SaaS開発の見積相場や費用/コスト/値段について

本記事では、SaaS開発の見積相場や費用・コスト・値段について、要点を整理して解説します。結論として、SaaS開発の見積もりを取る際には、正確な費用を把握し、予算超過を防ぐためのいくつかの重要なポイントがあります。また、品質を維持しながら費用を抑えるための戦略も合わせて理解しておきましょう。

  • SaaS開発の費用相場の全体像
  • 開発フェーズごとの費用内訳
  • 費用を左右する主要な要因
  • リリース後の運用・保守費用
  • 見積もりを取る際のポイントと費用を抑える方法

SaaS(Software as a Service)プロダクトの開発を検討する際、最も気になるのが「開発費用はどのくらいかかるのか」という点ではないでしょうか。SaaS開発の費用は、プロダクトの規模や機能数、技術要件、開発体制によって大きく異なり、小規模なMVP(最小限の実行可能な製品)で500万〜2,000万円、中規模なSaaSプロダクトで2,000万〜5,000万円、大規模なエンタープライズ向けSaaSで5,000万〜2億円以上というのが一般的な相場です。しかし、これらの数字だけでは判断が難しいため、費用の内訳や変動要因を正しく理解した上で、適切な予算計画を立てることが重要です。

本記事では、SaaS開発の費用相場について、開発フェーズごとの内訳、費用を左右する主要な要因、見積もりを取る際のポイントまで、予算計画に必要な情報を体系的に解説します。初めてSaaS開発の予算策定に取り組む方にも分かりやすい内容となっていますので、ぜひ参考にしてください。

本テーマに関する全体ガイドは、以下の記事をご覧ください。

▼全体ガイドの記事
・SaaS開発の完全ガイド

SaaS開発の費用相場の全体像

SaaS開発の費用相場の全体像

SaaS開発の費用は、プロダクトの規模と複雑さによって大きく3つの価格帯に分類されます。まず全体像を把握した上で、各費用の内訳を理解していきましょう。

規模別の費用相場

SaaS開発の費用相場は、プロダクトの規模によって大きく異なります。小規模SaaS(MVP・プロトタイプ段階)の場合、主要機能が3〜5個程度で、開発期間は3〜6ヶ月、費用は500万〜2,000万円が目安です。この価格帯では、基本的なユーザー管理、コア業務機能、簡易的なダッシュボード程度の機能を実装できます。中規模SaaSの場合、主要機能が10〜20個程度で、マルチテナント対応、サブスクリプション課金、外部サービス連携などを含む本格的なプロダクトとなり、開発期間は6ヶ月〜1年、費用は2,000万〜5,000万円が相場です。大規模SaaS(エンタープライズ向け)の場合、高度なセキュリティ要件、複雑な権限管理、大量データの処理、API連携、カスタマイズ機能など多岐にわたる要件を満たす必要があり、開発期間は1年〜2年、費用は5,000万〜2億円以上となります。なお、これらの金額には初期開発費用のみが含まれており、リリース後の運用・保守費用は別途発生することに注意が必要です。

エンジニア単価と人月計算の基本

SaaS開発の費用は、基本的に「エンジニアの人月単価 × 工数(人月)」で算出されます。2025年現在の国内におけるエンジニアの人月単価の目安は、ジュニアエンジニアで60万〜80万円、ミドルエンジニアで80万〜120万円、シニアエンジニアで120万〜180万円、テックリードやアーキテクトで150万〜250万円程度です。SaaS開発では、バックエンドエンジニア、フロントエンドエンジニア、インフラエンジニア、UI/UXデザイナー、プロジェクトマネージャーなど複数の役割が必要となるため、チーム全体の月額コストは300万〜800万円程度になるのが一般的です。たとえば、ミドルクラスのエンジニア3名、デザイナー1名、PM1名のチーム構成で月額500万円、8ヶ月の開発期間であれば、総額4,000万円という計算になります。なお、オフショア開発(ベトナム、フィリピンなど)を活用した場合、エンジニアの人月単価は30万〜60万円程度に抑えられますが、コミュニケーションコストの増加やタイムゾーンの違いによる影響を考慮する必要があります。

開発フェーズごとの費用内訳

開発フェーズごとの費用内訳

SaaS開発の費用は、各開発フェーズによって発生するコストの種類と割合が異なります。全体の費用構成を理解しておくことで、見積もりの妥当性を判断しやすくなります。

企画・要件定義・設計フェーズの費用

企画・要件定義・設計フェーズの費用は、開発全体の約15〜25%を占めるのが一般的です。具体的な金額では、小規模SaaSで100万〜300万円、中規模SaaSで300万〜800万円、大規模SaaSで500万〜2,000万円程度となります。このフェーズでは、ビジネスアナリスト、UI/UXデザイナー、システムアーキテクトが中心となって作業を進めます。要件定義では、機能要件と非機能要件の洗い出し、ユーザーストーリーの作成、優先順位付けを行い、要件定義書としてドキュメント化します。設計フェーズでは、システムアーキテクチャ設計、データベース設計、API設計、画面遷移設計、ワイヤーフレーム・UIモックアップの作成を行います。SaaS特有の設計要素として、マルチテナントアーキテクチャの設計、課金プランの設計、テナント別のカスタマイズ対応方針の決定なども含まれます。このフェーズにかかる期間は、小規模SaaSで1〜2ヶ月、中規模SaaSで2〜3ヶ月、大規模SaaSで3〜6ヶ月が目安です。このフェーズの品質が後工程の手戻りコストに直結するため、必要な投資を惜しまないことが重要です。

開発・テストフェーズの費用

開発・テストフェーズは、SaaS開発全体の費用の約60〜70%を占める最もコストの大きいフェーズです。具体的な金額では、小規模SaaSで300万〜1,200万円、中規模SaaSで1,200万〜3,500万円、大規模SaaSで3,500万〜1.5億円程度となります。開発費用の内訳を見ると、フロントエンド開発が全体の約25〜30%、バックエンド開発が約30〜40%、インフラ構築が約10〜15%、テスト工程が約15〜20%を占めるのが一般的です。SaaS特有の開発コスト要素としては、マルチテナント対応の実装、サブスクリプション課金システムの構築(Stripe等の決済サービスとの連携含む)、認証・認可機能の実装(SSO、SAML連携等)、管理者向けダッシュボードの開発、テナント管理機能の開発などがあります。テスト工程では、単体テスト、結合テスト、E2Eテスト、負荷テスト、セキュリティテストを実施しますが、SaaSでは特にマルチテナント環境でのデータ分離テストや、大量のテナントが同時利用した場合のパフォーマンステストが重要であり、これらの工数を見積もりに含めておく必要があります。

費用を左右する主要な要因

費用を左右する主要な要因

SaaS開発の費用は、さまざまな要因によって大きく変動します。見積もりの精度を高め、予算超過を防ぐためには、どのような要因が費用に影響を与えるかを理解しておくことが重要です。

機能の複雑さと技術要件

費用に最も大きな影響を与えるのは、実装する機能の数と複雑さです。たとえば、シンプルなCRUD(作成・読取・更新・削除)機能であれば1機能あたり50万〜100万円程度で実装可能ですが、リアルタイム通知機能(WebSocket)、高度な検索・フィルタリング機能、レポート・分析ダッシュボード、外部API連携、ワークフロー自動化機能などは1機能あたり100万〜500万円以上の工数が必要になることがあります。また、セキュリティ要件の高さも費用に直結します。一般的なBtoB SaaSであればOAuth 2.0ベースの認証で十分なケースが多いですが、金融業界や医療業界向けのSaaSでは、二要素認証、IPアドレス制限、監査ログの記録、データの暗号化(保存時・通信時)、SOC 2認証への準拠など、より高度なセキュリティ対策が求められ、追加コストが発生します。スケーラビリティ要件も重要な費用要因です。将来的に数千〜数万テナントが利用することを見込んだアーキテクチャ設計は、初期の開発コストが高くなりますが、後からアーキテクチャを変更するコストと比較すれば、先行投資として妥当な判断であるケースが多いです。

開発体制と委託形態による違い

開発体制と委託形態によっても、費用は大きく変動します。自社開発の場合は、エンジニアの採用コスト(年収600万〜1,200万円+採用費用)、福利厚生費、オフィス・設備費用などの固定費が発生しますが、長期的にはノウハウが社内に蓄積されるメリットがあります。外部委託の場合は、請負契約では固定価格で予算管理がしやすい一方、仕様変更時の追加費用が割高になる傾向があります。準委任契約(ラボ型開発)では月額固定で柔軟に開発を進められますが、開発期間が延びれば費用も増加するリスクがあります。国内の開発会社に委託する場合と、オフショア開発を活用する場合でもコスト構造が異なります。国内開発の単価は高い反面、コミュニケーションの円滑さや品質管理のしやすさというメリットがあります。オフショア開発は単価を30〜50%程度抑えられる可能性がありますが、ブリッジSE(橋渡し役のエンジニア)の配置やコミュニケーションコストが追加で発生するため、総合的なコスト比較が必要です。

リリース後の運用・保守費用

リリース後の運用・保守費用

SaaS開発の費用を考える際に見落としがちなのが、リリース後の運用・保守費用です。SaaSは継続的にサービスを提供し続けるビジネスモデルであるため、リリース後も恒常的にコストが発生します。運用・保守費用は、初期開発費用の年間15〜25%程度が相場とされています。

インフラ費用とSaaS利用料

SaaSの運用にはクラウドインフラの利用料が毎月発生します。AWS、GCP、Azureなどのクラウドサービスの費用は、サーバースペック、データ転送量、ストレージ使用量、利用する各種マネージドサービスの組み合わせによって変動します。小規模SaaSの場合は月額5万〜20万円程度、中規模SaaSで月額20万〜100万円、大規模SaaSで月額100万〜500万円以上が目安です。ユーザー数の増加に伴いインフラ費用もスケールするため、SaaSの料金プラン設計時には、1テナントあたりのインフラコストを正確に算出し、適切な利益率を確保できる価格設定を行うことが重要です。また、クラウドインフラ以外にも、サードパーティSaaSの利用料(メール配信サービス、監視ツール、ログ管理ツール、決済サービスの手数料など)が月額で発生します。これらを合算した運用コストを事前に見積もり、損益分岐点を明確にしておくことが、SaaS事業の健全な運営に不可欠です。

保守・改善開発の費用

SaaSの競争力を維持するためには、リリース後も継続的に機能改善や新機能の追加を行う必要があります。保守・改善開発の費用としては、バグ修正や障害対応にかかる保守費用と、新機能の開発やUI/UXの改善にかかる改善開発費用の2種類があります。保守費用は、初期開発費用の年間10〜15%程度が一般的で、中規模SaaS(初期開発費3,000万円)の場合は年間300万〜450万円程度となります。改善開発費用は、プロダクトのフェーズや成長戦略によって大きく異なりますが、月額100万〜500万円程度のエンジニアリソースを確保して継続的に機能改善を行うのが一般的です。SaaSビジネスにおいては、チャーンレート(解約率)を低く抑えるためにユーザーの要望に迅速に対応する必要があり、改善開発への投資は事業成長に不可欠な費用として予算に組み込むべきです。

見積もりを取る際のポイントと費用を抑える方法

見積もりを取る際のポイントと費用を抑える方法

SaaS開発の見積もりを取る際には、正確な費用を把握し、予算超過を防ぐためのいくつかの重要なポイントがあります。また、品質を維持しながら費用を抑えるための戦略も合わせて理解しておきましょう。

見積もり時に確認すべきチェックリスト

SaaS開発の見積もりを依頼する際は、以下のポイントを事前に確認・整理しておくことで、より正確な見積もりを得ることができます。まず、見積もりの内訳が「人月」単位で明示されているかを確認します。「一式○○万円」という概算見積もりでは、どの工程にどれだけの工数がかかっているかが不明確であり、後から追加費用が発生するリスクが高まります。次に、見積もりに含まれる範囲と含まれない範囲を明確に確認します。特に、要件定義・設計の費用が含まれているか、テスト工程の費用が含まれているか、インフラ構築の費用が含まれているか、リリース後の保守費用は別途か、といった点を確認することが重要です。また、仕様変更が発生した場合の費用の取り扱い(追加見積もりの基準や承認フロー)を事前に合意しておくことで、予算管理がしやすくなります。さらに、複数の開発会社から見積もりを取る場合は、同一の要件定義書を提供し、比較しやすい形式での見積もりを依頼することをおすすめします。

費用を抑えるための戦略

SaaS開発の費用を抑えるための有効な戦略はいくつかあります。第1に、MVP(最小限の実行可能な製品)から始めることです。最初から完璧なプロダクトを目指すのではなく、コア機能に絞ったMVPを素早く市場に投入し、ユーザーフィードバックをもとに段階的に機能を拡充していくアプローチは、初期投資を大幅に抑えることができます。第2に、既存のSaaSやライブラリを活用することです。認証機能(Auth0、Firebase Authentication)、決済機能(Stripe)、メール配信(SendGrid)、検索機能(Algolia)など、既に品質の高いSaaSサービスが提供されている領域は、自社開発するよりも外部サービスを活用した方がコスト効率が良い場合が多いです。第3に、ノーコード・ローコードツールの部分的な活用です。管理画面やダッシュボードなど、定型的な機能はRetoolやAppSmithなどのツールで構築し、開発工数を削減することも検討に値します。ただし、費用削減を優先しすぎて品質やスケーラビリティを犠牲にすると、後から大規模なリファクタリングが必要になり、結果的にコストが増加するリスクがあるため、バランスの取れた判断が重要です。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。