スクラム開発の見積相場や費用/コスト/値段について

スクラム開発の費用は、小規模なら1,200万〜2,800万円、中規模なら5,000万〜1.2億円が目安です。大規模では数億〜十数億円に達することもあります。

スクラムはスプリントを重ねて作るため、開始時点の全体費用は見えにくくなります。金額は、規模やチーム構成、スプリント数、要件によって変わります。

▼全体ガイドの記事
・スクラム開発の完全ガイド

スクラム開発の費用相場とコスト構造

スクラム開発の費用を人件費、スクラムイベントの工数、ツール・インフラ費用の3層で示した図。
見積もりでは人件費以外の工数や環境費も確認できます。

費用を把握するには、スクラム特有の計算方法を知っておくことが近道です。ウォーターフォール型開発では「機能一覧×工数×単価」で一括に見積もりますが、スクラム開発では「チーム単価×スプリント数」が基本の計算式です。スプリントとは、1〜4週間を1サイクルとする反復開発の単位のことです。

スクラム開発では、このスプリントを繰り返して段階的にプロダクトを完成させます。具体的には、チームに必要なメンバーの月額単価を合算し、スプリントの実施回数を掛け合わせて、開発費用の目安を算出します。

開発規模別の費用目安

スクラム開発の費用は、システムの規模と複雑さによって大きく異なります。小規模なWebアプリケーションや社内ツールの場合は、スプリント期間を2週間とし、プロダクトオーナー・スクラムマスター・エンジニア2〜3名の最小構成で組むと、1スプリントあたりのチーム単価は200万〜350万円程度です。初回リリースまでに6〜8スプリントを想定すると、開発費用の総額は1,200万〜2,800万円が目安です。

一方、中規模システム(ECサイト・業務管理システムなど)では、エンジニアを5〜7名に増員したチーム構成で、1スプリントあたりのチーム単価は500万〜800万円程度です。リリースまでに10〜16スプリントを費やすことが多く、総開発費用は5,000万〜1.2億円程度が相場です。

さらに、大規模システム(金融・物流・製造業の基幹システムなど)では、複数のスクラムチームを並列で走らせる「スケールドアジャイル」体制が必要になります。月あたりのチーム費用だけで2,000万〜5,000万円以上になるケースも少なくありません。プロジェクト全体の費用は数億〜十数億円規模に達することがありますが、実際の額は要件やスキル、発注先の規模で大きく変わります。

コストを構成する主な要素

コストは、人件費、スクラムイベントの工数、ツール・インフラ費用の3つで構成されます。このうち人件費は、各ロールの月単価が大半を占めます。

  • PO(プロダクトオーナー)は100万〜200万円/月、SM(スクラムマスター)は100万〜150万円/月が相場です。
  • エンジニアは、フロントエンドが70万〜120万円/月、バックエンドが80万〜130万円/月、インフラエンジニアが90万〜140万円/月です。
  • シニアクラスやアーキテクトの役割を担う場合は、150万〜250万円/月に達することもあります。

スクラムイベントにかかる工数は、見落とされがちなポイントです。スクラムでは、毎スプリントに「スプリントプランニング」「デイリースクラム」「スプリントレビュー」「スプリントレトロスペクティブ」の4つのイベントを行います。

1スプリント(2週間)あたりのイベント合計は10〜16時間で、エンジニア稼働時間の10〜15%程度を占めます。特に、この工数を見積もりに入れていないと、進捗が計画より遅れる原因になるので注意が必要です。

さらに、ツール・インフラ費用は次のように別途発生します。

  • Jira・Confluence:月額2万〜10万円程度
  • GitHub・GitLab:月額1万〜5万円程度
  • AWSやGCP:規模に応じて月額5万〜100万円以上

ポイント

提示された金額が妥当かは、規模の目安と内訳を並べて比べると判断しやすくなります。特に、イベント工数が見積もりに入っているかは、あとで差が出やすい点です。

スクラム開発の見積もり比較のポイント

スクラム開発の見積もりで見る4つの基準を、チェック項目として並べた図。
同じ確認軸で見積書を読むと、前提の違いを比べやすくなります。

スクラム開発の見積もりは、ウォーターフォール型開発の見積もりとは性質が異なります。ウォーターフォール型では、「要件定義→設計→実装→テスト」という固定された流れを前提に、全工程の費用を一括で算出します。

一方、スクラム開発では、スプリントを重ねるうちに要件が変わり、具体化していきます。そのため、プロジェクト開始時点の全体見積もりは「仮の計画」と考えるのが自然です。この特性を理解して見積もりを評価することが、発注者にとって大切です。

見積書の読み方と比較の基準

まず見るのは、「スプリントあたりのチーム単価」が明示されているかどうかです。単価が書かれていない見積書は、後から追加費用が発生するリスクが高いため、注意が必要です。次に、スプリント単価の根拠となるメンバー構成と、フルタイムかパートタイムかといった稼働率が書かれていれば、透明性は高いといえます。

特に重要なのは、スクラムイベントの工数が含まれているかどうかです。イベントの時間が開発工数から差し引かれているかで、実際の開発キャパシティは大きく変わります。さらに、MVPとフルスコープの費用分岐が示されているかも、見ておきたい点です。

優れた見積もりは、MVPのリリースまでのスプリント数と、フルスコープまでの総スプリント数を分けて示します。そのため、この分岐があれば予算に応じてスコープを調整できます。また、複数社から見積もりを取った場合は、総額だけでなく「1スプリントあたりの費用対効果」「チームのスキルセット」「過去のスクラム実績」の3点で比べると、適正な評価につながります。

複数社から見積もりを取る方法

複数社から見積もりを取るときは、RFP(提案依頼書)の作成が効果的です。RFPには、開発するプロダクトの概要・目的・想定ユーザー数、優先的に実装したい機能のリスト(プロダクトバックログのドラフト)、希望するMVPリリース時期を記載します。また、予算の上限(もしくは概算)、チームに求めるスキルセット、コミュニケーション方法(オンサイト/フルリモート/ハイブリッド)も書き添えます。

特にスクラム開発では、RFPにスプリント期間の希望(1週間/2週間)、スクラムイベントの進行言語(日本語/英語)を明記します。さらに、プロダクトオーナーを発注側が担うか、受注側に委任するかを書いておくと、より正確な見積もりが得られます。一般的に、見積もりは3〜5社程度に依頼し、最低でも2社の見積もりを比較することが推奨されます。

見積もり金額だけでなく、提案の質(スプリント計画の詳細度、リスク項目の有無、過去事例の有無)も重要な評価基準です。なお、スクラム開発に不慣れなベンダーは、スクラムと名乗りながら実態はウォーターフォール的に進めることがあります。そこで、過去のスクラム実績と、バーンダウンチャートやスプリントレビュー資料などの提示を求めると、ベンダーのスクラム実装力を確認できます。

ポイント

見積もりは総額だけでなく、単価、稼働率、イベント工数、MVPとフルスコープの分岐が書かれているかで見ると、前提の違いに気づきやすくなります。

スクラム開発のランニングコストと隠れた費用

スクラム開発でも、初期の開発費用のほかに、継続して発生するコストがあります。ITシステムへの投資全体では、新規導入費用と既存システムの運用・保守費用の比率が「2:8」といわれています。

このため、長期的なランニングコストが総コストの大半を占めることになります。スクラム開発で作るシステムも同様で、リリース後の保守・改善・運用費用を事前に見込んでおくと、予算計画の精度が高まります。

初期費用以外に発生するコスト

スクラム開発の完了後も、保守・運用費用、継続的な機能改善費用、インフラ・ツール費用の3つが発生します。保守・運用費用は、年間では開発費用の15〜20%程度が相場とされています。たとえば、開発費用が3,000万円のシステムなら、年間450万〜600万円程度の保守費用が発生します。

  • 保守・運用費用:サーバーの監視や障害対応、セキュリティパッチ適用などにかかる費用です。
  • 継続的な機能改善費用:リリース後の改善スプリントに使う費用です。
  • インフラ・ツール費用:毎月発生する費用です。

この「ポストリリーススクラム」は、機能改善(エンハンスメント)のためにリリース後も、開発時より小さめのチームで月次スプリントを続けるケースが多く、月100万〜300万円程度が目安です。

また、機能改善費用は、「リリース=完成」ではなく「リリース=最初のマイルストーン」が基本です。ユーザーの反応を受けた改善のスプリントが続くため、予算には開発費用の30〜50%程度を年間の機能改善費用として見込むのが現実的です。

さらに、インフラ・ツール費用には、クラウドのサーバー費用(AWS/GCP/Azure)、CI/CDの実行費用、モニタリングツールやログ管理ツールなどが含まれます。ユーザー数やトラフィックが増えるとインフラ費用も増えるため、スケーリングを考えた見積もりが必要です。

コストを抑えるための実践的アプローチ

費用を抑える実践的な方法は、いくつかあります。最も効果的なのは「MVPファースト」で、最小限の機能でリリースし、ユーザーの反応を見てから次のスプリント計画を立てることで、不要な機能への投資を防げます。ウォーターフォール開発の「作り切ってからリリース」とは違い、「使える最小限でリリースし、反応を見て拡張」するほうが、費用対効果を大きく高めます。

次に、チームの継続性も大切です。スクラムでは、スプリントを重ねるほどベロシティ(1スプリントで完了できる作業量)が向上する一方、メンバーの入れ替わりが頻繁に起きるとベロシティが低下し、結果として費用が増えます。そのため、長期契約を前提にチーム体制を安定させることが、コストの抑制に直結します。

また、プロダクトオーナーを外注先に任せると、その分の人件費が別途かかります。一方、自社でプロダクトオーナーを内製化し、役割を担える人材を育成・任命すれば、人件費を抑えつつ、プロダクトへの当事者意識も高められます。さらに、既存のオープンソースのライブラリやフレームワーク、APIが公開された認証・決済・メール配信などの外部サービスを使えば、ゼロから実装する工数や開発範囲を減らせます。

ポイント

初期費用だけで予算を組むと、保守や機能改善の費用を見落としがちです。保守は開発費用の15〜20%、機能改善は30〜50%を年間で見込んでおくと、実態に近づきます。

スクラム開発の見積もり事例と費用シミュレーション

スタートアップ向けMVP開発、中規模業務システム、大規模EC再構築の費用目安を3つのパネルで示した図。
ケースごとの規模と費用感を横並びで見渡せます。

スクラム開発の費用感を具体的につかむため、ケース別の費用シミュレーションと、見積もり依頼時の注意点を取り上げます。ただし、金額はあくまで目安で、発注前の予算計画や社内での費用感の共有に活用できます。

ケース別の費用シミュレーション

ケース別の費用は、次の3つの例で見ます。

  • ケース①:スタートアップ向けMVP開発(BtoCウェブサービス):MVP後に体制を縮める例です。
  • ケース②:中規模業務システム(社内向け営業支援SFA):保守・運用費も見込む例です。
  • ケース③:大規模ECプラットフォーム再構築:複数チームで段階的に発注する例です。

ケース①の体制は、PO(発注者兼任)、SM兼FE 100万円、BE2名 200万円、デザイナー70万円で、計370万円/月です。8スプリント(4ヶ月)で開発費は1,480万円、インフラ費用(月5万円×4ヶ月)とツール費用(月3万円×4ヶ月)の32万円を加え、総額1,512万円が目安です。MVP後はSM兼エンジニア1名・BE1名に縮め、月130万〜200万円程度です。

ケース②の体制は、PO(外注)150万円、SM120万円、FE2名200万円、BE3名330万円、QA90万円で、計890万円/月です。12スプリント(6ヶ月)で開発費は890万円×6ヶ月=5,340万円、インフラ(月20万円×6ヶ月)の120万円を加えると、総額は5,460万円が目安です。リリース後の保守・運用費は、年間800万〜1,000万円程度を見込みます。

ケース③は、複数スクラムチームが並走するスケールドアジャイル体制で、月あたりの総チーム費用は2,000万〜3,500万円程度です。24スプリント(12ヶ月)を要すると、開発費用の総額は2.4億〜4.2億円規模になります。リリース計画を段階的に設定し、フェーズごとに予算承認を得る「段階的発注」は、費用リスクを分散させる有効な手段です。

見積もり依頼時の注意点とリスク回避

まず、固定価格の一括請負契約は、要件が変わる前提のスクラムとは合わず、品質低下や追加費用の争いを招きやすくなります。そのため、準委任契約(タイムアンドマテリアル型)を基本に、スプリントごとに成果と費用を確かめながら進めるのが適しています。スクラムでは柔軟に仕様変更できる反面、追加要望が次々と出て開発範囲が際限なく広がる「スコープクリープ」が、費用超過の主な原因になります。

対策として、追加要望はプロダクトバックログに加えて優先順位を付け、既存のスコープとのトレードオフを確かめます。ベロシティ(1スプリントの開発量)は、稼働してみないと正確にはわからず、楽観的な見積もりでは期間も費用も大きく膨らむおそれがあります。そこで、最初の2〜3スプリントで実際のベロシティを測り、ロードマップを更新する流れを契約段階で明記しておくとよいでしょう。

プロダクトオーナーが不在のまま開発側に任せきりになると、要件の判断が遅れてスプリントの生産性が落ちます。そのため、発注者側に週3〜5時間程度を割けるプロダクトオーナー担当者を必ず置くことが、コスト超過の防止に欠かせません。

ポイント

見積もりは、固定価格より準委任契約でスプリントごとに費用を確かめる形が基本です。ケースの金額は、自社に近い例で人数と期間を置き換えると、予算の目安として使えます。

まとめ

スクラム開発の費用は、「チームメンバーの月額単価×スプリント数」が基本の計算式です。目安は、小規模MVP開発で1,200万〜2,800万円、中規模業務システムで5,000万〜1.2億円、大規模基幹システムで数億〜十数億円となります。

見積もりを評価する際は、スプリントあたりのチーム単価の透明性、スクラムイベント工数の考慮の有無、MVPとフルスコープの費用分岐の有無を確認することが大切です。また、リリース後のランニングコスト(保守費用・機能改善費用・インフラ費用)が初期の開発費用を上回るケースも多いため、中長期の総費用で予算を組むことが欠かせません。

スクラム開発特有のリスクは、スコープクリープ、ベロシティの過大見積もり、プロダクトオーナー不在の3つです。これらを事前に把握したうえで、準委任契約によりスプリント単位で費用を管理する体制を組むことが、費用超過を防ぐ最善策です。

スクラム開発の費用に関するご相談や具体的な見積もりのご依頼は、ぜひお気軽にご連絡ください。

スクラム開発についてさらに詳しく知りたい方は、以下の完全ガイドもあわせてご覧ください。

▼スクラム開発の完全ガイドはこちら
・スクラム開発の完全ガイド

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>

執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。