情報系システム開発/導入の失敗/課題/注意点/リスクについて

情報系システムの失敗は、要件の曖昧さや丸投げから起きやすいものです。また、仕様変更や維持費、社内調整の難しさも落とし穴になります。その構造を知って備えることが、貴重な投資を守ります。

発注企業の視点で、注意点と炎上後の立て直し方を示します。全体像は情報系システムの完全ガイドもご覧ください。

▼全体ガイドの記事
・情報系システムの完全ガイド

要件定義の曖昧さと丸投げが招く失敗

発注側・ベンダー・現場の役割を3枚のカードで示した図
業務と技術、利用者の視点を分けて担います。

「情報共有を良くしたい」「他社が導入した」といった曖昧な動機で始めると、業務の中身を詰めないまま開発が進みがちです。そうして作られたシステムは実態と合わず、使われなくなります。失敗の多くは、技術面よりも入口の詰めの甘さから生まれます。

要件の曖昧さによる工数の膨張

要件が曖昧なまま開発すると、途中で追加の要望が次々に出て、工数が膨らみます。一般に、工数は当初想定の1.3〜1.5倍になるといわれています。

情報系システムは関わる部門が多く、工数の膨張が起きやすい構造です。工数が膨らむと費用と納期にも響き、予算超過やスケジュール遅延を招きます。

膨張を防ぐには、開発前に現場の業務フローを洗い出し、必須事項と後回しにする事項を分けておきます。ただし、完璧な要件を一度で作る必要はありません。

  • 核となる要件:現場ヒアリングで絞り込んだ、絶対に外せない要件。
  • 優先順位:必須事項と後回しにする事項を、開発前に発注側と合意します。

要件定義に時間をかけることは、結果的に総コストを下げる確実な方法です。逆に、ここで手間を惜しむと、後から何倍ものコストがかかることがあります。

ベンダー丸投げと現場不在のリスク

「ITは分からないから専門家に任せたい」という気持ちは、よく理解できます。ただ、業務の専門家ではないベンダーへの丸投げは危険です。技術的に正しくても、現場で使えないシステムになるおそれがあります。

このリスクの根には、開発に現場が関わらないという事情があります。たとえば、情報システム部門や経営層だけで仕様を固めると、現場は頼んでいないものを押しつけられたと感じ、抵抗することがあります。

  • 業務の責任:発注側が要件定義を主導し、業務の中身に責任を持ちます。
  • 実装の専門性:システムの実装は、技術を持つベンダーに担ってもらいます。
  • 現場の参加:利用者を巻き込み、自分たちのシステムだという意識を育てる。

この役割分担が崩れると、丸投げによる失敗が始まります。だからこそ、現場の業務を担う自社と、技術を担うベンダーの責任を、最初に明確にしておきます。

ポイント

業務の中身を発注側が説明できるか、現場の利用者が要件定義に加わっているかを見れば、丸投げや要件の曖昧さの兆しは早めに分かります。

仕様変更の多発とプロジェクト炎上のリスク

変更要望から影響確認と双方の合意を経て着手する流れ図
確認と合意を先に済ませることで、変更のなし崩しを防ぎます。

開発中に要望が膨らむスコープクリープは、納期を延ばし、費用を増やし、関係者の疲弊や不信を招きます。炎上は、小さな変更の積み重ねが制御を失って起きるものです。そのため、その構造を知ることが予防につながります。

スコープクリープと認識ズレによる炎上

スコープクリープとは、小さな仕様変更が積み重なり、プロジェクトの範囲が当初の何倍にも膨らむ現象です。さらに、変更同士が影響し合い、設計のやり直しを招くこともあります。

情報系システムは関わる部門が多く、各部門から要望が出やすいため、スコープクリープが起きやすい領域です。加えて、発注側とベンダーの認識がずれると、手戻りや不信につながります。

防ぐには、変更管理の手順を最初に決めておき、影響を評価して双方が合意してから着手します。やり取りも文書に残し、善意に頼らず手順として運用すると、なし崩しの変更と認識ズレを抑えやすくなります。

変更管理プロセスによる炎上の防止

炎上を防ぐには、プロジェクトの開始時に、変更要望の扱いを発注側とベンダーで合意しておきます。そのうえで、影響範囲、費用、納期を確認してから判断する流れも決めておきます。

  1. 変更の影響範囲を見積もり、費用と納期への影響を明示します。
  2. 決裁者が判断し、発注側とベンダーの合意を得てから着手します。

別の方法として、MVP(Minimum Viable Product)から段階的に育てる進め方もあります。最初から完璧を狙わず、必須機能を先に公開して利用後に要望を整理すれば、一度に変更が集中する事態を避けられます。

変更に備えるリスクバッファとして、当初予算の10〜20%程度を確保する方法もあります。要望が膨らみやすい案件では、変更を秩序立てて管理する規律が成否を分けます。

ポイント

変更要望は、影響範囲と費用、納期を示したうえで双方が合意してから着手する、という順序を守れているかが判断の目安になります。

隠れコストと予算破綻のリスク

稼働後に続く3種類の費用と保守費用の目安を示した図
総保有コストを比べるときは、継続費用も同じ土俵に並びます。

情報系システムの失敗は、完成しないことだけではありません。初期費用だけで決めると、稼働後の支出によって予算が崩れることがあります。

そこで、予算破綻を避けるには、隠れコストを把握して最初から総額で見積もることが鍵になります。

毎月の維持費を見落とす失敗

情報系システムでは、稼働後にどの維持費が継続して発生するかを把握しておく必要があります。

  • クラウド利用料:稼働後も継続して発生する費用。
  • 外部SaaSやAPIの月額料金:利用中は毎月支払う料金。
  • 保守・運用費用:稼働後に継続して必要になる費用。

保守費用は、年間で初期開発費の15〜25%程度が目安とされています。たとえば5年間利用すると、初期費用に匹敵する規模になる場合があります。

導入前には、初期費用と維持費を分けたうえで、3年・5年の総保有コストで比べます。初期費用だけで安いと判断したシステムが、数年のうちに割高になることもあります。

従量課金のサービスは、利用者数やデータ量に応じて料金が増えます。そのため、利用が広がった後の費用も導入前に試算しておくと、運用開始後の予算破綻を防ぎやすくなります。初期費用だけで決めず、継続費用まで見通しておくことが大切です。

稟議・社内調整の失敗で頓挫するリスク

情報系システムは、開発前の稟議や社内調整で頓挫することがあります。費用対効果が見えにくく、経営層への説明が難しいと、予算が下りません。

発注を検討する企業の約4〜5割が、費用対効果の測りにくさを課題に挙げるとされています。さらに、複数の部門が関わると全体最適と部門最適がぶつかり、仕様をめぐる対立も起きます。

調整に失敗すると、現場が要件定義に加われず、業務の実態が要件に反映されないことがあります。そこで、削減時間を金額化して経営層に投資回収を示し、現場には利点を伝えて協力を得ます。社内調整も、成功を左右する要素です。

ポイント

初期費用だけでなく、3年・5年の総保有コストで比べているかが目安です。保守費用や従量課金の増加も、そこに含めて見積もります。

炎上後の火消しと損切りの判断

予防策を講じても、プロジェクトが炎上することはあります。多くの解説は予防で終わりますが、炎上後の立て直し方を知っておくことも大切です。

火消しと損切りの判断を含め、リカバリーを冷静に進める考え方を取り上げます。

炎上中のプロジェクトの立て直し方

炎上後の立て直しでは、まず状況を整理し、そのうえで再建に向けた順序を決めます。

  1. 完成・未完の範囲と不具合を確認し、使用済みの費用と時間、完成に必要な追加額を把握します。
  2. 責任追及より先に事実を整理し、関係者で客観的な状況を共有します。
  3. 炎上の多くは範囲を広げすぎたことが原因です。必要な核となる機能に絞って完成させ、現場で使える形にします。
  4. ベンダーと残作業を共同で定義し、変更管理のルールを引き直します。

立て直しは、新規開発以上に発注側のリーダーシップが問われる局面です。

サンクコストに惑わされない損切りの基準

再建が難しい場合は、損切りも検討の対象になります。最大の障壁となるのは、すでに投じた費用(サンクコスト)への執着です。過去の支出は、判断材料から外しておきます。

判断では、これから追加する費用に見合うリターンがあるかを見ます。そのうえで、現状の延長で完成させる費用と作り直す費用を比べ、将来の事業価値も検討します。

  • ベンダーを切り替える:現在の委託先から別のベンダーに変えます。
  • 作り直す:現場ヒアリングからやり直し、業務に合う形を探します。
  • 別の手法へ移る:SaaSなど別の方法への乗り換えです。

塩漬けのシステムにこだわるより、損切りして作り直したほうが安く済むこともあります。

riplaは、フルスクラッチ受託と国内開発、運用伴走の立場から、炎上案件の立て直しや、業務から逆算した作り直しを支援しています。

失敗しても、損切りと再起動を正しく行えば、次の成功への学びになります。

ポイント

再建の見込みが立たないときは、これから追加する費用とリターンを比べ、過去の支出を判断材料に入れないことが基準になります。

まとめ

情報系システムの失敗には、曖昧な要件定義や丸投げ、スコープクリープがあります。また、維持費による予算破綻や、費用対効果を示せない稟議・社内調整も落とし穴です。

実際、ERP刷新プロジェクトでも、7割以上が当初の期待を満たせず失敗と評価されたという調査があります(Gartner、2024年)。

現場ヒアリングで要件を明確にし、変更管理の手順を決めて、総保有コストも見積もっておきます。そのうえで、削減時間を金額にして稟議に備えると、失敗を相当程度避けられます。

炎上時は、事実を一覧にして範囲を絞り、サンクコストに惑わされず損切りを判断します。現場の業務に寄り添うことが、失敗の予防から立て直しまでを支える鍵です。

立て直しの作法を知っておくことが、被害の最小化につながります。

riplaは、フルスクラッチ受託と国内開発、運用伴走を組み合わせ、炎上後のリカバリーまで支援しています。リスクの全体像と回避策については、情報系システムの完全ガイドもご覧ください。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。