官公庁のシステム開発の完全ガイド

官公庁のシステム開発は、標準化やセキュリティの要件、調達の方式を早い段階で整理し、十分な期間を取って進めることが大切です。システムの全体像から、開発の進め方、費用の目安、開発会社の選び方、発注の方法までを、順に見ていきます。

関連記事

官公庁のシステム開発の概要

官公庁のシステム開発とは

官公庁のシステム開発とは、国や都道府県、市区町村などの行政機関が、住民サービスの提供や行政業務の効率化、デジタル化を目的に行う、ITシステムの構築・刷新・保守のことです。また、国と地方自治体を合わせた年間のIT投資額は数兆円規模に達しており、日本のIT市場の中でも最大の分野の一つです。

官公庁システムの種類

官公庁システムの主な種類として、①住民情報系(住民基本台帳・戸籍管理)、②税務系(固定資産税・住民税の賦課・申告管理)、③社会保障系(国民健康保険・介護保険・福祉給付)があります。さらに、④電子申請系(行政手続きのオンライン化・マイナポータル連携)、⑤財務・会計系(公会計・財務管理・支払い処理)、⑥行政内部系(文書管理・人事・給与管理)が含まれます。

また、⑦インフラ管理系(防災・交通・上下水道管理)、⑧住民向けデジタルサービス(スマートシティ・公共施設予約)などもあります。これらは相互にデータを連携させる必要があるケースが多いため、設計の段階からシステム間の連携を意識した開発が求められます。

行政DXの最新動向

2021年のデジタル庁発足を起点に、行政DXは急速に進んでいます。主要な動向として、①ガバメントクラウド(AWS・Azure等への移行)の推進、②自治体情報システムの標準化(2025年度末期限)、③マイナンバーカードの機能拡充(健康保険証統合・運転免許証統合)が挙げられます。

さらに、④オンライン手続きの拡充(eLTAX・マイナポータルの活用)、⑤AIを活用した住民サービス向上(チャットボット・書類処理自動化)、⑥スマートシティ構想の推進も含まれます。こうした動向を踏まえて、今後のシステム開発の計画を立てることが大切です。

全体像をつかむには、関連ガイドの官公庁のシステム開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順が役立ちます。

ポイント

自分たちのシステムが、どの種類の行政システムに当たり、他のシステムとどこでデータを受け渡すのかを最初に整理しておくことが、判断の目安になります。

官公庁のシステム開発の進め方

官公庁のシステム開発の進め方

官公庁のシステム開発は、企画・調達準備、調達(入札・プロポーザル)、要件定義・設計の順に進みます。そのあとは、開発とテストを経て移行・稼働に入り、運用・保守へと続きます。

民間企業と比べると、調達プロセスは3〜6か月程度と長く、意思決定にも時間がかかる傾向があります。そのため、スケジュールに十分な余裕を持たせた計画が必要です。

企画・調達準備の重要ポイント

企画・調達準備の段階では、まず標準化への対応が必要かを確かめます。主要20業務は標準化パッケージへの移行が義務づけられているため、対応の要否は早い段階で判断しておきます。

あわせて、補助金・交付金を使えるかどうかを調べ、RFP(提案依頼書)を作成します。RFPには、業務要件や技術要件、セキュリティ要件と評価基準を詳しく記述します。進める際は、デジタル庁・総務省のガイドライン(政府情報システムの整備及び管理に関する標準ガイドライン)も参考にしてください。

セキュリティ対応とテストの徹底

官公庁システムでは、個人情報や機密情報を守るために高いセキュリティが求められます。設計の段階からセキュリティを組み込み(Security by Design)、開発後は独立した第三者機関によるセキュリティ評価やペネトレーションテストを行うことが大切です。

テストの段階では、業務担当職員によるUATやセキュリティテスト、負荷テスト(申請受付開始時のアクセス集中を想定)を徹底します。さらに、本番移行後も定期的な脆弱性診断とインシデント対応訓練を行い、継続的にセキュリティを保つ必要があります。

開発の工程は、関連ガイドの官公庁のシステム開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順で詳しく説明しています。

ポイント

調達に3〜6か月程度かかる前提で、標準化への対応や補助金の活用の可否を企画の段階で決めておくことが、判断の目安になります。

費用相場

官公庁のシステム開発費用相場

官公庁システムの費用は、機関の規模やシステムの種類、開発方式によって大きく変わり、数千万円から数十億円まで幅があります。

機関規模別の費用目安

目安として、政令指定都市(人口50万人以上)の基幹システム刷新では10億円〜100億円程度、中核市(人口20万人以上)では3億円〜20億円程度です。一般市(人口5万〜20万人)では1億円〜10億円程度、町村では数千万円〜3億円程度になります。

国の省庁レベルでは、数十億円から数百億円規模になることもあります。一方で、電子申請システムなど比較的シンプルなシステムであれば、中規模自治体で500万円〜5,000万円程度での構築も可能です。

補助金・交付金の活用

自治体情報システムの標準化への移行では、デジタル庁・総務省による国庫補助が受けられます。さらに、デジタル田園都市国家構想交付金(デジタル実装タイプ)なども活用できます。

計画の初期段階から利用できる補助金を調べ、申請のスケジュールを組み込んだ計画を立てることで、費用負担を大幅に軽減できます。

費用の詳しい内容は、関連ガイドの官公庁のシステム開発の見積相場や費用/コスト/値段についてで説明しています。

ポイント

費用は機関の規模やシステムの種類で大きく変わるため、規模別の目安と見積もりを照らし合わせて判断するとよいでしょう。補助金も計画の初期段階から調べておくことで、費用の負担を軽くできます。

開発会社の選び方

開発会社の選び方

官公庁システムの開発会社を選ぶ際は、行政業務への理解や公的調達への対応経験が重要な選定基準となります。そのほか、セキュリティ対応力や標準化への対応実績も見ておくとよいでしょう。

主要ベンダーの特徴

官公庁向けの主要ベンダーとして代表的なのは、NTTデータ(国内最大手・全国800以上の自治体と取引)、富士通Japan(全国300以上の自治体実績)、NEC(自治体DX・スマートシティに強み)です。さらに、日立製作所(国の省庁・大規模システムに強み)、TKC(地方自治体財務・文書管理に特化)も挙げられます。

また、株式会社riplaのように、コンサルティングから開発まで一気通貫で対応できる会社は、DX推進の上流から支援を求める場合に適しています。

選定の重要チェックポイント

選定では、①官公庁向けシステムの実績(件数・規模)、②ISMS認証・Pマークの取得、③標準化パッケージへの対応実績・ガバメントクラウド移行経験を確認します。さらに、④マイナンバーシステムとの連携実績、⑤プロジェクトマネジメント体制(PMO・専任PM)、⑥長期保守・サポート体制(法改正対応の実績・SLAの明確さ)も確かめておきます。

複数社から提案と見積もりを取り、評価基準にもとづいて総合的に比べることをお勧めします。

会社選びの詳しい内容は、関連ガイドの官公庁のシステム開発でおすすめの開発会社/ベンダー6選と選び方で説明しています。

ポイント

行政業務への理解、公的調達の経験、セキュリティや標準化への対応力を基準にして、複数社の提案を比べることが判断の目安になります。

発注方法

官公庁のシステム発注方法

発注は、標準化の確認、RFPの作成、調達(入札・プロポーザル)、契約締結の順に進めます。その後、プロジェクト管理、検収、保守契約へと続きます。

調達方式の選び方

一般競争入札は、価格を重視する方式で透明性が高い反面、品質が下がるおそれがあります。一方、総合評価落札方式は、価格と技術評価を組み合わせた方式で、システム開発に適しています。

公募型プロポーザル方式は、技術提案を重視する複雑な案件に適しています。また、近年デジタル庁が推進するアジャイル調達は、小規模で短期間の反復型開発に向いており、変化に柔軟に対応できます。

契約・プロジェクト管理の要点

契約書には、知的財産権の帰属(発注者側に帰属)とセキュリティ要件を明記します。さらに、再委託の制限や法改正対応の義務などを盛り込みます。本番稼働後の保守・サポートについては、SLAを明確にした契約を結びます。

プロジェクト管理では、発注者側もPMOを置き、週次の進捗会議と変更管理のプロセスを整えておくことが大切です。検収では、UATとセキュリティ評価を徹底します。

発注の詳しい手順は、関連ガイドの官公庁のシステム開発の発注/外注/依頼/委託方法についてで説明しています。

ポイント

調達方式は、価格と技術提案のどちらを重く見るかを案件の特性に合わせて決めることが、判断の目安です。発注者側のPMOも含めて、体制を整えておくことが大切です。

まとめ

まとめ

官公庁のシステム開発について、全体像、開発の進め方、費用相場を順に解説しました。さらに、発注方法と会社の選び方も取り上げました。押さえておきたいポイントを振り返ります。

まず、デジタル庁の標準化義務(2025年度末期限)と補助金の活用を最初に確認します。費用は機関の規模やシステムの種別によって数千万円から数十億円と幅広く、TCOを含めた長期の予算計画が欠かせません。

調達は、総合評価落札方式、プロポーザル方式、アジャイル調達など、案件の特性に応じて選びます。ベンダー選定では、行政実績やセキュリティ対応を中心に、標準化対応と長期保守体制も重視します。プロジェクト管理では、発注者側もPMOを置いて積極的に関与することが、成功のカギです。

行政DXが進むなかで、適切なシステム投資と開発を進めてください。

関連するテーマの詳しい解説はこちらです。

計画作成に役立つ資料はこちらです。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>

執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。