スクラッチ開発の導入/開発事例や活用/成功事例について

スクラッチ開発の事例は、既製ツールの限界を超えた例、段階的に広げた例、基幹システムや外部サービスと連携した例、炎上から立て直した例に分けられます。

自社に近い業態の事例は、数百万〜数千万円の投資判断や着手点、狙う効果を考えるときに役立ちます。全体像はスクラッチ開発の完全ガイドもご覧ください。

▼全体ガイドの記事
・スクラッチ開発の完全ガイド

既製ツールの限界をスクラッチ開発で超えた事例

スクラッチ開発が力を発揮するのは、パッケージやSaaSが自社の業務に合わない場面です。市販ツールは多くの企業に共通する業務を想定して作られるため、独自の商習慣や複雑なルールに合わない部分が残ることがあります。

合わない部分を業務側で補うと、Excelの二重管理や手作業が増えます。その結果、システム化が中途半端なまま止まる場合があります。

パッケージのカスタマイズ限界からスクラッチへ移行した事例

パッケージを導入したあと、カスタマイズの費用や保守の負担が膨らみ、スクラッチに作り替えるケースがあります。カスタマイズを重ねたパッケージでは、初期費用から改修、保守まで負担が積み上がります。

  • 初期費用:パッケージは数十万円から数百万円の範囲に収まります。
  • 改修費:カスタマイズを重ねるほど、ライセンス費に加えて修正の費用もかさみます。
  • 保守負担:バージョンアップのたびに、独自カスタマイズの再調整が必要です。

なかには、業務に合わせて最初から設計し直し、総保有コストを抑えられた移行事例もあります。移行した企業は、初期投資をカスタマイズの負担から抜け出すための投資と捉えています。

スクラッチ開発の費用相場は、小規模で約300万〜1,000万円、中規模で1,000万〜5,000万円という調査もあります。事例を比べるときは、初期費用だけでなく、5年・10年の運用を含む総コストも確認します。

Excel・属人運用を専用システムで脱却した事例

Excelは柔軟で導入コストもかかりませんが、ファイルやマクロの管理に課題を抱えがちです。主な課題を挙げると、次のようになります。

  • ファイルの分散:最新版が分からなくなることがあります。
  • マクロの属人化:特定の担当者しか扱えず、仕組みが見えにくくなります。
  • ノウハウの喪失:担当者の異動や退職で業務が止まるリスクがあります。

成功事例では、現場のExcelの使い方や手作業、転記が発生する箇所を洗い出します。そのうえで、業務フローに合う画面と入力ルールを設計します。業務に合わせて作れば、市販ツールにありがちな未使用機能の多さや、自社業務への工夫不足も避けられます。

属人的な判断ロジックをシステムに組み込み、担当者が変わっても同じ品質で業務を続けられた事例があります。判断を人からシステムに移すことは、効率化にとどまらず、事業継続性を高めます。

ポイント

既製ツールを使い続けるか迷ったら、合わない部分を業務側のExcelなどで補っていないかを見ます。補う手作業が増えているなら、初期費用だけでなく改修費や保守負担も含めて比べる価値があります。

MVPから段階的に拡張して成功した事例

業務を選び、対象を絞ったMVPを現場で検証してから次の機能へ進む流れを示す図
現場での検証が次の投資判断につながります。

成功事例に共通するのは、MVP(実用最小限の製品)やPoC(概念実証)で効果を確かめてから拡張する進め方です。

ゼロから作れる分、機能を盛り込みすぎやすくなります。そのため、初回リリースは意図的に機能を絞ります。

MVPで効果を検証してから本格投資した事例

MVP開発は、対象業務を選ぶことから始め、現場で効果を見てから次の投資を決める流れで進みます。

  1. 効果が大きく、要件が固まっている業務を選ぶ。受注処理や在庫管理など、現場の時間を取られている一点が例です。
  2. 対象を絞ってMVPを作り、現場で使いながら効果を確かめる。
  3. 使われるか、効果が出るかを見極めてから、次の機能へ投資する。

段階的な投資はリスクを小さく分散できます。逆に、全機能に数千万円を投じて方向性を誤ると、損失も大きくなります。たとえばMVPなら、初期投資を小規模スクラッチの300万〜800万円程度に抑えられ、軌道を修正するときの負担も小さくできます。

成功企業は、最初から完璧を目指さず、現場の意見を受けて育てたと振り返っています。MVPは、費用を抑えるためだけでなく、認識のずれを早く見つける方法でもあります。

アジャイル的に現場と作り込んだ成功事例

MVPからの段階拡張には、短い周期で作って試し、改善を重ねる進め方が合います。発注企業と開発会社は、次のようなやり取りを重ねます。

  1. 開発会社が、数週間ごとに動くものを見せる。
  2. 現場が実際に試し、フィードバックを返す。
  3. 開発会社が、そのフィードバックを次のサイクルの改善に反映する。

動くものを見ながら認識を合わせる姿勢が、現場で使われるシステムにつながります。

発注後に完成を待つだけでは、成功しにくくなります。そこで、発注企業の担当者は定例会議に出席し、業務の知識を伝えます。成果を開発会社に任せきりにせず、発注企業と開発会社が一緒に作ることが大切です。炎上事例と比べたときの違いも、現場がどれだけ関わるかで成否が分かれる点にあります。

ポイント

投資の規模に迷ったら、効果の大きい業務に絞ったMVPを現場で使い、効果が出るかを確かめてから次の機能に進むかを決めます。全機能に投資するより、方向性を誤ったときの損失を小さく抑えられます。

基幹・外部サービス連携で全体最適を実現した事例

業務全体のハブを中心に、基幹システム、外部サービス、後続の工程がつながる図
入力情報の連携先を業務の流れに沿って整理できます。

既存の基幹システムや外部サービスとの連携は、スクラッチ開発の投資効果を高めます。会計や在庫管理、外部APIなどとの連携範囲も、自社の既存環境に合わせて設計できます。

パッケージでは、連携先が限られたり、追加のライセンスが必要になったりする場合があります。

基幹システム連携で二重入力を解消した事例

会計や販売管理と連携するときは、手入力のどこで負担が生じているかを確かめておきます。

  • 入力作業:二重入力がなくなり、連携の効果を把握しやすい点です。
  • 転記ミス:手入力が減り、データの不整合も構造的に減ります。
  • 締め作業:月次処理や請求業務の負荷が軽くなります。

システムを単独の便利ツールにとどめず、業務全体のハブとして使う事例があります。一度入力した情報が後続の工程へ自動で流れ、その結果、間接部門の人件費も構造的に抑えられます。さらに、人件費が開発全体の40〜60%を占めるという一般的な構造を踏まえると、連携による省力化は長期的なリターンにつながります。

事例を読むときは、どの業務をつなぎ、どの手作業をなくしたのかを見ると分かりやすくなります。

外部APIを活用して開発を効率化した事例

成功事例では、汎用的な機能を外部サービスやAPIに任せ、自社ならではの部分を作り込みます。役割を分ける対象は、次のようなものです。

  • 外部サービス:決済、地図、認証、メッセージ配信など。
  • スクラッチ開発:独自の在庫引き当てや承認フローなど。

スクラッチ開発は、独自性が必要な部分に絞って作り込むことが基本です。競争力に直結しない機能まで自前で作ると、開発費と保守の負荷が膨らみます。

外部サービスには、料金体系や仕様が変わるリスクもあります。そのため、要件定義の段階で内製する範囲と外部に頼る範囲を決めておきます。この線引きで、費用対効果が左右されます。

ポイント

連携範囲は、どの業務の手入力をなくしたいかを先に決めてから連携先を選びます。外部サービスに任せる部分と自社で作る部分の線引きで、費用対効果が左右されます。

炎上プロジェクトを立て直したリカバリー事例

現状を把握し、必要な機能に絞り、現場を交えて要件を定め、再利用範囲を分ける立て直し手順の図
現状把握から再利用範囲の判断まで順に進めます。

発注側が特に学べるのは、炎上した理由や立て直し方を知る実体験です。成功談だけでは見えにくい課題も把握できます。

たとえば、要件が固まらないまま進めると、巨額を投じても完成しないプロジェクトが起きることがあります。自由度の高いスクラッチ開発では、こうした立て直しの教訓が、これからの投資リスクを考える材料になります。

丸投げで炎上したプロジェクトを再構築した事例

発注企業は、専門家に任せれば良いものができると考え、要件定義をベンダーに任せました。しかし、現場を最も知る発注側が知識を渡さず、結果として誰も使えないシステムになった事例です。

要件が曖昧なまま進めると、工数が1.3〜1.5倍に膨らむという指摘もあります。

まず開発をいったん止め、完成済みの範囲と現場に合わない箇所を洗い出して、全体を把握します。そのうえで、立て直しは次の順に進めます。

  1. 本当に必要な機能まで要件を絞り込む。
  2. 現場担当者を交えて要件定義をやり直す。
  3. 作り直す部分と活用できる部分を切り分ける。

すでに投じた費用(サンクコスト)に引きずられず、ここからの投資で最も価値が出る方法を判断することが大切です。

ベンダー切り替えで品質を取り戻した事例

開発会社を替えて品質を取り戻した事例もあります。切り替えの際は、次の体制に失敗を持ち越さないための準備も確かめます。

  • 切り替えの判断:スキル不足や意思疎通の難しさから、改善が見込めない相手かを見極めます。
  • 次の開発会社:要件定義から伴走できる会社を選びます。
  • 失敗の再発防止:成功事例では、前の問題を言語化し、新しい会社との契約や要件定義に反映しています。

切り替えは大きな決断です。ただし、損失がさらに膨らむ前に早めに損切りし、傷を小さく抑えた判断が成功につながることもあります。

riplaは、フルスクラッチ受託と国内開発の立場から、現場の業務を起点に要件を整理し直し、段階的に定着させる進め方を重視しています。また、炎上からの立て直しの事例も、自社のリスクを避けるための学びとして読めます。

ポイント

立て直しを考えるときは、いったん開発を止めて完成済みの範囲と現場に合わない箇所を洗い出し、すでに投じた費用に引きずられずに判断します。

まとめ

成功事例では、自社業務から必要な機能を設計し、MVPで効果を確かめて投資を広げます。さらに、既製ツールの限界を超え、基幹システムや外部APIとの連携で全体最適を目指す進め方も見られます。

炎上事例からは、投資額だけでは成功が保証されず、要件定義のやり直しや早めの損切りが立て直しにつながると分かります。

事例を読むときは、投資額だけでなく、現場で使われた理由を見ます。そのうえで、自社の業務と規模に照らし、効果の大きい一点に絞ったMVPから始めます。

riplaはフルスクラッチ受託と国内開発を組み合わせ、要件整理から現場に定着するシステムづくり、運用までを支援します。全体像は完全ガイドで確認できます。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。