入退室管理システムの導入を検討するとき、多くの担当者がまず知りたいのは「自社と似た施設や業態の企業が、実際にどうやって入退室を電子化し、どんな成果を出したのか」という具体的な事例ではないでしょうか。オフィスの鍵管理、複数拠点のセキュリティ、無人店舗の運用、施設・不動産の内見対応など、入退室を取り巻く課題は業態によって大きく異なります。一般的なオフィス向けのカード認証をそのまま導入しても、無人店舗や民泊、賃貸物件の現場では運用が噛み合わず使われない、というケースは珍しくありません。だからこそ、自社の業態に近い導入事例・活用事例こそが、投資判断の精度を高めてくれます。
本記事は、入退室管理システムの導入事例・開発事例・活用事例・成功事例を、発注企業の視点から掘り下げる「事例特化」の解説です。物理鍵の運用から脱却したオフィス事例、無人店舗で受付と入退室を統合した事例、ホテルや民泊でPMS(宿泊管理システム)とスマートロックを連携した省人化事例、さらに数百万円を投じたシステムが現場に定着せず形骸化した失敗からの軌道修正まで、一次データとあわせて具体的に解説します。読み終えるころには、自社が「どこから着手し、どんな効果を狙うべきか」のイメージが描けるはずです。なお、入退室管理システム全体の選び方や費用の全体像をまだ把握していない方は、まず入退室管理システムの完全ガイドから読むことをおすすめします。
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物理鍵の運用から脱却したオフィス入退室事例

入退室管理システムの事例で、もっとも分かりやすい成果が出るのが「物理鍵の運用からの脱却」です。オフィスの入退室は、総務担当者が鍵を保管し、出社時に貸し出し、退社時に返却を確認する、という手作業で成り立っているケースが少なくありません。さらに退職者が出るたびに鍵を回収し、紛失すればシリンダーごと交換する、という運用が常態化していました。この物理鍵への依存こそが、セキュリティリスクと管理工数の温床になっています。
鍵管理工数と再発行コストを削減した事例
物理鍵脱却の効果をもっとも具体的に示すのが、鍵管理にかかる工数と再発行コストの削減です。ICカードやスマートフォンのアプリ認証に切り替えると、入社時の鍵貸与や退職時の回収といった作業が、管理画面上の権限付与・剥奪のクリック操作だけで完結します。社員が100名規模の事業者では、入退社や異動のたびに発生していた鍵の物理的な受け渡しが消え、総務部門の月数十時間規模の工数が削減できた事例があります。これは間接部門の人件費に直結する規模であり、投資回収のロジックとして稟議でも説明しやすい数字です。
重要なのは、この削減効果を「漠然としたセキュリティ強化」ではなく、自社の実際の運用に当てはめて定量化することです。年間の入退社人数、鍵の紛失・再発行の頻度、シリンダー交換の単価、総務担当者の人件費単価を掛け合わせれば、年間で削減できる金額が概算できます。物理鍵では紛失のたびに数万円のシリンダー交換が発生していたものが、ICカード認証ではカードの再発行コスト数百円で済むケースも多く、ハードウェアの初期投資を数年で回収できる試算が成立します。事例を読むときは、こうした自社の数字への置き換えを必ず行ってください。
入退室ログの可視化で内部統制を強化した事例
物理鍵脱却の効果は、管理工数の削減だけではありません。電子認証に切り替えると「誰が・いつ・どの部屋に入退室したか」が自動的にログとして記録されます。物理鍵では実現できなかったこの可視化が、内部統制やコンプライアンス対応の面で大きな価値を生みます。情報漏洩やインシデントが発生した際に、サーバルームや機密書類保管室への入退室履歴をすぐに追跡できることは、監査対応の負担を大きく軽減します。
さらに、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)やプライバシーマークといった認証取得・維持の現場では、物理的なアクセス制御の記録が要求されます。入退室ログを自動で保存・出力できる仕組みは、認証審査時のエビデンス提出を効率化します。ある事例では、それまで紙の入退室台帳に手書きしていた記録を電子化したことで、審査準備の工数が大幅に減り、記録の改ざんリスクもなくなったと報告されています。入退室管理の電子化は、単なる省力化にとどまらず、企業の信頼性を担保する基盤になることを示しています。BtoBの入退室管理の第一歩は、この「鍵運用の電子化によるログの可視化」だと言えます。
こうしたオフィス事例で見落とされがちなのが、勤怠管理との相乗効果です。入退室の時刻が客観的なデータとして残ることで、実際の在館時間を勤怠の裏付けに使えるようになります。自己申告に頼っていた勤怠が、入退室ログと突き合わせて検証できるようになり、労務管理の精度と公正性が向上した事例もあります。鍵の電子化は、セキュリティと省力化だけでなく、勤怠・労務の領域にまで波及効果を持つことを、自社の試算に織り込んでおくとよいでしょう。一つの投資が複数の部門の課題を同時に解決する、という視点が、稟議での説得力を高めます。
無人店舗で受付と入退室を統合した事例

近年、もっとも成長著しい入退室管理の活用領域が、無人店舗・無人施設です。24時間営業のフィットネスジム、無人のコワーキングスペース、セルフ型のトレーニングスタジオなどでは、スタッフを常駐させずに会員だけを入室させる仕組みが事業モデルそのものを支えています。ここでは入退室管理が、単なるセキュリティではなく、人件費を限界まで圧縮する省人化の中核を担います。
会員予約と入退室を連動させた無人運用事例
無人店舗の成功事例に共通するのは、会員管理・予約システムと入退室管理を一気通貫で連携させている点です。会員がスマートフォンで予約を入れると、その予約時間帯だけ本人のアプリ認証やQRコードで解錠できる、という仕組みです。受付スタッフが不在でも、予約者本人だけを正しい時間に入室させられるため、不正利用や時間外の侵入を防ぎながら、人を介さない運用が成立します。これは入退室管理単体ではなく、予約・会員・決済と統合して初めて実現できる価値です。
こうした統合運用では、入室時に有効な会員かどうかを自動で判定するロジックが重要になります。会費の未払いがあれば解錠しない、退会済みの会員は権限を自動で失効させる、といった制御を会員管理システムと連動させることで、現場の確認作業がゼロになります。無人ジムの事例では、深夜帯を含めて24時間の稼働を実現しながら、店舗あたりのスタッフ常駐をなくし、複数店舗を少人数の本部で一元管理する体制を構築しています。入退室管理が事業の収益構造そのものを変えた好例だと言えます。
不動産の内見予約と入退室を統合した事例
無人運用のもう一つの注目領域が、不動産の内見対応です。賃貸物件の内見では、これまで仲介会社の担当者が鍵を持って現地まで同行する、あるいはキーボックスの暗証番号を口頭で伝える、という運用が一般的でした。前者は人手がかかり、後者は暗証番号の使い回しによるセキュリティリスクがあります。ここにスマートロックと内見予約システムを連携させた事例が登場しています。
内見希望者がWeb上で予約を入れると、その物件・その時間帯だけ有効なワンタイムの解錠コードが自動発行され、担当者の同行なしでセルフ内見ができる仕組みです。これにより、仲介会社は内見1件あたりの移動・立ち会い工数を削減し、希望者は自分の都合のよい時間に物件を見られるようになります。リサーチでは、競合の解説が美容室や飲食、オフィス受付といった領域に極端に偏重し、賃貸・物件管理や内見予約と入退室の連携という不動産特化の活用がほとんど語られていないことが分かっています。riplaはフルスクラッチ受託の立場から、こうした不動産・宿泊・空間ビジネス特化の入退室管理の作り込みを得意としています。
ホテル・民泊でPMSとスマートロックを連携した省人化事例

入退室管理の投資効果を最大化する領域の一つが、ホテル・旅館・民泊といった宿泊業です。宿泊業界は深刻な人手不足に直面しており、フロント業務の省人化が喫緊の課題です。ここで、宿泊管理システム(PMS)とスマートロックを連携させ、チェックインから客室の解錠までを自動化した事例が成果を上げています。これこそが、宿泊事業者が入退室管理に投資する最大の理由です。
PMS連携でチェックインと客室解錠を自動化した事例
宿泊業の成功事例では、予約データを管理するPMSと客室のスマートロックを連携させています。宿泊客がオンラインチェックインを済ませると、その客室・その滞在期間だけ有効な解錠コードや鍵情報が自動で発行され、フロントに立ち寄らずに入室できます。これにより、深夜到着の対応やフロント常駐の負担が大きく軽減され、少人数のスタッフでも複数の宿泊施設を運営できるようになります。無人チェックインを前提とした民泊やスモールホテルでは、この連携が運営の前提条件になっています。
成功事例では、入退室管理を単なる解錠の仕組みではなく、PMSのフロントエンドとして位置づけています。予約が入ると鍵情報が発行され、チェックアウト時刻を過ぎると自動的に解錠コードが失効し、清掃スタッフ用の権限が時間限定で付与される。この一連の自動化に到達すると、客室1室あたりの人手はほぼゼロに近づきます。前述の省人化という効果も、こうしたPMS連携を伴うフルオートメーション化によって最大化されるのです。
インバウンド対応で多言語解錠案内を実装した事例
宿泊業の入退室管理で見落とされがちなのが、インバウンド対応です。訪日外国人が宿泊客の中心を占める施設では、解錠の手順や注意事項を日本語だけで案内しても伝わりません。成功事例では、予約情報に紐づけて、宿泊客の言語に応じた多言語の解錠案内を自動送信する仕組みを実装しています。英語・中国語・韓国語などで「鍵の開け方」「チェックアウト手順」を案内することで、現地スタッフがいなくてもトラブルなく運用できます。
リサーチでも、競合のシステム解説は多言語UIや海外対応の深掘りが手薄であることが指摘されています。無人・省人運用ほど、言語の壁による問い合わせやトラブルが運営の足かせになるため、多言語の解錠案内は単なる付加機能ではなく、無人運用の成否を分ける重要要素です。こうした宿泊・不動産・無人運用に特化した入退室管理は、汎用のオフィス向けSaaSでは要件を満たしきれないことが多く、業態に合わせた作り込みが効果を最大化します。自社の業態が無人運用やインバウンド対応を含むなら、事例から「どこまで自動化し、何を多言語化すべきか」を読み取ることが重要です。
清掃・メンテ要員への時間限定権限で運用を回した事例
宿泊施設や無人施設の入退室管理で意外に重要なのが、清掃やメンテナンスのスタッフに対する権限の扱いです。宿泊客が滞在していない時間帯だけ清掃スタッフに解錠権限を与え、作業が終われば自動で失効させる、という時間限定の権限制御を実装した事例があります。これにより、清掃要員に物理鍵を渡して回収する手間がなくなり、鍵の紛失や持ち出しのリスクもなくなりました。複数施設を委託清掃で回す運営形態でも、誰が・いつ・どの部屋に入ったかがログに残るため、トラブル時の追跡が容易になります。
この事例から学べるのは、入退室管理の価値が「正規利用者を通す」ことだけでなく、「外部の作業者を安全に出入りさせる」運用にも及ぶ点です。設備点検の業者、配送業者、警備員など、一時的に施設に入る関係者は意外に多く、その都度の鍵の受け渡しは管理者の隠れた負担になっています。これらを時間・場所限定の権限発行で置き換えることで、運用全体が大きく軽くなります。事例を読むときは、正規利用者だけでなく、こうした周辺の出入り者まで含めて入退室をどう設計したかに注目すると、自社の運用改善のヒントが見つかります。
失敗から軌道修正した入退室管理システム事例

事例の価値は、成功談だけにあるのではありません。むしろ、発注側がもっとも学べるのは「なぜ失敗したのか」「どう立て直したのか」というリアルな経験です。入退室管理システムにも、ハードウェアと工事費を含めて数百万円を投じたのに現場に定着せず形骸化した、という事例が存在します。この失敗から得られる教訓は、これから投資する企業にとって何よりの保険になります。
現場が使わず形骸化した失敗の教訓
象徴的な失敗が、認証機器を導入したのに現場が従来どおりドアを開けっ放しにしてしまい、システムが形骸化した事例です。この企業は、入退室管理を導入する目的や運用ルールを現場と十分にすり合わせないまま、機器の設置だけを先行させました。結果として、繁忙時には「いちいちカードをかざすのが面倒」という理由でドアが常時開放され、せっかくのアクセス制御が無効化されてしまいました。投資したハードウェアが、ほぼ飾りになったのです。
この失敗の本質は、機器の性能や予算の問題ではなく、「現場が日々どう出入りし、何を煩わしく感じるか」を起点に運用設計しなかったことにあります。入退室管理は、人の行動を制約する仕組みであるがゆえに、現場の納得感がなければ必ず迂回されます。来客の多い受付、両手がふさがる搬入口、頻繁に出入りする部署など、動線ごとの実態を無視して一律のルールを敷くと、現場は抜け道を作ってしまいます。事例が教えるのは、「どんな機器を入れたか」より「現場の動線にどれだけ寄り添ったか」が成否を決める、という原則です。
動線設計とルール整備で立て直した事例
失敗から立て直した事例に共通するのは、機器の再設置ではなく、現場の動線と運用ルールを描き直したことです。誰が・どの動線で・どの頻度で出入りするかを細かくヒアリングし、認証を必須にすべきエリアと、利便性を優先して緩めてよいエリアを切り分ける。両手がふさがる搬入口には顔認証や非接触の認証を導入し、来客の多い受付には受付システムと連動した一時的な権限発行を組み合わせる。この動線ごとの最適化が、現場に使われる入退室管理と、迂回される入退室管理を分けます。
立て直しに成功した企業は、最初からすべてのドアを厳格に制御するのではなく、もっともリスクの高いサーバルームや機密エリアから段階的に認証を導入しました。現場が「ここは確かに守るべきだ」と納得できる範囲から始め、運用が定着してから対象エリアを広げています。riplaはフルスクラッチ受託と国内開発の立場から、この「現場の動線から逆算して運用を設計し、段階的に定着させる」進め方を一貫して重視しています。事例は華やかな機能ではなく、「なぜ現場に使われたのか」という視点で読むことが、失敗を避ける最大の近道です。
まとめ

入退室管理システムの事例を振り返ると、成功も失敗からの回復も、結局は「現場の動線と業態から逆算してシステムを設計し、省人化や工数削減という明確なROIを起点に段階的に投資を広げる」という一点に集約されます。物理鍵脱却は鍵管理工数とログの可視化で内部統制を強化し、無人店舗や内見予約では予約・会員と連動させた完全無人運用を実現し、ホテル・民泊ではPMSとスマートロックの連携がフロント業務を自動化します。一方で、現場の動線を無視して機器だけを先行導入した失敗は、ハードウェアの性能が成功を保証しないことを教えています。
事例を読むときに大切なのは、「どんな機器を入れたか」ではなく「なぜ現場に使われたのか」という視点です。自社の業態と動線に照らし、まずはリスクの高いエリアや効果の大きい無人運用から、現場が使える一歩を踏み出してください。riplaはフルスクラッチ受託と国内開発を組み合わせ、無人店舗・宿泊・不動産といった競合が手薄な領域も含め、動線から逆算した要件整理と現場に定着するシステムづくりを一貫して支援します。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。
株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
