SaaS開発の発注/外注/依頼/委託方法について

SaaS開発の発注は、発注前の準備、開発会社の選定、契約締結の順に進みます。そのあとは、開発の推進、リリースと運用体制の構築へと続きます。

SaaSは、リリース後も運用と機能改善を続けることが事業の成功に欠かせません。そのため、委託体制も開発の発注と同時に計画しておく必要があります。

  • SaaS開発の発注・外注の全体像
  • 発注前に準備すべきこと
  • 契約形態の選び方と注意点
  • 発注後のプロジェクト管理と品質確保
  • リリース後の運用委託と継続的改善の発注

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・SaaS開発の完全ガイド

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SaaS開発の発注・外注の全体像

SaaS開発の発注前準備からリリース後の運用体制構築までを5段階で示した図。
準備・選定・契約を経て、開発と運用へ進みます。

SaaS開発を外部に発注する際は、各段階で押さえる点を漏れなく進めることが、プロジェクト成功の土台になります。発注は5つのステップに分かれ、最初の2つは「発注前の準備」と「開発会社の選定」です。そのあとに「契約締結」「開発プロジェクトの推進」「リリースと運用体制の構築」が続きます。

自社開発と外注の判断基準

SaaS開発を外注するかどうかは、自社のリソース、技術力、事業戦略を総合的に見て判断します。外注が向く第1のケースは、社内にSaaS開発の経験を持つエンジニアが不在か不足している場合です。SaaS開発には、マルチテナントアーキテクチャ、クラウドインフラ設計、サブスクリプション課金システムの実装など専門的なスキルが求められ、こうした経験を持つ人材の採用や育成には時間がかかるためです。

第2に、市場投入のスピードを優先する場合は、外注が向いています。エンジニアの採用から始めると数ヶ月〜半年以上のリードタイムが必要ですが、外注であれば開発リソースを即座に確保できます。

第3に、初期投資を変動費として扱いたい場合も、外注が向いています。正社員エンジニアの採用は固定費ですが、外注は開発期間に応じた変動費として管理できます。一方、自社開発が適しているのは、SaaS事業が中長期の経営戦略の柱で技術力の内製化が不可欠な場合や、頻繁な仕様変更に迅速に対応する必要がある場合です。

発注から開発完了までの全体フロー

SaaS開発の発注から開発完了までは、次の流れで進みます。まず「発注前準備」(1〜2ヶ月)では、プロダクトの目的・ターゲット・主要機能を整理し、RFP(提案依頼書)を作成します。次に「開発会社の選定」(1〜2ヶ月)では、候補企業のリストアップとRFPの送付から始め、提案書を受け取って比較評価し、プレゼンテーション(コンペ)を経て発注先を決めます。

「契約締結」(2〜4週間)では、契約形態を決めたうえで、基本契約書と個別契約書、秘密保持契約(NDA)を締結します。「開発プロジェクトの推進」では、要件定義から設計、開発、テストまでを進行管理しながら行い、期間は規模によって異なります。最後に「リリースと運用体制の構築」では、本番環境へのデプロイ、運用・保守体制の構築、成果物の検収を行います。

全体の所要期間は、小規模SaaSで6〜9ヶ月、中規模SaaSで9〜18ヶ月、大規模SaaSで18ヶ月〜3年程度が目安です。

ポイント

外注か自社開発かは、社内の経験者の有無と市場投入のスピードで判断すると整理しやすくなります。全体は準備から運用まで段階が続くため、どの段階でも押さえる点を漏らさないことが大切です。

発注前に準備すべきこと

RFPを中心に、背景と目的、プロダクト概要、技術要件、スケジュールと予算、提案時の要件を配置した図。
提案条件とプロダクト要件を一つの依頼書に集約します。

SaaS開発の発注を成功させるには、発注前の準備が欠かせません。準備が不十分なまま発注すると、開発中に要件の認識が食い違う場面が増え、スケジュール遅延やコスト超過の原因になります。

RFP(提案依頼書)の作成方法

RFP(Request for Proposal:提案依頼書)は、開発会社にプロジェクトの概要と要件を伝え、提案と見積もりを依頼する文書です。RFPに書く内容は、次の項目に分けて整理します。

  • プロジェクトの背景と目的:なぜSaaSを開発するのか、ターゲット市場、解決したい課題、ビジネス目標を明記します(推奨)。
  • プロダクトの概要:SaaSの全体像、主要な機能一覧、ターゲットユーザー像(ペルソナ)
  • 技術要件:マルチテナント対応の有無と想定ユーザー数、パフォーマンスとセキュリティの要件、対応ブラウザ・デバイスや外部サービス連携の要件
  • スケジュールと予算:開発開始とMVP・本格リリースの希望時期、全体予算の上限とフェーズごとの配分の希望
  • 提案時の要件:提案書のフォーマット、提出期限、プレゼンテーションの有無

RFPの品質が提案の品質を左右するため、できるだけ具体的に記述しておくことが大切です。ただし、技術的な実装方法まで細かく限定しすぎると、開発会社の知見を活かしにくくなります。

予算とスケジュールの策定

SaaS開発の予算は、初期開発費用だけでなく、リリース後の運用・保守費用、マーケティング費用、カスタマーサポート費用を含めて、総合的な事業計画として立てることが大切です。初期開発費用の相場は、小規模MVPで500万〜2,000万円、中規模SaaSで2,000万〜5,000万円、大規模SaaSで5,000万〜2億円程度です。

開発では、要件変更や技術的な課題により追加費用が発生することが珍しくありません。そのため、見積もり額の10〜20%程度を予備費(コンティンジェンシー)として確保しておくことをおすすめします。

スケジュールは、開発期間に加えて、発注前の準備期間(1〜2ヶ月)と開発会社の選定期間(1〜2ヶ月)も含め、リリース希望日から逆算して全体のタイムラインを組みます。特にSaaSでは、市場投入のタイミングが競争優位に直結するため、MVP戦略で段階的にリリースする計画が有効です。

ポイント

RFPは具体的に書くほど、各社の提案と見積もりの前提がそろいます。予算には運用費用も含め、見積もり額の10〜20%程度を予備費として見込んでおくことが大切です。

契約形態の選び方と注意点

SaaS開発の外注では、契約形態によって、プロジェクトの進め方、リスクの配分、費用の管理方法が大きく変わります。

自社のプロジェクトの特性に合った契約形態を選ぶことが、スムーズな運営の前提になります。

請負契約と準委任契約の違い

SaaS開発の外注で主に使われる契約形態は、「請負契約」と「準委任契約」の2つです。請負契約は、開発会社が成果物(完成したSaaSプロダクト)の納品を約束する契約です。費用が事前に確定するので予算を管理しやすく、成果物には瑕疵担保責任(契約不適合責任)が発生するため品質保証の面でも利点があります。

一方、請負契約は途中の仕様変更に対応しにくく、変更が生じると追加費用の交渉が必要になります。要件が明確で、予算を厳密に管理したい場合に適しています。準委任契約は、エンジニアの稼働(労務)に対して報酬を支払う契約で、途中の仕様変更や優先順位の変更に柔軟に対応でき、アジャイル開発との相性も良い点が特徴です。

ただし、準委任契約は開発期間が延びれば費用も増え、成果物に対する直接の品質保証はありません。SaaS開発のように市場の反応を見ながら仕様を調整するプロジェクトには、準委任契約が合うケースが多いです。実務では、要件定義・設計を準委任契約で柔軟に進め、要件が固まった開発フェーズで請負契約に切り替えるハイブリッド型も使われています。

契約時に確認すべき重要条項

SaaS開発の契約では、いくつかの条項を事前に確認しておく必要があります。第1は「知的財産権の帰属」で、開発されたソースコード、ドキュメント、デザイン成果物の著作権が発注者側に帰属する旨を明記します。SaaSではソースコードが事業の根幹をなす資産になるため、この条項は特に欠かせません。

第2は「秘密保持義務」で、開発過程で共有される事業戦略、顧客情報、技術情報の扱いについて明確な規定を設けます。第3は「瑕疵担保責任(契約不適合責任)」で、請負契約の場合、納品後に見つかった不具合への対応期間と範囲を明記します。一般的には、納品後3ヶ月から1年の期間が設定されます。

第4は「中途解約条件」で、方針変更や開発会社のパフォーマンス不足などにより途中で解約する場合の条件(通知期間、精算方法、成果物の取り扱い)を事前に定めておきます。第5は「再委託の制限」で、開発会社が作業の一部を別の会社やフリーランスに再委託する場合の条件(事前承諾の要否、再委託先の管理責任)を明確にしておきます。

ポイント

予算と品質保証を重視するなら請負契約、仕様変更が多いなら準委任契約が合いやすく、両者を組み合わせる方法もあります。契約では、知的財産権の帰属を先に確かめることが特に大切です。

発注後のプロジェクト管理と品質確保

発注後にプロジェクトを成功させるには、発注者側の適切な関与とプロジェクト管理が欠かせません。「発注したら後は開発会社にお任せ」という姿勢では、期待どおりのプロダクトが完成しないリスクが高まります。

コミュニケーション体制の構築

SaaS開発では、発注者と開発会社のあいだで密接なコミュニケーション体制を築くことが、プロジェクト成功を左右する重要な要素の一つです。具体的には、週1回から隔週で定例ミーティングを開き、開発の進捗、課題・リスクの共有、次のスプリントの計画確認を行うことをおすすめします。

アジャイル開発の場合は、スプリントレビュー(デモ)に発注者側のプロダクトオーナーが参加し、成果物を直接確認して方向性のフィードバックを返すのが理想的です。日常の質問や確認は、SlackやTeamsなどのチャットツールで素早くやり取りできるよう整えます。

さらに、Jira、Asana、Backlogなどのプロジェクト管理ツールを共有すると、タスクの進捗やバグの状況を発注者側も確認でき、プロジェクトの動きを追いやすくなります。発注者側では、一定の時間をプロジェクトに割けるプロダクトオーナー(もしくはプロジェクト責任者)を置くことが不可欠です。

品質管理と検収のポイント

SaaS開発の品質を確保するには、各フェーズのレビューと検収の流れを事前に決めておくことが大切です。要件定義では、要件定義書が自社のビジネス要件を正確に反映しているか、漏れがないかを確認します。設計では、システムアーキテクチャ設計書、データベース設計書、画面設計書(ワイヤーフレーム)が要件を実現する内容になっているかをレビューします。

開発では、スプリントごとのデモで動くソフトウェアを確認し、期待する動作と合っているかを検証します。テストでは、テスト計画書とテスト結果報告書をレビューしたうえで、UAT(User Acceptance Test:ユーザー受入テスト)を発注者側で実施し、実際のユーザー視点で品質を確かめます。

最終検収では、要件定義書で定めたすべての機能と、パフォーマンス、セキュリティ、可用性などの非機能要件が満たされているかを、網羅的に確認します。検収基準を契約時に定めておけば、検収時のトラブルを防げます。

ポイント

発注者側でプロダクトオーナーを置き、各フェーズの検収基準を契約時に定めておくことが、進行と品質を守る土台になります。

リリース後の運用委託と継続的改善の発注

SaaSのリリース後の運用・保守に含まれる障害対応、セキュリティパッチ適用、パフォーマンス監視、バックアップ・復旧対応の図。
運用作業の範囲を事前に契約で定める構成です。

SaaSは、リリースして終わりではなく、運用・保守と継続的な機能改善が事業の成功に欠かせません。そのため、リリース後も運用・保守と改善の発注を続けることになり、開発フェーズとは別に、どこまでを誰が受け持つかを決めておく必要があります。リリース後の委託体制も、開発フェーズの発注と同時に計画しておく必要があります。

運用・保守契約の設計

SaaSの運用・保守契約では、対応範囲、SLA(サービスレベルアグリーメント)、費用体系を明確に定めておく必要があります。対応範囲には、障害対応(緊急度別の対応時間の定義)、セキュリティパッチの適用、バグ修正などを含めます。さらに、パフォーマンス監視やバックアップ・復旧対応も含まれます。

SLAでは、稼働率の保証水準(一般的には99.9%以上)、障害発生時の応答時間(P1障害で30分以内、P2障害で2時間以内など)、復旧目標時間を具体的に定めます。費用体系は、月額固定費(保守基本料)に、障害対応やバグ修正の工数に応じた従量課金を組み合わせるケースが多く、月額の保守費用は初期開発費用の1〜2%程度が一般的な相場です。

たとえば、初期開発費用が3,000万円のSaaSであれば、月額30万〜60万円程度の保守費用が目安となります。

継続的な機能改善の発注方法

SaaSは事業の成長に伴い、新機能の追加や既存機能の改善を継続的に行う必要があります。その発注方法は、主に「スポット発注」と「ラボ型契約」の2つです。

スポット発注は、改善内容が確定した段階で都度見積もりを取り、個別に発注する方式です。費用を管理しやすい反面、発注のたびに見積もりと承認が必要になるため、スピード感に欠ける場合があります。ラボ型契約は、エンジニアを一定期間確保し、月額固定費で継続的に開発を進める方式です。

ラボ型契約では、発注のたびに見積もりを経る必要がないため、改善をスピーディーに進められます。成長フェーズでは、ラボ型契約で安定した開発リソースを確保し、プロダクトバックログの消化を加速させる方法が有効です。将来的に自社開発へ移る場合は、ナレッジトランスファー(技術移管)を段階的に受けながら、社内エンジニアの採用と育成を並行させる計画を立てておくことが大切です。

ポイント

運用・保守は、対応範囲、SLA、費用体系を契約で明確にしておくことが前提です。改善の発注は、スポット発注かラボ型契約か、事業の成長段階に合わせて選ぶことが大切です。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。