電子契約システム開発/導入のメリット/デメリット/効果と判断基準について

電子契約システムの導入効果は、削減できる費用、電子化できる契約の割合、件数や業務要件に応じた方式と料金の選び方によって変わります。

コスト削減やガバナンス強化といったメリットと制約を、自社の件数に当てはめて考えます。全体像は電子契約システムの完全ガイドもご覧ください。

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電子契約導入のメリットの実像

月20件の電子化で、年間約96万円の削減と印紙税・郵送資材費・事務人件費の内訳を示す図。
大きな削減額の内訳を費目ごとに見比べられます。

電子契約のメリットは、「ペーパーレスで便利」という印象にとどめず、コスト削減、スピード向上、ガバナンス強化の各面で定量化できます。

導入率は2025年調査で78.3%に高まりました。その背景には、多くの企業がこうしたメリットを実感していることがあります。判断の基準を持つには、まずメリットを数字で押さえることが出発点です。

コスト削減と業務効率化という定量メリット

もっとも分かりやすいメリットはコスト削減です。効果は、費用、作業、締結の3点に分けて見ると、それぞれの大きさを比べられます。

  • 費用:印紙税、郵送資材費、事務人件費を減らせます。
  • 作業:遠隔申請や会計連携で、処理時間を縮められます。
  • 締結:郵送で数日かかっていた契約も、オンラインなら即日で済みます。

月20件を電子化する試算では、年間約96万円を削減できます。具体的には、印紙税48万円と郵送資材費12万円が不要になり、事務人件費が48万円から12万円に下がる形です。

高額契約では、印紙税が1件あたり1〜6万円、建設工事の高額契約では3万円不要になります。

費用削減項目の調査では、印紙税の不要化が30.6%で最も多く、コスト削減が導入の主な動機だと分かります。

自治体団体の事例では、遠隔申請によって1件あたり5分以上短縮し、年150万円分の人件費を削減しています。さらに、会計連携で申請処理を約4割減らした団体もあります。

即日締結できれば、ビジネス機会の損失を防げます。

自社の契約件数に当てはめれば、削減額と作業時間を算出できます。そのため、こうした具体的な数値は稟議の根拠になります。

ガバナンス強化とコンプライアンス対応のメリット

金額には表れにくいものの、ガバナンス強化も見逃せないメリットです。電子契約は、契約の記録、承認、保管を管理することで、内部統制と監査対応を支えます。

  • 締結記録:タイムスタンプで契約日を客観的に示せます。
  • 承認:完了前の契約が相手方へ送られるのを防ぎ、証跡も残せます。
  • 保管:検索と更新アラートで、所在不明や期限の見逃しを防ぎます。

特に、タイムスタンプがあると、契約日のバックデートや改ざんが難しくなります。また、承認ワークフローと連動させれば、この誤送信を仕組みとして防げます。

紙の契約書がキャビネットに散らばっていると、必要な書類を見つけられず、不利な条件のまま自動更新されることがあります。電子契約の一元管理は、こうしたリスクを抑えます。

企業は、コスト削減だけでなく、ガバナンスやリスク管理の効果も評価します。そのうえで、両面の効果は経営層への説明材料になります。

メリットを自社の件数で定量化する判断

一般論の数字は、自社の契約件数に当てはめて定量化します。月間件数、契約金額、郵送費・印刷費・事務工数を見ます。

  • 印紙税:契約金額の階級ごとに、削減額を見積もります。
  • 郵送・印刷費:現在の支出から削減できる額を出します。
  • 事務人件費:契約件数に応じて、工数がどう変わるかを押さえます。

月20件で年96万円、月100件で月12.5万円はモデル値です。高額契約は印紙税に、件数の多さは事務工数に効いてきます。効果は企業ごとに異なるため、自社の構成で削減額を試算します。

判断では漠然とした「効率化」で済ませず、自社の数字で出した金額を投資判断の根拠にします。

ポイント

メリットは、自社の契約件数に当てはめて金額や時間で示せるかが判断の目安になります。コスト削減とガバナンス強化の両面を数字で捉え、稟議の根拠にできるかを見ます。

見落とせないデメリットと制約

電子契約の確認点を、相手方の同意、法律上書面が必要な契約、従量課金、社内定着の4項目で示す図。
4つの観点を先に押さえると、導入後の想定外を減らせます。

メリットだけを見て導入すると、現場で想定外の壁にぶつかることがあります。電子契約には、相手方の同意が要ること、電子化できない契約があること、従量課金といったデメリットがあります。そこで、デメリットを事前に理解して対策しておけば、導入後の後悔を防げます。

相手方の同意と電子化できない契約という制約

導入前に、相手方の運用と契約内容の両面から、電子化の制約を確かめておく必要があります。

  • 相手方の同意:電子契約は、先方の同意があって初めて成り立ちます。相手方が不慣れな場合や、紙指定の社内ルールがあると、紙での運用が続きます。
  • 電子化できない契約:定期借地契約や任意後見契約のように法律上書面が必要なものは、電子契約に置き換えられません。

取引先が多く、相手方の理解度に差がある企業では、全契約の電子化に時間がかかります。また、電子化できない契約が業務の中心だと、効果を十分に得られないこともあります。

導入の判断では、よくある説明だけで済ませず、電子化できる割合を見積もって、現実的なROIを把握しておきます。

従量課金と社内定着の負担というデメリット

送信料の従量課金は、契約件数が多い企業ほど総費用を押し上げます。料金は1件50〜300円で、平均は税込110〜220円程度です。たとえば、月5件、50件、200件で比べると、クラウドサインの費用は12,100円から55,000円まで件数に応じて増えます。

コスト面の課題は送信料で、運用面の課題は社内定着です。そのため、契約件数と運用の準備を、導入前に見ておく必要があります。

  • 費用:想定件数を見積もり、運用開始後の想定とのずれを防ぎます。
  • 定着:権限設定、承認ルート、社内マニュアルを整えておきます。

ContractSの2023年10月調査では、導入後の約8割が課題を感じています。その内訳は、一元管理できない39.5%、システム間の分断38%、紙データ未処理33.6%です。

システムを入れた後も、現場に定着せず形骸化するおそれがあります。定着の取り組みを負担と見るか投資と見るかが、判断の分かれ目になります。

対策可能なデメリットと避けられない制約の切り分け

デメリットは、準備で軽減できるものと構造的に避けられないものに分けると、導入判断に使えます。

  • 相手方の同意:立会人型を選び、丁寧に説明します。
  • 従量課金:件数を見積もり、固定費型も候補に入れます。
  • 社内定着:小さく始め、運用ルールを整えます。
  • 電子化できない契約:電子化率の上限として見積もります。

法律上電子化できない契約は、対策を講じても避けられません。定期借地契約や任意後見契約が中心であれば、電子契約の効果は限られます。

対策可能なものは準備項目として扱います。この切り分けをしておけば、制約を過大に評価して導入を見送る機会損失を防げます。

ポイント

導入前に、取引先が電子契約に同意するか、電子化できない契約がどの程度あるかを把握できるかが、判断の目安になります。従量課金の件数も見積もっておくと、判断がぶれにくくなります。

クラウドかオンプレ・署名方式の判断基準

メリットとデメリットを踏まえて、具体的な選択肢ごとの判断の基準を持つことが大切です。方式は、自社の規模や契約の証拠力に応じて選びます。

クラウド型とオンプレミス型の判断基準

判断の基準は、自社のセキュリティ要件と業務要件がどの程度強いかです。

  • 一般的な契約:費用や導入速度を重視してクラウド型を選びます。
  • 機密性・独自要件:外部保管の制限や機密契約・独自フローには、オンプレミス型や連携構築を検討します。
  • 段階導入:クラウド型から始め、複雑化したらカスタマイズや連携を加えます。

クラウド型は初期費用0円のものが多く、すぐに使い始められます。ベンダーに保守・運用を任せられるクラウド型は、中小企業を中心に主流です。

月額料金は数千〜2万円程度からです。一方で、オンプレミス型や連携カスタマイズを伴う構築は、初期費用が数十万〜数百万円に上ることもあります。

立会人型と当事者型の使い分けの判断基準

署名方式は、求める証拠力と相手方の手続き負担のどちらを重視するかで選びます。

  • 立会人型:メール認証で署名でき、準備が少なく一般取引に使いやすい方式です。
  • 当事者型:本人性の証明が強く、高い証拠力が必要な契約に向きます。

レビューシェアでは、クラウドサインの66%など、立会人型を基本とするサービスが広く使われています。

一般的な取引契約では、立会人型で足りる場合が多くあります。一方、当事者型では、相手方にも1万円前後の電子証明書発行費が必要です。

一般取引は立会人型、重要な契約は当事者型とする企業が多くあります。契約の類型ごとに切り替えられる製品なら、全契約を当事者型にする負担を避けられます。

補助金活用の可否という判断材料

IT導入補助金などを使えるかどうかは、導入判断の材料になります。電子契約システムは対象になることが多く、導入費の一部が補助されるため、初年度の負担を下げられます。

  • 対象制度:インボイス枠やセキュリティ対策推進枠の対象と補助率を見ておきます。
  • 申請準備:申請時期と審査期間を踏まえて、導入計画と日程を合わせます。

ITトレンドの資料請求数は、前年同期比で236%増えたという調査もあります。また、申請が集中する時期を見込み、余裕を持った準備が必要です。

費用面のメリットとデメリットを比べるときも、補助金で下がる実質的な負担を判断材料に加えます。

ポイント

方式は、セキュリティ要件、契約の証拠力、相手方の手続き負担から選びます。補助金の対象になるかも、初年度の負担を比べる材料に加えます。

料金プランとパッケージ・フルスクラッチの判断

全1,624件に占める電子契約サービスの市場シェアを、クラウドサイン66%、電子印鑑GMOサイン10%、SMBCクラウドサイン6%の棒で比較した図。
クラウドサインの割合が、ほかの2サービスを上回っています。

費用に直結するのは、料金プランと、パッケージかフルスクラッチかという開発方式です。契約件数や要件に応じて比べます。

固定費型と従量課金型の損益分岐点

料金プランには、固定費が高めで送信無料のタイプと、固定費が低めで送信ごとに課金されるタイプがあります。

  • 固定費型:送信と保管が無料のプランは、件数による変動を抑えます。
  • 従量課金型:固定費が低く、送信件数に応じて費用が増えます。

たとえば、マネーフォワードクラウド契約は一律約7,128円/月で、送信と保管は無料です。一方、クラウドサインは基本11,000円に、送信220円が加算されます。

クラウドサインは、月5件で12,100円、月200件で55,000円です。契約件数が多いほど固定費型が有利になり、件数の少ない企業には従量型が向いています。

さらに、「月何件を超えると固定費型が得か」を、想定件数で計算します。具体的な損益分岐点を出し、複数プランの総費用を比べます。

パッケージとフルスクラッチの判断基準

既製のパッケージ(SaaS)か、自社専用にフルスクラッチ開発するかは、標準機能で要件を満たせる範囲をもとに判断します。

  • 標準要件:多くの企業では、一般的な契約にパッケージが第一候補です。導入が早く、保守を任せられて費用も抑えやすく、無理な独自開発は不要です。
  • 独自要件:契約・文書・稟議・帳票を貫く独自フローや基幹連携、複雑な承認・権限体系には個別開発を検討します。

riplaは受託開発と業務伴走の立場から、標準SaaSで満たせる範囲と個別開発が必要な領域の切り分けを支援します。

パッケージとスクラッチは、組み合わせて使うこともできます。たとえば、標準機能で満たせない領域だけを個別に開発し、残りはパッケージで賄う形があります。

市場シェアと相手方の利用状況という判断材料

相手方の同意を得やすくするには、取引先の利用状況やサービスの普及状況も選定の材料になります。

  • クラウドサイン:全1,624件のうち66%(1,065件)
  • 電子印鑑GMOサイン:10%(165件)
  • SMBCクラウドサイン:6%(97件)

特に、普及したサービスは、相手方が受け取りに慣れていて、同意を得やすい可能性があります。シェアだけでなく、自社の契約フローや費用構造も比べます。

自社の使いやすさと相手方の受け取りやすさを合わせて判断すると、電子化率を高め、導入効果を活かしやすくなります。

ポイント

料金は想定件数で損益分岐点を出して比べ、開発方法は標準機能で満たせる範囲を先に確かめます。相手方の利用状況も、選定の材料に加えます。

まとめ

電子契約では、月20件の試算で年96万円の削減、印紙税の不要化、申請処理の約4割減に加えて、ガバナンス強化も見込めます。一方で、相手方の同意や電子化できない契約、従量課金、社内定着の負担といった制約もあります。

導入の判断では、削減効果を自社の件数に当てはめ、契約ごとの制約を確かめておきます。そのうえで、方式、料金、開発方法を契約件数や業務要件に照らして選びます。

料金は件数ごとに損益分岐点を計算し、開発方法は標準SaaSで満たせる範囲を見ます。riplaは、自社の実情に合う選択肢の判断を支援します。

全体像は、電子契約システムの完全ガイドもご覧ください。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。