医療業界のシステムの導入/開発事例や活用/成功事例について

医療業界のシステム導入は、記録と転記の自動化、予約や問い合わせの自動化、移行の進め方によって成果の出方が変わります。

医療機関の視点から、場面ごとの導入・開発・活用事例と、自院で着手しやすい点を並べました。全体像は医療業界のシステムの完全ガイドもご覧ください。

▼全体ガイドの記事
・医療業界のシステムの完全ガイド

電子カルテ・処方箋で記録と転記を自動化した事例

処方データを中心に、薬局への直接連携と重複投薬・併用禁忌の確認、患者の安全性向上を示す図。
院内の処方情報が薬局との連携にもつながります。

医療業界のシステム導入では、記録と転記の自動化が成果を把握しやすい領域です。診療所や病院では、紙カルテから別の処方箋へ転記し、さらに保険請求用にレセコンへ再入力していました。この二重・三重の転記は、人的コストや記載ミス、残業の原因になります。

クラウド電子カルテで小規模クリニックが転記を消した事例

クラウド電子カルテは、記録の自動化による効果を具体的に確認できる導入事例です。診察画面での入力を処方箋・レセプト・各種記録へ連携させることで、看護師や医療事務が繰り返していた転記をなくせます。

  • クラウド型:初期約10万〜数十万円、月額1万〜数万円
  • オンプレミス型:初期200万〜500万円、月額2万〜4万円

クラウド型は初期費用を抑えやすく、小規模クリニックでも導入しやすい価格帯です。

院内にサーバーを置かずに済むため、バックアップや障害対応の負担も軽くできます。

削減効果は、漠然としたデジタル化の話として捉えず、自院の患者数や記録件数に当てはめて考えます。たとえば、1日の外来件数と1件あたりの記録・転記時間に、事務職員の人件費単価を掛けると、月間の削減工数を概算できます。事例を読むときも、その数字を自院の数字に置き換えて効果を確かめることが大切です。

複数拠点を持つ医療法人では、全拠点のカルテを統一フォーマットで管理する活用例もあります。

電子処方箋で薬局連携と重複投薬チェックを実現した事例

記録自動化の効果は、院内の工数削減のほかにも広がります。電子処方箋は、紙の処方箋を患者が薬局へ持参する手間をなくし、処方データを薬局へ直接連携します。さらに、他院の処方も含めた重複投薬や併用禁忌を確認でき、患者の安全性向上につながります。

導入には、医師が電子署名に使うHPKIカードが必要です。医師会会員は無料、非会員は5,500円で取得できます。

国の補助は最大194,000円で、東京・大阪などの自治体による上乗せを含めると、最大29.1万円を活用できる事例もあります。

令和8年度改定では、電子的診療情報連携体制整備加算が設定されました。

  • 加算1:15点
  • 加算2:9点
  • 加算3:4点

この加算によって、システム投資の一部を診療報酬の形で回収できる仕組みになっています。

記録・処方のデジタル化は、院内外の効率化と安全性向上につながる導入の第一歩です。

ポイント

電子カルテや処方箋の導入では、自院の記録件数と転記時間を先に押さえ、補助や加算も計画に含めたうえで、効果を比べるとよいでしょう。

介護記録のデジタル化で残業を削減した事例

介護現場での導入を、理解度の把握、操作研修、日々の記録からの開始、利用状況と現場の声による改善の観点で整理した図。
使い始めの支援から利用後の見直しまでが並びます。

医療業界のシステムは、病院だけでなく介護・福祉の現場でも成果を生んでいます。介護現場では、利用者の体調やケア内容を手書きし、事務所でパソコンへ転記していました。さらに、保険請求(介護報酬請求)のため別システムへ入力する多重作業も常態化していました。

記録・転記・請求を介護ソフトで一本化した事例は、残業削減の参考になります。

クラウド介護ソフトで記録から請求まで一本化した事例

クラウド介護ソフトには、月額数千円から利用できるサービスがあります。

  • カイポケ:月額5,000円〜
  • まもる君クラウド:月額7,800円〜
  • トリケアトプス:1名あたり月額200円、上限5,000円

小規模な事業所でも、タブレットやスマートフォンで、ベッドサイドや訪問先から記録を入力できます。その場で入力するため、事務所に戻ってからの転記がなくなり、記録のための残業を削減した事例が多数報告されています。

記録したデータは介護報酬請求へ連携され、月末・月初に集中する請求業務の負担を軽減します。一方で、手書き記録から請求データを作る場合は、転記ミスによる返戻(請求の差し戻し)が起きることもありました。

記録から請求までを一本化すると、こうした転記ミスも減らせます。

国の介護ICT導入支援では、職員数に応じて最低100万円相当が補助されます。

2019年度には107法人・195事業所・406件で活用されました。この補助金を前提に、導入のハードルを下げた事例もあります。

現場の理解度を底上げして定着させた活用事例

介護現場のデジタル化では、職員のITリテラシーを踏まえた導入が欠かせません。

  • 理解度の現状:介護関係者50名の調査で、「知らない」は74%、「聞いたことがある」は20%、「内容まで理解している」は6%でした。
  • 導入時の支援:丁寧な説明と段階的な操作研修を行い、ベテラン職員にも配慮します。
  • 導入の順序:日々の記録から始め、効果を実感した後に請求やシフト管理へ広げます。
  • 導入後の改善:利用状況と現場の声をもとに、設定や運用を見直すことで利用率を保つ取り組みです。

ソフトの機能が優れていても、その意義が伝わらなければ使われません。そのため、現場の理解度から逆算して段階的に定着させることが、この事例の核心です。

ポイント

介護記録のデジタル化では、ソフトの機能の多さより、職員が使える状態になるかを先に見ると判断しやすくなります。導入前に理解度を把握し、日々の記録から段階的に広げるのが目安です。

予約・問い合わせ自動化で窓口混雑を緩和した事例

システムは診療内部だけでなく、患者と接するフロント業務の効率化にも役立ちます。電話が鳴り続ける予約受付や窓口の行列、同じ質問への対応は、医療事務の負担になります。そのため、予約システムやAIチャットボットによる自動化は、患者サービスと職員の負担軽減につながります。

Web予約・順番待ちで電話対応を減らした事例

予約システムの効果は、電話対応の削減に加えて、蓄積データを使う運営改善にも広がります。

  • 予約・順番確認:患者はスマートフォンから24時間申し込みや確認ができ、長時間待たず順番が近づいてから来院できます。
  • 電話と待合室:導入診療所では受付への問い合わせが大幅に減った例が多く、混雑も和らぎます。
  • 感染対策:発熱外来などでは待合室の密を避け、患者と職員双方の安心につながりました。
  • 運営データ:曜日・時間帯ごとの患者数を把握し、受け身の受付を運営改善の起点にできます。
  • 職員の業務:事務の担当者が会計や患者対応に時間を振り向けられ、医療機関全体の運営改善にもつながります。

AIチャットボットで定型問い合わせを自動化した事例

医療機関には、診療時間や保険証、症状についての定型的な問い合わせが毎日寄せられます。

  • 自動応答の効果:導入事例が増えており、24時間の回答で反復対応を減らせます。利便性と職員の負担を改善する、費用対効果の高い投資です。
  • 活用例:北九州市は観光AIチャットボットを公募型プロポーザルで導入し、同様の仕組みは医療機関のホームページにも応用されています。
  • 質問と回答の準備:よくある質問を事前に洗い出し、回答の精度を高める作業です。
  • 誤回答への対応:的外れな案内になると、患者が電話をかけ直し、二度手間になることがあります。
  • 導入後の改善:質問ログを分析し、回答を継続的に見直すことが定着の鍵です。

ポイント

予約や問い合わせの自動化は、電話や窓口の件数に加えて、質問ログや曜日ごとの患者数を運営の改善に使えるかで効果を測ると、判断の助けになります。

失敗から軌道修正した医療システム導入事例

現場の診療フロー確認から実地訓練、限定範囲での切り替え、移行初日の現場支援へ進む流れ図。
切り替え範囲を広げる前に現場の操作を確かめます。

事例の価値は成功談だけでなく、失敗の理由や立て直し方からも学べる点にあります。

医療システムの失敗は患者の安全や命に関わるため、経験から得られる教訓は投資判断の助けになります。

電子カルテ一斉移行で外来が麻痺した失敗の教訓

一斉移行の失敗は、現場の診療フローに沿う準備が必要なことを示しています。

  • 準備不足:研修が機能説明に偏り、診療フローに沿う実地訓練が不十分なまま本番を迎えました。
  • 現場の混乱:医師・看護師・事務職員が操作に手間取り、外来の待ち時間は平均約3倍になりました。
  • 患者への影響:クレームが殺到し、診療がほぼ止まりかけました。
  • 計画上の問題:システムの性能より、現場に慣れてもらう方法や段階的な切り替えを考えることが成否を左右します。
  • 一斉切り替えのリスク:操作に慣れる余裕がなく診療が難しくなるため、移行計画はリスク管理にも関わります。

段階移行と実地訓練で立て直した事例

立て直しでは、移行前に現場の診療フローを洗い出し、流れに沿った実地訓練を繰り返しました。

  1. 受付から会計までの流れを、ロールプレイで練習する
  2. 外来の一部や特定の診療科から切り替え、問題を解消して範囲を広げる
  3. 移行初日はベンダー担当者や習熟職員が現場に付き、操作に詰まった医師・看護師を支援する

本番前に職員が迷わず操作できる状態を整えることが、段階移行を進める土台です。その結果、現場には「困ったらすぐ聞ける」という安心感が生まれ、初日の混乱を最小限に抑えられました。

riplaはフルスクラッチ受託と国内開発の立場から、診療フローを起点に移行計画を立て、段階的に定着させる進め方を重視しています。

事例では、成果に加えて現場で使われた理由に注目すると、失敗を避ける手がかりになります。

補助金・診療報酬を活かして投資を回収した事例

投資判断では、補助金と診療報酬を組み合わせて実質負担を下げた事例も参考になります。電子処方箋を導入したクリニックでは、国の補助最大194,000円に自治体の上乗せを加えて、初期費用の多くを賄いました。

介護事業所では、職員数に応じて最低100万円相当が補助される介護ICT導入支援を活用しました。その補助で、タブレットや介護ソフトの導入費を大きく圧縮した事例があります。

制度を投資計画に含めるかどうかで、同じシステムでも実質負担は変わります。

電子的な診療情報連携体制を整える取り組みは、令和8年度の診療報酬改定で加算の対象になっています。

  • 加算1:15点
  • 加算2:9点
  • 加算3:4点

補助金や診療報酬を投資計画に織り込むことで、初期費用の一部を継続的に回収できる仕組みがあります。事例を読むときは機能や効果だけでなく、活用した制度も確認すると、自院の資金計画を考える参考になります。

ポイント

移行の計画は、性能より現場の診療フローに沿う訓練と段階的な切り替えを発注前に入れておくと判断しやすくなります。補助金や診療報酬も投資計画に含め、実質負担を確かめます。

まとめ

医療業界のシステム導入は、現場の診療・ケアの流れを起点に考え、記録の自動化のように効果が明確なことから段階的に広げることが大切です。

クラウド電子カルテや介護ソフトは転記作業を減らし、電子処方箋は薬局連携と重複投薬チェックに役立ちます。

予約システムやチャットボットは、窓口の混雑や問い合わせ対応を軽減します。

電子処方箋の補助は最大194,000円で、介護ICT支援や令和8年度の加算(1=15点、2=9点、3=4点)も計画に含めると、初期負担を抑えられる場合があります。

一斉移行では外来の待ち時間が平均約3倍になりました。この例からも、システムの性能以上に、移行計画と定着支援が成否を左右します。

自院の規模と診療フローに照らし、効果の大きい記録のデジタル化から始めると、現場で使える一歩になります。

riplaはフルスクラッチ受託と国内開発を組み合わせ、診療フローから逆算した要件整理と、現場に定着するシステムづくりを支援します。

全体像の確認には、医療業界のシステムの完全ガイドをご活用ください。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。