入退室管理システム開発の期間は、扉の数、連携する設備やシステム、現地工事の範囲によって大きく変わります。要件を整理したうえで、調査から設置まで順に進めると、無理のない納期につながります。
期間の目安は、小規模で約3〜5ヶ月、中規模で約6〜10ヶ月、大規模で約1〜2年以上です。
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入退室管理システム開発の全体像と開発期間の目安

開発期間は、扉の数と、連携するハードウェアや外部システムの複雑さで変わります。
入退室管理システムは、ソフトウェアとハードウェアが組み合わさった複合体です。
構成は、認証端末や電気錠・ゲート、制御機器などの機器と、権限・ログを管理するサーバやソフトウェアです。
現場では、扉に電気錠を設置し、リーダーとコントローラを配線します。さらに工事とキッティング(初期設定)が加わるため、Webシステムより期間が長くなります。
入退室管理システムを構成する要素
開発規模は、認証、解錠設備、制御・管理の3層に分けて捉えると整理しやすくなります。
- 認証デバイス:ICカード、暗証番号、スマートフォン、顔認証端末による本人確認
- 解錠設備:電気錠、自動ドア、フラッパーゲート、エレベータなど
- 制御・管理:リーダーの信号を受けて解錠を指示するコントローラと、権限・ログを管理するサーバやソフトウェア
認証手段や複数手段の併用によって、必要な機器と連携ロジックが変わります。
たとえばICカードにはFeliCaやMifareなどがあり、その種類も機器の選定に関わります。また、スマートフォンでは、BLEやQRコードを読み取る端末も使われます。
電気錠は電気的に施解錠する錠前で、フラッパーゲートは自動改札型のゲートです。
自動ドアなどは認証結果に応じて開閉し、エレベータやセキュリティボックスも連携の対象になります。
採用する機器と、どこまでを自社仕様にするかによって、開発期間は数ヶ月単位で変わります。
規模別の開発期間の目安
小規模から大規模まで期間に差が出るのは、扉の数や拠点数、連携内容が違うためです。
- 小規模:約3〜5ヶ月:単一拠点で、1〜数か所の扉を管理
- 中規模:約6〜10ヶ月:複数拠点で、数十か所の扉を管理
- 大規模:約1〜2年以上:データセンターや工場で、数百か所の扉を管理
小規模では、既存スマートロックのAPIを使い、ICカードやスマートフォンで解錠します。そのため、物理工事を最小限に抑えられ、比較的短期間で立ち上げられます。
中規模では、部署・役職別の権限設計や勤怠連携に加えて、扉ごとの配線工事やデータ連携の開発・テストに時間がかかります。
大規模では、ゲートやエレベータの行先階制御、生体認証、共連れ検知、非常時の一斉解錠などが加わります。さらに、連携先やロジックも増えていきます。
発注する側は、まず自社で管理する扉と管理レベルを整理し、要件がどの規模に当たるかを見極めます。それが、無理のない納期を設定する出発点になります。
開発期間を左右する入退室管理システム特有の要因

期間を延ばす要因は、連携するハードウェア、権限管理、外部システムとの連携に大きく分けられます。
電気錠・ゲート連携と現地設置工事という最大の変数
スケジュールを最も読みづらくするのは、電気錠、自動ドア、フラッパーゲート、エレベータとの連携と、現地工事です。
- 現地環境:扉の材質や配線ルートの調査
- 機器調達:電気錠やゲートの納期の確認
- 工事日程:設置業者との接続仕様と日程の調整
扉ごとに機器を据え付け、リーダーとコントローラを配線でつなぎます。
この現地工事こそが、一般的なWeb開発との最大の違いです。
扉の材質によっては電気錠を埋め込めず、配管がなければLANケーブルを引けない場合もあります。こうした制約を現地調査で見落とすと、設計のやり直しが生じ、遅延につながります。
既存スマートロックのAPIを使えば工事は最小限で済みます。一方で、新設する場合は、調達と工事日程が全体を左右します。
エリア別アクセス権限管理の作り込み
アクセス権限管理は中核となる機能で、誰がいつどのエリアに入れるかを、登録者や扉ごとに設定します。
- エリア制限:サーバールームへの入室を情報システム部だけに許可
- グループ管理:部署や役職の単位で決めるアクセスレベル
- 時間・ゲスト権限:夜間の入室制限や、来訪者への一時的な許可
たとえば、役員室を特定の役職者だけに制限するなど、空間ごとの運用を決めておく必要があります。また、来訪者には、会議室だけを時間限定で開錠する権限を与える場合もあります。
要件が高度になるほど権限モデルの設計は複雑になり、開発工数に直結します。特に、人事異動や組織変更に追従できる設計には、要件定義と設計に十分な時間が必要です。
権限の粒度や対象となる扉・エリアが増えるほど、開発とテストの期間は長くなります。
勤怠管理・監視カメラなど他システム連携の影響
入退室管理システムは単体で完結せず、外部連携によって価値が高まります。一方で、連携の数だけ仕様調査やテストが増え、期間も延びます。
- 勤怠管理:入退室ログを、APIを通じて勤怠側へ連携
- 監視カメラ:共連れを検知したときの映像の記録
- エレベータ:フロア権限に応じた行先階の制御
勤怠と連携すると、入退室の記録が客観的な材料になり、打刻忘れや実態との乖離を防ぐ助けになります。ただし、ログと勤怠側の形式が合わないと、労働時間や残業代の集計にずれが出るおそれがあります。
監視カメラやエレベータとの連携では、機器仕様の調査と結合テストが必要です。連携先が増えると相手の都合にも左右されるうえ、勤怠連携だけでも1〜2ヶ月程度かかります。そのため、監視カメラやエレベータを追加する場合は、さらに期間を見込む必要があります。
工程別スケジュールと期間配分

複数拠点の数十か所の扉を管理し、勤怠連携も含む中規模構成(約8ヶ月)を例に、要件定義から現地設置までの工程を見ていきます。
- 要件定義:約20%:扉や権限、連携要件を決める段階
- 設計:約20%:ソフトウェアと機器の仕様を詰める
- 開発・調達:約30%:ソフトウェアの作り込みと、機器の発注から納品までを並行して進める
- 結合テスト:約15%:機器とソフトの動作の確認
- 現地工事・テスト:約15%:設置後の現場での検証
この配分は一つの目安で、ベンダーが示すスケジュールと照らし合わせる際に使えます。
要件定義・現地調査フェーズ(約1.5〜2ヶ月)
管理内容は、要件定義の段階で決めておきます。重要な現地調査も、必ずこの段階で行い、機器の設置条件を確かめます。
- 管理要件:対象の扉と部署・役職別の権限、連携先を決め、セキュリティ水準と認証手段も定める
- 現地条件:扉の構造・材質、既存錠前の種類、電源・LAN経路、周辺スペースを確かめ、設置の可否を判断
- 例外時の動作:通常時に加え、火災などの非常時や停電時の要件を洗い出す
机上の想定だけで進めると、設置工事の段階で想定していた電気錠を付けられないと分かり、大きな手戻りになります。
そのため、現地調査を含む丁寧な要件定義が、プロジェクト全体の成否を左右する最大の予防策になります。
設計・開発・ハードウェア調達フェーズ(約4ヶ月)
要件が固まったら設計・開発に移り、機能と機器の仕様を定めながら、調達を並行して進めます。
- データ設計:権限・ログのデータベース、保存期間、監査対応の方針
- 通信設計:コントローラや電気錠の仕様、勤怠などとのAPI連携の方式
- 機能開発:解錠制御、権限管理画面、入退室ログの蓄積・検索の実装
開発では、認証結果に応じた制御や、部署・役職別の権限設定も実装します。
電気錠、リーダー、コントローラは、発注から納品までに時間がかかります。機種によっては調達に数週間から数ヶ月かかるため、開発完了後の発注では遅れてしまいます。ソフトウェア開発と調達を同時に進め、機器が揃ったら結合テストへ移ります。
結合テスト・現地設置工事・現地テストフェーズ(約2〜2.5ヶ月)
結合テストから現地での確認、運用開始までは、段階を追って進みます。
- ソフトと機器を接続し、社内やベンダー環境で認証・解錠、権限、ログ、勤怠連携の正確さを検証します。
- 扉に電気錠とリーダーを設置し、コントローラから管理サーバまで配線します。
- 各扉のコントローラに権限データを設定し、キッティングを行います。
- 設置環境で認証・解錠、複数扉の同時利用、非常時の一斉解錠を試します。拠点ごとに異なるネットワークや電源事情から、問題が見つかることもあります。
- 運用担当者への操作説明と、従業員の出入りを見ながらの調整を経て、本稼働に移ります。
共連れ検知・非常時一斉解錠がスケジュールに与える影響
標準的な解錠・権限管理に、共連れ検知や非常時の一斉解錠を加える要件も多くあります。こうした要件を実装すると、開発とテストの期間が長くなります。
共連れ検知・アンチパスバックの実装
共連れ(トレイリング、テールゲーティング)とは、1人が認証して扉が開いた際に、認証していない別の人が一緒に入室してしまうことです。
データセンターやセキュリティエリアでは、共連れをどう防ぐかが問われます。
- カメラ分析:認証人数と通過人数の不一致を検知し、アラートを出す
- アンチパスバック:入室ログのない人の退室や、逆方向の通行の制限
- インターロック:データセンターやクリーンルームで、前後の扉を同時に開けず、1人ずつ通す仕組み
機器連携や通常の通行を妨げないよう、精度を調整する必要があります。そのため、現地での調整にも期間がかかります。また、求める対策の厳密さによって、開発スケジュールも変わります。
火報連動・非常時一斉解錠のフェイルセーフ設計
火災などの非常時にどう動作するかは、安全面で特に大切な点です。そのため、設計とテストを十分に行う必要があります。
- フェイルセーフ:無通電時に解錠される仕組み
- フェイルセキュア:無通電時も施錠が続く仕組み
火災報知器や防排煙設備の信号を受けて、避難経路の扉を一斉に解錠する仕組みが求められます。フェイルセーフは、火災信号で電気錠への給電を止め、停電時にも扉を開けられるようにする方式です。
この方式は、消防法や建築基準法の観点から、オフィスの避難扉などで採用されます。一方、金庫室など資産保護を優先する場所では、フェイルセキュアが採られます。方式は、建物の用途や法令に応じて決めたうえで、火報設備との連動もテストします。
非常時の制御は人命に関わるため、テストを省くことはできず、十分な検証期間を確保します。
納期遅延を防ぐためのポイント
納期を守るには、遅延の要因を事前に把握して先手を打つことが欠かせません。
早期の現地調査とハードウェアベンダー調整
最も遅延しやすいのは、電気錠やゲートの設置工事です。扉を実際に見て接続しないと分からない点が多いため、早めに現地調査を進めておくことが求められます。
- 設置可否:電気錠を取り付けられるかの見極め
- 配線経路:ケーブルを通せるかどうかの確認
- 関係業者:機器や工事の日程の早期調整
終盤になって機器が付かない、配線できないと分かると、大きな手戻りとなり、納期の遅れを招きます。
調達に時間がかかる電気錠やコントローラは、早めに機種を選び、発注の見通しを立てておきます。
ベンダーや電気通信工事業者は、それぞれ各社の予定で動いています。そのため、日程の調整に想定以上の時間がかかる場合があります。そこで、初期の段階から業者を交えて設置の段取りと接続仕様を決め、機器の検証を後回しにしないことが大切です。
スコープ管理と拠点ごとの段階的展開
初回の開発範囲と拠点への展開を段階に分けると、納期のリスクを抑えられます。
- 中核機能から開始:主要扉のICカード解錠とログ記録
- 拠点展開:1拠点で試してから順次導入
- 変更管理:仕様変更の影響範囲を見てから着手
共連れ検知や監視カメラ、エレベータ制御などを初回にまとめて詰め込むと、期間が膨らみます。一方で、勤怠連携や共連れ検知は、稼働後に段階的に追加する進め方もあります。
複数拠点を一度に工事すると調整が難しくなります。そのため、設置手順と運用を固めたうえで他拠点へ広げていくと、リスクを抑えて進められます。
追加の工数や工事についても、着手前に関係者で合意しておきます。
範囲を絞って段階的に広げることで、本稼働までの進行も着実になります。
まとめ
入退室管理システムの期間の目安は、小規模で約3〜5ヶ月、中規模で約6〜10ヶ月、大規模で約1〜2年以上です。ただし、実際の納期は、扉の数やハードウェア工事の範囲、権限管理や他システム連携の内容によって変わります。
現地調査で設置の可否を確かめ、機器の調達と業者との調整を早めに進めることが、遅延の防止につながります。
中核機能から始め、拠点ごとに段階的に展開すると、現実的な日程を組みやすくなります。
自社で管理する扉と必要なセキュリティ水準を整理したうえで、複数の開発会社に相談してみてください。
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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
