不動産業界のシステムの導入/開発事例や活用/成功事例について

不動産業界のシステム導入は、反響対応、物件・顧客管理、契約・賃貸管理の課題から着手すると、現場への定着と業務改善につながります。

発注側の視点で、導入・開発・活用の事例を分野ごとに紹介します。近い業態の事例は、投資判断に役立ちます。全体像は不動産業界のシステムの完全ガイドもご覧ください。

▼全体ガイドの記事
・不動産業界のシステムの完全ガイド

反響対応の効率化で成約率を高めた事例

反響対応の効果を初動時間、成約機会、効果測定の3つのカードで整理した図。
速度・機会・測定の視点を並べると、導入効果を捉えやすくなります。

反響対応では、問い合わせに早く正確に応えられるかどうかが、成約率を左右します。なかでも対応スピードは、成果が見えやすい領域です。

賃貸・売買を問わず、反響はポータルサイトや自社サイトから届きます。その反響が電話、メール、LINEにも分散すると、対応漏れや二重対応が起きます。その結果、見込み客を取りこぼす機会損失が生じます。

反響を一元化し初動を10分以内に短縮した事例

複数ポータルの問い合わせを反響管理システム(CRM/SFA)に集約し、担当者へ即時通知した事例があります。初動時間の短縮は、効果を具体的に示す指標になります。

この仕組みで期待できる変化は、初動時間、成約機会、効果測定の3点です。

  • 初動時間:数十分から数時間かかっていた初動を、10分以内に縮めます。
  • 成約機会:最初の返信が、内見につながりやすくなります。
  • 効果測定:自社の反響数と成約率から、増加数を概算できます。

不動産の問い合わせでは、初動の数分が成約の有無を分けることがあります。製造業の一次データでは、集計や手作業の自動化により、月100時間以上、年60〜100万円以上の人件費削減が示されています。

不動産でも、定型返信のテンプレート化と自動振り分けで、同等規模の工数削減が見込めます。効果は漠然と捉えず、月の反響件数、初動時間、成約率を基に定量化します。

追客の自動化で見込み客の取りこぼしを防いだ事例

反響対応の効果は、初動の速さに加えて、追客にも現れます。すぐに成約しない見込み客へ継続的にフォローすることを、追客といいます。

人手で追客を続けると、繁忙期に後回しになり、他社で契約されることがあります。追客を自動化すると、営業担当が割ける時間の使い方が変わります。

  • 継続接点:新着物件の自動配信やステップメールで、顧客との接点を保ちます。
  • 条件照合:希望に合う新規物件の情報を、顧客へ自動で届けます。
  • 営業活動:物件探しや連絡の手間を減らし、提案や内見同行の時間にあてられます。

顧客の希望条件には、エリア、間取り、予算などを登録します。この仕組みを導入した事例では、担当者が個別に連絡しなくても、数カ月後の再来店につながっています。

反響対応のデジタル化は、省力化にとどまらず、放置されがちな見込み客を成約へつなぐ売上機会を生みます。

ポイント

反響対応は、初動時間と反響の受け口を整理すると、効果を数字で確かめやすくなります。見込み客への追客まで含めて成約機会を見ると、導入の判断がしやすくなります。

物件情報と顧客情報を一元管理した事例

物件と顧客の一元管理を中央に置き、入力の一元化、マスタ整備、連携仕様、既存データのクレンジングを周囲に配した図。
連携先の設計と移行前のデータ整理も、管理を整える要素として並びます。

不動産業界のシステムでは、物件情報と顧客情報を、レインズ(指定流通機構)やポータルサイトと連携させて一元管理します。

物件と顧客を別々に管理すると、案内履歴や顧客に合う物件が見えにくくなります。情報が分断されて、業務も属人化します。一方で、成功事例はこの一元管理に丁寧に取り組んでいます。

レインズ・ポータル連携で物件入力を自動化した事例

同じ物件情報をレインズ、自社サイト、複数のポータルサイトへ別々に入力すると、負担や入力ミス、更新漏れが生じます。

  • 入力の一元化:一度の登録で、各サイトへ反映されます。
  • マスタ整備:各ポータルの仕様に合わせて、項目を揃えます。
  • 連携仕様:要件定義で、連携先と範囲を明らかにします。

成功事例では、レインズや主要ポータルへの自動連携により、入力工数を大幅に削減しています。物流業界でも、what3wordsの位置情報を導入した結果、DHL・DPDの配達時間が30%削減されました。この例のように、情報の入口を一本化することが効率化の起点になります。

また、写真、図面、間取りなどの物件データも、一括で管理します。大量の物件を扱う仲介・管理会社では、マスタ整備にも工数がかかります。

マスタ整備は、業務システムの費用がかさむ要因の一つです。仕様が曖昧なままだと、リリース後にポータルへ反映されない問題が起きます。そのため、物件情報の構造と自動連携先を要件定義で詰めておくと、後からの手戻りを防げます。

顧客カルテで案内履歴を共有し属人化を解消した事例

顧客情報をカルテ化することも、一元管理には欠かせません。内見した物件、顧客の反応、希望条件の変化を記録します。

  • 履歴共有:担当者が不在の時も、顧客情報を引き継げます。
  • マッチング:希望に合う新規物件を、その場で候補に挙げられます。

成功事例では、顧客カルテを店舗内で共有し、担当者の退職や異動後も顧客との関係が途切れない体制を築いています。

希望条件と物件マスタを照合すると、担当者の記憶や勘に頼った提案を、店舗全体で使える資産に変えられます。

物件と顧客の一元管理は不動産システムの中核で、属人化の解消と継続的な成約力につながります。

既存データのクレンジングで一元化を成功させた事例

一元管理に成功した事例には、見落とされがちな共通点があります。その共通点は、導入前に既存データのクレンジング(整理・名寄せ)を行っていることです。

移行前に整える主なデータは、顧客や物件の重複、表記、情報の有効性です。

  • 顧客情報:現役顧客と過去客を仕分け、重複を統合します。
  • 物件情報:マスタに残る重複を、一つにまとめます。
  • 住所表記:書き方の揺れを揃えます。

古いデータには、顧客の重複、エリア名や物件名の表記揺れ、成約済み・退去済みの情報が混在します。このまま移行すると、ゴミデータを高速で処理するだけの状態になります。

立て直しの事例では、データを整えたことで、マッチング精度と集計の正確性を保ちました。華やかな機能より先に、移行前の整備に手を付けることが大切です。

要件定義では、誰が、いつまでに、どの基準で整備するかを決めます。この取り決めが導入後の信頼性を左右します。

ポイント

物件と顧客の一元化では、連携の仕様と既存データの整理を導入前に決めておくと、手戻りを減らせます。顧客カルテも、案内履歴を店舗内で共有できる形にするかが判断の目安です。

契約・重要事項説明の電子化で書類作成を削減した事例

物件情報から契約、署名、書類保管へ進む契約・重説の電子化の流れを示した図。
手続きから保管までを一続きにすると、来店を前提としない契約を組み立てられます。

契約・重要事項説明(重説)の電子化は、不動産業界のシステム投資の効果を高めます。2022年の宅地建物取引業法改正により、重要事項説明書や契約書面の電子交付が解禁されました。

IT重説(オンラインでの重要事項説明)も本格化し、紙の書類作成や押印、来店にかかる時間を削減できるようになりました。これも、システム投資の理由の一つです。

物件・顧客データから契約書を自動生成した事例

契約まわりの電子化では、物件情報、顧客情報、契約条件を使った書類の自動生成が効果を発揮します。自動生成の対象は、重要事項説明書や賃貸借契約書です。

  • 作成効率:登録済みのマスタから、契約書類を作ります。
  • 正確性:法令と自社の運用に合わせた書式と、入力の確認を用意します。

手作業では、一件ごとに相応の時間がかかり、転記ミスも起きます。自動生成によって作成時間を削減した事例もあります。

たとえば、建設業界の見積システム(アイピア)では、見積作成時間を50%削減した事例があります。

一方で、自動生成する書類は正確性と法令への適合も欠かせません。宅建業法は重説の記載事項を定めており、記載漏れは行政指導や損害賠償のリスクになります。

テンプレートに必須項目の入力チェックを設けて、スピードと正確性を両立させた例もあります。さらに、書類作成の効率化は、コンプライアンス上のリスクも低減します。

IT重説と電子契約で遠隔契約を実現した事例

従来の賃貸契約では、入居者が来店し、対面で重説を受けたうえで、書類に署名押印するのが一般的でした。

IT重説と電子契約を使うと、来店を前提としない契約の流れを組めます。

  • 遠隔での契約:IT重説と電子署名で、来店せずに契約を結べます。
  • 一気通貫の設計:物件情報、契約、署名、書類保管を、同じ流れでつなぎます。
  • 電子保管:要件に沿って保存し、検索や参照に使います。

導入事例では、遠方からの転居者や多忙な顧客でも契約を進められ、成約までの期間も短縮されています。書類を電子化する際は、改ざん防止のためにタイムスタンプも付けます。

電子保管では、宅建業法の書面保存要件を満たせます。さらに、検索性の向上、保管場所の削減、過去契約の即時参照も得られます。

来店の壁が減ると、機会損失を抑えられます。このため、契約・重説の電子化は、投資対効果を見込みやすい領域です。

クラウドサービスでスモールスタートした事例

最初からフルスクラッチの大型システムに踏み切れない会社は、電子契約やIT重説に特化したクラウドサービスから始める事例があります。導入は小さく試し、現場の利用を見ながら進めます。

  • 小さく開始:契約や重説など、一部の業務で試します。
  • 利用を検証:現場で使えるかを確かめ、運用ノウハウを蓄積します。
  • 段階的に拡大:必要に応じて、基幹連携を含む開発へ移ります。

建設業界では、月額数千円から始められる施工管理クラウドが普及しています。また、不動産でも月額制のサービスがあります。

一気に全社最適のフルスクラッチを目指すより、段階を踏む進め方が有効です。クラウドで、現場の納得感を得ながら進められます。

移行の目安は、取引量や管理戸数が増え、パッケージでは要件を満たせなくなった段階です。

現場を置き去りにした大型導入は避け、自社の規模に応じて入り口を選びます。

ポイント

契約まわりの電子化では、書類の記載事項と法令への適合を先に確かめておくと、記載漏れのリスクを抑えられます。そのうえで、小さく始めて現場の利用を見ながら進める方法が現実的です。

賃貸管理業務を自動化し失敗から立て直した事例

管理会社が担う賃貸管理では、家賃入金消込、滞納督促、契約更新、入居者の修繕依頼、退去精算など、定型業務が大量に積み重なります。

業務を自動化すれば、間接部門の人件費を構造的に圧縮できます。一方で、現場の運用を無視した導入は失敗につながるため、成功と立て直しの両方の事例を見ていきます。

家賃入金消込と督促を自動化した事例

賃貸管理で特に事務負担が大きいのは、毎月の家賃入金消込と、滞納者への督促です。

  • 入金消込:口座振替や保証会社のデータを取り込み、入金の照合を自動で行います。
  • 滞納督促:未入金を検知して通知し、督促の漏れや遅れを防ぎます。

数百戸を管理する会社では、通帳と契約台帳を一件ずつ突き合わせる作業が膨大です。自動消込によって、月次の照合作業を大幅に減らした事例があります。

製造業では、集計の自動化によって月100時間以上の削減が示されています。同様に、定型の照合を自動化する取り組みは、不動産管理でも効果を生みます。

滞納は早く対応するほど回収率が高く、放置すると貸し倒れのリスクが膨らみます。そのため、督促時期を標準化しておくと、担当者の経験に頼らない回収管理ができます。

賃貸管理の自動化は、省力化に加えて、収益の安定とリスク低減にもつながります。

現場ヒアリングで使われなかったシステムを立て直した事例

発注側は、成功談だけでなく、失敗の理由や立て直し方からも学べます。物流業界では、現場を無視して2,800万円を投じた導入例があります。その食品卸では、出荷精度が85%に低下し、残業が月30時間増え、ベテラン2名が退職しました。

不動産でも、現場の運用を聞かずに高機能なシステムを入れた結果、入力が煩雑で使われず、Excelに戻ってしまう失敗があります。

立て直しでは、現場の実態を聞き取ったうえで、改善を設計し直す手順が必要です。

  1. 関係者に業務の流れ、無駄、手戻りを聞き取ります。
  2. 現状の業務フローを洗い出し、あるべき姿(ToBeモデル)を描きます。
  3. システムによる改善を設計し、効果の大きい業務から段階的に定着させます。

ヒアリングの対象は、管理担当者、営業、経理、オーナー対応の窓口です。riplaはフルスクラッチ受託と国内開発の立場から、現場の業務を起点にToBeを描きます。

事例は、華やかな成果だけでなく、なぜ現場で使われたかを見ることで、失敗を避ける近道になります。

ポイント

賃貸管理の自動化は、入金消込と督促のような定型業務から始めると効果が見えやすくなります。導入前に現場の運用を聞かないと、使われないまま終わるおそれがあります。

まとめ

成功事例も立て直しの事例も、現場の業務から設計し、反響対応や家賃管理のROIを起点に、段階的に投資を広げている点が共通しています。

反響の一元化は初動を10分以内に短縮し、物件・顧客の一元管理は属人化を解消します。契約・重説の電子化は書類作成時間と法令上のリスクを減らし、賃貸管理の自動化は収益安定とリスク低減につながります。

現場の聞き取りを怠った管理システムが使われなくなった事例は、機能が高くても定着するとは限らないことを示します。

事例を見るときは、機能の多さより、現場で使われた理由に目を向けます。そのうえで、自社の物件数、反響数、管理戸数を踏まえ、反響対応や家賃管理から着手します。

riplaはフルスクラッチ受託と国内開発を組み合わせ、不動産の商習慣に沿う要件整理と現場に定着するシステムづくりを支援します。全体像は完全ガイドをご覧ください。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>

執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。