クラウド開発/構築の必要機能や標準機能の一覧について

クラウド開発・構築を検討する担当者がつまずきやすいのが、「クラウドを使うと、結局どんな機能が手に入るのか」という全体像の把握です。サーバーを借りられる、という漠然とした理解で進めると、自動スケーリングや高可用性、サーバーレス、IaC(Infrastructure as Code)といったクラウドならではの機能を活かしきれず、ただ場所をオンプレミスから移しただけの「持ち上げ移行」で止まってしまいます。本来クラウドが提供する機能を理解してこそ、コスト削減と運用の自動化という投資効果が最大化されます。

本記事は、クラウド開発・構築が提供する必要機能・標準機能を、発注企業が「自社のシステムでどう使えるか」という視点で一覧的に整理する「機能特化」の解説です。自動スケーリングと高可用性、サーバーレスとマネージドサービス、IaCとCI/CD、監視・セキュリティといった、クラウドが標準で備える機能群を、一次データの料金感とあわせて具体的に解説します。読み終えるころには、自社のシステム要件に対して「どの機能を使えば、どんな効果が得られるか」を見極められるようになるはずです。なお、クラウド開発・構築の全体像をまだ把握していない方は、まずクラウド開発/構築の完全ガイドから読むことをおすすめします。

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自動スケーリングと高可用性の機能

自動スケーリングと高可用性のクラウド機能のイメージ

クラウドがオンプレミスに対して持つ最大の機能的な強みが、自動スケーリングと高可用性です。アクセス量に応じてサーバーの台数を自動で増減させ、特定のサーバーや拠点(アベイラビリティゾーン)に障害が起きても、別の場所で処理を続けてサービスを止めない。こうした仕組みを、専用のハードウェアを買い足すことなくソフトウェアの設定だけで実現できるのが、クラウドの本質的な価値です。

負荷に応じてリソースを増減する自動スケーリング

自動スケーリング(オートスケール)は、CPU使用率やアクセス数といった指標を監視し、設定した閾値を超えるとサーバーを自動で増やし、負荷が下がると自動で減らす機能です。これにより、平常時は最小限のリソースで運用しつつ、アクセスが急増したときだけ処理能力を拡張できます。オンプレミスのようにピークに合わせて常時サーバーを抱える必要がなくなるため、コストと安定性を両立できます。

この機能は、コンテナを束ねるECS FargateやKubernetes、あるいはサーバーレスのLambdaといった、さまざまな実行基盤で利用できます。重要なのは、自社のシステムのアクセスにどれだけ波があるかを把握し、スケールの単位(サーバー1台単位か、関数の同時実行数か)を適切に設計することです。波が大きいシステムほど自動スケーリングの恩恵は大きく、逆に負荷が常時一定なら、固定的なリザーブドインスタンスのほうがコスト効率が良い場合もあります。

マルチAZ構成で実現する高可用性

高可用性を支えるのが、複数のアベイラビリティゾーン(AZ)にまたがってシステムを構成するマルチAZ構成です。AZは物理的に離れたデータセンター群を指し、サーバーやデータベースを複数のAZに分散配置することで、ひとつのAZが障害や災害でダウンしても、別のAZでサービスを継続できます。一次データの費用相場では、EC2やRDSを各2台に冗長化し、WAFやELBを組み合わせた中規模の高可用性構成の構築は、50万〜60万円が一つの目安です。

この高可用性は、業務が止まると損害が大きい基幹システムや、対外的なサービスで特に重要になります。一方で、社内向けの軽微なツールにまでフル冗長化を施すと、過剰なコストになりかねません。クラウドの良さは、システムの重要度に応じて、シングル構成からマルチAZの高可用性構成まで、必要な可用性レベルを選べる柔軟性にあります。要件定義の段階で「どこまでの可用性が本当に必要か」を見極めることが、機能を無駄なく活用する鍵になります。

サーバーレスとマネージドサービスの機能

サーバーレスとマネージドサービスのクラウド機能のイメージ

クラウドが提供するもう一つの大きな機能群が、サーバーの管理そのものをクラウド事業者に任せられるサーバーレスとマネージドサービスです。サーバーのOSやミドルウェアの保守、パッチ当て、冗長化といった運用作業を自前で行わずに済むため、エンジニアはアプリケーションの開発に集中できます。これは単なる手間の削減ではなく、運用要員の人件費というコスト構造そのものを変える機能です。

使った分だけ課金されるサーバーレス機能

サーバーレスは、リクエストが来たときだけ処理が起動し、待機時間に課金されない実行モデルです。LambdaやAPI Gateway、サーバーレスデータベースのDynamoDBやAurora Serverlessを組み合わせると、アイドル時のコストをほぼゼロにできます。一次データでは、API呼び出しはAWS・Azureが月100万回まで無料、超過100万回あたり$0.2、GCPは月200万回まで無料です。コンピューティングは100万GB秒あたりAWS $16.7、Azure $16、GCP $2.5と、細かい従量単位で課金されます。

この機能の効果は、アクセスが少〜中規模のシステムで顕著です。Lambda・API Gateway・DynamoDBで組んだサーバーレスAPIは、月数百円から、無料枠内に収まることもあります。社内ツールや、特定の時間帯だけ動くバッチ処理を切り出すのに最適です。ただし、常時高負荷がかかるシステムや、1回の処理が長時間に及ぶ用途には不向きな面があり、すべてをサーバーレスで組めばよいわけではない点は、機能の特性として理解しておく必要があります。

運用を肩代わりするマネージドDB・ストレージ機能

マネージドサービスの代表が、データベースのマネージドサービスです。AWSのRDSやAuroraを使えば、データベースのバックアップ、冗長化、バージョンアップといった運用を、クラウドが自動で行ってくれます。一次データの料金では、OSSのデータベース(4コア・16GB相当)の従量課金はAWS $654、Azure $794、GCP $526(月額)で、Windowsライセンス込みだとAWS $1,610、Azure(特典)$1,005、GCP $1,274と、構成によって幅があります。

ストレージやキャッシュ(ElastiCacheなど)、ファイル共有(EFSなど)といったマネージドサービスも豊富にそろっています。これらを組み合わせることで、本来は専門の運用チームが必要だった領域を、設定とコストの管理だけで運用できるようになります。マネージドサービスを積極的に使うほど運用工数は減りますが、その分のサービス利用料はかかるため、「自前で運用する人件費」と「マネージドの利用料」を天秤にかけて選ぶことが、機能活用の判断基準になります。

IaCとCI/CDによる自動化機能

IaCとCI/CDによるクラウド自動化機能のイメージ

クラウドの機能を語るうえで欠かせないのが、インフラの構築・変更・運用を自動化するIaC(Infrastructure as Code)とCI/CDです。インフラ構成をコードとして記述し、開発からデプロイまでを自動化することで、人手によるミスを減らし、同じ環境を何度でも正確に再現できるようになります。これは、クラウドが「ソフトウェアとして扱える基盤」であるからこそ実現できる機能です。

環境を再現可能にするIaC機能

IaCは、サーバー構成、ネットワーク、データベースといったインフラの設計を、コードとして定義する手法です。これにより、開発・検証・本番の各環境を、ボタンひとつで同じ構成として立ち上げられます。手作業で環境を構築すると、設定の差異による「検証環境では動いたのに本番で動かない」というトラブルが起きがちですが、IaCを使えばこうした環境差を構造的になくせます。

IaCのもう一つの価値は、構成の変更履歴がコードとして残る点です。誰がいつどんなインフラ変更をしたかが追跡でき、問題があれば以前の状態に戻すことも容易になります。これは、属人的な手作業に依存した運用から、レビューとバージョン管理を前提とした運用への転換を意味します。SRE型の運用や内製化を進めるうえで、IaCはその土台となる機能だと言えます。

テストとデプロイを自動化するCI/CD機能

CI/CDは、コードの変更を自動でテストし、問題がなければ自動で本番環境へ反映する機能です。GitHub Actionsなどを使い、リポジトリへのプッシュをトリガーにテストとデプロイのパイプラインを動かします。これにより、リリース作業の手作業による事故を防ぎ、小さな改修を高頻度で安全にリリースできるようになります。一次データでは、CI/CDやコード管理、セキュリティスキャンを含むDevOps系SaaSの費用は、月数万円程度が目安です。

CI/CDの効果は、目に見えるコスト削減というより、開発スピードと品質の両立という形で現れます。手動デプロイの時間と緊張感から解放され、開発チームが本来の機能開発に集中できるようになります。IaCとCI/CDを組み合わせることで、インフラとアプリケーションの両方を継続的に、かつ安全に改善できる体制が整います。これらは、クラウドが標準で提供する「自動化のための機能群」として、投資効果を底上げする役割を担います。

監視・セキュリティの標準機能

監視・セキュリティのクラウド標準機能のイメージ

システムを安定して運用し、安全に保つために欠かせないのが、監視とセキュリティの機能です。クラウドは、メトリクスの収集やログの分析、アラート通知、アクセス制御、暗号化といった機能を標準で備えており、これらを組み合わせて運用と防御の体制を構築します。オンプレミスでは個別に製品を導入・統合する必要があった機能が、クラウドではマネージドサービスやSaaSとして手軽に利用できます。

メトリクス・ログを統合する監視機能

監視機能は、CPU使用率やネットワークI/O、エラー率といった指標(メトリクス)を継続的に収集し、異常を検知してアラートを出します。クラウド各社の標準監視サービスに加え、より高度な可視化やマルチクラウドの統合監視には、Datadogのような専用ツールが使われます。一次データでは、Datadogの料金はホストあたり月$15〜$23が目安です。これらを使い、システムの健全性をリアルタイムに把握します。

監視機能の真価は、障害が起きてから対応するのではなく、兆候の段階で気づき、未然に防ぐことにあります。SRE型の運用では、SLO(サービスレベル目標)を定め、その達成状況を監視し続けることで、品質を定量的に管理します。AWSの運用代行サービスを使えば、監視と障害の一次対応を初期・月額とも数万円程度で外部に任せることもでき、自社の運用体制に応じて内製と委託を組み合わせられます。

責任共有モデルとゼロトラストのセキュリティ機能

クラウドのセキュリティを理解するうえで前提となるのが「責任共有モデル」です。物理的なデータセンターやハードウェアの安全はクラウド事業者が担い、その上で動かすOS設定、アクセス権限、データの暗号化といった領域は利用者が担う、という役割分担です。WAF(Webアプリケーションファイアウォール)やアクセス制御、暗号化といった機能はクラウドが提供しますが、それを正しく設定するのは利用者側の責任になります。

近年は、社内ネットワークだから安全という前提を捨て、すべてのアクセスを検証するゼロトラストアーキテクチャの考え方が広がっています。金融のFISC安全対策基準や医療の3省2ガイドラインといった業界特有のコンプライアンス要件に対応する場合は、これらの機能を組み合わせて要件を満たす設計が必要です。riplaはフルスクラッチ受託と国内開発の立場から、こうしたセキュリティと監視の機能を自社の要件に合わせて設計し、運用に定着させるところまで支援することを重視しています。

まとめ

クラウド開発機能のまとめイメージ

クラウド開発・構築が提供する機能を整理すると、自動スケーリングと高可用性で安定性とコストを両立し、サーバーレスとマネージドサービスで運用工数とアイドルコストを削減し、IaCとCI/CDでインフラと開発の自動化を実現し、監視・セキュリティで安定運用と防御を担保する、という4つの柱に集約されます。これらはオンプレミスでは個別に作り込む必要があった機能が、クラウドでは標準で利用でき、設定とコストの管理だけで活用できる点に本質的な価値があります。

機能を選ぶときに大切なのは、「使えるから全部入れる」のではなく、自社のシステムの重要度・アクセス特性・運用体制に照らして必要な機能を見極めることです。可用性をどこまで求めるか、サーバーレスが向く処理はどれか、監視と運用を内製するか委託するか。これらの判断が、クラウドの投資効果を左右します。riplaはフルスクラッチ受託と国内開発を組み合わせ、機能の選定から構成設計、運用定着までを一貫して支援します。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。

株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。