ECリニューアルの完全ガイド

ECリニューアルは、ビジネス成果に直結する基盤を組み直す経営判断です。SEO順位の急落やデータ移行の失敗、売上の一時的な減少といったリスクも伴います。

基礎知識から発注方法まで、プロジェクト全体の流れを順に押さえます。各テーマは関連記事でも詳しく解説しています。

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ECリニューアルの定義と部分改善との違い、必要なタイミング

部分改善とECリニューアルを対応範囲とアプローチで左右に比べた図。
見直す範囲の広さが、2つのアプローチを分けます。

ECリニューアルとは、既存のECサイトを新しい技術・デザイン・プラットフォームに刷新するプロジェクトの総称です。トップページの変更や機能追加にとどまる部分改善とは異なり、サイト全体の設計からデータ構造までを見直す大規模な変更を指します。

部分改善は、既存の枠組みを維持しながら特定の課題を解決するアプローチです。一方、リニューアルは「今の仕組みそのものが事業成長の足かせになっている」という状況で選ばれる抜本的な対処法です。

対象となるECサイトは、自社開発のフルスクラッチシステムから、ShopifyやECCUBEなどのパッケージ、楽天市場やAmazonなどのモール型まで多岐にわたります。

リニューアルの必要性は、「技術的負債の解消」「ユーザー体験(UX)の抜本的改善」「事業成長に伴うシステムスケーラビリティの確保」の3つに大別できます。これらの課題が複合的に積み重なると、部分改善では追いつかなくなり、リニューアルが経営上の必須課題になります。

リニューアルが必要な5つのサイン

次のサインが複数当てはまる場合は、ECリニューアルを真剣に検討するタイミングです。

  • サイン1:スマートフォン対応が不十分でモバイルCVRが低迷している
    モバイルで表示や操作がしにくく、離脱が増えている状態です。
  • サイン2:プラットフォームやフレームワークの保守サポートが終了している
    更新が止まり、システムを安全に保てない状態です。
  • サイン3:機能追加・改修のたびに多大なコストと時間がかかる
    改修のたびに負担が重くなる状態です。
  • サイン4:顧客データ・受注データの活用が難しい
    データが分散し、分析やマーケティングに使えない状態です。
  • サイン5:競合と比較してサイトの古さが購買機会損失につながっている
    競合との差が広がり、購入の機会を逃している状態です。

サイン1では、EC流入の半数以上がスマートフォンからという状況が一般的です。モバイルで表示が崩れ、操作しにくく、読み込みも遅いと、離脱が増えてCVRが下がります。さらに、Googleのコアウェブバイタル(Core Web Vitals)の評価が低い場合は、SEO順位にも悪影響が出ます。

サイン2の状態が続くと、個人情報の漏洩や不正アクセスのリスクが高まります。クレジットカード情報を扱うECサイトにはPCI DSS準拠が求められるため、古いシステムのままでは要件を満たせなくなることもあります。

売れ筋商品の表示順変更、クーポン機能の追加、配送方法の拡充といった比較的小規模な改修にも、毎回高い費用と長い期間がかかるなら、技術的負債が蓄積しているサインです。特に、「やりたいことが実現できない」「開発会社から対応困難と言われた」という状況には注意が必要です。

購買履歴、閲覧履歴、顧客属性などのデータがばらばらでは、事業成長の大きな妨げになります。MAツールやCRMと連携できないシステムでは、データを生かした経営が進みにくくなります。

デザインの古さや商品検索の使いにくさ、決済方法の少なさに加えて、ポイントプログラムの不充実も見劣りする点です。こうした点が競合のECサイトと比べて積み重なっている場合、ユーザーの離脱と競合への流出が続いていると考えられます。

売上・CVRを落とさない移行の基本的な考え方

ECリニューアルで最も避けたいリスクの一つは、移行直後の売上低下やSEO順位の急落です。これは、適切な対策を取らなかった場合に起きる「予防可能な問題」です。まず、現状のデータを正確に把握することが大切です。

リニューアル前には、どのページが集客に貢献しているか、どの商品ページのCVRが高いか、どの流入経路から売上が生まれているかを、徹底的にデータで分析します。この分析を行わずに進めると、重要なページを意図せず削除したり、SEO評価を無駄にしたりするリスクが高まります。

URL構造が変わる場合は、301リダイレクトの設定が欠かせません。メタタグの引き継ぎや構造化データの実装、サイトマップの更新も必要です。また、移行後は一定期間、検索順位・流入数・CVRを重点的にモニタリングし、異常があれば速やかに対処できる体制を用意しておくことが大切です。

ECリニューアルの進め方【概要】

現状分析からテスト、本番リリース、移行後モニタリングへ進む5段階の流れ図。
最後の工程には、切り替え後の監視まで含まれます。

ECリニューアルは、データ分析・現状把握から本番リリース・移行後モニタリングまで、複数のフェーズにわたる中〜長期のプロジェクトです。期間は規模や複雑さによって3ヶ月〜18ヶ月程度と幅がありますが、フェーズ間の連携を意識して、計画的に進めることが大切です。

データ分析から始まるリニューアルの5ステップ

ECリニューアルの標準的なプロセスは、データ分析から本番リリースまで、5つのステップで構成されます。

  1. 現状分析と課題整理:データで現状を把握し、取り組む課題を絞ります。
  2. プラットフォーム・技術選定:現状の課題と将来の事業計画を踏まえて、リニューアル後の基盤を選びます。
  3. 要件定義・設計:この段階で、要件と設計の方向を固めます。
  4. 開発・コンテンツ移行:設計をもとに、開発を進めます。
  5. テスト・本番リリース・移行後モニタリング:検証を重ねて本番へ切り替えます。

現状分析では、Googleアナリティクスやヒートマップ、検索コンソールのデータを使い、流入やCVR、離脱率、売上への貢献を洗い出します。「何が問題なのか」をデータで示しておくと、リニューアルの目的や範囲を決める手がかりになります。感覚や印象だけで進めると、改善どころか状況を悪化させるおそれがあります。

課題整理では、優先順位をつけたうえで、リニューアルの目的、KPI、範囲を決めます。「モバイルCVR15%改善」「SEO流入30%増」「ページ表示速度2秒以内」のように数値で目標を置くと、プロジェクトの進む方向がぶれずに済みます。

選択肢は多岐にわたり、Shopify、EC-CUBE、Magentoといったパッケージやフルスクラッチが候補になります。それぞれ特性や費用、拡張性が異なるため、長期の成長シナリオを描いたうえで選ぶことが大切です。

商品管理やカート、決済などの機能要件に加えて、会員管理や在庫連携も文書にまとめます。性能やセキュリティ、可用性といった非機能要件も、同じ文書で定めます。UI/UXの方向性や情報アーキテクチャ、画面遷移はこのフェーズで設計し、要件定義の出来がプロジェクト全体の品質を左右します。

現行サイトの商品データや顧客データ、コンテンツを新しいサイトへ移すための計画を立て、移行ツールを準備して、移行リハーサルを行います。データ移行はミスが許されない作業なので、十分なテストと検証が欠かせません。

機能テストやパフォーマンステストを行い、セキュリティテストやUAT(受け入れテスト)も実施します。SEOの観点では、301リダイレクトの設定、メタタグの引き継ぎ、構造化データの整備を進めます。サイトマップも用意し、テスト環境でのSEOチェックも欠かせません。

本番環境への切り替え後は、検索順位と流入数、CVRのほか、エラーの発生にも目を配ります。異常値を早く見つけてすぐに対処することが、移行後の売上への影響を抑えるうえで最も重要な対策です。リリース後2〜4週間は特に注意が必要です。

プラットフォーム選定と移行方式の概要

ECリニューアルのプラットフォーム選定は、今後5〜10年のビジネス成長を左右する重大な判断です。代表的な選択肢の特性を、順に見ておきます。

  • Shopify:世界シェアNo.1のSaaS型ECプラットフォームです。
  • EC-CUBE:国内シェアが高いオープンソース型ECパッケージです。
  • フルスクラッチ開発:独自の仕様に合わせて一から開発する方式です。

Shopifyは、初期費用が低く、豊富なアプリで機能を拡張できる点が特長です。越境EC対応も強みで、D2Cブランドや急成長中のECに適しています。一方で、カスタマイズの自由度には限界があり、複雑な業務ロジックや大規模なB2B取引には不向きな場合もあります。

EC-CUBEは、日本語と日本の商習慣に合わせて作られており、カスタマイズの自由度が高い点が特長です。運用は自社サーバーが基本となるため、保守やセキュリティ対応は自社か開発会社が担うことになります。中規模の国内向けECに適した選択肢です。

他のプラットフォームでは実現できない業務ロジックやUX、システム連携が必要な場合に選ばれます。自由度は最も高い反面、開発費用や期間、保守コストは大きくなります。大手ECやBtoB受発注システム、複雑な在庫管理が必要なケースなどで採用されます。

移行方式は「一括移行(ビッグバン方式)」と「段階的移行(フェーズ移行)」の2つがあります。一括移行は、特定の日に全機能を切り替える方式です。移行期間を短くでき、管理も単純になる利点がありますが、移行直後に問題が起きると影響が大きくなります。

段階的移行は、機能やカテゴリ、商品ラインなどを順に切り替える方式です。リスクを分散できる一方で、管理が複雑になり、移行期間が長くなることが課題です。

▶ ECリニューアルの進め方の詳細はこちら(No.2011)

ポイント

プラットフォームや移行方式で迷ったら、長期の成長シナリオに合うかを基準にし、切り替えの影響を抑えられるかも併せて見るとよいでしょう。

開発会社の選び方

ECリニューアルの成否は、開発会社の選定に大きく左右されます。

ECは、技術やデザインと、マーケティングや業務プロセスが複雑に絡み合う分野です。そのため、開発力だけでなく、ECビジネスへの理解やSEO対策力を見ることが大切です。データ移行の実績や長期の保守体制も、評価の対象になります。

EC専門の技術力とSEO対策力の確認

開発会社を選ぶうえで最も大切な評価軸の一つは、「EC専門の技術力」と「SEO対策力」を両立できるかどうかです。EC専門の技術力は、希望するプラットフォームでの開発実績や、決済連携、在庫管理、物流システム連携といった業務ロジックへの理解で確かめます。表示速度の改善事例(Core Web Vitalsの改善など)や、提案書の具体的な技術提案も判断材料になります。

SEO対策力は、設計段階からSEOを組み込めるかどうかで見ます。SEOを後付けで対処する会社と、設計段階から組み込む会社では、リニューアル後の成果が大きく異なります。

URL設計やメタタグ戦略、構造化データの実装などの技術的SEOを、提案内容から見極めましょう。さらに、コンテンツマーケティングやサイト構造設計、カテゴリページの改善など、SEOとUXを両立させた提案ができる会社は、リニューアル後の流入に大きな差を生みます。提案ヒアリングでは「SEOへの影響をどう設計に組み込むか」を具体的に質問し、回答の質で判断しましょう。

データ移行実績と保守体制の評価

ECリニューアルのデータ移行は、商品データや顧客データを含め、注文履歴やレビューなど膨大なデータを、安全かつ正確に移す難しい作業です。移行に失敗すると、顧客情報の消失や注文管理の混乱、SEO評価の損失など、取り返しのつかない影響を及ぼします。

開発会社を評価するときは、同規模・同複雑度のデータ移行を成功させた実績があるか、移行前後の検証プロセスが具体的に設計されているかを確かめます。移行リハーサルを複数回行う体制があるかも、重要な判断材料です。「安心してお任せください」といった言葉より、具体的なプロセスと実績で判断するほうが確実です。

保守・運用体制は、問い合わせ窓口やSLA(サービスレベル合意)、障害対応の体制などで評価します。定期的なセキュリティアップデートや、機能追加への対応スピードも確かめておきたい点です。リリース後に連絡が取れなくなったり、追加対応が高額になったりするケースは珍しくないため、契約前に保守の具体的な内容と費用を明確にしておくことが大切です。

▶ ECリニューアルでおすすめの開発会社6選はこちら(No.2012)

ポイント

開発会社は、EC専門の技術力とSEO設計力、データ移行の実績、保守体制を合わせて見るのが基本です。提案が具体的かどうかで、判断の差が出ます。

費用相場

小規模、中規模、大規模のECリニューアル費用目安を金額付きの3パネルで示した図。
規模が上がるにつれて、目安となる費用帯も変わります。

ECリニューアルの費用は、サイトの規模や要件の複雑さ、選ぶプラットフォームによって大きく変わり、開発会社によっても差が出ます。事前に費用の目安と構成要素を押さえておくと、予算計画を立てたり、発注先を比べたりしやすくなります。また、初期開発費用だけでなく、長期の総保有コスト(TCO)の視点で比べることも大切です。

規模別・プラットフォーム別の費用目安

規模とプラットフォームによって、費用の目安は次のように分かれます。

  • 小規模ECリニューアル(Shopify・EC-CUBE標準機能中心):50万円〜300万円程度
    月商数百万円程度の中小ECの目安です。
  • 中規模ECリニューアル(カスタマイズあり・システム連携含む):300万円〜1,500万円程度
    月商数千万円〜数億円規模のECの目安です。
  • 大規模ECリニューアル(フルスクラッチ・大規模カスタマイズ):1,500万円〜5,000万円以上
    フルスクラッチで構築する場合の目安です。
  • Shopify移行(小〜中規模):30万円〜500万円程度
    既存のECサイトからShopifyへ移行する場合の目安です。

小規模の目安は、パッケージの標準機能を活用してリニューアルする場合のものです。デザインカスタマイズや基本機能の設定に加えて、データ移行と初期SEO対策も費用に含まれます。カスタマイズが少ないほど費用は抑えられますが、その分、プラットフォームの制約内での改善にとどまります。

中規模の目安は、基幹システム(在庫管理、受注管理、会計)との連携を含む場合のものです。会員機能の高度化や独自のポイントプログラム、多言語対応なども含みます。要件の複雑さと連携システムの数によって、費用の幅は大きくなります。

大規模なECサイトやBtoB受発注システムを対象に、独自の業務ロジックや複雑なシステム連携に加えて、高可用性のインフラ設計や大量データの移行も伴います。開発期間が1年以上に及ぶこともあります。

Shopify移行の費用には、データ移行とテーマのカスタマイズ、アプリの導入、決済設定などが含まれます。移行後もShopifyの月額利用料(ベーシックプランで月額約40ドル〜)が継続してかかる点は、考慮しておく必要があります。

長期TCOの考え方

費用を検討するときは、初期開発費用だけでなく、「TCO(Total Cost of Ownership:総保有コスト)」の視点で比べることが欠かせません。特にSaaS型(Shopifyなど)とオンプレミス型(自社サーバーでのEC-CUBEなど)では、費用の構造が大きく異なります。

初期費用は要件定義から初期SEO対策までを指し、ランニングコストには、サーバーやSaaSの月額料金、ライセンス費用、決済手数料などがあります。間接コストには、社内担当者の工数や改修費用、トラブル対応コストが含まれます。セキュリティ対策費や保守運用委託費も、ランニングコストに含めて考えます。

例えば、Shopifyは初期費用を抑えやすい一方で、月額利用料や取引手数料、アプリ費用が長期間にわたって積み上がります。フルスクラッチは初期費用が大きい反面、保守性が高ければ長期の改修コストを抑えられる可能性があります。3年・5年・10年単位でシミュレーションを行い、事業規模と成長計画に合ったプラットフォームを選ぶことが、長期の収益性に直結します。

▶ ECリニューアルの費用相場の詳細はこちら(No.2013)

ポイント

費用は規模やプラットフォームで大きく変わるため、初期費用だけでなく、3年・5年・10年単位の総保有コストで比べて判断します。

発注の進め方

ECリニューアルの発注は、適切な手順を踏むことで、失敗のリスクを大きく下げられます。前提を揃えないまま相見積もりを取ると、開発会社ごとに条件が違うため、金額を比べることすら難しくなります。

そのため、発注する側が要件を整理し、SEO引き継ぎ要件とデータ移行の仕様を明確にしてから発注に臨むことが、成功の条件です。

SEO引き継ぎ要件を発注仕様に含める重要性

ECリニューアルの発注で、最も軽視されがちなのに影響が大きいのが、「SEO引き継ぎ要件」の仕様化です。

多くの発注者は、デザインや機能の仕様書を丁寧に作る一方で、SEOに関する仕様は発注書に明記しません。そのため、リニューアル後にSEO順位が急落するトラブルが頻発しています。

リニューアル後の順位を守るため、発注仕様では次の4点を具体的に書き込みます。

  • URL構造の変更が発生する場合の301リダイレクト設定:旧URLから新URLへの転送ルールを網羅的に設計します。
  • メタタグ・構造化データの引き継ぎと改善:タイトルタグやメタディスクリプション、パンくずリストの構造化データが対象です。
  • サイトマップ・robots.txtの設計:クローラーが新サイトを効率よくインデックスできるようにします。
  • ページ速度・Core Web Vitalsの目標値:表示速度を数値で測れる目標にしておきます。

仕様には、実装と検証まで責任を持つ旨を明記します。漏れると、Googleの評価が新URLに引き継がれず、SEO順位が失われます。

商品ページへのProduct構造化データ実装は、リッチスニペット表示によるCTR改善にもつながります。OGPタグなども、新しいサイトで適切に設定する要件に盛り込みます。

XMLサイトマップの生成設定とrobots.txtの適切な記述も、仕様に含めます。特に大規模なECサイトでは、クロールバジェットへの配慮も重要な観点です。

「モバイルのLCPを2.5秒以内」「CLSを0.1以下」といった数値の目標を、仕様に盛り込みます。そうすることで、開発会社が速度の改善を設計の段階から意識するようになります。

データ移行と受入テストのポイント

データ移行の仕様では、移行対象データの種類(商品データや顧客データ、注文履歴、レビュー、ポイント残高など)と、移行方法(自動ツール、手動、スクリプト)を具体的に定めます。「データ移行一式」といった曖昧な表現は、認識のずれから追加費用やトラブルの原因になります。受入テスト(UAT)の仕様も、プロジェクト完了の定義に直結するため、あわせて明確にしておきます。

移行後の検証方法、データの欠損や不整合が起きた際の対処フロー、移行リハーサルの回数と手順も、事前に決めておきます。受入テストでは、発注者側で用意したシナリオで、注文から決済、配送通知、返品処理までが正しく流れるか、在庫連携による在庫の更新が正しく行われるか、モバイルとPCで主要な購買に支障がないかを確かめます。

本番リリース直前には、「切り戻し計画(ロールバック計画)」を策定しておくことが大切です。万が一、リリース後に重大な問題が起きた際、速やかに旧システムへ戻せる手順と責任体制を決めておくことは、リスク管理の観点から欠かせません。

▶ ECリニューアルの発注方法の詳細はこちら(No.2014)

ポイント

発注は、SEO引き継ぎ要件とデータ移行の仕様を明確にしてから出すのが基本です。受入テストのシナリオと切り戻し計画も、事前に用意しておくと判断に迷いにくくなります。

ECリニューアルで失敗しないための3原則

ECリニューアルは、多くの企業が「想定以上に大変だった」と振り返るプロジェクトです。SEO順位の急落やデータ消失、売上の低下のほか、スケジュールの遅れや予算超過といったリスクもあります。

過去の失敗事例には、共通するパターンがあります。次の原則を守ることで、多くのリスクを未然に防げます。

設計の初期段階から組み込むSEO対策

ECリニューアルの失敗で最も多く、かつ深刻なのは、「SEO対策を後付けで考える」ことです。開発が終わった後にSEO担当者が確認すると、URL構造は変わっているのに301リダイレクトが未設定だったり、メタタグが引き継がれていなかったり、構造化データが消えていたりするケースは後を絶ちません。

SEO対策を設計の最初から組み込むには、プロジェクトの開始段階でSEO担当者(または社内のSEO知識を持つ担当者)をチームに加えることが第一歩です。そのうえで、要件定義の段階でURL設計や情報アーキテクチャ、コンテンツ移行の方針をSEOの観点から検討し、設計書にSEO要件として明記します。

リニューアル前に、サーチコンソールの検索パフォーマンスデータや流入上位ページ、被リンク状況を取得して保存しておきましょう。これらは、リニューアル後のSEO影響を測る基準になります。最初の1ヶ月間は、検索順位や流入数、クロールエラーなどを毎週モニタリングし、問題が起きたら速やかに原因を調べて直せる体制を用意しておくことが大切です。

データに基づく改善サイクルの構築

ECリニューアルの第二の失敗パターンは、リニューアルを完成と捉えて、改善が止まってしまうことです。ECサイトは、リリースをスタートにして育てるものです。リニューアル後もデータを分析して改善を回し続け、市場や競合、ユーザー行動の変化を踏まえて進化させることが、投資対効果を高めるうえで欠かせません。

データに基づく改善を進めるには、まずリニューアル後のKPIダッシュボードを設計することが大切です。CVRや平均注文額、カート放棄率といった指標を、リアルタイムで把握できる環境を作ります。リピート率やLTV(顧客生涯価値)も、ビジネス目標に直結する指標です。

次に、ヒートマップやセッション録画、A/Bテストの定性・定量データを組み合わせ、「なぜユーザーが離脱するのか」や「どのステップで購買意欲が低下するのか」を継続して分析します。改善案は仮説として立て、検証して、結果から次の施策を決めるPDCAサイクルを組織に根づかせることが、長期の競争力につながります。さらに、年1〜2回程度の「定期的な改善レビュー」で、中長期の成長戦略も見直します。

ポイント

リニューアルを失敗させないには、SEO対策を設計の初期から組み込み、公開後も改善を続ける計画にしておくことが欠かせません。SEO順位の急落やデータ消失といったリスクを避けるためです。

まとめ

ここまでで、ECリニューアルの全体像を見てきました。要点は次のとおりです。

ECリニューアルとは何か:
部分改善では解決できない課題が複合的に積み重なったとき、ECサイトの根幹を刷新するプロジェクトです。モバイル対応の不備、技術サポートの終了、改修コストの増大、データ活用の難しさ、競合との乖離という5つのサインが目安になります。移行時は、データ分析に基づくSEO引き継ぎ設計と段階的なモニタリングが、売上やCVRを守るうえで欠かせません。

進め方のポイント:
データ分析から始まる5ステップで進めます。プラットフォームは、長期の成長シナリオを描いたうえで、Shopify、EC-CUBE、フルスクラッチの特性と費用構造を比べて決めます。詳しくはこちら(No.2011)で確認できます。

開発会社の選び方:
EC専門の技術力とSEO設計力、データ移行の実績、長期の保守体制を合わせて評価します。提案ヒアリングでは、「SEOへの影響をどう設計に組み込むか」を具体的に質問し、回答の質で判断するとよいでしょう。詳しくはこちら(No.2012)で確認できます。

費用相場:
小規模のShopify移行は50万〜300万円程度、中規模でカスタマイズありは300万〜1,500万円程度、大規模なフルスクラッチは1,500万円以上が目安です。初期費用だけでなく、3〜5年のTCOの視点で比べることが、長期の収益性に直結します。詳しくはこちら(No.2013)で確認できます。

発注の進め方:
SEO引き継ぎ要件(301リダイレクト、メタタグ、構造化データ、Core Web Vitalsの目標値)とデータ移行の仕様を発注書に明記することが、成功の条件です。受入テストのシナリオと切り戻し計画も、事前に準備しておく必要があります。詳しくはこちら(No.2014)で確認できます。

失敗しないための3原則:
「設計の初期から組み込むSEO対策」と「データに基づく改善サイクルの構築」の2原則に加え、「移行直後の集中モニタリング」の体制を用意することで、多くのリスクを避けられます。

ECリニューアルは、適切な計画と体制のもとで進めれば、売上拡大とCVR改善、運営効率とブランドの向上を同時に実現できる、大きなビジネス機会です。

本記事と関連する詳細記事を参考に、貴社のECリニューアルを成功に導いてください。

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株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。