スクラム開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順

スクラム開発は、1〜4週間の短いスプリントを繰り返し、成果へのフィードバックを次の開発に反映させていく進め方です。

アメリカのFBI捜査局は、ウォーターフォール型で5年かけても完成しなかったプロジェクトを、スクラムで1年以内に完了させました。コストも10分の1以下に削減しています。

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スクラム開発の全体像

スクラムを機能させる透明性・検査・適応の3つの柱を注釈で示した図解。
3つの柱がそろうことで、検査の結果を次の適応につなげられます。

スクラム開発は、複雑な課題に柔軟かつ創造的に取り組み、解決策を生み出すためのフレームワークです。

スクラムは1990年代にジェフ・サザーランドとケン・シュウェーバーが提唱しました。その公式な定義は、2020年に改訂された「スクラムガイド」にまとめられ、世界各地で参照されています。

スクラムでは、短いスプリントを繰り返すことで、価値を早く継続的に届けられます。各回で得た学びを次の計画に反映できるため、変化にも対応しやすくなります。

対照的に、ウォーターフォールは全仕様を先に決めてから、一括して開発を進めます。スクラムは優先度の高い機能から作って試し、改善を重ねるため、手戻りを抑えられます。

ウォーターフォール開発との根本的な違い

ウォーターフォール開発は、要件定義→設計→開発→テスト→リリースという工程を順番に進める手法です。

要件が最初から明確で変更の少ないプロジェクトには、ウォーターフォールが向いています。一方で、市場や顧客ニーズが急速に変わる今は、リリース時にすでに仕様が古くなるおそれがあります。

この2つの違いは、工程の進め方、変化への向き合い方、フィードバックの扱いに表れます。

  • 進め方:ウォーターフォールは各フェーズの完了を待って次へ進み、スクラムは短いスプリントを繰り返します。
  • 変化への向き合い方:変化を避けるべき脅威ではなく、「取り込むべき機会」として捉えるのがスクラムです。
  • フィードバックの扱い:スプリントごとに動くプロダクト(インクリメント)を完成させ、ステークホルダーの声を次の計画に反映させる点です。

こうした違いは、開発スピードにも表れています。スクラムを採用している企業では、ウォーターフォールと比べて市場投入までの期間が平均30〜40%短縮されるというデータも報告されています。

検査と適応を重視するスクラムは、問題を早期に見つけて修正コストを抑えられ、財務面でのメリットも大きいといえます。

スクラムを支える3つの柱と5つの価値基準

スクラムガイドでは、スクラムを機能させる3つの経験主義の柱を掲げています。

  • 透明性:スプリントゴールや作業の進捗、プロダクトバックログの状態を全員が見て分かるようにしておくことです。
  • 検査:成果物やプロセスが計画に沿っているかを定期的に確認することで、デイリースクラムやスプリントレビューがその機会として機能します。
  • 適応:検査の結果に基づいて、プロセスや計画を柔軟に変えることです。

その3つの柱を支えるのは、「コミットメント」「集中」「開放性」「尊重」「勇気」の5つの価値基準です。たとえば「勇気」は、チームが困難な問題や複雑な課題に正直に向き合い、正しいことをするための勇気を指します。

5つの価値基準が文化として根付いたチームは、スクラムの形だけをまねたチームと比べて、長期的に高いパフォーマンスを発揮します。

スクラムを導入する際は、ツールや手順を整えるのと同時に、こうした文化面への理解も欠かせません。

スクラム開発の3つのロール

スクラム開発では、プロダクトオーナー、スクラムマスター、開発者(開発チーム)の3つのロールが明確に定められています。それぞれが固有の責任と権限を持ち、互いに補い合うことで、スクラムは機能します。

ロールの境界が曖昧なまま導入すると、責任の所在が不明確になります。その結果、意思決定が遅れたり、チームのモチベーションが下がったりします。だからこそ、最初にロールを正確に理解することが、成功への第一歩となります。

スクラムチームの適切な規模は10名以下とされており、これを超えると俊敏性が損なわれます。

プロダクトオーナー:プロダクト価値の最大化責任者

プロダクトオーナー(PO)は、スクラムチームが開発するプロダクトの価値を最大化することに責任を持つ、唯一の人物です。最も重要な職務は「プロダクトバックログの管理」です。プロダクトバックログとは、プロダクトに必要な機能・改善・修正のリストで、POはそのアイテムに優先順位をつけ、常に最新の状態に保ちます。

「なぜこの機能を作るのか」「どの機能を先に届けることで顧客価値が最大化されるのか」という判断は、すべてPOが行います。そのため、POにはビジネス戦略の理解、顧客ニーズの把握、ステークホルダーとの調整能力が求められます。国内での一般的な例では、事業部門のプロダクトマネージャーやプロジェクトオーナーがPOを担うケースが多く見られます。

注意すべき点として、POは1人でなければなりません。委員会や複数人の合議でバックログを管理すると、優先順位の決定が遅れ、チームが混乱します。また、POとスクラムマスターの兼任は、ロールの目的が相反するため避けることが推奨されています。

スクラムマスター:チームの守護者であり変革の推進者

スクラムマスター(SM)は、スクラムチームがスクラムの理論と実践を正しく理解し、適用できるよう支援するサーバント型リーダーです。サーバント型リーダーシップとは、指示命令型ではなく、チームの障害を取り除き環境を整えることで、自律的な成長を促すリーダーシップスタイルを指します。

スクラムマスターの具体的な職務は多岐にわたりますが、その支援は、イベントの進行、障害の除去、POとチームへの支援の三つに分けられます。

  • スクラムイベント:スプリントプランニング、デイリースクラム、スプリントレビュー、スプリントレトロスペクティブの4つが、生産的に進むよう進行を支えます。
  • 障害の除去:外部からの割り込み作業、承認フローの遅延、ツールの問題などを取り除きます。
  • POとチームの支援:POがプロダクトバックログを効果的に管理できるようコーチし、組織全体へのスクラム普及も担います。

スクラムマスターは、プロジェクトマネージャーとは役割が根本的に異なり、タスクを「管理」する権限は持ちません。そのかわりに、チームの自己組織化を促し、問題を自分たちで解決できる状態を目指します。スクラムマスターの質はチームのパフォーマンスを大きく左右します。たとえば、優れたスクラムマスターが入ったことで、チームのベロシティが6ヶ月で3倍になった事例も報告されています。

開発者:スプリントで価値を生み出す主役

スクラムにおける開発者(Developers)は、スプリント内で具体的な作業を行い、インクリメントを作成する責任を持ちます。2020年版スクラムガイドでは、「開発チーム」という呼称が「開発者」に変わり、エンジニアに限らず、デザイナーやQAエンジニア、データアナリストなど、プロダクト開発に関わる専門家すべてを指します。

開発者の最大の特徴は、「自己組織化」と「クロスファンクショナル」であることです。

  • 自己組織化:外部からの指示に頼らず、自分たちで計画を立て、実行し、改善する能力です。
  • クロスファンクショナル:設計・開発・テストなどの作業をチーム内で完結できる、多様なスキルセットを持つことです。

スプリントプランニングでは、スプリントゴールに向けたタスク計画を自分たちで作り、デイリースクラムでは15分以内に進捗と障害を共有します。こうした作業を通じて、スプリント内で動くインクリメントを完成させます。さらに、「完成の定義(Definition of Done)」を開発者自身が策定・維持することも、重要な責務の一つです。

理想的なチーム規模は3〜9名程度とされ、この範囲を超えると、意思決定のスピードと一体感が損なわれます。

チーム規模の目安は3〜9名程度で、この規模が意思決定の速さと一体感を両立させやすいとされています。

ポイント

POが1人に定まっているか、POとスクラムマスターが同じ人になっていないかを、導入前に見ておくと責任の所在がはっきりします。

スクラム開発の進め方:スプリントの流れ

スプリントプランニング、デイリースクラム、スプリントレビュー、スプリントレトロスペクティブを環状に並べた図解。
最後の振り返りで決めた改善点が、次の計画へ戻ります。

スクラム開発の心臓部は「スプリント」です。スプリントは1〜4週間の固定された開発サイクルで、この期間内に、スプリントプランニング、デイリースクラム、スプリントレビュー、スプリントレトロスペクティブの4つのイベントが行われます。

スプリントの長さは、一度決めたら変えないことが基本です。多くのチームは2週間を採用しています。その理由は、市場の変化に素早く対応しつつ、チームが集中して成果を出すのに十分な長さを確保できるためです。

スプリントプランニング:スプリントの設計図づくり

スプリントプランニングは、スプリントの開始時に行われる計画イベントです。タイムボックスは、1週間のスプリントなら最大2時間、2週間のスプリントなら最大4時間が目安です。スプリントプランニングでは、スプリントゴール、PBIの選択、タスク分解を決めます。

  • スプリントゴール:スプリントで達成する価値を一文にします。たとえば「ユーザーが商品をカートに入れて購入完了できる基本購買フローを実装する」と定めます。
  • PBIの選択:プロダクトオーナーが優先順位をつけた上位のアイテムから、前スプリントのベロシティを参考に、チームのキャパシティを考慮して選びます。
  • タスク分解:開発者が選んだPBIを小さな作業に分け、スプリントバックログにまとめます。

スプリントバックログのタスクは、できるだけ1日以内で完了できる粒度に分けておきます。そうすると、デイリースクラムで進捗を確認しやすくなります。

ストーリーポイントによる相対見積もりを採用しているチームは、プランニングポーカーという合意形成の技法でPBIを見積もり、チームの共通認識を作ります。

デイリースクラム:15分の同期による障害の早期除去

デイリースクラムは、スプリント期間中に毎日同じ時間と場所で行う、15分のイベントです。毎朝定時に開くチームが多く、立って行うことで話が長引くのを防ぐ「スタンドアップミーティング」の形式を採ることもあります。

参加が必須なのは開発者で、スクラムマスターとプロダクトオーナーは、オブザーバーとして参加するのが一般的です。

かつてのスクラムガイドでは、報告する内容が決まっていました。

  • 昨日やったこと:前日までの作業の進み具合
  • 今日やること:その日に進める作業
  • 障害:作業を妨げている問題

2020年版では、「スプリントゴールに向けて最善の計画を立てる」という目的に合う形であれば、開発者が形式を自由に選べます。

重要なのは、15分の時間制限を守ることと、解決策の詳しい議論はデイリースクラムの場ではなく、別途「アフターパーティー」として行うことです。

デイリースクラムで障害(ブロッカー)が共有されたら、スクラムマスターはその日中に除去へ動くことが求められます。毎日15分の短い同期を重ねることで、問題の放置による手戻りを防ぎ、スプリントゴールの達成率を高める効果があります。実際に、デイリースクラムを導入したチームでは、問題の発見から解決までの平均時間が従来の3分の1以下に短縮されたという報告もあります。

スプリントレビュー:ステークホルダーとの成果の検査と適応

スプリントレビューは、スプリントの最後から2番目に行われるイベントです。スクラムチームとステークホルダーが集まり、完成したインクリメントをデモしながら、プロダクトの方向性を検討します。

タイムボックスは、1ヶ月のスプリントで最大4時間、2週間のスプリントであれば2時間が上限の目安です。

レビューの場では、成果を確かめることと、プロダクトバックログを見直すことの二つを行います。

  • インクリメントの検査:完成した成果を、チームと関係者が一緒に確かめます。
  • プロダクトバックログの適応:次に作るものの順番を見直すことです。

成果発表会や承認の場とは異なり、実用的なワーキングセッションとして行います。そのため、スライドを並べた報告会ではなく、実際に動くプロダクトをデモするのが原則です。

参加者はデモを見てフィードバックを出し、プロダクトオーナーがそれをもとにプロダクトバックログを更新します。「思っていた使い勝手と違う」「競合が動いたので優先順位を変えたい」といった声を、次のスプリントに反映できるのが強みです。形骸化させないためには、実際の利用想定ユーザーに近いステークホルダーを招き、率直な意見を引き出す場を作ることが大切です。

スプリントレトロスペクティブ:チームを進化させる振り返り

スプリントレトロスペクティブ(振り返り)は、スプリントの最後に行うイベントで、スクラムチームが自分たちのプロセス、関係性、ツールを振り返り、次に改善すべき点を特定します。タイムボックスは、1ヶ月のスプリントで最大3時間です。よく使われるフレームワークには、「KPT(Keep・Problem・Try)」があります。

Keepは続ける良い点、Problemは改善すべき課題、Tryは次のスプリントで試す新しいアクションです。ほかにも「4Ls(Liked・Learned・Lacked・Longed for)」や「スタート・ストップ・コンティニュー」などがあり、チームの状況に合うフレームワークを選ぶのも有効です。大切なのは、振り返りで決めた改善アクションを次のスプリントバックログに組み込み、実際に試すことです。

「反省はするが行動は変わらない」という状態では、振り返りの効果が台無しになります。特に、心理的安全性の高い環境で、メンバーが率直に課題を話せる場を作ることは、スクラムマスターの腕の見せどころです。継続してレトロスペクティブを行うチームでは、6〜12ヶ月でチームのパフォーマンスが顕著に向上するケースが多く報告されています。

ポイント

スプリントの長さは、市場の変化に素早く対応しつつ、集中して成果を出せる長さに決めます。決めたら途中で変えず、デイリースクラムで障害を早く取り除くことを重視します。

スクラム開発の3つの成果物(アーティファクト)

プロダクトバックログ、スプリントバックログ、インクリメントの3つを並べたスクラム成果物の図解。
3つの成果物が、作業候補からスプリントの成果までをカバーします。

スクラムには、「プロダクトバックログ」「スプリントバックログ」「インクリメント」の3つの成果物(アーティファクト)があります。これらは、チームの作業状況と進捗を透明にし、検査と適応を可能にするための情報源です。

それぞれには「コミットメント」と呼ばれる重要な指標が紐づいています。プロダクトバックログには「プロダクトゴール」、スプリントバックログには「スプリントゴール」、インクリメントには「完成の定義」が対応します。

プロダクトバックログ:プロダクトの将来を映す単一の情報源

プロダクトバックログとは、プロダクトの改善に必要なものをすべて順番に並べた、動的なリストです。機能要件や非機能要件のほか、バグ修正や技術的な改善まで、作業候補がすべてここに集まります。各アイテム(プロダクトバックログアイテム、略称PBI)には、説明、順序、サイズ見積もりが含まれ、プロダクトオーナーが継続的に更新と優先順位付けを行います。

PBIの記述には、ユーザーストーリー形式がよく使われます。「○○のユーザーとして、△△がしたい。なぜなら□□だから」という型で書くと、機能を作る目的と価値が明確になります。たとえば、「購買ユーザーとして、購入履歴を確認したい。なぜなら再購入の際に手間を省きたいから」のように書きます。

プロダクトバックログは常に変わるもので、新しい情報、ビジネス環境の変化、ステークホルダーのフィードバックを受けて、アイテムの追加・修正・削除が繰り返されます。この整理作業を「バックログリファインメント(プロダクトバックログ精緻化)」と呼び、スプリント期間の10%未満の時間を費やすことが推奨されています。

スプリントバックログとインクリメント:スプリントの羅針盤と成果物

スプリントバックログは、スプリントプランニングで選んだPBIと、その実現方法(タスク)、スプリントゴールで構成されます。これは開発者が所有するもので、スプリント中に新しい知識を得たら、開発者の判断で更新できます。デジタルで管理する場合は、JiraやTrello、Azure DevOpsがその管理を支えます。

  • 視覚的な管理:「To Do / In Progress / Done」の3列からなるかんばんボードが広く使われます。
  • インクリメント:スプリントの成果として生まれた「使用可能な状態の成果物」です。
  • 完成の定義(Definition of Done):チームが事前に合意して文書化した品質基準で、インクリメントはこれを満たす必要があります。

たとえば「コードレビュー完了・単体テストカバレッジ80%以上・ステージング環境での動作確認済み」といった内容が、一般的な完成の定義として設定されます。

スプリントの終わりにインクリメントが完成していることは、スクラムの大前提です。「80%完成」「ほぼできた」は認められず、この厳格さが品質保証の仕組みとして機能しています。

ベロシティとは、1スプリントで完了したストーリーポイントの合計で、過去3〜5スプリントの平均をもとに、次のスプリントの計画容量を算出するのが一般的です。

ポイント

進捗が見えないと検査と適応ができないため、3つの成果物をチーム全員が毎日見られる状態にしておくことが判断の目安になります。

スクラム開発の導入準備と実践ポイント

スクラムを自組織に導入するには、概念を理解したうえで、適切な準備と段階的なアプローチが求められます。スクラムは、すべての問題を解決する「銀の弾丸」ではありません。

スクラムが効果を発揮しやすいのは、要件の不確実性が高いプロジェクトや、ビジネス環境の変化が激しいプロジェクト、顧客との継続的なフィードバックループが重要なプロジェクトです。逆に、仕様が明確で変更の少ない製造業の組み込みシステムや、法規制に厳格に準拠した開発では、ウォーターフォール型がより適しているケースもあります。

チーム編成とロール選定:スクラム成功の土台づくり

スクラム導入の第一歩は、チーム編成です。まず、プロダクトオーナーを誰にするかを決めます。POはビジネス側と開発側の橋渡し役を担うため、プロダクトに対する意思決定権を持つ人を選ぶことが欠かせません。

  • プロダクトオーナー:意思決定権を持つ人に任せます。
  • スクラムマスター:実践経験のある人を選びます。初導入なら、社外人材を招くか、資格取得者に担ってもらう方法があります。
  • 開発者:要件に必要なフロントエンド・バックエンド・インフラ・QAなどのスキルを、チームで十分にカバーできるメンバーを揃えます。

「誰かPOをやってください」と開発チームに頼む選び方は、避けたいところです。

資格取得者の例としては、CSM(Certified Scrum Master)などがあります。

チームが決まったら、スクラム導入の目的、期待値、基本的なルールについてキックオフセッションを行い、全員の認識を合わせます。この段階で、スクラムガイドを全員で読み合わせる「スクラム勉強会」を開くのも有効です。ツールの選定も並行して進めます。

プロダクトバックログとスプリントバックログの管理には、Jira Software(中〜大規模チームに適する)、Trello(小規模チームや導入初期に適する)、Notionなどが広く使われています。また、デイリースクラムをオンラインで行う場合は、SlackやMicrosoft Teamsとの連携設定も必要です。

最初のスプリントを成功させるための実践ポイント

第1スプリントでは、チームがスクラムの流れを身につけながら、初めてのインクリメントを届けます。完璧さより、達成できる目標を置いて小さく始めることが大切です。

  • 小さなゴールから始める:完璧な機能より先に、まず「動くもの」を届けます。やり切った実感が、次のスプリントへの意欲につながります。
  • PBI:第1スプリントの前に、プロダクトバックログから最低2スプリント分を用意しておきます。事前に用意することで、チームのリズムが安定します。
  • DoDはシンプルに始める:守れる基準から始めて、徐々に改善します。最初は「コードレビュー完了・テスト合格・ステージング確認済み」の3点でも十分です。

また、デイリースクラムでは、15分の時間制限を徹底します。慣れないうちは脱線して30分以上かかることもありますが、スクラムマスターが進行を支え、時間を守る習慣を作ります。

スプリント後のレトロスペクティブでは、成果だけでなく「スクラムの進め方自体」も振り返り、次の改善につなげます。

ポイント

要件の不確実性や環境の変化の激しさを見て、スクラムを導入するかを判断します。仕様が明確で変更が少ないなら、ウォーターフォール型の方が合う場合もあります。

スクラム開発の見積もりとコスト感

スクラム開発を外注・発注する場合や、社内で予算計画を立てる場合には、スクラム特有のコスト構造を理解しておく必要があります。

ウォーターフォール開発と違い、スクラムでは最初に全開発費を確定させるのは困難です。スクラムは本質的に「変化に対応しながら進む」手法だからです。しかし、適切な見積もりのアプローチをとれば、予算の透明性と管理のしやすさは確保できます。

スクラム開発の人件費と工数の考え方

スクラム開発のコストは主に人件費で、スプリント単位で費用が発生する契約形態が多く、月額固定費や時間単価ベースの準委任契約が一般的です。開発チームの月額費用の目安は、プロダクトオーナー、スクラムマスター、エンジニアの役割ごとに想定します。プロダクトオーナーを事業会社側が担う場合は外部コストがなく、スクラムマスターを外部人材に頼む場合は月50万〜100万円程度です。

エンジニアは1名あたり月60万〜150万円程度ですが、経験やスキルレベルによって大きく異なります。5名程度のスクラムチームを外部開発会社に依頼する場合、月額300万〜500万円程度が相場感として参考になります。初期フェーズでは、環境構築・ツール設定・プロセス設計などの立ち上げコストが上乗せされるため、最初の1〜2スプリントは通常より高くなる傾向があります。

スクラムは「作るものを絞って早くリリースし、反応を見ながら改善する」ことが基本のため、MVP(最小限の機能を持つ製品)を定義し、まず3〜6ヶ月分のスプリント予算を確保して走り出すのが現実的です。初期予算の目安は、小規模プロジェクトで500万〜1,500万円、中規模で1,500万〜5,000万円程度ですが、チーム構成・スプリント数・機能の複雑さによって大きく変動します。

発注先選定と見積もりを取る際の注意点

発注先を選ぶときは、スクラムの実践経験の有無を最も重要な判断基準とすべきです。「アジャイル対応」と掲げていても、実態はスプリント単位のウォーターフォールになっている会社もあるため、契約形態だけでなく、運用や改善の進め方も確かめます。発注前は、各社の提案を同じ観点で比べると、判断しやすくなります。

  • 実践経験:「過去のプロジェクトでスプリントレトロスペクティブの改善事例を教えてほしい」「スプリントレビューの進め方はどのようにしているか」と尋ねます。
  • 契約形態:スプリント単位、時間単価×工数の準委任契約、月額定額のチーム契約を候補に入れて比べます。
  • 見積もり条件:複数社へ同じ要件定義書とプロダクトバックログの初期リストを提示し、条件をそろえた比較を行います。

一括固定価格にすると、仕様変更のたびに追加費用の交渉が生じ、スクラムの柔軟性が損なわれるおそれがあります。

スクラムに精通したコンサルタントや開発会社に相談すると、自社の状況に合った最適なチーム編成、スプリント設計、予算計画について助言を得られます。

ポイント

費用の目安は、チーム構成や機能の複雑さによって変わるため、幅をもって見ておくと判断しやすくなります。発注先は、実践経験と見積もり条件をそろえた比較で絞るとよいです。

まとめ

ここまで、スクラム開発の全体像、3つのロール、スプリントの進め方、3つの成果物、導入準備と見積もりのポイントを見てきました。

スクラムは、フォームを真似るだけでなく、考え方を組織に根付かせることで機能します。透明性・検査・適応という3つの柱と、コミットメント・集中・開放性・尊重・勇気の5つの価値基準を組織文化として定着させることが、長期的な成功の鍵となります。

最初のスプリントは完璧でなくても構いません。小さく始め、学び、改善を繰り返す姿勢こそが、スクラムの本質です。

スクラムの導入を検討している方は、まずスクラムの知見を持つ専門家に相談し、自社の状況に合ったプロセス設計から始めることをお勧めします。riplaは、スクラム開発のコンサルティングから実際の開発支援まで一気通貫でお手伝いできます。お気軽にご相談ください。

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株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。