電子契約システムのRFP/要件定義書/提案依頼書について

電子契約システムのRFPは、自社の契約業務が現状どう回っているかを洗い出すところから始めます。続けて、法令対応、連携・移行、AI・費用の要件を順に積み上げていきます。

外部ベンダーに依頼する場合は、RFPと要件定義書の質が成否を左右します。

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承認ルートの可視化と再現要件の整理

契約金額、契約類型、取引先の3条件をカードで並べた承認ルートの図解
条件をそろえると、再現する承認ルートの範囲を整理しやすくなります。

電子契約システムは、署名前の稟議や承認をどう再現するかで、現場への定着が左右されます。そのため、要件定義では承認ルートを最初に押さえ、自社の契約業務が現状どう回っているかを可視化するところから始めます。

現状の承認ルート(AsIs)を整理しないまま依頼すると、決裁規程に合わないシステムが提案されることがあります。その結果、導入後に業務がシステムで分断される課題につながります。

現状の決裁規程と承認ルートの洗い出し

要件定義では、まず自社の決裁規程と承認ルートを洗い出します。承認者や確認の要否を分けるのは、契約金額、契約類型、取引先の3つの条件です。

  • 契約金額:金額に応じた承認者
  • 契約類型:法務レビューの要否
  • 取引先:追加承認の要否

決裁ルールは、規程と実際の運用が食い違うことがあります。洗い出しの過程で、規程にない承認が慣行として続いていたと分かる場合もあります。

AsIsをそのまま再現せず、あるべき姿(ToBe)へ整理する視点も必要です。たとえば、不要な承認を減らし、条件分岐を簡潔にすると、システム化に合わせて承認プロセスを効率化できます。

RFPでは、「現状の承認ルート一覧」と「システムで再現したい承認ルート」を分けて示します。そのうえで条件分岐の再現可否を各社に提案させると、対応力の違いが見えてきます。承認ルートの洗い出しは、RFPの中核を成す作業です。

条件分岐とスマホ承認の明文化

承認ルートの要件には、条件分岐の具体例を書き込みます。たとえば、次のようなルールをRFPに明記します。

  • 契約金額:500万円未満は部長、500万円以上は役員が承認
  • 業務委託契約:法務レビューを必須とする

分岐ルールを漏れなく示すと、ベンダーはシステムで再現できるかを検討でき、提案の精度も上がります。

運用要件には、スマートフォンからの承認、承認証跡の自動記録、未承認契約の送信防止も含めます。外出先から承認できると、契約のリードタイムが縮まります。実際に、遠隔申請では1件5分以上の短縮や、年150万円分の人件費削減につながった例があります。

証跡の自動記録は、内部統制や監査への対応を容易にします。また、要件に「必須」「推奨」の優先度を付けておくと、提案を客観的に評価できます。

RFP全体の構成と提案評価項目の設計

個別の要件を整理する前に、RFP全体の構成を決めておくと抜け漏れを防げます。一般的なRFPには、次の項目を含めます。

  • 導入背景・目的:現状業務の課題を含める
  • 要件:機能、非機能、移行、連携、費用
  • 提案条件:スケジュールと評価基準

導入目的を冒頭に明記すると、ベンダーが自社の意図を汲んだ提案を出しやすくなります。

客観的に比べるには、評価項目と配点を事前に決めておきます。評価の観点には、機能の充足度、費用、サポート体制を挙げます。さらに、導入実績、法令対応、連携の実現性も、同じ基準で採点します。

共通の基準を使うと、担当者の主観や声の大きいベンダーに流されにくくなります。RFPは要望を並べた一覧で終わらせず、提案を比べて評価するための設計図として作ることが、質の高い選定につながります。

ポイント

承認ルートは規程と運用を並べ、再現する範囲を決めます。RFPの構成と評価項目も個別要件の前に決めておくと、提案を比べやすくなります。

電帳法・電子署名法への対応要件

電子契約書のイメージを中心に、署名方式、改ざん防止、検索機能、長期保存を注釈で示した図解
署名と保存の確認項目をまとめて見ることで、RFPの抜けを探しやすくなります。

電子契約システムは、他の業務システムと違い、法令への対応がそのまま証拠力に直結します。法令要件を満たさないシステムを選ぶと、契約の有効性や税務上の保存要件に問題が生じるおそれがあります。

そのため、RFPには自社が満たすべき法令要件を明記し、各製品が対応できるかをベンダーに答えてもらいます。

電子署名法第3条と署名方式の要件

電子署名法は、一定の要件を満たす電子署名に、紙の押印と同等の法的効力を認めています。第3条は、本人による電子署名が付いた電子文書を、真正に成立したものと推定する規定です。

ただし、この推定が働くかどうかは、署名方式や本人確認の運用に左右されます。そこでRFPでは、自社の契約に求める証拠力の水準を示し、必要な署名方式を洗い出します。

  • 立会人型:一般的な取引で使う方式として検討
  • 当事者型:特に証拠力が重要な契約で検討

証拠力の高い契約には、当事者型が適しています。とはいえ、相手方にも電子証明書の発行費として1万円前後がかかり、すべての契約で求めると相手方の負担が大きくなります。

契約類型ごとに必要な署名方式を記載すれば、両方式への対応可否や切り替えやすさを比べられます。法令要件と運用負担のバランスを取った選定につながります。

電子帳簿保存法とタイムスタンプ・保存要件

電子契約は、税務上は電子取引データに当たります。そのため、電子帳簿保存法の保存要件を満たすための次の機能を、RFPの確認項目に入れます。

  • 改ざん防止:タイムスタンプ付与、訂正・削除履歴の管理
  • 検索機能:取引日・取引金額・取引先で検索

契約書は法定保存期間が長く、タイムスタンプには有効期限があります。このため、期限前に再付与する長期保存形式への対応も要件に含めます。

法令対応は専門性が高く、自社だけで要件を漏れなく洗い出すのは難しいものです。そこで、各製品の対応状況を明記させ、必要に応じて顧問弁護士や税理士に確認する前提を置くと安全です。

法令要件をRFPで明確にしておくことが、後の証拠力トラブルを防ぐ最大の備えになります。

長期保存とタイムスタンプ再付与の要件

法令要件のうち長期保存は見落としやすいため、明確な要件としてRFPに記載します。保存期間、長期署名、検索・履歴の3点について、ベンダーの対応を確かめられる形にしておきます。

  • 保存期間:企業によっては10年以上の保管が必要
  • 長期署名:期限前のタイムスタンプ再付与に対応
  • 検索・履歴:検索要件と訂正・削除履歴を満たす

タイムスタンプの期限が切れる前に再付与できなければ、長期的な証拠力は保てません。さらに、保存した契約書を検索要件どおりに取り出せるか、訂正・削除の履歴が残るかも確認します。

要件を満たさない場合、税務調査などで保存要件の違反を指摘されるおそれがあります。法令対応は専門性が高いため、各製品の対応状況を明記させます。判断に迷う部分は、顧問弁護士や税理士に確認しておくと安全です。

長期保存と検索まで要件に含めることが、将来にわたる証拠力と法令遵守を支えます。

ポイント

法令要件は証拠力と保存に直結するため、署名方式と長期保存を明記させ、迷う部分は顧問弁護士や税理士に確かめる前提で考えます。

CRM・会計連携と紙データ移行の要件

CRM・SFAから会計システム、経費精算システムへと並ぶ契約情報の連携先を示す図解
業務段階ごとの連携先を並べると、データの受け渡しを確認できます。

電子契約の効果を高めるには、契約情報を後続の業務システムへ連携して、二重入力をなくす必要があります。新規の契約だけでなく、過去の紙契約や旧システムのデータ移行も、RFPで定義しておきます。

連携や移行を要件に含めないと、「情報を一元管理できない(39.5%)」「システム間で業務が分断される(38%)」という課題に陥ります。

CRM・会計・経費精算との連携要件の定義

連携要件では、契約情報が関わる業務システムとのデータの接点を洗い出します。データがどの段階で別のシステムへ渡るかを、営業から契約後、申請までの流れで確かめます。

  • 営業段階:CRM・SFA
  • 契約後:請求や支払いを扱う会計システム
  • 申請:経費精算システム

システム間を連携させると、入力の手間を減らせます。KEC関西電子工業振興センターの事例では、申請処理を約4割削減できる可能性があります。

RFPには、連携先のシステム名、APIかCSVかの方式、データ項目、連携頻度を書きます。「会計システムと連携する」といった書き方から一歩進めて、契約金額・取引先・契約日などの項目や、日次連携まで書き込みます。

具体的に書いておくと、ベンダーは実現の可否と工数を見積もりやすくなります。その結果、見積もりの精度と、提案を比べる質が高まります。

紙データ移行とメタデータ保持の要件

移行要件では、過去の紙契約や旧システムのデータを、どう取り込むかを決めます。紙契約はスキャンとメタデータ登録が必要なため、移行の優先順位も併せて考えます。

  • 更新期限が近い契約:期限を踏まえて優先
  • 金額の大きい基本契約:重要度を踏まえて優先
  • 係争リスクのある契約:リスクを踏まえて優先

導入前の紙データが未処理のまま残る課題は、33.6%で挙がっています。そのため、移行計画を要件に含めておくことが、定着の鍵になります。全件を一度に移行するのは現実的ではないため、優先方針をRFPに記載します。

旧システムから移る場合は、契約日・当事者・契約金額・更新期限のメタデータを保持します。さらに、旧システムの解約前に一括エクスポートできることも要件にします。

移行期間中に両方のシステムを並行稼働できることも明記します。要件が曖昧だと、メタデータの欠落や、契約書を見られない空白期間が生じるおそれがあります。

移行をベンダー任せにせず、自社のデータ構造を理解して要件にすることが、トラブルを防ぐ前提になります。

非機能要件とサポート体制の要件化

連携や移行の機能要件と合わせて、セキュリティや性能などの非機能要件も定めます。契約情報は機密性が高いため、RFPには次のとおり条件を書き込みます。

  • セキュリティ:通信暗号化、アクセスログ、IP制限、二要素認証
  • 稼働・性能:可用性と契約締結のピーク時の動作
  • 導入後の支援:問い合わせ窓口、導入研修、トラブル対応速度

導入後の支援は、現場への定着を左右します。現場が操作で迷ったときに、どこへ相談できるかを決めておく必要があります。

導入後に約8割が課題を感じ、形骸化するケースもあります。そこで、導入支援とサポート体制を提案に含める条件をRFPに加え、ベンダーの支援力も評価します。

ポイント

連携と移行は、二重入力をなくすことと、過去のデータを引き継ぐことを両方要件に入れて判断します。連携先と移行の優先順位が具体的なほど、見積もりの精度も上がります。

AI機能の要否切り分けと費用要件

RFPでは、AI機能を盛り込みすぎてしまうことがあります。AI-OCRやAIレビューは、標準機能か追加オプションかで費用が変わります。そのため、過剰な要件は見積もりを膨らませやすくなります。

AI機能を「必須」「推奨」「不要」に切り分けることが、費用を抑えた現実的なRFPを作る鍵になります。

AI機能の必須・推奨・不要の切り分け

AI機能の要否は、自社の課題から逆算して決めます。課題と機能を対応させておくと、優先度をつけやすくなります。

  • 紙契約の移行が多い:AI-OCRの価値が高い
  • 法務レビュー工数が逼迫:AIレビューが有効
  • 契約件数が少なく課題もない:AI機能を不要要件にする

AIの課題がない場合は、署名・送信・保管・ワークフローの基本機能を先に固めます。一方、AIを推奨要件にする場合は、費用対効果を提案に含めるようRFPに記載します。

効果は数字で確かめます。たとえば、AIレビューで法務工数を何時間削減できるか、AI-OCRの読み取り精度や誤認識をどう検証するかを、ベンダーに提案させます。

AIは法務やチェックの補助として位置づけます。最終判断は人が行う前提を要件に明記すると、過度な期待による失敗を防げます。

初期費用・月額・送信料を分けて見積もる費用要件

費用は構造ごとに分けて見積もります。電子契約の費用は、次の四つで構成されます。

  • 初期費用:導入時に発生する費用
  • 月額基本料:中小企業は数千〜2万円、高額プランは3万円程度
  • 送信料:従量制で1件50〜300円が相場
  • オプション:追加機能などの費用

クラウド型の初期費用は0円が多い一方、連携のカスタマイズを伴うと数十万〜数百万円になることもあります。費用を項目ごとに分けておくと、件数が増えたときのコストを正確に予測できます。

想定する契約件数をもとに、月次と年次のトータルコストも各社に試算させます。固定費が高く送信無料のプランと、固定費が低く送信課金のプランとでは、件数によって損益分岐点が変わります。

IT導入補助金などの活用可否を提案条件に加えると、実質的な負担を抑えられます。費用構造をRFPで示しておくことは、見積もりの比較精度と稟議の説得力を高めます。

riplaは、フルスクラッチ受託の立場から、要件の整理と費用構造の見極めを伴走して支援します。

補助金活用とスケジュールの要件化

費用要件と合わせて、IT導入補助金などの活用も検討します。

  • 対象制度:電子契約システムはIT導入補助金の対象になることが多く、導入費用の一部を補助
  • 提案条件:補助対象範囲と申請支援の有無を示させ、実質負担を抑える
  • 申請時期:導入計画と申請時期を合わせ、RFPの予定との整合をベンダーと確認

ITトレンドの資料請求数は、前年同期比で236%増えたという調査もあります。申請が集中する時期は、審査に時間がかかる可能性も考慮します。

費用、補助金、スケジュールを一体の要件に含めると、コストと導入時期の両面から計画を立てられます。

ポイント

AI機能は自社の課題から逆算し、必須・推奨・不要に分けます。費用や補助金は、見積もりを比べる前に条件をそろえておくと判断しやすくなります。

まとめ

電子契約システムのRFPは、承認ルート、法令対応、連携と紙データ移行、AI機能と費用の四つの観点で組み立てます。具体的な要件を示しておけば、各社の提案を同じ基準で比べやすくなります。

承認ルートは、AsIsを洗い出してToBeへ整理します。また、法令要件は、証拠力に応じた署名方式や保存形式を明記します。連携・移行の項目は具体化したうえで、AI機能を必須・推奨・不要に分け、費用対効果を確かめます。

RFPの要件は、自社の契約業務をどう変えたいかという目的から逆算して決めます。承認フローの効率化、法令対応の確実性、二重入力の解消を明確にすると、必要な要件が見えてきます。

riplaは、フルスクラッチ受託と業務伴走の立場から、契約・稟議・文書フローの把握から現場に定着する要件定義までを一貫して支援します。全体像は、完全ガイドで改めて確認できます。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。