公共システムの導入/開発事例や活用/成功事例について

自組織に近い公共システムの事例は、民間の事例では抜けやすい調達、個人情報、マルチベンダーの論点を補い、投資判断や庁内の合意づくりに役立ちます。

取り上げるのは、自治体・官公庁の発注側から見た、自動化、データ連携、住民サービス、改善の事例です。

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RPA・AI-OCRで定型業務を自動化した公共システム事例

RPA・AI-OCRの導入自治体の効果実感78.3%、平均削減率32.7%、初年度効果が計画の65%程度という3つの指標を並べた図解。
導入直後の効果は、平均削減率と分けて捉えられます。

RPA(業務の自動化ロボット)とAI-OCR(紙書類の文字認識)は、導入効果が数字に表れやすい領域です。窓口や内部事務の定型処理を自動化すると、住民への応答が速まり、職員の負担も減らせます。

総務省の2023年調査では、導入自治体の78.3%が効果を実感しました。また、平均削減率は32.7%です。

札幌市が児童手当12万件超を20秒に短縮した事例

象徴的な事例のひとつが、札幌市の児童手当業務です。

  • 処理件数:年間12万件超の児童手当関連業務
  • 処理時間:1件あたり数分から20秒程度へ短縮
  • 職員の時間:相談対応や制度説明への再配置

札幌市では、児童手当の現況届などを処理していました。RPAとAI-OCRを組み合わせた結果、単純計算でも一桁以上の効率化になり、繁忙期の負担緩和につながりました。

自動化は人員削減だけでなく、住民サービスの充実にも活用できます。こうした見方は庁内の合意づくりにつながり、現場の意欲にも関わります。

児童手当のように繁忙期がある業務では、従来は残業や応援人員で対応していました。処理時間が縮まると、ピークが平らになり、通常の体制で業務が回せます。さらに、職員の働き方や心理的な負担も改善します。

事例を読むときは、削減時間だけでなく繁忙期の負担がどう変わったかも見ると、自組織での導入価値を描きやすくなります。

長岡市74業務で年18,603時間削減した事例

大きな削減実績を示したのは長岡市で、税務業務を効率化したのは恵庭市です。

  • 長岡市:74業務のRPA化で年間18,603時間を削減
  • 恵庭市:税務16業務でAI-OCRを使い年間1,100時間を削減
  • 共通点:定型業務から着手し、効果を見て対象を拡大

長岡市の削減時間は、正社員に換算すると10名近い労働時間に相当します。この数字は、一つの業務だけでなく、全庁で自動化を積み重ねた成果です。

恵庭市では、1件あたりの入力が30秒程度になり、紙の申告書を一文字ずつ入力する負担が軽くなりました。削減時間を自庁の業務件数や人件費単価に当てはめると、庁内で投資回収を説明する材料になります。

初年度は計画の65%という現実から学ぶ進め方

総務省の2023年調査では、RPA・AI-OCRの初年度効果は計画の65%程度でした。導入直後から計画どおりの削減が出るとは限りません。

  • 対象選定:業務フローの見直しと、対象業務の選定
  • 効果の積み上げ:初年度は仕組みを育てる期間という位置づけ
  • 段階的な拡大:長岡市の74業務や恵庭市の16業務のように、対象を増やしながらノウハウを蓄積

華やかな削減数字だけを見て同じ効果を急ぐと、初年度の伸び悩みで取り組みが止まるおそれがあります。自動化は、継続して育てることで力を発揮する取り組みです。

ポイント

導入判断では、削減時間の数字だけでなく、初年度は計画の65%程度にとどまる点も織り込んで見積もるのが目安です。定型業務から始め、効果を見て対象を広げていきます。

業務データの一元管理で連携を改善した公共システム事例

学籍・成績・出欠の一元管理、二重入力や帳票への転記の削減、現場向け研修と利用支援を並べた図解。
情報の集約から現場支援までを一体で考える構成です。

住民情報や税、福祉などのデータは、部署や帳票ごとに分散しがちです。その結果、同じ情報の二重入力が生じたり、部署間の照会に時間がかかったりします。教育などの分野でも、同じような状況が起きがちです。

自動化と並んで成果を生むのが、業務データの一元管理です。校務支援と福祉・介護記録の事例からは、効果と定着の条件が読み取れます。

校務・学務の一元化で二重入力をなくした事例

教育分野では、校務支援は一元化の効果が見えやすい領域です。整備率は2025年3月時点で94.8%に達し、小学校91.3%、中学校90.6%、高校98.8%まで普及しました。効率化が全国で認められた表れでもあります。

学籍・成績・出欠を一元管理すると、紙の名簿や個別の表計算への重複転記が減り、一度の入力で済みます。

一元化の成果は、入力の削減にとどまりません。出欠や成績を横断して把握できるため、配慮が必要な児童・生徒の早期発見や、保護者向け資料の作成も進められます。

教員のICT校務活用能力は全国平均90.7%です。一方で、研修受講率は群馬58.8%から岐阜95.8%まで地域差があります。

そのため、システムの導入だけでなく、研修と定着支援も設計しておく必要があります。さらに、校務支援は長時間労働の是正にも関わります。

重複転記が減ると、放課後や持ち帰りの事務を減らせ、その時間を授業準備や児童・生徒への対応に回せます。

  • 一元管理する情報:学籍・成績・出欠
  • 期待できる業務変化:二重入力や帳票への転記を削減
  • 定着に必要な支援:現場向け研修と利用支援

校務以外に応用する場合も、どの二重入力をなくせば現場の負担が最も減るかを見て、対象を選びます。

福祉・介護記録の自動化で転記を削減した事例

福祉・介護の分野でも、記録の一元化と自動化が転記の削減につながります。

  • 記録の連携:タブレット入力したケア記録を保険請求や報告書に連携し、三重の作業を一本化
  • 月額料金:カイポケは月5,000円から、まもる君クラウドは月7,800円からです。
  • ICTの認知:介護関係者50名の調査で「知らない」は74%、「聞いたことがある」は20%、「理解がある」は6%でした。

導入の成否は、機能の優劣よりも、現場が理解し、ツールを使い続けられるかで決まります。また、小規模事業所でも始めやすい価格帯のサービスがあります。

成功事例では、導入時のオンボーディングに加えて、納品後も利用ログを見て使い方を改善しています。継続して現場を支える姿勢は、公共システム全般にも通じます。

ポイント

一元化は、二重入力の削減に加えて、研修や定着支援まで含めて判断するのが目安です。校務以外に広げる場合は、現場の負担が最も減る二重入力から手を付けます。

住民サービス向上につながった公共システム事例

公共システムは、職員の効率化だけでなく、住民が感じるサービスの質でも評価されます。待ち時間の短縮や24時間対応、手続きのオンライン化は、投資の意義を住民や議会に説明する材料になります。

住民接点の改善では、機能だけでなく調達方式や財源の組み立ても成果を左右します。

AIチャットボットで問い合わせ対応を改善した事例

AIチャットボットは、住民からの定型的な問い合わせに24時間応答します。北九州市では、観光向けサービスを公募型プロポーザルで調達しました。

ごみの分別、手続きの必要書類、施設の開館時間など、件数の多い質問を受け止めます。その結果、窓口や電話に集中する負荷を分散できます。

公募型プロポーザルでは、価格だけでなく提案内容や運用力も評価できます。機能に加えて、どの方式でどんな事業者と組んだかも見て、自組織の調達設計に活かせます。

共同調達・補助金を活用してコストを抑えた事例

住民サービスを充実させつつ財政負担を抑えるため、共同調達や補助金を使う事例も増えています。

  • 府の制度:専門人材の確保を支援
  • 地域独自の制度:自治体の取り組みを補助
  • 国の制度:公共システムの整備を後押し

大阪府のデジタル人材シェアリングは、1プラン120万円のうち府が2分の1にあたる60万円を補助します。そのため、専門人材を確保しにくい小規模自治体でも活用できます。

福井県のCO-FUKUIには、最大300万円を支援する地域独自の補助制度があります。また、国にもデジタル基盤改革支援補助金や地域未来交付金があります。

事例では、システムの中身だけでなく、財源を含む投資全体を見ることが大切です。補助金で自己負担を抑えて必要な機能を確保する際は、制度が年度ごとに条件を変えるため、最新の公募要領を確認してください。

調達方式の選び方が成果を左右した事例

公共調達には、一般競争入札、総合評価方式、公募型プロポーザルがあります。価格を重視するか、提案内容や価格を総合評価するかで方式が異なります。

何を調達するかによって、適した方式は変わります。たとえば、住民向けサービスでは、価格だけで決めると使いにくくなる場合があり、提案力を評価する方式が有効です。

大阪市はガバメントクラウドの運用管理補助者を、総合評価一般競争入札で単独調達し、運用体制の質を確保しました。さらに、北九州市は観光AIチャットボットを公募型プロポーザルで調達しました。

調達対象に応じて方式を使い分けることは、成果を左右する成功要因です。事業者との組み方も読み取り、自組織の調達設計に活かします。

  • 一般競争入札:価格を主な基準にする方式
  • 総合評価方式:提案内容と価格を総合的に評価する方式
  • 公募型プロポーザル:提案の中身を重視する方式

ポイント

住民サービスの効果は、待ち時間の短縮や24時間対応など、住民が感じる質で測るのが目安です。調達方式は、価格だけで決めて使いにくくならないかを基準に選びます。

失敗から軌道修正した公共システム事例

段階導入、実際の業務フローに沿った現場訓練、ログ分析や聞き取りを運用へ反映する継続改善の順に進む図解。
先行導入で得た課題を、その後の改善へつなげます。

発注側が学べるのは、成功だけでなく、なぜ失敗し、どう立て直したかという実体験です。移行を誤って住民サービスを一時的に悪化させた事例もあります。

また、失敗から得た教訓は、これから導入する組織のリスクを抑える判断材料になります。

一斉移行で外来待ち時間が3倍になった失敗の教訓

公共性の高い医療現場で起きた象徴的な失敗が、電子カルテの一斉移行です。初日は習熟が追いつかず、外来の待ち時間が平均3倍になり、患者からクレームが殺到しました。

原因は、操作研修が機能説明に偏り、実際の診療フローに沿った訓練が不足していたことです。失敗の本質は、システム性能よりも移行の進め方にありました。

公共システムは住民や患者の生活に直結するため、止めたり遅らせたりしにくい制約があります。現場が慣れる前に一斉移行すると、サービスが一時的に麻痺するおそれがあります。

  1. 一部の部署や業務で先行導入する。
  2. 実際の業務フローに沿って訓練する。
  3. 移行直後の手厚いサポート体制を用意する。

段階移行と継続伴走で立て直した事例

立て直しでは、一部の部署や業務に絞って先行導入し、現場の声を聞いて設定や運用を調整してから対象を広げます。そのため、問題が起きても影響を限定でき、本格展開前に課題を解消できます。

RPAの対象業務を少しずつ増やす進め方も、段階的な展開に通じます。加えて、公共システムは導入後も現場に伴走する体制が欠かせません。

納品時にベンダーの関与が終わると、利用ログが確認されないまま、使われない機能が放置されて利用率が下がることがあります。一方、成功した組織は、月次でログを分析し、現場への聞き取りを重ねてUIや運用を改善しています。

riplaはフルスクラッチ受託と国内開発の立場から、現場の業務を起点に設計し、段階的な定着と導入後の伴走を重視しています。

事例は、なぜ現場と住民に使われたかという視点で読むと、失敗を避ける判断に役立ちます。

  • 段階導入:先行導入で課題を見つけたうえでの、対象の拡大
  • 現場訓練:実際の業務フローに沿った習熟の支援
  • 継続改善:月次のログ分析や聞き取りの、運用への反映

ポイント

移行は、一部の部署から先行導入し、実際の業務フローに沿った訓練を重ねて進めるのが目安です。失敗例は、移行直後の混乱を避けるための教訓として読むと役立ちます。

まとめ

公共システムの事例では、現場の業務から逆算し、効果が出やすい定型業務から段階的に着手して、導入後も伴走することが成果につながります。

札幌市は児童手当の処理を20秒程度に短縮し、長岡市は年18,603時間、恵庭市は年1,100時間を削減しました。さらに、導入自治体の78.3%が効果を実感し、平均削減率は32.7%でした。

校務支援の整備率94.8%は、一元化の普及を示しています。AIチャットボットや共同調達、補助金も、明確な狙いを持つ投資として住民サービスの向上につながりました。

電子カルテの一斉移行では、待ち時間が平均3倍になりました。成否を分けるのは、性能だけでなく移行の進め方です。

事例を読むときは、機能だけでなく、なぜ現場と住民に使われたかを確認してください。自組織の業務量や制度に照らして、効果の大きい定型業務から一歩を踏み出し、住民サービスにつなげます。

riplaはフルスクラッチ受託と国内開発を組み合わせ、業務から逆算して要件を整理し、現場に定着するシステムづくりを支援します。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。