スクラム開発の完全ガイド

スクラム開発は、1〜4週間のスプリントを繰り返して段階的に完成させるアジャイル開発の進め方です。3つのロールが透明性・検査・適応の原則に沿って連携するため、変化に対応しながら価値を届けられます。

進め方から発注の手順までを順に取り上げ、各テーマの詳細は下の関連記事で確認できます。

▼関連記事一覧

・スクラム開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順
・スクラム開発でおすすめの開発会社/ベンダー6選と選び方
・スクラム開発の見積相場や費用/コスト/値段について
・スクラム開発の発注/外注/依頼/委託方法について

スクラム開発の進め方・流れと基本概念

スクラムの経験主義を支える透明性・検査・適応の3本柱を示す図
共有して確かめ、結果を次の行動へつなぐ構造です。

要件変更、リリース後の想定違い、予算超過は、ソフトウェア開発で起こり続ける課題です。こうした課題を背景に、不確実性の高い開発で急速に普及しているのが、アジャイル開発を代表するフレームワークのスクラムです。スクラムでは、1〜4週間のスプリントを繰り返し、段階的にプロダクトを完成させます。

たとえば、FBIはウォーターフォールで5年かけても完成しなかったプロジェクトを、スクラムで1年以内に完了しました。そのコストは10分の1以下になりました。国内でも、メルカリやサイバーエージェントなどが採用し、開発速度とプロダクト品質の両立に成功しています。

スクラムを理解する第一歩は、ウォーターフォール開発との違いを知ることです。ウォーターフォール開発は、要件定義から始めて、設計、開発、テストへと順に進みます。リリースは最後の工程で、各工程が完了するまで次へ進めません。

ウォーターフォール開発では、市場や顧客ニーズの変化が速いと、リリース時点で仕様が陳腐化するリスクがあります。一方で、スクラムは変化を機会と捉え、優先度の高い機能から作成・検証・改善します。

スクラムを採用する企業では、市場投入までの期間がウォーターフォールと比べ平均30〜40%短縮されるというデータも報告されています。

スクラムの3つのロールとスプリントの仕組み

スクラム開発では3つのロールが定義され、それぞれが責任と権限を持って連携します。

  • プロダクトオーナー(PO):プロダクトの価値を最大化し、プロダクトバックログの優先順位を決めます。
  • スクラムマスター(SM):チームの障害を取り除き、スクラムの実践と自律的な成長を支えます。
  • 開発者:スプリント内の作業を担い、動くソフトウェアであるインクリメントを作ります。

POは必ず1人とします。委員会による合議制にすると、意思決定が遅れ、チームの混乱につながります。

SMは、指示命令型ではなく、チームの環境を整えるサーバント型リーダーです。実際に、優れたSMによって、ベロシティが6ヶ月で3倍になった事例もあります。

開発者は、自己組織化とクロスファンクショナルを特徴とします。また、理想的なチーム規模は3〜9名です。

スプリントは1〜4週間の固定サイクルで、多くのチームは2週間を採用します。各サイクルのイベントを通じて、検査と適応を繰り返します。

主なイベントは、スプリントプランニングと毎日15分のデイリースクラムです。そのほかに、スプリントレビューとスプリントレトロスペクティブがあります。

スクラム成功のための3つの柱と実践上の注意点

スクラムガイドでは、経験主義を支える柱と価値基準を定めています。柱は、進捗を見えるようにすること、成果を確かめること、結果に応じて変えることを表します。

  • 透明性:スプリントゴール、作業の進捗、バックログの状態を全員で共有します。
  • 検査:成果物やプロセスが計画に沿うかを、定期的に確かめます。
  • 適応:検査の結果を受けて、プロセスや計画を柔軟に変えます。

特に、デイリースクラムやスプリントレビューは検査の機会です。この3本柱を支える価値基準は、コミットメント、集中、開放性、尊重、勇気の5つです。

形式だけを真似てウォーターフォール的に管理すると、実態がスクラムと異なる失敗につながります。たとえば、スプリントの長さを途中で変えることや、イベントの省略、POの意思決定権の分散は、機能不全の典型例です。

そのため、スクラムを機能させるには、ツールや手順だけでなく、文化面と組織面の理解や変革も必要です。また、レビューでステークホルダーが積極的にフィードバックし、レトロスペクティブで率直に改善点を話せる心理的安全性が、成功を支えます。

▶ 詳細はこちら:スクラム開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順

ポイント

要件が途中で変わりそうな開発なら、スクラムの進め方を検討する価値があります。判断の目安は、変化を前提に作って確かめる体制を社内で持てるかどうかです。

スクラム開発でおすすめの開発会社・ベンダーの選び方

パートナー選びを誤ると、スクラムと名乗りながら実態はウォーターフォールのままになり、メリットを得られないおそれがあります。特に、スプリント設計、バックログの優先順位付け、レトロスペクティブの運用などは、プロジェクトの経験が成否を左右します。

方法を知っているだけでなく、実践経験を持つパートナーを選ぶことが、プロジェクト成功への第一歩です。

発注前に確認すべきパートナー選定の基準

資格や完遂事例に加え、仕様変更に対応できる契約と連携体制も、あわせて確かめておきます。

  • 資格と実績:認定者の在籍数と、スクラムで完遂した事例。
  • 契約の柔軟性:準委任契約やタイム&マテリアル型への対応の有無。
  • 連携体制:デイリーとレビューへの参加方法、利用ツールを確かめ、協業の円滑さを見ます。

確認する資格の例は、認定スクラムマスター(CSMやPSM)や認定プロダクトオーナーです。資格は、知識の裏付けとして役立ちます。

発注側は、バーンダウンチャートやレビュー資料など、実際の成果物を見せてもらうと、実装力を判断する材料になります。

スクラムは仕様変更を前提とするため、固定価格の請負契約で進めると、変更のたびにコストが膨らみ、スクラムの利点を得にくくなります。

発注者は、POとして積極的に関わることが前提です。そのため、その関与を支援できる会社を選ぶと、長期的な成功につながります。

各社の強みは、支援範囲、認定者の体制、クラウドの知見などで異なります。6社のうち、ここではripla、スパイスファクトリー、メンバーズ、KDDIアイレットの4社を取り上げ、下の一覧にその特徴をまとめます。

  • 株式会社ripla:コンサルティングから開発まで一気通貫で支援します。
  • スパイスファクトリー株式会社:エンジニアの約半数がCSMを保有します。
  • 株式会社メンバーズ:認定SM在籍のニアショア専任チームを提供します。
  • KDDIアイレット株式会社:AWS導入実績1,600社超の知見があります。

riplaは社内DXの経験を活かし、ビジネス成果とシステムの定着を支えます。たとえば、POが迷う場面では、ビジネス目線でバックログを整理します。

スパイスファクトリーは、創業以来アジャイル開発に取り組んできた文化が強みです。また、メンバーズはコスト競争力と実践力を両立します。

KDDIアイレットは、AWSの知見とスクラムを組み合わせた高速開発が強みです。インフラからアプリまでを、一貫して担当します。

ほかにも国内にはスクラム専門の会社があります。規模、予算、求める技術スタックに応じて、パートナーを選びます。

選ぶ際は、価格だけでなく、1スプリントあたりの費用対効果、チームのスキル、過去の実績を比べると、各社を適正に評価できます。

▶ 詳細はこちら:スクラム開発でおすすめの開発会社/ベンダー6選と選び方

ポイント

パートナーは、実践経験や認定者の在籍、契約への対応、過去の実績で比べます。判断の目安は、スクラムの型だけでなく、成果物や進め方を実際に見せてもらえるかどうかです。

スクラム開発の費用相場・見積もりの考え方

PO、SM、エンジニア各職種の月額相場を並べた図
役割によって月額相場の幅が異なります。

発注担当者からは、費用の見当がつかない、見積もりの適正さを判断できないという声が聞かれます。ウォーターフォール型とは異なり、スクラムはスプリントを重ねて段階的に構築するため、開始時点では総費用が見えにくい手法です。そのため、費用の仕組みを知っておくと、見積もりを読み解く手がかりになります。

開発規模別の費用目安とコスト構成

基本の算出式は「チーム単価×スプリント数」です。機能一覧、工数、単価から一括で見積もる方式とは、考え方が異なります。

必要なチーム構成と開発期間が規模によって異なり、費用もそれに応じて変わります。小規模から大規模までの目安を、次の一覧で比べます。

  • 小規模:1スプリント200万〜350万円、総額1,200万〜2,800万円。
  • 中規模:1スプリント500万〜800万円、総額5,000万〜1.2億円。
  • 大規模:月あたりのチーム費用が2,000万〜5,000万円以上のケースもあります。

小規模は、PO、SM、エンジニア2〜3名の体制で、初回リリースまで6〜8スプリントが目安です。Webアプリや社内ツールがこれに当たります。

中規模は、ECサイトや業務管理システムなどで、エンジニア5〜7名、10〜16スプリントを想定します。大規模では、複数チームを並列で動かす「スケールドアジャイル」体制が必要になる場合があります。

費用は、役割別の月額相場でも構成されます。月額相場は、POが100万〜200万円、SMが100万〜150万円、エンジニア各職種が70万〜140万円です。

イベントは1スプリントあたり10〜16時間で、全工数の10〜15%程度を占めます。このため、見積もりにイベント工数が含まれるかの確認が欠かせません。

見積もり比較のポイントとコスト最適化の実践的アプローチ

見積もりを比べるうえでは、内訳の見方と、費用を抑える方法、運用費の目安を押さえておくと役立ちます。

  • チーム単価:スプリントあたりの料金が明示されているか確認します。
  • MVPと全体範囲:各範囲に必要なスプリント数が分かれているか見ます。
  • MVPファースト:最小限の機能を先に出し、反応を次の計画に活かします。
  • チームの継続性:メンバーの交代が少ないかどうか。

単価が不明瞭な見積書では、後から追加費用が生じるリスクがあります。さらに、イベント工数の扱いも確かめておく必要があります。MVPと全体のスプリント数を分けて見積もると、発注判断の材料がそろいます。

チームは、スプリントを重ねるほどベロシティが上がります。そのため、頻繁にメンバーが交代すると速度が落ち、費用の増加につながります。また、年間の保守費用は開発費用の15〜20%程度、継続的な機能改善費用は30〜50%程度を見込むのが現実的です。

▶ 詳細はこちら:スクラム開発の見積相場や費用/コスト/値段について

ポイント

費用は「チーム単価×スプリント数」で考えるのが基本です。見積もりにイベント工数や保守費用が含まれるかも、判断の材料になります。

スクラム開発の発注・外注・委託方法

外注か内製かの判断から契約条件の決定まで、発注前の4段階を示す図
前段の判断と共通理解が、契約条件の検討につながります。

委託先や進め方に悩む担当者は少なくありません。従来の発注と同じ感覚で進めると、スクラム特有の問題が起きることがあります。そこで、発注者の基礎知識と手順、契約上の注意、発注後の管理を順に押さえることが成功につながります。

発注前の準備・手順と契約時の重要ポイント

外注か内製かを見極めたうえで、依頼先、提案依頼書、契約の順に準備します。どちらを選ぶかは、状況に応じた判断が必要です。

  1. 社内の経験や開発目的から、外注か内製かを判断する。
  2. 依頼先の種類を比べ、候補を絞り込む。
  3. 共通理解を作るためのRFP(提案依頼書)を用意する。
  4. 契約形態と権利を決め、変更の手順と責任範囲を定める。

スクラム経験者が社内にいない、または少ない場合は、外注が候補になります。また、単発や短期の案件、自社のコア事業外の開発では、外注が一つの選択肢になります。

継続的な改善や運用を前提とするプロダクト開発や、技術力を長期的に社内へ蓄積したい場合は、内製が向いています。

依頼先には、大手SIerや中小開発会社、フリーランスがあります。オフショア開発会社も選択肢に入ります。なかでも中小のスクラム専門会社は、低コストで柔軟な場合が多いです。

RFPは、完璧な仕様書ではなく、協働の共通理解を作るためのものです。記載するのは、背景やユーザーストーリー形式の機能概要、予算上限と求める体制です。

IPAの「情報システム・モデル取引・契約書(アジャイル開発版)」は、準委任契約を推奨しています。準委任契約では、業務遂行に対価を払い、仕様変更にも柔軟に対応できます。

契約書では、知的財産権の帰属と秘密保持条項を明確にします。加えて、バックログ変更の手順と瑕疵担保責任の範囲も定めます。

発注後のプロジェクト管理とコミュニケーション体制の構築

発注後は、POが意思決定と優先順位付けに参加します。そのうえで、管理、品質確認、振り返りを続けられる体制を整えます。

  • POの関与:各スプリントの判断に能動的に参加します。
  • 状況の可視化:ツールを使い、開発状況を常に共有します。
  • 進捗管理:バーンダウンチャートやベロシティを確認します。
  • 品質確認:成果物の完成度を、スプリントごとに確かめます。

POを丸投げすると、本来の効果は得られません。そのため、週に数時間から数十時間を割ける人をPOに選ぶのが理想です。

連絡や管理には、SlackやMicrosoftTeams、JiraやTrello、ZoomやGoogle Meetなどを組み合わせます。バーンダウンチャートは、スプリント内の残作業量を示し、計画どおりに進んでいるかを把握するのに役立ちます。

優れた会社は、継続的インテグレーション(CI)・継続的デリバリー(CD)のパイプラインを整え、コード変更を自動でテストします。スプリントごとに、バグが累積していないかも確かめます。成果物は「完成の定義(Definition of Done)」に照らして検証します。

四半期に一度程度、全体ロードマップを見直すと、ビジネス目標との整合性を保つうえで有効です。

▶ 詳細はこちら:スクラム開発の発注/外注/依頼/委託方法について

ポイント

外注か内製かは、社内のスクラム経験と開発の目的で判断します。契約は準委任契約を前提に、変更手順と責任範囲を最初に決めておくことが、発注後の管理の出発点になります。

まとめ:スクラム開発を成功させるための全体像

スクラムでは、3つのロールが透明性・検査・適応のもとで連携し、短いスプリントを繰り返しながら、変化に応じて価値を届けます。

市場投入までの期間が平均30〜40%短縮されるというデータが示すように、正しい実践は開発速度と品質の両立に役立ちます。

外注する場合は、認定スクラムマスターの在籍、準委任契約への対応、過去の実績を確認して、パートナーを選びます。費用はチーム単価とスプリント数で考え、MVPファーストで最適化します。そのうえで、発注後もPOが参加して改善を続けます。

▼関連記事一覧(再掲)

・スクラム開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順
・スクラム開発でおすすめの開発会社/ベンダー6選と選び方
・スクラム開発の見積相場や費用/コスト/値段について
・スクラム開発の発注/外注/依頼/委託方法について

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>

執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。