タレントマネジメントシステム開発/導入の失敗/課題/注意点/リスクについて

主な失敗は、現場に使われない形骸化と、データが古くなることです。導入は、操作性の確認、運用と連携の設計、効果の時間軸の共有の順に進めると、失敗を防げます。

1,771人の調査では、課題発生率は62.1%で、取り組む企業は44.7%に達しています。全体像は、まずタレントマネジメントシステムの完全ガイドをご覧ください。

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操作性で浸透せず形骸化する失敗

形骸化を防ぐための運用準備を4項目のチェックカードで示す図
導入後の利用を支える準備を並べています。

タレントマネジメントシステムで最も多い失敗は、操作性が悪く現場に浸透しない形骸化です。課題が発生した企業1,100人のうち、537人がこの失敗を挙げています。また、導入課題を経験した企業は62.1%で、およそ3社に2社にのぼります。

高機能な製品でも、現場が使いにくいと入力されず、やがて誰も見なくなります。機能の多さで選んでも起きるため、形骸化は他人事ではありません。

機能の多さがかえって使われない原因

形骸化の典型は、機能の豊富さを重視し、現場の使いやすさを軽く見て選ぶことです。

  • 複雑な画面:管理職が操作を面倒に感じ、入力が後回しになりがちです。
  • 多い入力項目:評価のたびに作業が増え、現場で放置されやすくなります。
  • 性能と定着:システムの性能が高くても、現場に定着するかは別の問題です。

発注側は、無料トライアルや相見積もりを使って、管理職や従業員に実機で操作感を試してもらいます。人事部だけで決めず、現場の声も選定に反映させます。特に、カタログ上の性能より使い勝手を確かめることが、定着の決め手になります。

運用準備の不足による浸透の妨げ

形骸化の原因は、操作性のほかに、運用準備の不足もあります。導入後に自然と使われるとは限らないため、目的や入力ルールがなければ現場は動きにくくなります。

  • 目的とKPI:システムを使う目的と、確認する指標を明確にします。
  • 担当体制:運用を担うチームの整備です。
  • 業務への組み込み:評価面談の前に画面を確認するなど、利用を業務に組み込みます。
  • 利用状況の確認:入力状況を定期的に見て、必要な働きかけを行います。

性能より運用準備が成否を分けるのは、システムを業務に根づかせる設計が必要だからです。購入は通過点で、運用設計こそが本番です。導入前に組織で共有しておけば、形骸化を防げます。

ポイント

判断の目安は、機能の多さより現場が使いやすいかです。導入前に、運用の担い手と目的をそろえておけるかどうかも、形骸化を避ける分かれ目になります。

データが更新されず古くなる課題

データの陳腐化、参照の減少、更新の減少が循環する図
参照と更新の減少が情報の鮮度を下げていきます。

形骸化に次いで多い課題は、データの入力や更新が徹底されず、情報が古くなることです。課題が発生した企業1,100人のうち、452人がこの課題を挙げています。

タレントマネジメントシステムは、最新のデータがあって初めて意思決定に使えます。古い情報のままでは、配置や育成の判断を誤らせ、システムへの信頼も損ないます。さらに、データが古いと認識されると、参照も更新も減り、負の循環に陥ります。

兼任担当者の運用工数という見えにくいリスク

データが古くなる背景には、更新を担う人の負担があります。専任の人事チームがない企業では、兼任担当者がメンテナンスを担います。

担当者が週や月にどれだけ更新時間を割けるかは、運用継続の制約です。たとえば、本来業務に追われると更新が後回しになり、情報は陳腐化します。

  • 担当者の工数:導入前に、更新作業の担い手と必要な時間を見積もります。
  • 入力する現場の負担:入力工数が重いと、管理職や従業員が更新を途中でやめることがあります。
  • 負担を減らす設計:入力の自動化や項目の絞り込みが候補になります。

「みんなが入力する」という前提だけでは、運用は続きません。そのため、専任体制を組めるかも含めて、現実的な工数を踏まえた運用設計が必要です。

既存システムとのデータ分散というリスク

既存の人事システムと併用すると、データが分散することがあります。たとえば、給与計算、勤怠、タレント管理が別々のシステムに分かれると、正しい情報の所在が分からず、二重入力やデータの食い違いが生じます。課題が発生した企業1,100人のうち、413人がこの課題を挙げています。

  • 正とするシステム:情報ごとに、どのシステムをマスタとするかを決めます。
  • 連携する情報:どの情報をどう連携するかを、要件定義の段階で設計します。
  • 導入前の整理:既存システムとの関係と連携方針を、導入前に定めておきます。

連携を後回しにすると、システムが孤立し、情報をひとつにまとめて扱うメリットが失われます。そのため、導入時点で連携方針を定めておくことが前提になります。

隠れコストと連携開発費の見積もり漏れ

連携にかかる隠れコストは、予算超過の原因にもなります。料金の目安は、初期費用の相場が20万〜50万円で、月額は従業員1人あたり300円〜1,000円、または月額固定5万円〜です。

表面上の料金だけで稟議を進めると、初期設定代行や既存データ移行、運用コンサルティングの費用が漏れます。給与・勤怠システムとのAPI連携開発も、見積もりに入れておく必要があります。

  • 付帯費用:月額以外に必要な費用と金額を、ベンダーに確認します。
  • 連携開発:標準コネクタがない場合は、個別開発で費用が膨らむことがあります。
  • 補助金:IT導入補助金で、導入費の一部を補える場合があります。

ある調査では、中堅企業(100〜999名)でIT導入補助金の利用率が24.6%と最も高くなっています。一方で、補助金を利用していない、または知らない企業は約4割です。

隠れコストを見落とすと、導入後に追加予算の確保で身動きが取れなくなります。さらに、使える制度を見落とすことも、機会損失になります。そのため、発注側は連携やデータ移行を含む総額で予算を組みます。

ポイント

更新を担う人の工数と既存システムとの連携方針を、導入前に決められるかどうかが分かれ目です。決められないまま進めると、データは古くなり、分散しやすくなります。

AI機能とROIへの過度な期待というリスク

初年度、2年目以降、中長期の時間軸を3つのパネルで示した図
データ蓄積から効果の把握までには時間差があります。

AI分析やROIの効果は魅力的ですが、過度に期待すると導入直後に失望しかねません。期待と現実のギャップが生じやすいため、正しい時間軸を理解しておくことが欠かせません。

製品デモの分析画面は、十分なデータが蓄積された理想の状態を示すことがあります。自社の導入初期とは大きく異なるため、デモの画面をそのまま期待しないよう注意が必要です。

AI分析が実用化するまでのデータ蓄積の壁

離職予兆分析や最適配置の提案は、誤解されやすいAI機能です。導入しても役立つ予測が出ない場合、その背景にはデータ蓄積の壁があります。

AIが正確に機能するには、相応の期間と量の従業員データが必要です。導入直後はデータが少ないため、予測精度は十分に上がりません。

  • 初年度:サーベイや評価のデータを蓄積する期間と位置づけます。
  • 2年目以降:AI分析の本格活用を見据えます。
  • 導入前の確認:AIが実用レベルになる時期を、ベンダーに確認しておきます。

AI機能は導入直後に使えるとは限りません。データを蓄積した先で実用化するものと捉えておくと、期待とのずれを避けやすくなります。

ROI回収の長期化という見込み違いのリスク

ROIにも、効果が現れるまでの時間を見誤るリスクがあります。離職率の低下や適材適所による生産性向上は、数値に表れるまで半年から年単位かかります。

すぐに離職率やコストが下がると期待しすぎると、効果が出る前に失敗と判断して、運用を諦めるおそれがあります。

  • 初年度:投資期間として、データ蓄積と運用定着を進めます。
  • 中長期:データが蓄積し、運用が定着したあとに効果を数値で捉えます。
  • 稟議時の共有:効果の刈り取りは中長期になる前提を、経営層と共有します。

多くの記事はROIの算出方法を説明しますが、いつプラスに転じるかには触れません。短期成果を求めて運用を打ち切ることは、避けたい失敗です。

効果が出る一歩手前で諦めるのは、もったいない結末です。時間軸を経営層と共有しておくことが、最大の予防策になります。

ポイント

AIやROIの効果を導入初年度から期待しすぎないかどうかが、見極めの目安です。データを蓄積する期間を前提にして、効果を中長期で捉えられるかが決め手になります。

ベンダーロックインと乗り換えの落とし穴

導入時には見えにくく、後から問題になるのがベンダーロックインです。評価履歴やスキル情報など、価値の高いデータが長年にわたって蓄積されていきます。

そのため、システムから抜け出しにくくなることがあります。導入時は解約を想像しにくく、リスクは軽く見られがちです。その負担が、数年後の乗り換え時に重くのしかかります。

データ取り出しにくさが生むスイッチングコスト

乗り換え時の大きな障壁は、蓄積したデータを取り出しにくいことです。製品によっては、出力が限られていたり、独自形式でしか出せなかったりします。

データを取り出せないと移行が難しく、高額な費用がかかることがあります。安く始めても抜けられず、結果として高くつく皮肉な結末になりかねません。導入時には見えにくいリスクのため、多くの企業が後悔します。

  • データ形式:全データを汎用形式で書き出せるかを確かめます。
  • 契約終了時:データ返却の手順が明確かどうかが焦点です。
  • 選定基準:価格や機能に加えて、やめやすさも基準に含めます。

入口の段階で出口の自由度まで設計しておけば、長期的に不利な立場を避けられます。

スモールスタートからの拡張の壁

安価なツールや無料プランで始めるのは賢明ですが、その先には拡張の壁があります。事業が成長して高度な機能や大規模運用が必要になると、上位プランや他社への移行を迫られます。

安価なシステムの単純なデータを、高度なシステムへ円滑に移行できるとは限りません。簡易な項目設計のままでは、移行時に不足している情報を埋め直す手戻りが起こりがちです。

  • 上位プラン:アップグレード時の制約を確認します。
  • 他社への移行:データをどう持ち出せるかを、事前に確かめておきます。
  • 将来の拡張:成長後に身動きが取れなくならないかを検討します。

スモールスタートでも、将来の拡張シナリオを見据えることが大切です。最初から完璧を目指す必要はありません。

riplaは、フルスクラッチ受託と国内開発の立場から、自社制度に合うシステム化を支援しています。導入後の定着、連携、運用工数まで伴走し、ロックインや拡張の壁を見据えた設計を進めます。失敗は、運用や将来設計の見落としからも生じます。

料金体系の選択ミスで割高になるリスク

拡張の壁と並んで、料金体系の選択ミスも見落とされやすい課題です。料金モデルの割合は、定額制(全社固定)が33.3%、従量制(1ユーザー単位)が30.3%、段階制(人数レンジ別)が28.7%です。

各課金モデルの割合はほぼ均等です。ただし、自社の規模や成長段階に合わない体系を選ぶと、同じ機能でも支払額が変わります。たとえば、従業員数が増える局面で従量制を選ぶと、人数に比例して月額が膨らみ、想定以上のコストになることがあります。

  • 小規模(1〜99名):従量制や無料プランで始める選択肢があります。
  • 中規模(100〜999名):段階制が候補になります。
  • 大企業(1,000名以上):定額制でスケールメリットを得る選択肢です。

目先の月額だけで選ぶと、数年後も規模に合わない体系を使うおそれがあります。そのため、安さを今だけで判断せず、3年後・5年後の組織規模も見据えて選ぶことが、料金面の失敗を避ける鍵になります。

ポイント

判断の目安は、契約前にデータを汎用形式で取り出せるか、契約終了時の返却手順が明確かです。拡張時の移行まで見ておくと、後の乗り換えで負担が膨らむのを防げます。

まとめ

課題発生率62.1%の背景には、形骸化、データの陳腐化や分散、AIのデータ蓄積待ちがあります。加えて、ROI回収の長期化や、ロックインと拡張の壁もあります。

失敗は、導入前後に運用準備や更新工数、連携設計を詰めていないことで起きます。効果の時間軸や将来設計も、導入前に詰めておけば防げます。

発注側は、機能の華やかさに惑わされず、誰がどれだけの工数で運用するか、効果がいつ現れるかを見据えます。3社に2社がつまずく現実を直視し、導入前から運用設計と将来設計を組み込むことが、成功への分かれ目になります。

riplaは、フルスクラッチ受託と国内開発を組み合わせ、自社制度に合うシステム化を支援しています。定着、連携、運用工数まで一貫して伴走しています。

全体像を確認するには、タレントマネジメントシステムの完全ガイドをご活用ください。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。