越境ECの導入/開発事例や活用/成功事例について

越境ECには固有のハードルがあるため、実数値を伴う事例が自社の意思決定に直結します。食品メーカーは英語圏に絞って4ヶ月で月商200万円に到達し、精密機器メーカーはBtoBで6ヶ月後に月商500万円の追加売上を作りました。

越境EC全体の進め方をまだ把握していない方は、まず越境ECの完全ガイドから読むことをおすすめします。

食品メーカーが4ヶ月で月商200万円に到達した越境EC事例

食品メーカーの越境ECにおける初期構築、英語化、決済自動化の投資額を比べた横棒図。
サイト構築に最も配分しつつ、自動化にも投資しています。

越境ECの成功事例として参考になるのは、国内の食品メーカーがBtoCで海外の消費者に直接販売したケースです。この事例では、初期構築に180万円をかけ、英語化に50万円、決済自動化に60万円を加えています。

同社は広告に月15万円を投じ、構築開始からわずか4ヶ月で月商200万円を達成しています。日本の食品は海外で根強い人気があり、現地に流通していない商品ほど越境ECと相性が良いという特性を活かした事例です。

初期180万円と英語化50万円の投資配分

この事例で特に注目したいのは投資配分です。サイト本体に180万円をかけつつ、多言語対応は英語化の50万円のみに絞っています。

最初から中国語・韓国語・タイ語まで広げず、まず英語圏という最大の市場で検証しました。この判断が、初期コストの抑制と早期の黒字化を両立させています。

リサーチノートでも「英語のみで月商100万円到達後に次の言語を追加するのが最高効率」とされており、この事例はその原則に沿っています。

食品の越境ECには、賞味期限・成分表示・各国の食品輸入規制といった固有のハードルがあります。そのため、この事例では、これらをクリアできる商品に絞り込んだうえで、英語圏に集中投下したことが奏功しました。

発注側が学ぶべきは、「越境=全世界対応」という思い込みを捨て、自社の商材がもっとも刺さる単一市場から始める姿勢です。

多言語を欲張ると、翻訳の維持費だけがかさみ、利益を圧迫する失敗に陥りやすくなります(後述の関連記事で詳述)。

投資の配分は、次の2つに分けて見ていきます。

  • 初期構築:サイト本体に費用を集中させた部分
  • 英語化:多言語対応を英語だけに絞った部分

決済自動化60万円が早期黒字化を支えた理由

この事例のもう一つの勘所は、決済自動化への60万円の投資です。越境ECでは、現地通貨での決済、関税・送料の自動計算、海外配送業者との連携といった処理が、国内ECよりはるかに煩雑になります。

これを人手で回すと、注文が増えるほど作業が破綻します。初期に60万円をかけて受注・決済・配送計算を自動化したことで、月商が伸びても運用工数が増えにくい体質を最初から作れたのです。

月商200万円の段階でも、自動化していなければCS対応や為替計算に追われ、広告で需要を作っても捌けずに機会損失を生みます。

「売る仕組み」と「捌く仕組み」へ投資したことが、4ヶ月での黒字化を可能にした隠れた要因です。

自動化の効果は、次の2つの面に分けて見ていきます。

  • 工数:月商300万円超の規模で見込める、月100時間の削減
  • 機会損失:広告で需要を作っても捌けずに失う注文

リサーチノートによれば、決済・受注・配送計算を初期50〜80万円で自動化した場合、その工数削減は年換算で約200万円相当になります。

ポイント

迷ったときは、自社の商材がもっとも刺さる単一市場から始め、その市場に合わせて言語と自動化への投資を決めるのが目安です。

精密機器メーカーがBtoB越境で月商500万円を作った事例

BtoB取引でシステムに反映する得意先ごとの価格設定、掛売り、承認フロー、ERP連携を示す図。
取引条件と基幹システムの連携が運用を支えます。

越境ECはBtoCだけでなく、BtoB(企業間取引)でも活用されています。その事例として参考になるのが、精密機器メーカーが海外の取引先・代理店に向けて構築したケースです。

同社は、MakeShopをベースにカスタマイズした構築に250万円、英語・中国語サイトに80万円、ERP(基幹システム)連携に120万円をかけています。

同社はSEOに月20万円を投じ、6ヶ月で月商500万円の追加売上を実現しました。BtoBは単価が高く、一件の受注インパクトが大きいため、立ち上がりに時間はかかるものの、軌道に乗ると売上が一気に伸びます。

ERP連携120万円が利益率を守った構造

BtoB越境で見逃せないのが、ERP連携への120万円の投資です。BtoB取引では、得意先ごとの価格設定、掛売り(後払い)、承認フローといった商習慣をシステムに反映する必要があります。

これを基幹システムと連携させず手作業で回すと、海外取引特有の時差や言語の壁も相まって、受発注の処理だけで担当者が疲弊します。

ERP連携により受注から在庫引き当て・請求までを自動でつないだことが、売上が伸びても利益率を維持できた要因です。

BtoB ECは、得意先別価格・掛売り・承認フロー・ERP連携が必須となるため、同規模のBtoCより30〜100%費用が増える傾向があります。

この事例の250万円と120万円の投資は、コストというより、人を増やさずに海外売上を伸ばすための仕組みへの投資と捉えるのが適切です。

ERP連携の効果は、次の2つの観点で整理できます。

  • 受注処理:1件20分の削減を月1,000件分積み上げた効果
  • 利益率:売上が伸びても維持できた要因

一見すると割高に見えますが、年間約4,000時間の削減になり、投資回収は明確です。

英中2言語に絞った市場選定の合理性

この精密機器の事例では、英語と中国語の2言語に絞っています。精密機器のBtoB需要は、製造業が集積する中国・東アジアと、技術志向の高い英語圏に偏在しているため、この2言語で主要な見込み客をほぼカバーできる判断です。

BtoBは取引先の数が限られる分、ターゲット国を見極めれば言語数を絞り込みやすく、翻訳維持費を抑えながら成果を最大化できます。

発注側が学ぶべきは、「どの言語に対応するか」を市場データと商材特性から逆算する姿勢です。BtoCの食品事例が英語1言語、BtoBの精密機器事例が英中2言語だったように、正解は商材ごとに異なります。

共通するのは「需要のある国だけに絞る」という規律であり、これが翻訳・現地決済・配送網の整備という固有コストを必要最小限に抑える鍵になります。

市場の選び方や向き不向きの判断軸は、関連記事のメリット・デメリット解説もあわせてご覧ください。

市場の絞り込みは、次の2つの観点で見ていきます。

  • 市場データ:言語を決める前に、需要のある国を見極める材料
  • 商材特性:対応言語を商材の性質から逆算する判断

ポイント

BtoB越境では、基幹システムとの連携に投じる費用が利益率を左右するかを、受注処理の手作業の量と合わせて見ることが目安です。

現地モールから自社ECへ広げる王道の事例パターン

現地モール型でテスト販売し、需要を確認してから自社EC型へ広げる流れ図。
需要を確かめた市場に、次の投資を広げます。

越境EC成功事例を横断すると、市場参入の進め方に明確な「型」があることが見えてきます。それが、まず現地モール型(中国のTmall、東南アジアのShopee等)でテスト販売し、反応のある市場だけを自社EC型(Shopify等)へ広げるという王道パターンです。

いきなり自社サイトを多言語で立ち上げても、現地での知名度がなければ誰も訪れません。

集客力のあるモールで需要を確かめてから投資を厚くするのが、失敗を避ける順序です。

モール型でのテスト販売が示す需要検証の価値

現地モールでのテスト販売には、需要検証という大きな価値があります。モールは集客と決済・配送のインフラを提供してくれるため、需要を低コストで確かめられます。

ここで反応が薄ければ、自社ECへの大規模投資を踏みとどまれます。反応が良ければ、確信を持って次の段階へ進めます。

この検証を飛ばして自社ECに全振りすると、需要のない市場に固定費を払い続ける羽目になります。

モールには高い販売手数料、価格競争の激しさ、顧客データがモール側に握られて自社の資産にならないという制約があります。

だからこそ、モールはあくまで「テスト場」と位置づけ、需要が確認できた市場では自社EC(Shopify等)へ顧客を移し、リピートやLTV向上を自社で設計していくのが理想です。

先の食品メーカー事例も、こうした検証を経て自社ECに集中投下したからこそ、広告効率の良い状態で立ち上げられました。

モール型の販売で見るべき点は、次の2つです。

  • 需要の確認:自社サイトを作り込む前に、その国で売れるかどうか
  • 顧客データ:モール側に握られたままでは自社の資産にならない情報

関税・デミニミスを織り込んだ価格設計の事例

越境EC事例で利益を左右するのが、関税と配送を織り込んだ価格設計です。各国には少額輸入を免税にする「デミニミスルール」があり、たとえば米国は800ドル、ブラジルは50ドルが基準とされてきました(出典:各国税関制度)。

この基準を踏まえて商品単価や送料を設定するかどうかで、現地消費者の最終支払額が変わり、購入率に直結します。

成功している事例は、関税を価格に織り込んだうえで広告を回しています。

ただし、注意したいのは、デミニミスの基準額は各国の政策で変更されうる点です。免税ラインが引き下げられれば、これまで免税だった価格帯の商品に突然関税がかかり、価格競争力が一夜にして失われることもあります。

この事例から得られる教訓は、現時点の関税ルールに最適化しすぎず、ルール変更が起きても耐えられる利益構造を持つことです。

海外配送・フルフィルメント(現地倉庫からの出荷)の体制をどう組むかも、こうした制度リスクへの備えとして重要になります。

価格設計で確認する点は、次の2つです。

  • 関税の負担:顧客負担にするか、自社負担にするかの決定
  • 制度の変更:免税ラインの引き下げで価格競争力を失うおそれ

ポイント

参入の初期は現地モールで需要を確かめ、反応のあった市場だけ自社ECへ投資を広げるのが目安です。関税ルールが変わっても耐えられる利益構造かを、あわせて確かめておきましょう。

まとめ

越境ECの導入事例・成功事例を振り返ると、成果を出した企業は例外なく、需要のある単一市場から始め、モールで検証し、そのうえで自社ECへ段階的に投資するという順序を守っています。

食品メーカーは英語1言語・初期180万円+自動化60万円で4ヶ月後に月商200万円を達成しました。精密機器メーカーは英中2言語・ERP連携120万円で6ヶ月後に月商500万円の追加売上を実現しました。

市場規模が2030年に7兆9,380億米ドルへ拡大する見込みのなか、参入余地は大きいものの、関税のデミニミス変更という制度リスクも常に伴います。

事例を読むときに大切なのは、「いくら売れたか」という結果だけでなく、「どの市場に・どの言語で・どんな自動化を伴って始めたか」という進め方です。

自社の商材がもっとも刺さる市場を見極め、まずは現地モールでの小さな一歩から踏み出してください。

riplaはフルスクラッチ受託と国内開発を組み合わせ、自社の商習慣・既存システムに合わせた越境EC構築と段階的な海外展開を一貫して支援します。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。