官公庁システムの事例は、業務の自動化、住民接点のオンライン化、標準化移行、導入後の定着の4つの軸で見ると、自組織で着手すべき業務と見込める効果を判断できます。
各テーマの詳細は関連記事で、全体像は官公庁のシステムの完全ガイドで確認できます。
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RPA・AI-OCRで定型業務を自動化した事例

行政の窓口や内部事務には、申請書の転記、台帳入力、複数システムへの二重登録といった手作業が残っています。RPA(業務の自動化ツール)とAI-OCR(紙書類の文字認識)は、こうした定型業務を自動化する手段です。
手作業は長時間労働やヒューマンエラーにつながりやすいため、自動化の効果が出やすい領域です。また、事例では、機械に任せる作業と職員が担う判断業務を分けています。
札幌市20秒化・長岡市年18,603時間削減の事例
札幌市の児童手当業務は、RPA活用の象徴的な成功事例です。12万件を超える処理で、1件あたり数分かかっていた認定作業を約20秒に短縮しました。
- 繁忙期の処理:月末や年度替わりに集中する大量処理の自動化
- 役割の切り分け:職員が担う確認や住民対応と、機械に任せる処理の分担
長岡市は74業務をRPA化し、年間18,603時間を削減しました。恵庭市は、税務の16業務でAI-OCRを併用し、年1,100時間を削減しています。
恵庭市では、1件あたりの処理も約30秒に短縮されました。総務省の2023年調査では、導入自治体の78.3%が効果を実感し、平均削減率は32.7%でした。自動化の成果は数字でも裏づけられています。
初年度は計画の65%という現実的な立ち上がり
事例を読むときは、削減効果が立ち上がるまでの期間も確かめておく必要があります。
RPAの削減効果は、初年度には計画値の65%程度にとどまる傾向があります。総務省の同調査は、その背景として、対象業務の洗い出しやシナリオ作成、現場の習熟に時間がかかることを挙げています。
特に、稟議で初年度から満額の効果を見込むと、期待と実績の差に現場が落胆し、取り組みが頓挫するおそれがあります。
- 着手範囲:成功自治体が選んだ、効果の大きい数業務への絞り込み
- 拡大の進め方:削減時間の職員との共有と、成功体験を経た対象の拡大
札幌市や長岡市の大きな削減も、段階的な拡大の積み重ねで実現しました。自組織に当てはめるときは、初年度の65%を前提に、複数年のROI(投資対効果)で設計するのが堅実です。
住民サービス向上につながった活用事例
システム導入は、庁内の効率化だけでなく、住民が受け取るサービスの質にも影響します。窓口の待ち時間短縮、24時間のオンライン申請、問い合わせへの即時回答は、いずれも住民満足度につながります。
住民との接点で効果が表れた活用事例を取り上げます。
AIチャットボットで問い合わせ対応を自動化した事例
電話や窓口に集中する問い合わせ対応は、職員の負担が大きい業務です。北九州市は、観光案内のAIチャットボットを公募型プロポーザル方式で調達しました。
- 問い合わせ受付:定型的な質問への24時間対応
- 職員の対応:複雑な相談や個別判断が必要なケースへの注力
- 導入後の改善:ログを起点とした継続的な改善と、使われる窓口への育成
納品の時点で改善が止まると、的外れな回答が残ったまま、住民が電話に戻るおそれがあります。そのため、継続改善が止まらない運用体制が必要です。
オンライン申請で窓口の待ち時間を短縮した事例
各種申請のオンライン化は、住民サービス向上の代表例です。その効果は、住民と庁内の両方に及びます。
- 住民の手続き:平日の窓口手続きを、スマートフォンから24時間申請できる仕組み
- 庁内の処理:申請データが届くことによる、受付後の転記の不要化
効果を示すには、定量KPI(成果指標)を設定しておくことが欠かせません。たとえば、窓口の待ち時間を30%短縮する、オンライン申請比率を半年で40%にする、といった目標が挙げられます。
具体的な目標は、議会や住民への説明に役立ちます。一方で、漠然とした利便性は予算の根拠になりにくいため、申請件数、処理時間、自己解決率などの数字で成果を示します。
標準化・ガバメントクラウド移行の事例

基幹業務システムの標準化とガバメントクラウド移行は、全国の自治体が直面する大きな課題です。移行の現場で実際に起きたことを、具体的な数字とともに確認します。
Fit&Gap分析と複数ベンダー調整の事例
標準化移行では、業務の差分にどう対応するかと、複数のベンダー間の連携をどう整理するかが重要になります。
- Fit&Gap分析:現行業務と標準仕様の差の確認と、独自運用を合わせる範囲・残す範囲の線引き
- ベンダー調整:各社の責任範囲と、連携時の問い合わせ窓口の計画段階での決定
長年続けた独自運用ほど差が大きく、現場の業務見直しも必要です。そのため、移行はシステム作業にとどまらず、業務改革でもあります。
事例では、十分な人員と期間を確保できたかが移行の成否を分けています。住民記録、税、福祉などの業務ごとに異なるベンダーが関わる場合は、各システムをクラウド上で連携させます。
市がベンダーの間に立って接続エラーの原因を切り分けたケースも報告されています。
運用経費が平均2.3倍になった現実の事例
移行事例で避けて通れない論点の一つが、運用経費の増大です。
中核市市長会の調査では、中核市59市の移行前の平均運用経費は3億3,800万円でした。移行後の平均は6億8,400万円となり、平均で2.3倍に増えています。
- 仕様要件:要件数の平均1.2倍への増加(一部業務では3倍以上)
- 為替:1ドル100〜110円台(2018〜20年)から130〜160円台(2023〜25年)への円安
- 賃金:賃金改定率は2023年3.2%、2024年4.1%
最大で5.7倍に達した自治体もあり、福島市は従来比3.7倍でした。
人口27万人のA市は2億800万円から7億8,400万円へ3.8倍、人口8万人のB市は1億7,400万円から4億700万円へ2.3倍に増えました。
標準化したからといって、運用費が安くなるとは限りません。そのため、計画段階から運用コスト管理(FinOps)を組み込んでおかないと、財政を圧迫するリスクがあります。
一方で、人口1万人のC町は、3,600万円から6,600万円への1.8倍に増加幅を抑えました。規模や移行の設計によって、経費の増加幅は大きく変わります。
外部のデジタル人材を活用して移行を進めた事例
標準化移行は専門性が高く、職員だけで進めることが難しい場面もあります。たとえば、大阪府のデジタル人材シェアリングは、専門人材を複数の自治体で共有する仕組みです。
1プランは120万円で、府が半額の60万円を補助します。自前で人材を抱えにくい自治体でも、必要なときに専門知識を借りられます。
- 専門作業を補う:Fit&Gap分析やベンダー調整への外部の知見の活用
- 知見を組織に残す:協働を通じた、職員によるデジタル化ノウハウの習得
補助制度や外部人材を組み合わせ、すべてを内製で抱え込まないことが、移行を着実に進める方法です。
導入後の定着で成果を伸ばした事例

システムは、導入後に現場へ定着して初めて成果を生みます。事例でも、定着させたかどうかで効果に差が出ています。
納品の時点で支援が終わると、現場の利用率が伸びず、投資が空回りすることがあります。この悪循環を断てるかどうかが、成功と失敗を分けます。
利用ログ分析と伴走で利用率を引き上げた事例
導入後は利用状況を把握し、つまずきに応じて操作環境を見直すことが、定着につながります。
- 利用状況を把握:月次ログ分析と現場ヒアリングによる、利用機能とつまずきの確認
- 操作を改善:入力画面でつまずく場合のUIの見直しと、必要に応じたマニュアルの補強
伴走して定着を支援するかどうかが、同じシステムの成果を左右します。一方で、納品で関係が終わるベンダーに任せると、利用率が低迷し、高価なシステムを抱えることがあります。
利用率の向上には半年から1年かかりましたが、当初想定した削減効果には到達しています。riplaも、フルスクラッチ受託と運用伴走の立場から、納品後の定着を重視しています。
補助金を活用して投資負担を抑えた事例
補助制度の活用は、財政負担を抑える成功事例の重要な要素です。たとえば、デジタル基盤改革支援補助金や地域未来交付金など、国や都道府県の制度を組み合わせた自治体があります。
大阪府のデジタル人材シェアリングは、1プラン120万円のうち府が60万円を補助します。また、福井県のCO-FUKUIのように、最大300万円を支援する地域独自の制度もあります。
補助制度を生かした事例では、調達方式にも工夫が見られます。
- 大阪市:運用管理補助者の、総合評価一般競争入札による単独調達
- 北九州市:観光AIチャットボットの、公募型プロポーザルによる調達
制度の適用可否と要件に合う調達方式を、早い段階で見極めることが、限られた予算で成果を出す助けになります。
規模・特性別に見る官公庁システム事例
自組織の規模や特性に近い事例ほど、参考にしやすくなります。人口数十万の中核市と、人口数千の町村とでは、課題も適した解決策も異なります。
大規模自治体の大量処理を自動化した事例
大規模自治体は処理件数が多く、自動化の効果が削減時間に表れやすい傾向があります。たとえば、札幌市は12万件超の児童手当を1件約20秒に短縮しました。
長岡市は74業務で年18,603時間を削減しました。月末や年度替わりの繁忙期処理を機械に任せることで、職員の残業を構造的に減らせます。
- 優先順位:効果が大きく、件数の多い定型業務からの選定
- 対象の拡大:削減時間の確認を経た、次の業務への展開
すべてを一度に自動化しようとすると、業務の洗い出しやシナリオ作成が膨大になり、立ち上がりが遅れるおそれがあります。
小規模自治体が共同調達で投資を抑えた事例
小規模自治体は処理件数が少なく、単独で大きな投資をすると1件あたりの費用が割高になりがちです。近隣自治体との共同調達や自治体クラウドなら、基盤を共有できます。
複数の自治体で調達費や運用費を按分すれば、小規模でもデジタル化の恩恵を受けられます。たとえば、人口1万人のC町は、運用経費の増加を1.8倍に抑えました。
- 対象業務:大規模自治体を模倣せず、自組織の課題に直結する業務の選定
- 費用と人材:補助金、共同調達、外部リソースの組み合わせ
福井県のCO-FUKUIは、最大300万円を支援します。こうした制度も参考にしながら、自組織に近い規模の事例を選び、制約のなかでの工夫を学ぶことが大切です。
まとめ
事例では、RPA・AI-OCRによる定型業務の自動化や、チャットボット・オンライン申請による住民サービス向上が見られます。一方で、標準化移行では運用経費の増加も報告されています。
運用経費は平均2.3倍に増え、初年度の効果は計画の65%程度にとどまる傾向もあります。こうした一次データを踏まえ、成果を過大に見積もらず、複数年のROI(投資対効果)で設計します。
導入後は、利用ログの分析と伴走によって定着を進めます。補助金や調達方式の工夫も欠かせません。
事例を選ぶときは、投資額だけでなく、現場への定着と住民サービスへの効果も見ておくことが大切です。効果の大きい業務から着手し、限られた予算のなかで支援制度も使う進め方が、自組織の成功につながります。
riplaは、フルスクラッチ受託と国内開発、運用伴走を組み合わせています。行政現場の業務から要件を整理し、定着するシステムづくりを一貫して支援します。
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会社紹介
株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
