労務管理システムの導入/開発事例や活用/成功事例について

労務管理システムの事例では、紙やExcelの手作業の電子化、給与・会計との連携、雇用要件に合う選択によって、工数が減っています。

発注する会社の立場から、導入・開発・活用の事例を取り上げ、自社の着手点と狙える効果を考えます。全体像は、労務管理システムの完全ガイドもご覧ください。

▼全体ガイドの記事
・労務管理システムの完全ガイド

紙・Excel脱却で労務工数を削減した事例

入社手続き、年末調整、雇用契約の電子化を3枚のカードで示す図。
3つの手続きは、紙の配布や転記が生じる場面から電子化できます。

紙とExcelの手作業からの脱却は、導入成果が見えやすい例です。

入社者の個人情報を紙やメールで集めて手入力し、社会保険届や年末調整の申告書も作成・回収・転記している企業は少なくありません。こうした作業は繁忙期の残業やヒューマンエラーにつながるため、電子化の事例から削減できる工程を確認します。

入社手続きのペーパーレス化で工数を削減した事例

紙・Excel脱却の効果を具体的に示すのが、入社手続きのペーパーレス化です。従来は入社者に紙書類を渡し、記入内容を確認して各システムへ入力するまで数時間かかることがありました。

システム導入後は、入社者がスマートフォンやPCから個人情報・口座・扶養家族を入力し、その情報を従業員マスタに使えます。

  • 転記工程を削減:紙の情報を担当者が打ち直す作業をなくせます。
  • 自社の削減効果を試算:入社・異動の件数、処理時間、人件費単価を使って見積もります。

一次データには、入力作業を時給3,000円換算で1人あたり月約30分、約1,500円相当とする試算があります。4月に入社が集中する企業や中途採用が多い企業では、作業が積もり、繁忙期の残業を生みます。

月の入社・異動件数に、1件あたりの処理時間と人件費単価を掛けると、年間の削減工数とコストを概算できます。ただし、事例の数字はそのまま使わず、自社の実績に置き換えて確認します。

年末調整の電子化で繁忙期残業を解消した事例

紙運用では、担当者が申告書を配り、記入漏れや添付書類の不足を確かめたうえで、給与システムへ転記します。電子化では、従業員の入力をシステムが案内し、必要箇所の確認や保険料控除・扶養の計算を補助します。

  • 不備だけ差し戻す:全件を目視で確認する負担を減らせます。
  • 作業管理費の試算:100名規模で月5万円(1人分の人件費相当)を基準に置く考え方もあります。

電子化の効果は、工数の削減以外にも広がります。入力ミスや計算ミスが減るため、税額訂正の手戻りや従業員からの問い合わせも少なくなります。

さらに、年末調整の作業を時期ごとに均せると、担当者が採用や制度設計に時間を振り向けられます。これが紙・Excel脱却の本質的な価値です。

雇用契約の電子締結でリモート採用に対応した事例

紙の雇用契約書や労働条件通知書は、印刷、郵送、署名・捺印、返送、保管が必要でした。

一方で、電子締結ではオンラインで契約書を提示し、入社者本人が内容を確認して電子的に同意します。郵送の手間がなくなるため、リモート勤務や遠隔地採用にも便利です。

  • 締結状況を一覧で確認:誰がどの書類に同意したかを把握できます。
  • 関連書類も電子化:誓約書や個人情報の取扱同意書にも同じ仕組みを使えます。

電子締結の価値は、締結後の管理にも表れます。契約書がシステムに保存されるため、紙のファイルを探し回る必要もなくなります。

入社手続き、年末調整、雇用契約の電子化は、繁忙期の負担を分散させ、担当者が付加価値の高い業務に時間を使う助けになります。

ポイント

判断の目安は、入社・異動の件数と1件あたりの処理時間から削減工数を試算し、大きい工程から電子化することです。年末調整や雇用契約の電子化も、同じ考え方で効果を比べられます。

給与・会計連携で二重入力をなくした事例

労務管理システムを中心に、給与計算システム、会計ソフト、社会保険、雇用保険を連携先として示す図。
給与・会計の入力連携と行政手続きの電子化を同じ基盤から整理できます。

給与計算システムや会計ソフトとの連携は、労務管理システムの投資効果を左右します。従業員情報や扶養、保険料は給与計算に使われるため、連携がないと、同じ内容を再入力することで転記や計算のミスが生じます。そのため、成功事例では連携の方式と対象項目の設計に丁寧に向き合っています。

労務と給与計算をシリーズ連携でつないだ事例

同じシリーズの労務・給与システムをAPI連携する方法は、よく見られる成功パターンです。freee人事労務のように、勤怠・労務・給与計算を一体で提供する製品もあります。

  • 一体型:社会保険料控除や住民税徴収まで、給与計算に自動で反映します。
  • 既存給与ソフトを継続:CSVやAPIで労務システムにつなぎます。

料金の例は、勤怠が300円〜、人事労務が2,000円〜で、最小5名からです。

連携型を選ぶ場合は、リアルタイムのAPIにするか定期的なCSV出力にするかを、連携する項目とあわせて事前に決めておきます。設計が曖昧なままだと手作業の転記が残り、二重入力をなくせません。

給与計算との連携の追加費用は、10万〜50万円が一つの相場とされています。そのため、投資判断に含めておきます。

社会保険の電子申請で行政手続きを効率化した事例

社会保険・雇用保険の電子申請(e-Gov連携)も、労務管理システムの活用事例です。従来は資格取得届や算定基礎届を紙で作成し、年金事務所やハローワークに持参・郵送していました。一方で、e-Gov連携に対応したシステムでは、従業員情報から申請書類を作り、電子送信できます。

  • 申請を電子化:書類作成や窓口対応の時間を減らします。
  • 進捗と期限を管理:申請状況を一覧にし、期限のアラートを設定します。

電子化の際に見落とされやすいのが、申請の進捗管理です。入退社が多い企業ほど効果が大きく、同時に進む手続きについても、完了か処理中かを把握できます。さらに、こうした管理は、手続きの遅延や未提出の防止にもつながります。

給与・会計との連携と電子申請を組み合わせると、入力と行政手続きの両面を効率化できます。

ポイント

連携の方式と対象項目を事前に決められるかが、判断の分かれ目です。決められないと手作業の転記が残るため、社会保険の電子申請と組み合わせて効率化を考えるとよいでしょう。

複数法人・外国人雇用に対応した事例

複数法人の管理要件と外国人雇用の多言語・在留管理を4つのパネルに分けた図。
法人間の運用統一と、外国人雇用に伴う入力・期限管理を分けて整理できます。

複数法人の一元管理や外国人雇用の多言語対応は、市販のSaaSが苦手とすることがある複雑な要件です。

法人ごとに契約や就業規則が異なる場合や、技能実習生・特定技能の外国人を多く雇う場合は、標準クラウドで「要確認」とされることがあります。その結果、現場の運用に合わないこともあります。こうした要件に対応した事例は、複雑な雇用構造を持つ企業の参考になります。

複数法人を一元管理して労務を標準化した事例

グループ経営では法人ごとに労務担当が分かれ、入社や保険手続きのやり方がばらばらになりがちです。

  • 法人別に管理:一つのシステム内で権限とデータを分けます。
  • 共通フローで運用:人事異動や出向の手続きを進めやすくします。
  • 本社が状況を把握:グループ全体を横断し、労務状況を確認できます。

手順がそろわないと、本社がグループ全体の労務状況を追いにくくなります。逆に手順がそろえば、本社が各法人の労務状況をモニタリングできる点も、内部統制上の利点です。

複数法人に対応するには、追加ライセンスや上位プランを要することが多く、規模が広がるほど従量課金も膨らみます。そのため、法人数と従業員数が一定規模を超えた事例では、ユーザー数に依存しないノーコード受託やフルスクラッチへ移ることもあります。

固定費でグループ全体を賄う選択は、SaaSを卒業する損益分岐点にも関わるため、将来の組織構成を見据えて判断します。

外国人雇用の多言語・在留管理に対応した事例

外国人雇用が多い職場では、日本語だけの入社案内が記入ミスや手続きの遅れにつながることがあります。

  • 入力画面を多言語化:本人が母語で情報を入力し、不備を減らします。
  • 在留期限を管理:期限と更新時期をシステムで確認します。
  • 必要な機能を追加:標準機能で足りない部分を後から作り足す事例もあります。

多言語入力では、担当者が通訳のように間に入る手間が減ります。また、打刻機能で20種類の打刻・多言語に対応する製品もあり、労務にも多言語化の需要があります。

外国人雇用では、在留資格・在留期限の管理も固有の論点です。在留期限を過ぎた就労は重大なコンプライアンス違反となるため、期限管理と更新アラートが求められます。標準サービスで不足する場合は、在留管理だけを追加開発したり、特化したシステムを構築したりします。

汎用SaaSに複雑な機能を足すと、カスタマイズを重ねるぶん費用が増え、それでも運用に合わないことがあります。一方で、ノーコード受託やフルスクラッチなら、雇用構造を前提に要件を組み込み、現場の運用に合わせられます。

複雑な要件は機能一覧で判断しきれないため、自社の運用に合うかを事例で確かめる必要があります。要件を満たせる調達方式を見極めることが、複雑な雇用要件を抱える企業の投資判断を左右します。

ポイント

判断の目安は、規模が広がったときの費用の膨らみと、在留期限などの要件を標準機能で満たせるかです。満たせない場合は、ノーコード受託やフルスクラッチとも比べます。

SaaSから自社開発へ乗り換えたTCO事例

多くの記事では扱われないのが、クラウドSaaSを卒業して自社開発へ乗り換えた事例です。

労務管理SaaSは1ユーザー月額300〜500円がボリュームゾーンで、小規模なら低価格で始められます。ただし、従業員数が増えると従量課金が膨らむため、規模拡大時のコストの転換点を試算で確認します。

従量課金の膨張でTCOが逆転した事例

企業規模別の月額試算では、5〜49名が1,450〜14,210円、50〜99名が14,500〜28,710円です。さらに、100〜199名では月29,000〜57,710円となります。

  • SaaS従量課金:利用人数に応じて月額費用が増えます。
  • ノーコード受託:初期100万〜300万円、サーバー費用は月1万〜3万円です。

ノーコード受託(Bubble等)は、ユーザー数に左右されず、固定費で運用できます。一次データの試算では、50名以上なら5年TCOは約160万〜500万円で、SaaS従量課金より有利とされています。従業員数が50名を超えて月額が膨らみ始めたら、5年TCOで比較する方法があります。

乗り換え事例では、費用削減だけでなく機能面の限界も課題でした。自社固有の労務フローや複数法人、特殊な雇用形態に、標準SaaSが追いつかないためです。また、固定費でコストを見通しやすくし、自社の運用に合う機能を持てることも、SaaS卒業を後押しします。

並行運用で現場定着まで乗り切った事例

移行期の進め方は、乗り換えやリプレースの成否を左右します。735人の失敗統計では、データ移行や初期設定の難航による「スケジュール遅延1か月」「安定稼働まで2か月」という声が多くありました。

  • 新旧システムを並行運用:給与計算結果が一致するかを確かめます。
  • 一致後に完全移行:給与支給に関わる差異を事前に確認します。

いきなり切り替えて差が出ると、給与支給に直結する重大事故になりかねません。ただし、並行運用には一時的な二重作業が伴うため、安定稼働のための費用として見込んでおきます。また、データ移行費は5万〜30万円が相場とされ、並行運用期間の工数も必要です。

riplaは、フルスクラッチ受託と国内開発の立場から、移行検証や並行運用の設計を含めた段階的な定着を重視しています。華やかな成果だけでなく、移行を乗り切れた理由を事例から読み取ることが、失敗を避けることにつながります。

補助金を活用して初期投資を抑えた事例

自社開発やリプレースには初期投資がかかりますが、補助金・助成金で負担を抑えた事例もあります。

  • IT導入補助金:通常枠は補助率1/2、最大150万円未満が基本です。
  • 賃金要件に該当する場合:令和6年10月〜令和7年9月に最低賃金未満の従業員が30%以上なら、補助率は2/3です。

補助金を使って初期費用やカスタマイズ費の一部をまかない、導入のハードルを下げた事例があります。

労働環境の改善を伴う場合は、働き方改革推進支援助成金も選択肢になります。対象には、勤務間インターバルの導入(9〜11時間未満/11時間以上)や、賃金3%以上の引上げがあります。

活用事例では、申請要件とスケジュールを導入計画と並行して、早い段階から確認していました。締切と要件があるため、システム選定と同時に申請準備を進めることが、初期投資の圧縮につながります。補助金は導入を後押ししますが、計画的に動かなければ機会を逃します。

ポイント

判断の目安は、従業員数が50名を超えて月額が膨らみ始めた時点で、5年TCOを比べることです。並行運用の二重作業を費用に含め、補助金の申請要件も早めに確認します。

まとめ

事例では、紙・Excelの手作業を減らし、給与・会計と連携して二重入力をなくす取り組みが見られます。入社手続きと年末調整の電子化は入力工数を減らし、給与連携の追加費用は10万〜50万円が相場です。

成果は、工数を減らし、複雑な雇用要件に合わせて作り込み、規模に応じた調達方式を選ぶという流れにまとまります。

入社手続きの入力作業は、時給3,000円換算で1人あたり月約30分、約1,500円相当という試算があります。

複雑な雇用要件は機能一覧で見極めにくく、50名超では5年TCOでノーコード受託が有利となる試算もあります。

製品名より、自社の雇用構造と規模に合うかを基準にします。まず入社手続きや年末調整を電子化し、効果を確かめてから、連携や乗り換えを検討します。

riplaはフルスクラッチ受託と国内開発を組み合わせ、SaaSの損益分岐点や複雑な要件、データ移行と現場定着を支援します。

全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。