ワークフローシステム開発/導入のメリット/デメリット/効果と判断基準について

ワークフローシステムは、印紙税や郵送費を減らし、承認記録も残せます。一方で、取引先の同意や従量課金の膨らみといった注意点もあります。

成否は、削減効果や費用構造を比べたうえで、取引先の対応や業務の固有性に合う方式を選べるかで決まります。全体像はワークフローシステムの完全ガイドもご覧ください。

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・ワークフローシステムの完全ガイド

ワークフローシステム導入のメリット

ワークフローシステム導入の効果として、コスト削減、ガバナンス強化、意思決定スピード、柔軟性を並べた図。
費用面から働き方まで、効果の広がりを整理できます。

ワークフローシステムの主なメリットは、コスト削減とガバナンス強化です。

どちらも稟議で使える効果ですが、説得力は数字で示せるかで変わります。自社の件数に当てはめた金額や、内部統制の具体的な改善を示せば、経営層にも効果が伝わります。

コスト削減と業務効率化のメリット

電子化の効果は、印紙税や郵送費、人件費の削減額と、処理時間の短縮から試算できます。

  • 費用削減:印紙税、郵送費、印刷費、事務人件費が減ります。
  • 業務効率化:申請や会計転記、ダブルチェックにかかる時間を短縮できます。

一次データの試算では、月20件を電子化すると年間約96万円の削減が見込まれます。内訳は、印紙税と事務人件費の削減が中心で、郵送資材費もなくなります。

印紙税は契約金額で変わります。たとえば、1,000万円の契約なら1万円、7,000万円の契約なら6万円が不要になります。

コスト削減を重視する企業の調査では、最も多かった項目は印紙税の不要化で30.6%でした。次いで郵送費が20.0%、印刷費が19.8%です。

岡山県環境保全事業団では、遠隔申請により1件あたり5分以上を短縮し、年間推計150万円分の人件費を削減しました。また、KEC関西電子工業振興センターは、会計転記やダブルチェックを減らし、申請処理業務を約4割削減しました。

承認が速まれば、稟議待ちの時間が減り、意思決定も早まります。それは、ビジネスの機動力を高めることにもつながります。さらに、自社の件数と人件費単価に基づけば、投資回収を説明できます。

ガバナンス強化・内部統制のメリット

コスト面に比べて目立ちにくいものの、ガバナンス強化も見逃せないメリットです。承認記録と権限管理を仕組みに移すことで、統制を保てます。

  • 記録の検索:決裁記録をシステム上で検索し、監査時に提示します。
  • 誤送信の防止:未承認の契約送付や権限外の決裁を制御できます。

紙の稟議では、承認者や承認時点の記録が曖昧になり、日付を遡って押印するバックデートも起こり得ます。一方、システムでは承認のタイムスタンプが自動で記録され、改ざんできない証跡が残ります。さらに、監査時に紙の保管庫を探す手間も減ります。

導入後の課題調査では、約8割の企業が「情報を一元管理できない」などの悩みを挙げています。その点、承認、契約、申請の証跡を一箇所に集めると、人の注意力に頼っていた統制を仕組みで担保する形に変わります。コスト削減とガバナンス強化の両面を示せば、経営層への説明に厚みが出ます。

意思決定スピードと働き方の柔軟性のメリット

コスト削減やガバナンスと並ぶ第三のメリットは、意思決定スピードの向上です。場所を選ばずに承認できるため、決裁の停滞が減り、柔軟な働き方も支えられます。

  • 決裁の迅速化:紙の稟議は決裁者不在で何日も止まりますが、システムならスマートフォンで承認できます。
  • 出社負担の軽減:承認の場を選ばず、決裁を進められます。

実際に、岡山県環境保全事業団の事例では、遠隔申請により1件あたり5分以上短縮しました。承認が速くなれば、投資判断や発注の機会を逃さず、ビジネスの機動力も上がります。

紙と押印を前提にすると、承認のためだけに出社する場合があります。電子化すれば、在宅勤務や出張中でも決裁が止まりにくくなり、テレワークを前提とした働き方を支えられます。また、電子化は従業員の働きやすさにも貢献します。

金額に換算しにくい効果ですが、競争環境では大きな価値を持ちます。コスト、ガバナンス、スピード、柔軟性の4点をそろえて示すと、稟議の説得力が増します。

ポイント

効果は、自社の件数と人件費単価に当てはめた金額で示すと、稟議で説得力が出ます。コスト削減に加えて、ガバナンスや意思決定の速さも並べて示すと、判断材料がそろいます。

導入前に知るべきデメリットと注意点

効果が大きい一方で、見落とすと判断を誤るデメリットもあります。事前に把握し、対策とともに稟議に示せば、「こんなはずでは」を防げます。

デメリットを隠さず示し、対策も併せて伝えれば、意思決定の質を高められます。

取引先の同意・電子化できない契約の壁

契約締結まで電子化する場合、最大の壁は取引先の同意です。電子契約は自社だけで完結せず、相手方が応じなければ成立しません。

  • 取引先への配慮:相手方の費用や対応状況を見ておきます。
  • 契約種別の確認:電子化できない契約を洗い出します。

当事者型の電子署名では、相手方にも電子証明書の発行費として1万円前後がかかります。そのため、立会人型を選ぶなど、相手の負担を軽くする配慮が必要です。

電子契約システムの導入率は、2025年の調査で78.3%です。ただし、すべての取引先が対応済みとは限りません。

さらに、法律上電子化できない契約もあります。定期借地契約や任意後見契約などは、書面での締結が義務づけられています。

対象となる契約が一定数ある場合は、紙と電子の併用が前提になります。相手への説明も含めて、取引先ごとの対応を計画しておく必要があります。電子化できる範囲を現実的に見積もると、判断の精度が上がります。

従量課金の膨張と形骸化のリスク

利用件数の増加と現場での未定着は、導入後の効果と負担を左右します。従量課金の場合、月の件数を見誤ると想定外の費用がかかるため、損益分岐点を見極めておく必要があります。

  • 従量課金:送信件数が増えると料金も積み上がります。
  • 形骸化:現場が紙やメールに戻ると効果が薄れます。

電子契約の送信料は1件50〜300円で、平均税込110〜220円が相場です。このため、月額の固定料に送信料が加わるプランでは、件数の見積もりが欠かせません。

操作が複雑だったり、既存の承認ルールを再現できなかったりすると、現場が従来の紙やメールに戻ることがあります。そこで、使いやすいフォームと適切な権限・承認ルートが、定着を支えます。

加えて、段階導入や社内マニュアルを整えることも、定着の助けになります。社内への定着支援には、チェンジマネジメントも含まれます。

件数による料金差は、後ほど見る損益分岐点で確かめられます。事前の設計と運用の工夫によって、こうしたデメリットは和らげられます。

電子化できない契約と法対応の手間

電子化の範囲と法律上の要件は、分けて確かめておく必要があります。

  • 契約範囲:紙での締結が必要な契約を把握します。
  • 法対応:保存要件と電子署名の方式を検討します。

書面が求められる契約の例は、定期借地契約や任意後見契約などです。該当する契約が一定の割合を占めると、紙と電子の併用は避けられません。すべてを電子化するという期待どおりには進まない場合があります。

導入前に電子化できる範囲を見積もれば、過大な期待による失望を防げます。

電子帳簿保存法の検索要件を満たす運用と、電子署名法に沿った署名方式の選定が必要です。署名方式は、立会人型か当事者型かも含めて検討します。この検討を省くと、法的有効性や電子保存の要件に問題が生じるおそれがあります。

法対応は導入前に必ず検討し、その手間も費用に含めておきます。ここを飛ばすと、電子化しても法的リスクが残ります。

ポイント

取引先の同意、電子化できない契約、従量課金の膨らみは、見落とすと判断を誤りやすい点です。導入前に契約種別と月の件数を洗い出し、対策まで示せるかが目安になります。

費用と損益分岐点による判断

固定費型は送信と保管が無料、従量型は送信ごとに料金が加算される費用構造を左右で比べた図。
利用件数が増えるほど、プラン間の差が判断材料になります。

メリットとデメリットを踏まえたうえで、費用構造から判断を進めます。

プランには、固定費が高く送信が無料のものと、固定費が安く送信ごとに課金されるものがあります。どちらが有利かは自社の件数で変わるため、数字で比べることが費用面の判断基準になります。

固定費型と従量型の損益分岐点

件数ごとの実質コストを比べると、選ぶべきプランが見えてきます。自社の月間件数に当てはめて、複数のプランを試算します。

  • 従量型:送信ごとの料金が件数に応じて加算されます。
  • 固定費型:送信・保管が無料なら、件数が増えるほど割安になります。

一次データでは、クラウドサインは基本料金が11,000円、送信1件あたり220円です。月5件、50件、200件の場合、それぞれ12,100円、22,000円、55,000円になります。

マネーフォワードクラウド契約は送信と保管が無料で、一律約7,128円/月です。freeeサインは月5,980円からで、同じ件数順で並べると、7,180円、7,180円、22,180円と推移します。件数によって、固定費型のほうが得になる分岐点があります。

月間件数の少ない立ち上げ期は従量型で始め、件数が増えてから固定費型へ乗り換える方法もあります。損益分岐点を具体的に計算し、利用が広がった将来も含めて比べれば、適したプランを選べます。

IT導入補助金を含めた判断材料

補助金を含めた実質的な負担も、導入費用を見るときの材料になります。

  • 対象枠:申請枠によって補助率や対象が異なります。
  • 申請時期:年度ごとの要件と公募要領を確認します。

ワークフローや電子契約は、IT導入補助金などの対象になることがあります。インボイス対応枠やセキュリティ対策推進枠のほか、PCやタブレットが対象になるケースもあります。

補助金の申請ロードマップは、導入予定に組み込んでおきます。補助金があると、初期投資の負担や導入のハードルが下がり、損益分岐点が早まる場合もあります。

月額料金や送信料と合わせて、実質負担を比べます。補助率や申請手順を押さえておけば、稟議に載せる投資額の見通しも立てられます。

riplaは、フルスクラッチ受託と業務伴走の立場から、費用構造の試算や補助金の活用を含めて、導入計画の組み立てを支援しています。

ポイント

プランは、自社の月間件数で固定費型と従量型の損益分岐点を計算し、将来の利用件数も含めて比べます。補助金を含めた実質負担も合わせて見ると、費用面の判断材料がそろいます。

導入方式の判断基準

導入方式を中心に、自社のセキュリティ方針、取引先、業務の固有性の3条件を注釈線で結んだ図。
自社と取引先、業務の条件を重ねて方式を絞り込みます。

最後に決めるのは、どの方式で導入するかです。

クラウドかオンプレミスか、立会人型か当事者型か、パッケージかフルスクラッチかは、自社のセキュリティ方針、取引先、業務の固有性に照らして選びます。一律の正解はなく、自社の条件で決めることになります。

クラウド対オンプレ・署名方式の選び方

セキュリティ要件と契約の重要度、取引先の対応力に照らして方式を比べます。電子契約では、立会人型(事業者署名型)と当事者型のどちらにするかも検討します。

  • クラウド型:初期費用を抑え、保守をベンダーに任せられます。
  • オンプレミス:独自のセキュリティ要件がある場合に検討します。
  • 署名方式:取引先の負担と本人性の担保を比べます。

クラウド型は初期費用0円から始められ、ベンダーが保守やバージョンアップを担います。機密情報を社外に置けない場合は、オンプレミスや専用環境が候補です。

ただし、クラウド連携のカスタマイズには、初期費用が数十万〜数百万円かかることもあります。標準機能で足りるかどうかが、判断を左右します。

立会人型はメール認証で取引先の負担が軽く、導入しやすい方式です。一方、当事者型は電子証明書で本人性を担保するため、より高い証拠力が求められる契約に適しています。

レビューシェアでは、クラウドサインが66%を占めています。もっとも、用途によって最適な方式は異なります。

パッケージ対フルスクラッチの判断基準

業務を標準化できるか、固有要件に合わせた開発が必要かによって、選択肢が変わります。

  • パッケージ:標準的な承認ルートを設定できる場合の選択肢です。
  • フルスクラッチ:複雑な条件分岐や深い連携が必要な場合に検討します。

月額300〜1,000円/ユーザー程度のクラウドサービスは、費用面で有利です。導入も早く、保守の負担も小さいため、中小企業では第一候補になります。

基幹システムとの連携が深くなり、パッケージのカスタマイズでは対応しきれない場合は、フルスクラッチが候補です。標準化できる業務をパッケージに寄せ、譲れない要件だけを個別開発する方法もあります。

riplaは、どこまでを標準で賄い、どこからを個別に開発するかの判断を支援しています。

パッケージは月額費用が続くものの、保守をベンダーに任せられます。フルスクラッチは初期投資が大きい反面、月額ライセンスがなく、自社の資産として育てられます。

利用者が多いと月額課金型の費用がかさみ、一定規模を超えるとフルスクラッチのほうが総保有コストで有利になる場合もあります。数年単位で費用を試算し、どちらが有利になるかを確かめます。

ポイント

方式は、セキュリティ方針と取引先の対応力、業務の固有性に照らして選びます。標準的な承認ルートで足りればパッケージ、複雑な条件分岐や深い連携が必要ならフルスクラッチが候補です。

まとめ

導入の判断では、メリットとデメリットを自社の数字で検証することが欠かせません。試算では、月20件の電子化で年間約96万円の削減が見込まれ、申請処理業務を約4割削減した事例もあります。

取引先の同意、電子化できない契約、従量課金、現場での形骸化も、あわせて考えておく必要があります。固定費型と従量型は件数で比べ、補助金を含めた実質負担も見ておきます。

導入方式は、自社のセキュリティ方針や取引先、業務の固有性に照らして選びます。効果を数字で示し、デメリットへの対策も添えることが、稟議の判断材料になります。

riplaは、費用の試算から方式の選定、現場への定着まで支援しています。全体像は、ワークフローシステムの完全ガイドでも確認できます。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。