認します。長期的に関係を築ける会社は、プロダクトを継続して成長させる土台になります。
パッケージSaaS/ノーコードとの判断フロー
市場検証の速さと予算、要件の特殊性と拡張性を、順に確認します。そうすると、ノーコードやパッケージで足りるかを判断しやすくなります。
市場検証スピードと予算の優先度
最初に、市場検証の速さと予算のどちらを優先するかを考えます。限られた予算で早く顧客の反応を見たい段階なら、ノーコードが候補になります。
- 予算が100万〜300万円程度で、1〜3か月でMVPを作りたいなら、ノーコードを検討します。
- 市場の手応えが得られたら、フルスクラッチへの移行が候補になります。
- 市場性が確認済みで、予算と期間を確保できるなら、最初からの開発も選択肢です。
市場性が未確認の段階で数千万円を投じると、リスクが大きくなります。そこで、まず形にして検証する二段構えにすると、投資リスクを抑えられます。
規模が大きくなると、ノーコードのライセンス費が高額になり、特殊要件にも対応できない場合があります。そのため、本格的な成長の前に移行を見据えておく必要があります。
要件の特殊性とスケーラビリティ
次に、既製品では代替できない要件と将来の拡張性を確認します。具体的には、独自課金や厳格なデータ分離、高度なセキュリティが必須かどうかを問います。
- 特殊要件:複雑な課金や厳格なマルチテナント設計が必要か。
- 成長見込み:大規模な通信量や機能拡張を予定しているか。
- 資産化:システムを自社のIPとして保有したいか。
これらが必要なら、初期コスト700万円以上と開発期間を見込んで、フルスクラッチを検討します。こうすると、成長時の制約を抑えて、システムを事業の競争力にできます。
既製品で業務を回せるなら、フルスクラッチを選ぶ必要はありません。見栄えや自社専用へのこだわりだけを理由に、高額な投資を決めないことが大切です。
実現したい価値を、最もコスト効率よく形にできるかを基準に、ノーコード、パッケージ、フルスクラッチを比べます。判断の観点を順に確認すると、どの方式が合うかが見えてきます。
まとめ
フルスクラッチは、独自のテナント設計や課金、IP資産化、拡張性に強みがあります。一方、中規模でも4〜8か月、700万〜1,500万円がかかります。
複雑なエンタープライズ向けでは、2,000万〜5,000万円以上です。そのうえで、保守、インフラ、機能更新を含むTCOも踏まえて検討します。
MVPで範囲を絞り、開発会社と役割を分けて自社が主導権を持つと、投資と品質を管理しやすくなります。
検証の速さや予算を優先する段階ではノーコードを使い、独自要件や成長性が欠かせない場合にフルスクラッチを選びます。どちらを選ぶ場合も、実現したい価値と費用対効果を基準に決めましょう。
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株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
