SaaS開発の開発期間・スケジュール・納期について

SaaS開発の期間は、規模と進め方によって、初回リリースまで2〜4か月から6か月以上と幅があります。費用と期間は目安で、要件によって変わります。

事業立ち上げや社内の投資・日程の判断に役立てるには、初回リリースと継続開発を分けて考えると見通しが立てやすくなります。

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SaaS開発の期間とスケジュールの全体像

軽量版と本格版のSaaS初回リリースについて、開発期間と費用を左右で比較した図。
規模を上げると期間と費用の目安も上がります。

SaaSは、リリース後も成長させ続けるプロダクトです。複数の顧客にクラウドで提供し、サブスクリプションで収益を得ます。

買い切り型パッケージや受託開発では、全要件を満たした完成品を納品すると、プロジェクトは一区切りです。一方、SaaSは顧客の声を聞きながら機能を追加・改善し続けるため、最小限の機能を公開する初回リリースと、その後の継続開発を分けて考えます。

初回リリースは、コア価値の検証に絞った軽量版なら2〜4か月が目安です。複数の機能を備えた本格版では、4〜6か月が目安になります。

「最初のリリース」と「継続開発」の切り分け

SaaSの成否を左右するプロダクト・マーケット・フィット(PMF)は、顧客が料金を払い続けたいと思うかを示します。PMFは市場で使ってもらわなければ検証できないため、まず公開して反応を見ることが欠かせません。

初回リリースでは、範囲と期間を定めたうえで、公開後にどう進めるかも決めておきます。範囲を広げすぎると、期間は際限なく延びるおそれがあります。初回リリースの範囲を絞るときに押さえる点は、5つあります。

  • 機能範囲:課題解決に欠かせないコア機能だけを残し、将来の機能は含めません。
  • 期間の目安:軽量版は2〜4か月、本格版は4〜6か月です。本格版には決済や管理画面が含まれます。
  • 公開後の進め方:早めに市場に出して反応を得たあと、継続開発で機能を足していきます。
  • 計画の見直し:半年以上、特に1年かかる計画は作り込みすぎの可能性があり、範囲を絞り直します。
  • 開発の考え方:完璧を目指すより、早く市場に出して学ぶことを出発点にします。

規模別の期間と費用相場

SaaSの開発期間と費用は、提供する機能の複雑さ、つまり規模によって変わります。そのため、フルスクラッチの期間と費用を規模ごとに比べ、仮説に合う規模を選びます。

  • 軽量版:コア機能と簡易な管理画面で、2〜4か月・300〜600万円です。
  • 本格版:複数の機能や決済、マルチテナント基盤を備え、4〜6か月・600〜1,200万円程度です。
  • 大規模:リアルタイム処理や複雑な業務ロジック、細かな権限管理が必要で、6か月以上・1,200万円超の場合もあります。

本格版にあるマルチテナント基盤は、複数の顧客企業のデータを安全に分けて扱う仕組みです。

SaaSは多機能化しやすく、便利な機能を加えるほど規模・期間・費用が膨らみます。そのため、仮説を確かめる最小構成から始め、迷ったら一段小さい規模を選びます。

ノーコードツールやAIコーディングを使えば、小規模なものは50〜150万円程度に抑えられるケースもあります。ただし、この金額はフルスクラッチの相場とは別に見る必要があります。

仮説の複雑さと予算を照らし合わせて、最小構成で市場に出す方法を逆算します。これがスケジュールを描く第一歩です。

ポイント

期間は、初回リリースの範囲を先に絞るほど短くなります。機能が多い本格版を選ぶ前に、軽量版で足りるかを確かめるのが判断の目安です。

工程別のスケジュール配分と進め方

機能を小さく分けてスプリントで作り、フィードバックを受けて次のスプリントで方向を修正する流れ。
短い反復が仕様変更を取り込みやすくします。

全体の期間が見えたら、工程ごとの配分を考えます。SaaSには一般的なWebサイト制作にない固有の工程があるため、配分も異なります。マルチテナント基盤や継続課金を含む4〜6か月の本格開発で見ると、その違いがよく分かります。

工程ごとの期間・コスト配分

4〜6か月で本格的なSaaSを開発する場合、コストは5つの工程に振り分けられ、開発の比率が最も大きくなります。

  • 要件定義・事業仮説:20〜25%。課題と解決方法を定め、検証に必要な最小限のスコープを決めます。
  • UI/UX・情報設計:15〜20%。利用の初期に価値を体験できるオンボーディングの設計。
  • 開発:50〜60%。バックエンドとフロントエンドに加えて、基盤・課金・権限管理の実装。
  • テスト・QA:10〜15%。テナント間でデータが見えないことの確認。
  • インフラ・リリース準備:アクセスの増加に応じて処理能力を増やす、オートスケール前提のクラウド構成の整備。

要件定義とデザインを合わせると、全体の約4割を占めます。上流工程の質が成否を分けるため、機能の数に比べて厚めに時間を配分します。検証内容を上流で定めておくことが、手戻りを防ぎ、短納期にもつながります。

開発には、複数顧客のデータを分離するマルチテナント基盤、サブスクリプションの課金・決済連携、顧客企業ごとの権限管理が含まれます。そのため、一般的なWebアプリより工数が厚くなる傾向があります。

テナント間のデータ分離テストを怠ると、重大な情報漏洩事故につながります。また、オンボーディングを丁寧に設計すると、後の解約防止にもつながります。

アジャイル・スプリントによる継続的な開発

SaaSは、ユーザーの反応を見ながら改善するため、開発中にも仕様が変わります。そのため、仕様を先にすべて固めるウォーターフォール型より、短い反復のアジャイル型が適しています。

  1. 機能を最小単位に分け、1〜4週間のスプリントで動くものを作ります。
  2. 関係者やテストユーザーに見せ、フィードバックを得ます。
  3. 次のスプリントで方向を修正し、大きな手戻りを防ぎながらリリースを目指します。

この小刻みな反復は、最短でのリリースを後押しします。体制とリリースの仕組みを備えておけば、毎週や毎月のように機能を加える運営段階でも力を発揮します。初期からアジャイルな体制を整えることは、リリースまでの期間と、その後の事業成長の速度に関わります。

請負契約は決めた範囲を完成させることを約束しますが、仕様変更のたびに見積もりや追加費用の交渉が発生します。一方、準委任契約は一定の開発リソースを確保し、作業時間に対して支払う契約で、アジャイルと相性が良いとされています。

スプリントごとに優先順位を柔軟に組み替え、学びの大きい機能から作ることが、立ち上げと継続的な成長の基本です。

ポイント

上流の要件定義とデザインに厚く時間を配分すると、開発中の手戻りを抑えられます。仕様が変わる前提で、短い反復で進められる体制かどうかが目安です。

納期を短縮する具体的アプローチ

機能を絞る、事前に需要を検証する、生成AIやノーコードを使うという三つの納期短縮策を並べた図。
作る範囲と着手前の検証、使う手法が短縮の軸です。

納期を縮めるには、作らない機能を先に決め、実装の効率を高めることが大切です。人員や残業を闇雲に増やすより、まず範囲と手法を見直すほうが現実的です。

前者はスコープ管理、後者は手法とツールの選び方です。その具体策が、機能の極小化、事前の需要検証、生成AIやノーコードの活用です。

MoSCoW法による機能の極小化

作る機能の数を減らすことは、納期の短縮に特に有効です。MoSCoW法で優先順位を分け、顧客が価値を体験できるMust機能に絞ります。4つの区分は、機能の必要度と今回作るかどうかで分けるものです。

  • Must:必須の機能。
  • Should:推奨する機能。
  • Could:あれば良い機能。
  • Won’t:今回は作らない機能。

SaaSは多機能なプラットフォームになりやすく、管理画面の充実や分析ダッシュボードの追加に目が向きがちです。ShouldやCouldの機能を削るだけで、見積もりや開発期間が3〜5割下がるとされています。

たとえば、仮説が「現場担当者が業務を効率化できるか」なら、業務に最低限必要な機能に絞ります。高度な分析や細かな設定は、Won’tにできます。

迷う機能は、リリース後に追加できるかどうかで判断します。SaaSは継続開発が前提です。そのため、後から足せる機能は、今作らない判断もできます。

また、一部の処理は自動化せず、運営スタッフの手作業で代替するコンシェルジュ型も有効です。顧客に価値を届けながら、機能開発を後回しにできます。

検証したい仮説ひとつにつき、機能を2〜3個に限る厳しさが、短納期と低コストの両立につながります。

スモークテストとAI・ノーコード活用

SaaS本体を開発する前に需要を測る方法が、スモークテストです。ランディングページ(LP)と少額のSNS広告を使って、需要を検証します。

たとえば、人事労務SaaSのSmartHRは、半日でLPを作成しました。約2万円の広告費で3日間に約100件の事前登録を集め、開発前に需要を実証しました。

需要がないと分かれば、開発をせずに済み、開発期間がゼロになる場合もあります。需要を確かめてから最小限のプロダクトを作れば、無駄な開発を避けられます。

近年は、生成AIやノーコードも、SaaS開発の納期短縮に役立つ手段です。特に、フロントエンドやUIの実装は全体の約60〜70%を占めます。

v0やLovableなどの生成AI、Bubbleなどのノーコードを使って作れる部分を自作する方法もあります。自作する部分と専門家に頼む部分は、線引きをはっきりさせておきます。

  • 自作する部分:フロントエンドやUIの実装。
  • 専門家に頼む部分:マルチテナント基盤、セキュリティ、課金連携。

従来300万円以上かかっていたMVP開発について、50〜150万円に抑えて費用を50〜75%削減し、期間も20〜30%短縮する手法が推奨されています。

マルチテナント設計や課金の信頼性が問われる部分には、人手を集中させます。この分担を見極めることが、納期とコストの大幅な改善につながります。

ノーコードで作った部分は、事業拡大時に作り直しが必要になる場合があります。そのため、将来の作り直しの可能性は、あらかじめロードマップに織り込んでおきます。

ポイント

納期を縮めるには、人員や残業を増やすより先に、作る機能を減らせるかを考えるのが目安です。そのうえで、自作と外注の分担や生成AIなどの手法も検討します。

納期遅延の要因と対策

短納期を前提にしていても、進め方を誤れば納期は遅れます。遅延の原因は、技術面より、機能を絞れないことや検証内容の曖昧さなど、意思決定にかかわるものが多くあります。事前に知っておけば、回避できる遅延も少なくありません。

機能の肥大化(ミニ本開発化)の防止

機能の肥大化を防ぐには、追加要望の扱いとスコープを、あらかじめ決めておく必要があります。肥大化で起きやすい影響と、それに備える方法を5つ挙げます。

  • 肥大化の影響:多機能になりやすく、将来の機能も加えると最小リリースの範囲が膨らみます。
  • 市場投入の遅れ:4か月の開発が半年、さらには1年に延びると、継続課金を検証する機会を失います。
  • 競争上のリスク:不要な機能に時間を使うと仮説検証が遅れ、競合に先を越されるおそれがあります。
  • 機能の選別:後から追加できる機能はWon’tとして除外し、関係者全員で合意して記録します。
  • 変更への備え:スコープを書面に残し、追加要望は合意内容に照らして判断します。

SaaS市場では、立ち上がりの速さが競争優位に直結するため、遅延は致命的になり得ます。機能を加えるより削って考えることが、納期を守る最大の備えです。

仮説の曖昧さと契約形態によるリスク

事業仮説が曖昧なまま着手すると、コンセプトがぶれ、仕様変更と手戻りが続いて納期が延びます。

遅延を防ぐには、検証の観点を定めることと、顧客の声による仕様変更に対応できる契約・体制を整えることが必要です。準備しておく項目は、仮説の検証から契約・体制まで5つあります。

  • 仮説と成功条件:「誰のどの課題を、なぜサブスクで解くか」と成功条件を定めます。
  • PMFの検証:顧客が継続して支払うかを確かめます。対象や課題が曖昧だと、検証の観点も定まりません。
  • 事前合意:ペルソナとユーザーストーリーを設計し、検証目的を1ページにまとめて関係者で合意します。
  • 要望の判断:仮説の検証に必要かどうかを基準にすれば、方針のぶれを最小限に抑えられます。
  • 契約と体制:請負では変更のたびに追加費用の交渉が必要になり、開発が停滞することがあります。実績あるパートナーを選び、準委任契約やラボ型開発も検討します。

開発中は、顧客のフィードバックを受けて仕様変更や改善を重ねるため、流動的な要件に対応できる体制が必要です。遅延の要因は事前の準備で減らせ、着手前の対策が最短の納期につながります。

ポイント

着手前に仮説と範囲を関係者と合意し、変更への対応を契約と体制で決めておくと、遅延要因を減らせます。途中で迷ったときは、この合意に立ち返るのが目安です。

まとめ

初回リリースの期間は、軽量版で2〜4か月、本格版で4〜6か月が目安です。期間は規模と進め方で大きく変わるため、最初に範囲を絞ることがスケジュールを守る近道になります。

納期を縮めるには、MoSCoW法で機能を絞り、スモークテストで需要を確かめる方法があります。さらに、生成AIやノーコードも活用できます。

機能の肥大化、曖昧な仮説、契約形態が遅延の原因になることがあります。そのため、検証する仮説を定め、最小限のプロダクトで市場に問いかけます。

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株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。