契約管理システムの導入は、導入効果と制約、契約件数に応じた料金、業務やセキュリティへの適合度の3つの観点で見ると、自社に合う選択につながります。
導入のメリットとデメリット、料金プランの損益分岐点、提供形態と開発方式の選び方を順に説明します。全体像は、完全ガイドもあわせてご覧ください。
▼全体ガイドの記事
・契約管理システムの完全ガイド
・業務システム開発を依頼する会社の選び方やRFPの作り方については、無料ホワイトペーパー「業務システム開発の完全ガイドブック」で詳しく解説しています。
・スクラッチシステム開発を依頼する会社の選び方やRFPの作り方については、無料ホワイトペーパー「スクラッチシステム開発の完全ガイドブック」で詳しく解説しています。
導入で得られるメリットと効果

契約管理システムの効果は、コスト削減、業務効率化、ガバナンス強化の3つに分けられます。契約業務をデジタル化すると、これらの効果を同時に得られます。
導入率は2025年調査で78.3%に達しました。また、ITトレンドの資料請求数は前年同期比236%増でした。効果の内容は、定量データとあわせて次に見ていきます。
コスト削減と効率化のメリット
導入メリットのなかでも、コスト削減は数字に置き換えやすい効果です。
- 費用削減:電子化で印紙税、郵送費、印刷費、保管スペースを構造的に減らす
- 業務効率化:契約書検索や台帳入力、承認回覧の手作業を省ける
たとえば、月20件を電子化する場合、一次データで年間約96万円の削減が見込まれます。その内訳は、印紙税が48万→0円、郵送資材費が12万→0円、事務人件費が48万→12万です。
費用削減で重視される項目は、印紙税の不要化が30.6%、郵送費の削減が20.0%、印刷費の削減が19.8%でした(マネーフォワード、2025年5月)。
建設・不動産など高額契約が多い業界では、印紙税の削減効果が大きくなります。7,000万円の契約1件で6万円が不要になります。
公益団体の事例では、遠隔申請により1件5分以上短縮しました。同じ事例では、年間推計で人件費150万円分を削減しています。さらに、会計転記やダブルチェックを減らしたことで、申請処理業務も約4割減っています。
自社の契約件数に基づいて試算しておくと、稟議で投資判断を説明する材料になります。
ガバナンス強化と一元管理のメリット
ガバナンス強化は金額に表れにくいものの、長期的に大きな価値を生みます。
- 更新管理:期限を把握し、不利な自動更新や更新の失念を防ぐ
- 内部統制:承認の証跡で、未承認の締結やバックデートを抑止する
- 検索性:契約条項や所在をすぐ確認でき、監査・係争に備えられる
期限が一覧で見えるようになると、不要な契約を見直しやすくなります。その結果、コンプライアンスや内部統制のリスクを減らせるほか、費用の見直しにもつながります。
ガバナンスのメリットは、監査対応や有事の際に真価を発揮します。係争や監査で契約条項を確認するときは、全文検索で対象の契約をすぐに洗い出せます。紙やExcelでは得にくい利点です。
承認者と承認時刻の記録は、内部統制報告の根拠になります。
コスト削減は短期で効果が出やすく、ガバナンス強化は中長期で効いてきます。両方を評価すると、投資判断の説得力が高まります。
見落としやすいデメリットと注意点

メリットは注目されやすいものの、導入前にはデメリットや制約も確かめておく必要があります。
取引先の同意や電子化できない契約、従量課金は、見落としやすい制約です。こうした制約を判断材料として最初に押さえると、現実的な導入計画を立てられます。
取引先の同意と電子化できない契約
電子化を進めるには、取引先の同意と、電子化できない契約への対応が欠かせません。
- 取引先の同意:相手方の理解と同意が最大の制約で、紙を求められる場合は電子契約が成立しない
- 電子証明書の負担:当事者型では、相手方も証明書を用意する必要がある
- 紙で残す契約:法律上電子化できない契約は、別に管理する
当事者型では、相手方に1万円前後の発行費用がかかるため、協力を得にくい場合があります。
多くの企業は、相手方の負担が少ない立会人型を標準にし、取引先へ説明して同意を得ています。ただし、丁寧な説明だけでは解決しきれない場合もあります。
もう一つの制約は、定期借地契約や任意後見契約など、法律上書面が義務づけられた契約です。これらは電子化できないため、電子化できる契約と紙で残す契約を分けて扱う必要があります。
その場合は、システムでステータスを管理し、原本を紙で保管する方法も現実的です。全契約をペーパーレスにする前提は置かず、自社の契約構成を踏まえて導入目標を定めます。
想定外の従量課金と運用コスト
費用面では、送信料の従量課金に注意が必要です。契約件数や必要な機能によって、月額の総額が変わります。
- 送信料:1件50〜300円で、平均は税込110〜220円が相場
- オプション:AI-OCRやAIレビューは月額数万円が多く、カスタマイズ連携にも費用がかかる
- 総額試算:初期費用、基本料、送信料、オプションを含めて比較する
固定費が安くても、送信料込みの総額が想定を超えることがあります。たとえば、クラウドサインは基本料11,000円に送信料220円がかかり、月200件なら55,000円です。一方で、送信無料のマネーフォワードクラウド契約は、月200件でも一律約7,128円です。
件数によって総額は大きく変わります。そのため、自社の契約件数に基づき、初期費用や月額料金を含む年間費用を見積もることが欠かせません。
自社の件数で最も安くなるプランを選ぶと、想定外の出費を防ぎやすくなります。
定着と移行に手間がかかるデメリット
効果を出すには、導入後の定着も欠かせません。定着には、データ移行、社内設定、利用者への展開が必要です。
- データ移行:紙の契約をスキャンし、メタデータを付ける
- 運用設計:社内の権限や承認ルートを再設計する
- 段階導入:効果の大きい契約類型から移し、定着後に対象を広げる
現場が使い方を覚えるまでにも、時間と労力がかかります。
「導入前の紙データが未処理」は導入後課題の33.6%でした(ContractS、2023年10月)。移行と定着を進める社内の人手や、ベンダーの伴走支援があるかは、導入前に確認します。
全件を一度に移さないことで、手間を分散できます。また、ライセンス費用だけでなく、移行と定着にかかる社内工数も総コストに含めます。
料金プランの損益分岐点で選ぶ判断基準
料金プランは、月間の契約件数によって最安の選択肢が変わります。固定費型は送信無料で、従量課金型は送信のたびに料金がかかります。
料金プランの選択は、導入判断で実務的な差がつくポイントです。「自社に合うプランを選ぶ」だけで終わらせず、月何件から固定費型が得かを計算します。
固定費型と従量課金型の損益分岐
月5件、50件、200件の場合の実質コストは次のとおりです。件数をそろえると、料金プランの損益分岐を比べられます。
- freeeサイン:月5,980円〜。200件で22,180円
- マネーフォワードクラウド契約:送信無料で、各件数とも一律約7,128円
- クラウドサイン:基本料11,000円・送信220円。各件数で12,100/22,000/55,000円
- Docusign:月6,050円/ユーザー。各件数で1,333/19,800/82,500円
月数件なら従量課金型や低額プランが有利です。一方で、月数十件を超えると、送信無料型が有利になる場合があります。
まず月間の送信件数を実数で把握し、候補ごとに「固定費+送信料×件数」で月額総額を計算します。件数が増える将来のシナリオでも試算します。
比較すると、件数ごとの最安プランと損益分岐点が見えます。計算を省くと、件数の増加後に従量課金が膨らみ、割高になる場合があります。損益分岐点の試算は、投資判断の決め手になります。
IT導入補助金による初期費用の圧縮
補助金は、投資判断を後押しします。「補助金対象」の表示を見るだけでなく、補助枠や対象範囲、申請時期を確認すると、初期費用を大きく抑えられます。
- 補助枠:インボイス枠やセキュリティ対策推進枠で補助率が異なる
- 対象費用:ソフトウェア費のほか、PCやタブレットが対象の枠もある
- 申請日程:公募期間や交付決定までの期間を、導入計画に反映する
IT導入補助金などを使えば、初期費用を圧縮できます。そのうえで、自社が使える補助枠と申請スケジュールを早めに確認します。
必要書類も含めて申請の流れを把握し、導入日程から逆算します。計画が遅れると、申請の機会を逃す場合があります。
補助金を含めた総コストで試算すると、損益分岐点の判断が変わり、より高機能なプランやフルスクラッチ開発も選択肢に入る場合があります。補助金の活用は、料金プランの損益分岐とあわせて検討する、投資判断の重要な要素です。
クラウドとオンプレ・パッケージとフルスクラッチの選び方

料金プランと並んで、提供形態と開発方式の選択も重要です。クラウド型かオンプレミス型か、SaaSかフルスクラッチかを、費用や業務適合性、セキュリティ要件、運用負荷から選びます。
クラウド型とオンプレ型の判断基準
選ぶ際は、費用や運用負荷と、自社のセキュリティ・連携要件を照らし合わせます。
- クラウド型:初期費用0円から始められ、サーバーの運用や更新を事業者に任せられる
- オンプレミス型:データを自社の管理下に置ける一方、初期投資と運用負荷が大きい
- 確認の観点:法規制や社内規程、既存基幹との連携、IT運用体制を確認する
機密性の高い契約や独自のセキュリティポリシーがある企業では、オンプレミス型が選ばれることがあります。一方で、クラウドのセキュリティは年々向上しており、多くの業種では必要な水準を満たせます。
法規制や社内規程でクラウド利用が制限される場合、または既存のオンプレ基幹と密に連携する場合は、オンプレ型が候補になります。まずクラウド型を基準に検討し、明確な制約があればオンプレ型を選びます。提供形態の判断は、コストとセキュリティの兼ね合いで決まります。
パッケージとフルスクラッチの判断基準
開発方式は、標準機能で業務を回せるか、独自要件や連携が必要かで判断します。
- SaaSパッケージ:台帳や検索など標準機能で業務が回る場合に適する
- フルスクラッチ:自社の業務フローに完全に合わせられる柔軟性があり、複雑な業務や既存基幹との連携に対応できる
- 判断基準:標準パッケージで業務の8割以上が無理なく回るかを確認する
SaaSパッケージは標準機能をすぐ使え、低コストで導入できます。台帳、検索、電子署名、更新アラートなどに対応します。
ただし、複雑な承認ルートや独自の業務フロー、既存基幹との深い連携では、標準機能が足りない場合があります。標準機能に無理に合わせると、業務が分断されます。
導入後課題で「システム間で業務分割され非効率」を挙げた割合は38%でした。標準機能とのミスマッチが一因です。
フルスクラッチ開発は、業務フローに合わせて、契約から文書、稟議、帳票までを一貫して設計できます。既存基幹との密な連携や、複数のSaaSに分かれた業務の統合を求める企業にも向きます。
riplaはフルスクラッチ受託と業務伴走の立場から、業務フロー全体を見直す視点で、パッケージとフルスクラッチの適合を一緒に見極めます。
立会人型と当事者型の使い分け
提供形態や開発方式と並んで、署名方式も契約管理で判断に迷いやすい選択です。契約類型ごとに、求める本人性の強さと相手方の負担を比べます。
- 立会人型:相手方が電子証明書を用意せずに済み、導入しやすい
- 当事者型:本人性が強い一方、相手方の負担が重くなる
- 使い分け:立会人型を基本に、厳格な本人性が必要な契約で当事者型を使う
立会人型(事業者署名型)では、事業者がメール認証などで本人性を確認して署名します。
レビューシェアではクラウドサインが1,065件、66%を占めました。立会人型が広く普及しています。
当事者型では、相手方に1万円前後の発行費用がかかり、協力を得にくい場合があります。
不動産取引や金融など、厳格な本人性が求められる契約では、当事者型を使います。すべてを当事者型にすると、取引先の負担が重くなり、電子化が進まない場合があります。
立会人型だけでは、重要契約の本人性が不足する場合もあります。画一的に選ばず、立会人型を基本に当事者型を要所で併用する方法が現実的です。
まとめ
導入効果には、年間約96万円のコスト削減、申請処理の約4割減、更新漏れの防止や承認証跡による統制強化があります。一方で、取引先の同意や電子化できない契約、従量課金には注意が必要です。
固定費型と従量課金型の損益分岐点を自社の件数で計算し、補助金も含めて費用を見積もります。次に、提供形態と開発方式は、業務への適合度で選びます。
「自社の件数で最も安いプランは何か」「標準パッケージで業務の8割が回るか」が判断の手掛かりです。
riplaはフルスクラッチ受託と国内開発を組み合わせ、契約から文書、稟議、帳票までの業務全体を見て、提供形態と開発方式の判断を支援します。
全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。
▼全体ガイドの記事
・契約管理システムの完全ガイド
▼RFP作成前に読みたい無料ホワイトペーパー
・業務システム開発の完全ガイドブック
・スクラッチシステム開発の完全ガイドブック
・【2026年最新版】AI駆動開発の完全ガイドブック
会社紹介
株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>


株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
