SaaSアプリ開発の完全ガイド

SaaSアプリ開発では、企画から運用までを見通した計画と、継続的に改善できる体制が欠かせません。

SaaSは、クラウド上で提供するサブスクリプション型のソフトウェアです。国内市場は2025年時点で約1兆8,000億円あり、年率20%以上の成長を続けています。

関連テーマを深く知るための記事も用意しています。

SaaSアプリ開発の進め方と全体フロー

企画・要件定義から運用・改善までを4段階でつないだSaaSアプリ開発の図解
改善までを工程に含めると、開発後の運用も見通せます。

SaaSアプリ開発は、「企画・要件定義」「設計・開発」「テスト・リリース」「運用・改善」の4フェーズで進みます。従来のWebアプリ開発とは異なり、マルチテナント設計、サブスクリプション課金、拡張性を各段階で考慮します。

企画・要件定義と設計・開発

企画から開発までは、仮説を確かめながら、要件と実装を次の順に具体化していきます。

  1. 市場と対象業界の課題を調べ、競合との差を踏まえてMVP(Minimum Viable Product)の範囲を決めます。
  2. 認証・認可、マルチテナント、課金、ダッシュボード、管理画面、通知を含めて、機能・非機能要件を定義します。
  3. FigmaやAdobe XDでUI/UXを試作したうえで、構成、データベース、APIを設計します。
  4. スクラムで2週間のスプリントを回し、CI/CDでテストとデプロイを自動化します。

構成は、モノリシック型かマイクロサービス型かを選びます。そのうえで、性能、セキュリティ、可用性の面からも確認します。

テスト・リリースと運用・改善

品質確認では、次の5種類のテストを組み合わせて不具合を探します。

  • ユニットテスト:部品ごとの動作の正しさ
  • インテグレーションテスト:部品をつないだときの連携
  • E2Eテスト:利用者の操作の流れに沿った全体の動き
  • パフォーマンステスト:負荷がかかったときの応答と処理能力
  • セキュリティテスト:脆弱性や不正アクセスへの備え

なかでも、テナント間のデータ分離と、プラン変更・解約・日割り計算を含む課金は念入りに検証します。

リリース後は、インフラとアプリの2層を監視し、SLA 99.9%以上の可用性を目指します。そのうえで、利用状況から改善の優先順位を決めます。

改善の順番を利用状況で決めておけば、機能の詰め込みや検証不足も防げます。

開発工程の具体的な進め方は、SaaSアプリ開発の進め方・工程で解説しています。

ポイント

判断の目安は、MVPの範囲を企画の段階で絞れているかどうかです。リリース後も、利用状況から改善の優先順位を決め続けられるかを見ておきます。

SaaSアプリ開発におすすめの開発会社

SaaS開発を外注する場合は、特有の技術要件に詳しい会社を選ぶことが大切です。マルチテナント、課金、クラウドインフラの実装経験がある会社なら、複雑な要件も整理しやすくなります。

SaaS開発の経験が浅い会社では、技術面の問題が起きるおそれがあります。

株式会社riplaは、コンサルティングから開発・運用まで一貫して支援し、AIやデータ基盤にも強みがあります。株式会社ビコーズは、MVPの立ち上げとPMF達成に特化しています。

株式会社divxは、Kubernetesを使うクラウドネイティブ基盤の構築に強みがあります。また、株式会社Sun Asteriskは、2,000名以上のエンジニアを擁し、オフショア開発のコスト効率も魅力です。

株式会社ガイアックスは、自社SaaSの運営経験を生かして新規SaaS事業の立ち上げを支援します。さらに、クラスメソッド株式会社は、AWSの最上位パートナーとしてSaaSインフラを設計します。

開発会社の選び方と評価基準

候補を比べるときは、技術力だけでなく、提案や契約条件も含めた5つの軸で見ていきます。

  • 技術力:マルチテナント設計、Stripe連携、CI/CD構築の経験の有無。
  • SaaS開発実績:類似するプロダクトや要件への対応経験。
  • 提案の質:要件や課題を踏まえ、具体的に示されているかどうか。
  • コミュニケーション:相談や進捗共有の方法と、自社の進め方との相性。
  • 費用:金額だけでなく、対象範囲や提案内容も含めた比較。

契約形態としては、MVPは固定価格の請負契約、運用・改善は準委任契約とする方法もあります。

複数社の見積もりを同じ条件で比べたうえで、自社に合うパートナーを選びます。

会社選びの詳しい比較は、SaaSアプリ開発会社6選と選び方で確認できます。

ポイント

会社を選ぶときは、マルチテナントや課金の実装経験を前提に、提案の具体性と連絡の取り方まで比べます。見積もりの条件を揃えておくと、各社の差が見えやすくなります。

SaaSアプリ開発の費用相場とコスト最適化

小規模MVP、中規模SaaS、大規模プラットフォームの費用相場と開発期間を並べた図解
規模が上がるにつれて、費用と開発期間の目安も大きくなります。

SaaSの開発費用は、規模や機能の複雑さによって変わります。また、予算には初期費用だけでなく、インフラ、保守、機能追加の継続費用も含めます。

規模別・工程別の費用相場

費用は規模別に3つのレンジに分かれ、各レンジの中でも機能や開発期間に応じて変わります。

  • 小規模MVP:500万円〜1,500万円、開発期間2〜4ヶ月
  • 中規模SaaS:2,000万円〜5,000万円、開発期間4〜8ヶ月
  • 大規模プラットフォーム:5,000万円〜1億円以上、開発期間8ヶ月〜1年以上

費用の80〜90%は人件費で、ほかにインフラ、外部サービス利用料、その他の経費がかかります。

人件費は、国内の人月単価で見ると、フロントエンドが80〜120万円、バックエンドが80〜130万円です。また、UI/UXデザイナーは70〜110万円、PMは100〜150万円が目安です。

工程別の配分は、上流工程が20〜30%、開発・テスト・リリースが60〜70%、管理が約10%です。

費用最適化とランニングコスト

MVPから始めて利用者の反応を見ながら機能を足していけば、初期の作り込みを抑えられます。さらに、既存サービスを活用すれば、自前で開発する範囲も減らせます。

  • 認証:Auth0またはFirebase Authentication
  • 決済:Stripe
  • メール配信:SendGrid

月額インフラ費用は5万円〜200万円が目安で、ユーザー規模によって変動します。

保守・運用費は初期開発費の15〜25%/年、機能追加チームの維持費は月額200〜400万円が目安です。そのため、初期費用に加えて3年間の総費用を見通し、予算を組みます。

費用の詳しい内訳は、SaaSアプリ開発の費用相場で紹介しています。

ポイント

判断の目安は、初期費用に継続費用を足した3年間の総額で予算を組めているかどうかです。規模別の相場と照らして、機能や開発期間で金額がどこまで変わるかも確かめます。

SaaSアプリ開発の発注・外注方法

提案依頼書(RFP)にまとめる背景と目的、要件、技術、予算とスケジュールの4項目
共通の前提を揃えると、各社の提案を比べやすくなります。

外注では、準備、契約、進行、納品・検収までを一貫して設計することが大切です。

準備不足のまま発注すると、仕様変更や遅延が重なりやすくなります。

RFPの作成と契約形態の選択

発注前にコンセプトを固めたうえで、提案依頼書であるRFPを作成します。

各社が同じ前提で提案できるよう、RFPには次の情報をまとめます。

  • 背景と目的:なぜ作るのかと、誰に使ってもらうのか
  • 機能・非機能要件:優先順位を付けて整理した内容
  • 外部サービスと技術スタック:連携先と、希望する技術の組み合わせ
  • 予算とスケジュール:目安の金額と、希望する時期

この内容を3〜5社に送り、提案と見積もりを比べます。

主な契約は2つです。請負契約は、成果物と固定価格を定めて進めます。一方、準委任契約は、工数に応じて柔軟に進められます。

MVP開発は請負契約、運用・改善は月額固定のチームを確保する準委任契約にする方法もあります。

締結前に確認したいのは、知的財産権、コードの引き渡し、瑕疵担保責任の期間です。加えて、NDAと仕様変更の手続きも確かめておきます。

プロジェクト進行と納品・検収

進行中は、Slackで随時連絡し、週次会議で進捗を共有します。

スプリントレビューではデモを確かめ、発注側もデザインレビューや受入テストに加わります。

検収テストで要件を満たしていることを確かめてから、開発の成果物を受け取ります。

  • ソースコード:開発したプログラム一式
  • 設計書:構成、データベース、APIの設計をまとめた文書
  • テスト結果報告書:品質確認の内容と結果を記した文書
  • 運用手順書:公開後の監視や対応の進め方

公開後は、監視とバグ修正を続けます。加えて、セキュリティパッチや機能追加にも対応します。

文書整備とインフラのコード化を進めておけば、将来の会社変更時にベンダーロックインを避けやすくなります。

発注の具体的な手順は、SaaSアプリ開発の発注・外注方法で確認できます。

ポイント

発注では、RFPに機能要件や予算の前提を書けているかが判断の目安です。契約は、請負と準委任をどの工程に当てるかを、締結前に決めておきます。

SaaSの技術は変化が速いため、動向を踏まえて開発方針を決めることが差別化につながります。

AI/LLMのSaaSアプリへの統合

2025年現在、AI(人工知能)やLLM(大規模言語モデル)の統合が注目されています。

ChatGPTやClaudeなどのLLM APIは、専門的なAI知識がなくても、SaaSの機能に組み込みやすくなっています。

  • データ検索・分析:言葉で問いかけて、データを探したり分析したりする
  • 文書の要約・生成:長い文書を要約したり、新たに文書を作ったりする
  • カスタマーサポート:問い合わせへの対応を自動で行う
  • コード生成・レビュー:コードの作成や確認を支える

OpenAI API、Anthropic API、Google Gemini APIは、リクエスト量に応じた従量課金です。

利用料は月額数万円〜数十万円程度からで、専門知識がなくても、比較的短期間・低コストで導入できます。

RAG(Retrieval Augmented Generation)の仕組みで自社の知識やDB情報を組み合わせれば、用途に合う回答を提供できます。

AI機能は、SaaSの差別化と利用者の業務効率向上につながる可能性があります。

バーティカルSaaSと業界特化型アプリの台頭

もう一つの潮流は、特定業界に特化したバーティカルSaaSの広がりです。

Slack、Salesforce、HubSpotのように業界を問わないサービスは、ホリゾンタルSaaSと呼ばれます。一方、バーティカルSaaSは、特定業界の規制や商習慣、業務プロセスに合わせて設計されます。

医療、建設、不動産などで、業界特化型の製品が増えています。物流、農業、飲食でも同じ傾向が見られます。

  • 医療:電子カルテSaaS
  • 建設:施工管理SaaS
  • 飲食:予約管理SaaS

対象顧客が明確なため、販促費を抑えやすく、定着率も高い傾向があります。さらに、自社の業界知識を生かせば、大手との競争を避けながら、独自性や収益性を高められる可能性があります。

ポイント

AI機能や業界特化の方向性は、自社の顧客課題と業界知識に合うかどうかで決めます。流行に合わせるより、顧客の業務にどこまで当てはまるかを基準にします。

まとめ:SaaSアプリ開発を成功させるための要点

SaaSアプリ開発成功のための重要ポイント

SaaS開発を成功に近づけるには、開発後まで見据えた判断が欠かせません。

  • MVPから始める:小さく提供し、利用者の反応をもとに改善する。
  • 経験ある会社を選ぶ:課金、マルチテナント、拡張性の実績の有無。
  • 上流工程に投資する:要件定義とUI/UX設計で、手戻りを減らす。
  • 運用費を含める:初期費用に加え、3年間の費用を見積もる。
  • データで改善する:利用状況から機能追加の優先順位を決める。

これらを組み合わせれば、プロダクトマーケットフィットへの到達を後押しできます。

次のステップ

検討を始めるときは、次の順に自社の状況を整理します。

  1. プロダクトのコンセプトを定めたうえで、対象市場と顧客課題を調べます。
  2. 進め方、会社選び、費用、発注方法の詳細記事を読んで、次の行動を決めます。

SaaS開発は、継続して育てていくプロダクトビジネスであり、一度作って終わるシステム構築とは性質が異なります。そのため、長期の視点で戦略を立て、適切なパートナーと改善を続けることが成功につながります。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。